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最後の抵抗
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婆さんによる追及。
まずは探偵さんから。
「先生答えてください。あなたは犯人ですか? 」
「大家さんそれはないよ。私が犯人のはずがない」
「いいから答えてください。イエスかノーかで」
「ノー。私は犯人ではありません」
次に目をつけたのは元村長の爺さんだ。
「元村長のあなたはいかがですか? 」
「うぐぐぐ…… いかがも何もない。儂にはアリバイがある。この孫とて同じ」
「イエスかノーか? 」
「ふん。ノーに決まってるであろう」
孫? いたのか。
常に気配を消し一歩下がった位置に控える自慢の孫。
「あなたはどうですか? 」
「ノー。私がそんなことする訳ないでしょう」
元村長の右腕。裏で何しているか分からないと言うのはただの噂に過ぎなかった。
「続いて太郎さんと次郎さんですが…… 」
念のための確認。大して興味を示してないようだ。
「ノーだ。誰がそんなことするか。なあ次郎」
どちらが太郎で次郎かは判別できない。
まあどうでも良いこと。事件とは何の関わりもない。
この聞き取りもついでに過ぎないと見てる。
「確かに一族には恨みを抱いてましたよ。しかしそれは心で思うもの。
決して実行などしません。だからノー」
「ありがとうお二人とも。では続いて門番さんはいますか? 」
大人しいものだからその存在を忘れられている。
「何だよ婆さん。俺はさっきから居ただろ。逃げも隠れもしない。
何て言ったって潔白なんだからな。ノー」
後方の離れたところに陣取る門番。門番の習性なのか室内が落ち付かない様子。
警察の隙を突いて逃げ出す気満々。
これは怪しい。言い逃れできない。
「まあいいでしょう。村長さんはどうですか? 」
「ノーです。関係は皆さんの比ではありません。村長になれたのも岩男氏のおかげ。
もちろん恨みが無いわけではありませんが良くしてもらいました。
恩人に何をしようと言うのか。だからノーです」
悪い噂もあるし一癖も二癖もある侮れない男だがまあ事件には関わっていないはず。
婆さんは満足そうにうなずく。
助手にロックオン。
奴がそんな人間ではないのは自分が一番理解している。
「では助手のあなたはどうですか? 」
「先生」
情けない助手は探偵にすがる。
「ほらゆっくり。正直に答えればいいさ」
動揺を見せる。このうろたえ方は明らかに怪しい。
「俺は犯人じゃない。大家さんだって知ってるくせに」
「イエスかノーかで」
「ノー。俺は犯人じゃない」
続いてルーシーを見る。
この中では一番の曲者。
何を考えているのやら。まったく読めない。
「それから…… ルーシーさんはどうです? 違いませんよね? 」
「イエス。私、犯人じゃないね」
「イエス? あんたがやったのか」
刑事が飛び出す。
「ノーノ―。日本語難しいね」
ついつい英語の感覚で答えてしまうルーシー。
混乱が生じる。
「あなたは犯人? イエスかノーでお願いします」
「ノー。無実よ」
ルーシーは強く否定する。
まあ当然か。やってもいないものまで自白するほど馬鹿ではないか。
「今度は否認しやがった一体どっちなんだ?
警察おちょくると痛い目に遭うぞ」
「いいえ彼女は一貫してノーと言ってたさ」
「さっきイエスって言ったじゃないか何でだ? 」
「まったくこれだから…… 彼女は英語でノーと言ったんです」
「はあ? ちっとも理解できない。どう言うこった? 」
「まあ確かに」
納得がいってない様子の刑事。
自身の疑いが晴れホッと一安心のルーシー。
彼女が伝説のアリサさんの娘かどうかはまだ確定してない。
事実彼女の母はアリサなのだが……
母が亡くなり父であろう岩男氏も殺害される。
果たして彼女の精神は大丈夫であろうか?
最初から狂っていた気もする。
ただそれも演技に見えなくもない。
さあそろそろ来るな。婆さんが忘れてなければ。
ここで終いにするほど甘くはないだろう。
「最後にコウさん」
ホラ来た。
皆の視線が集まる。
自分が犯人だと? 馬鹿な。自分が犯人だと認めるはずがないだろう。
「あなたは犯人ですか? イエスかノーで」
婆さんが念を押す。
そんな簡単に吐くつもりはない。
ミスリードするのも一つの手。
「えっとですね…… 自分は岩男氏が怪しいと思います。
だからノーでお願いします」
疑惑の目を向ける容疑者たち。
自分が犯人の訳あるか。
睨みつける。
自分は大丈夫。
何といっても鉄壁なアリバイがあるのだから。大丈夫。絶体だ。
「コウ君。本当にあなたが犯人じゃないんですか? 」
馴れ馴れしい上にしつこい。
確かに消去法ならば最後に残った者が一番怪しい。
しかし自分じゃない。もちろん願望だ。
いや一連の事件すべてを自分のせいにするのは間違っている。
ここですべてを認めればそれこそ迷宮入り。
それに探偵さんや助手、三貴の為にもあっさり罪を認める訳にはいかない。
決定的証拠を突きつけるまで否認し続ける。
それが第一村人としてのプライド。
警察だって追い詰めるだけの材料は揃えてないだろう?
続く
まずは探偵さんから。
「先生答えてください。あなたは犯人ですか? 」
「大家さんそれはないよ。私が犯人のはずがない」
「いいから答えてください。イエスかノーかで」
「ノー。私は犯人ではありません」
次に目をつけたのは元村長の爺さんだ。
「元村長のあなたはいかがですか? 」
「うぐぐぐ…… いかがも何もない。儂にはアリバイがある。この孫とて同じ」
「イエスかノーか? 」
「ふん。ノーに決まってるであろう」
孫? いたのか。
常に気配を消し一歩下がった位置に控える自慢の孫。
「あなたはどうですか? 」
「ノー。私がそんなことする訳ないでしょう」
元村長の右腕。裏で何しているか分からないと言うのはただの噂に過ぎなかった。
「続いて太郎さんと次郎さんですが…… 」
念のための確認。大して興味を示してないようだ。
「ノーだ。誰がそんなことするか。なあ次郎」
どちらが太郎で次郎かは判別できない。
まあどうでも良いこと。事件とは何の関わりもない。
この聞き取りもついでに過ぎないと見てる。
「確かに一族には恨みを抱いてましたよ。しかしそれは心で思うもの。
決して実行などしません。だからノー」
「ありがとうお二人とも。では続いて門番さんはいますか? 」
大人しいものだからその存在を忘れられている。
「何だよ婆さん。俺はさっきから居ただろ。逃げも隠れもしない。
何て言ったって潔白なんだからな。ノー」
後方の離れたところに陣取る門番。門番の習性なのか室内が落ち付かない様子。
警察の隙を突いて逃げ出す気満々。
これは怪しい。言い逃れできない。
「まあいいでしょう。村長さんはどうですか? 」
「ノーです。関係は皆さんの比ではありません。村長になれたのも岩男氏のおかげ。
もちろん恨みが無いわけではありませんが良くしてもらいました。
恩人に何をしようと言うのか。だからノーです」
悪い噂もあるし一癖も二癖もある侮れない男だがまあ事件には関わっていないはず。
婆さんは満足そうにうなずく。
助手にロックオン。
奴がそんな人間ではないのは自分が一番理解している。
「では助手のあなたはどうですか? 」
「先生」
情けない助手は探偵にすがる。
「ほらゆっくり。正直に答えればいいさ」
動揺を見せる。このうろたえ方は明らかに怪しい。
「俺は犯人じゃない。大家さんだって知ってるくせに」
「イエスかノーかで」
「ノー。俺は犯人じゃない」
続いてルーシーを見る。
この中では一番の曲者。
何を考えているのやら。まったく読めない。
「それから…… ルーシーさんはどうです? 違いませんよね? 」
「イエス。私、犯人じゃないね」
「イエス? あんたがやったのか」
刑事が飛び出す。
「ノーノ―。日本語難しいね」
ついつい英語の感覚で答えてしまうルーシー。
混乱が生じる。
「あなたは犯人? イエスかノーでお願いします」
「ノー。無実よ」
ルーシーは強く否定する。
まあ当然か。やってもいないものまで自白するほど馬鹿ではないか。
「今度は否認しやがった一体どっちなんだ?
警察おちょくると痛い目に遭うぞ」
「いいえ彼女は一貫してノーと言ってたさ」
「さっきイエスって言ったじゃないか何でだ? 」
「まったくこれだから…… 彼女は英語でノーと言ったんです」
「はあ? ちっとも理解できない。どう言うこった? 」
「まあ確かに」
納得がいってない様子の刑事。
自身の疑いが晴れホッと一安心のルーシー。
彼女が伝説のアリサさんの娘かどうかはまだ確定してない。
事実彼女の母はアリサなのだが……
母が亡くなり父であろう岩男氏も殺害される。
果たして彼女の精神は大丈夫であろうか?
最初から狂っていた気もする。
ただそれも演技に見えなくもない。
さあそろそろ来るな。婆さんが忘れてなければ。
ここで終いにするほど甘くはないだろう。
「最後にコウさん」
ホラ来た。
皆の視線が集まる。
自分が犯人だと? 馬鹿な。自分が犯人だと認めるはずがないだろう。
「あなたは犯人ですか? イエスかノーで」
婆さんが念を押す。
そんな簡単に吐くつもりはない。
ミスリードするのも一つの手。
「えっとですね…… 自分は岩男氏が怪しいと思います。
だからノーでお願いします」
疑惑の目を向ける容疑者たち。
自分が犯人の訳あるか。
睨みつける。
自分は大丈夫。
何といっても鉄壁なアリバイがあるのだから。大丈夫。絶体だ。
「コウ君。本当にあなたが犯人じゃないんですか? 」
馴れ馴れしい上にしつこい。
確かに消去法ならば最後に残った者が一番怪しい。
しかし自分じゃない。もちろん願望だ。
いや一連の事件すべてを自分のせいにするのは間違っている。
ここですべてを認めればそれこそ迷宮入り。
それに探偵さんや助手、三貴の為にもあっさり罪を認める訳にはいかない。
決定的証拠を突きつけるまで否認し続ける。
それが第一村人としてのプライド。
警察だって追い詰めるだけの材料は揃えてないだろう?
続く
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