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本当の順番
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「刑事さんもお婆さんも人を試すのが上手いんだから。
でもそんな見え透いた手には引っかかませんよ。自分は自分です。
もう後は好きなように。ただ一つだけヒントを与えるとしたらそれは……
時間が解決してくれると思いますよ。気長に待ってくださいね。ははは…… 」
捜査協力はしてもいいが何せ記憶がない。
都合がいいと思うだろうが殺した記憶がないのだ。
岩男様も二姫も自分は手をかけていない。
もし二人が殺されたのだとしたら真犯人がいることになる。
ただそのことを探偵さんたちに告白するのはやはり違う。
少なくても約束は守るべきだ。
今どこにいるの三貴? まさか死んだなど到底受け入れられない。
今どこにいやがる二姫? まさか生きていたなど誰も信じないだろう。
「まったくこれじゃあ埒が明かない。禁断の取引と行こうか」
ついに刑事が動く。
「ちょっと待ちな。そんな勝手は許さないよ」
大家が睨みつける。
「冗談。冗談だって。最後の切り札だもんな。しかし時間がない…… 」
「馬鹿な。時間は有限にあるじゃないか」
「村長さんにだっていい訳ができない」
「そう言ってるよあんた」
「いえ。もはや私は後ろ盾を失ったただの男。村人からの支持もありません。
ただのお飾りになり果てたのです」
落選間違いなしの現村長。任期を全うするのみ。
「フォフォフォ…… では堂々と戦おう。それが男と言うもの」
なぜか元村長からエールが送られる。
「おいおい、お前ら黙れ。ああ村長は別ですよ。
俺は明日上司に報告しなければならないんだ。
どうすればいい婆さん? 探偵さん? 」
そこまで頼られると困ってしまう。
結局どうするか判断に迷う。
「よし第一の事件。当主殺害はお前の犯行で間違いないな? 認めろ」
焦った刑事が怒りに任せて勝手に話を進める。
あまりにも強引な刑事に大家さん絶句。私も黙って見ているしかない。
「ええ。自分がやったんでしょう」
「いい加減にしろ。お前のことだろうが。覚えてないなど通じるか」
「岩男様を呼び出したのも泳げないのを承知で湖の真ん中で転覆させたのも自分。
そこは認めます。しかし果たして自分が殺したかと言うとそれは分からない。
なぜならその時の記憶が曖昧で……
ただ状況的には自分以外考えられない。だから認めろと言えば認めます」
素直に従うのがいい。刑事をこれ以上怒らせては危険だ。
「まったくどうしてそこは曖昧なんだ。正直なのか不正直なのか分からん」
ゴリラのような刑事の追及。
第二の事件・長女消失殺害事件自供。
第三の事件・二女失踪事件一部否認。
第四の事件・三女失踪は自殺。アリバイあり。
「あの…… 一つ質問していいですか? 」
「どうぞ探偵さん。後は逮捕されるだけですからごゆっくりと」
あまりにも冷静なコウ君。まだ逃げ切れるとでも思っているのか?
「疑問が残るんです。君は我々と村に来てから一度も家に戻ってませんよね? 」
「ふふふ…… それはどうでしょう? 」
面白がるコウ。何が目的なのか?
「関所の記録を調べてみましたがこの村を訪れてから出たものはいません。
そして訪れた者もルーシーと大家さん以外記載がない。これはどういうこと? 」
「忘れては困ります探偵さん。自分にはあなた方が見破った抜け道があるんですよ。
そこからなら何度でも往復できます」
「ええそれも承知です。しかしそれも長女失踪事件までですよね? 」
消失の起きた館を調べサライちゃんまで動かされたら……
そう考えるだけで寒気がするはずだ。
「実際私はサライちゃんを動かそうとしました」
コウは無言を通す。
このままでは自供を引き出すのは難しい。
やはり証拠を固めて再度アタックするのがベストだろうか。
「サライちゃん人形。これが全てを隠しあるいはすべてを解き明かす鍵なんです」
「ああん? どうだって言うんだ。こいつがどう関わる? 」
刑事には理解できないらしい。まあそれもそうだろう。
「コウ君は長女の消失が起きるまでの短い間に二女をこの穴から離れへ運んだ」
コウの表情が険しくなった。
「だから消失と殺人。事件発生と殺害時間は異なる」
「はあ? はっきり言ってくれ。俺には分からねえ」
「殺害する順番が違ってるんですよ」
「どう言うこっちゃ? 」
「だから…… 」
事件の時系列。
第一の事件・岩男の水死体。
第二の事件・長女失踪及び殺害事件。
第三の事件・二女失踪事件。
第四の事件・三女失踪未遂事件。
実際の時系列。
最初・二女失踪事件。
第二・長女失踪及び殺害事件。
第三・岩男氏殺害事件。
第四・三女失踪未遂事件。
これが本来の順番。
「第四の事件以外はバラバラってか。しかしそれが何だ? 」
「長女の失踪事件が起きればサライちゃんは調べられる。
サライちゃんを再び固定せざるを得ない。だから館から出入りできないことになる。
それまでの間にすべての計画を実行しなければならない。
要するに第四の事件以外は同日に起きていたことになる」
「ちょっと待ってください先生」
助手が遮る。
「俺らがコウの家に泊まった時に事件が起きていたことになるんじゃ? 」
助手が核心を突く。だがまだ早いので仕方なく受け流すことに。
「とにかく話を聞いてくれ。もし事件の順番が変われば話もまったく違ってくる。
岩男氏殺害が一連の幕開けと思われたが実際には三番目。
岩男氏を殺害した為に後に引けなくなり一族に手をかけると言う推理事態に無理が。
ここから本当の狙いが見えてくる。
それが二女の二姫さん。そして長女の一葉さん。
順番が逆になってしまったのは儀式のせいだと言えます」
こんな無茶な主張が通るか? 証拠がある訳ではない。ただの憶測でしかない。
「目的は長女・次女殺害ってか。恐ろしいね。ははは…… 」
これは一族への恨みなどではなくただの個人的な恨みによるもの。
ついにコウ君は口を噤んでしまう。どうやら間違いなさそうだ。
続く
でもそんな見え透いた手には引っかかませんよ。自分は自分です。
もう後は好きなように。ただ一つだけヒントを与えるとしたらそれは……
時間が解決してくれると思いますよ。気長に待ってくださいね。ははは…… 」
捜査協力はしてもいいが何せ記憶がない。
都合がいいと思うだろうが殺した記憶がないのだ。
岩男様も二姫も自分は手をかけていない。
もし二人が殺されたのだとしたら真犯人がいることになる。
ただそのことを探偵さんたちに告白するのはやはり違う。
少なくても約束は守るべきだ。
今どこにいるの三貴? まさか死んだなど到底受け入れられない。
今どこにいやがる二姫? まさか生きていたなど誰も信じないだろう。
「まったくこれじゃあ埒が明かない。禁断の取引と行こうか」
ついに刑事が動く。
「ちょっと待ちな。そんな勝手は許さないよ」
大家が睨みつける。
「冗談。冗談だって。最後の切り札だもんな。しかし時間がない…… 」
「馬鹿な。時間は有限にあるじゃないか」
「村長さんにだっていい訳ができない」
「そう言ってるよあんた」
「いえ。もはや私は後ろ盾を失ったただの男。村人からの支持もありません。
ただのお飾りになり果てたのです」
落選間違いなしの現村長。任期を全うするのみ。
「フォフォフォ…… では堂々と戦おう。それが男と言うもの」
なぜか元村長からエールが送られる。
「おいおい、お前ら黙れ。ああ村長は別ですよ。
俺は明日上司に報告しなければならないんだ。
どうすればいい婆さん? 探偵さん? 」
そこまで頼られると困ってしまう。
結局どうするか判断に迷う。
「よし第一の事件。当主殺害はお前の犯行で間違いないな? 認めろ」
焦った刑事が怒りに任せて勝手に話を進める。
あまりにも強引な刑事に大家さん絶句。私も黙って見ているしかない。
「ええ。自分がやったんでしょう」
「いい加減にしろ。お前のことだろうが。覚えてないなど通じるか」
「岩男様を呼び出したのも泳げないのを承知で湖の真ん中で転覆させたのも自分。
そこは認めます。しかし果たして自分が殺したかと言うとそれは分からない。
なぜならその時の記憶が曖昧で……
ただ状況的には自分以外考えられない。だから認めろと言えば認めます」
素直に従うのがいい。刑事をこれ以上怒らせては危険だ。
「まったくどうしてそこは曖昧なんだ。正直なのか不正直なのか分からん」
ゴリラのような刑事の追及。
第二の事件・長女消失殺害事件自供。
第三の事件・二女失踪事件一部否認。
第四の事件・三女失踪は自殺。アリバイあり。
「あの…… 一つ質問していいですか? 」
「どうぞ探偵さん。後は逮捕されるだけですからごゆっくりと」
あまりにも冷静なコウ君。まだ逃げ切れるとでも思っているのか?
「疑問が残るんです。君は我々と村に来てから一度も家に戻ってませんよね? 」
「ふふふ…… それはどうでしょう? 」
面白がるコウ。何が目的なのか?
「関所の記録を調べてみましたがこの村を訪れてから出たものはいません。
そして訪れた者もルーシーと大家さん以外記載がない。これはどういうこと? 」
「忘れては困ります探偵さん。自分にはあなた方が見破った抜け道があるんですよ。
そこからなら何度でも往復できます」
「ええそれも承知です。しかしそれも長女失踪事件までですよね? 」
消失の起きた館を調べサライちゃんまで動かされたら……
そう考えるだけで寒気がするはずだ。
「実際私はサライちゃんを動かそうとしました」
コウは無言を通す。
このままでは自供を引き出すのは難しい。
やはり証拠を固めて再度アタックするのがベストだろうか。
「サライちゃん人形。これが全てを隠しあるいはすべてを解き明かす鍵なんです」
「ああん? どうだって言うんだ。こいつがどう関わる? 」
刑事には理解できないらしい。まあそれもそうだろう。
「コウ君は長女の消失が起きるまでの短い間に二女をこの穴から離れへ運んだ」
コウの表情が険しくなった。
「だから消失と殺人。事件発生と殺害時間は異なる」
「はあ? はっきり言ってくれ。俺には分からねえ」
「殺害する順番が違ってるんですよ」
「どう言うこっちゃ? 」
「だから…… 」
事件の時系列。
第一の事件・岩男の水死体。
第二の事件・長女失踪及び殺害事件。
第三の事件・二女失踪事件。
第四の事件・三女失踪未遂事件。
実際の時系列。
最初・二女失踪事件。
第二・長女失踪及び殺害事件。
第三・岩男氏殺害事件。
第四・三女失踪未遂事件。
これが本来の順番。
「第四の事件以外はバラバラってか。しかしそれが何だ? 」
「長女の失踪事件が起きればサライちゃんは調べられる。
サライちゃんを再び固定せざるを得ない。だから館から出入りできないことになる。
それまでの間にすべての計画を実行しなければならない。
要するに第四の事件以外は同日に起きていたことになる」
「ちょっと待ってください先生」
助手が遮る。
「俺らがコウの家に泊まった時に事件が起きていたことになるんじゃ? 」
助手が核心を突く。だがまだ早いので仕方なく受け流すことに。
「とにかく話を聞いてくれ。もし事件の順番が変われば話もまったく違ってくる。
岩男氏殺害が一連の幕開けと思われたが実際には三番目。
岩男氏を殺害した為に後に引けなくなり一族に手をかけると言う推理事態に無理が。
ここから本当の狙いが見えてくる。
それが二女の二姫さん。そして長女の一葉さん。
順番が逆になってしまったのは儀式のせいだと言えます」
こんな無茶な主張が通るか? 証拠がある訳ではない。ただの憶測でしかない。
「目的は長女・次女殺害ってか。恐ろしいね。ははは…… 」
これは一族への恨みなどではなくただの個人的な恨みによるもの。
ついにコウ君は口を噤んでしまう。どうやら間違いなさそうだ。
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■あらすじ■
小江戸川越、菓子屋横丁のはずれ。探偵と助手にとっての『日常』を描いた推理小説です。実在の街並み、お菓子、車などを織り込んでいます。
(注意:架空の店舗、路地などもあります。実在する全ての個人・団体等とは関係がありません)
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