89 / 109
嘘だ! 動くサライちゃん
しおりを挟む
「消失のトリックはこうです。アリサの時同様サライちゃんをずらします。
ほらこんな風に…… あれおかしいな…… 」
当然動くはずがない。
「先生。もうその辺で…… 」
せっかく花を持たせようと振るのだがその都度ボケをかます探偵。
これでは探偵失格。
「おい探偵さん。焦り過ぎだって」
「深呼吸。深呼吸。先生落ち着いてください」
助手の言に従い呼吸を整える探偵。
あーあ。ダメだよ探偵さん。さっき動かそうとした自分なら分かる。絶体に無理。
サライちゃんを破壊でもしない限り隣の世界に繋がる穴は出現しやしない。
事件当時とは状況が変化している。
容疑者たちからも疑問の声が。
「サライちゃんをどう動かすんだ。都会の人はそんな根本的なことも忘れたってか」
「オウ・イッツ・クレイジー」
ここぞとばかりにそれまで大人しくしていた次郎が口を開く。
そこにルーシーのとどめの一撃。
探偵撃沈。
ざわざわ
ざわざわ
慌ただしくなってきた。
婆さんは何やら刑事と目配らせ。
すぐに親指を立てる刑事。
自信喪失の探偵さんは俯いたまま一言も発さない。
探偵さん。元気出して。
「探偵さんは間違っていません。自分を信じて」
「ありがとう」
つい敵に塩を送る。
追い詰められているのは自分なのになぜか探偵さんが放っておけない。
「先生もう一度お願いします」
婆さんが再度呼びかける。
自信喪失したまま復活させない方がこちらには好都合。
だが良くしてくれた探偵さんや助手がどうしても気になる。
しかしもう一度やれなど何を考えているのか。
何度やろうと無理な物は無理。
探偵さんを潰す気か?
追い詰めてどうする?
鬼? 鬼なのか?
ここで引き下がれない。もう一度。
「いや済まない皆。もう一度やってみるよ」
サライちゃんの前に立ち力一杯押し込む。
前にやった通りに動かす。
力を徐々に強めていく。
ギギギ
ガン
サライちゃんが動いた。
てこの原理?
宇宙の力?
自然現象?
オカルト?
真犯人以外が驚愕の声を上げる。
あの不動のサライちゃんが動いたのだ。
目の前で起きた現象が信じられないと言った様子。
真犯人の俺も違う意味で驚きを隠せない。
これは一体どういうことだ?
俺は確かトリックがばれないように閉じたはず。
記憶にはないが動かせなかったのが何よりの証拠。
ついさっきの出来事だ。間違えるはずがない。
いや間違っていたとしたら脱出してることになる。
こんな婆さんの茶番に付き合わされることもなかっただろう。
これはどう言うことだ?
「どういうこと? 」
「固定してあるんじゃないのか? 」
「あんなデカいのを誰がどうやって? 」
好き勝手に感想を言い出す観衆と化した容疑者たち。
「イッツ・クレイジー、ベリーベリーエキサイティング
オーワンダフル、オーマイゴッド」
大騒ぎしたと思ったら涙を流しその場に崩れ落ちるルーシー。
情緒不安定な女。
昔幼かった彼女はアリサと共にこの東の館から逃れた。
その日の記憶が火と共に蘇ったのだろう。
穴。サライちゃんで隠れていた穴が突如出現した。
東の館守護神サライちゃんが最後の砦として君臨。今、目に見えない役目を終える。
外へと通じる穴が開いていた。
穴はさほど大きなものではないが大人一人が何とか入れる作り。
もし閉所恐怖症等でなければ十分に出入り可能。
ただ体格のいい者は注意が必要で途中で引っかかったら誰も助けてくれない。
アリサの頃は少女たちだったからまったく問題なかっただろう。
うわわ……
穴から人の顔が見える。
「こちら…… 上手く行きましたか? 」
新米警官のようで無線に何か話しかけている。
「おい、無線はもういい。そのまま話してくれ」
刑事が命令する。
タイミングを見計らって再び婆さんが語る。
「これが秘密の穴さ。この事件の肝だね。この事実を知っているのは今では元村長さんだけになっちまったよ。それから真犯人もだったね」
監視は緩まない。
まったくもう分かってるくせに。しらじらしい。
なぜ早く指摘しない。
犯人は俺だと。第一村人はこの俺だと。
なぜ捕まえない。もうとっくに覚悟は出来てる。
じわじわと追い詰めて俺が弱っていく様を楽しむつもりか。
もういいだろ? これ以上は時間の無駄。疲れたよ。
頼むよ探偵さん。頼む。
続く
ほらこんな風に…… あれおかしいな…… 」
当然動くはずがない。
「先生。もうその辺で…… 」
せっかく花を持たせようと振るのだがその都度ボケをかます探偵。
これでは探偵失格。
「おい探偵さん。焦り過ぎだって」
「深呼吸。深呼吸。先生落ち着いてください」
助手の言に従い呼吸を整える探偵。
あーあ。ダメだよ探偵さん。さっき動かそうとした自分なら分かる。絶体に無理。
サライちゃんを破壊でもしない限り隣の世界に繋がる穴は出現しやしない。
事件当時とは状況が変化している。
容疑者たちからも疑問の声が。
「サライちゃんをどう動かすんだ。都会の人はそんな根本的なことも忘れたってか」
「オウ・イッツ・クレイジー」
ここぞとばかりにそれまで大人しくしていた次郎が口を開く。
そこにルーシーのとどめの一撃。
探偵撃沈。
ざわざわ
ざわざわ
慌ただしくなってきた。
婆さんは何やら刑事と目配らせ。
すぐに親指を立てる刑事。
自信喪失の探偵さんは俯いたまま一言も発さない。
探偵さん。元気出して。
「探偵さんは間違っていません。自分を信じて」
「ありがとう」
つい敵に塩を送る。
追い詰められているのは自分なのになぜか探偵さんが放っておけない。
「先生もう一度お願いします」
婆さんが再度呼びかける。
自信喪失したまま復活させない方がこちらには好都合。
だが良くしてくれた探偵さんや助手がどうしても気になる。
しかしもう一度やれなど何を考えているのか。
何度やろうと無理な物は無理。
探偵さんを潰す気か?
追い詰めてどうする?
鬼? 鬼なのか?
ここで引き下がれない。もう一度。
「いや済まない皆。もう一度やってみるよ」
サライちゃんの前に立ち力一杯押し込む。
前にやった通りに動かす。
力を徐々に強めていく。
ギギギ
ガン
サライちゃんが動いた。
てこの原理?
宇宙の力?
自然現象?
オカルト?
真犯人以外が驚愕の声を上げる。
あの不動のサライちゃんが動いたのだ。
目の前で起きた現象が信じられないと言った様子。
真犯人の俺も違う意味で驚きを隠せない。
これは一体どういうことだ?
俺は確かトリックがばれないように閉じたはず。
記憶にはないが動かせなかったのが何よりの証拠。
ついさっきの出来事だ。間違えるはずがない。
いや間違っていたとしたら脱出してることになる。
こんな婆さんの茶番に付き合わされることもなかっただろう。
これはどう言うことだ?
「どういうこと? 」
「固定してあるんじゃないのか? 」
「あんなデカいのを誰がどうやって? 」
好き勝手に感想を言い出す観衆と化した容疑者たち。
「イッツ・クレイジー、ベリーベリーエキサイティング
オーワンダフル、オーマイゴッド」
大騒ぎしたと思ったら涙を流しその場に崩れ落ちるルーシー。
情緒不安定な女。
昔幼かった彼女はアリサと共にこの東の館から逃れた。
その日の記憶が火と共に蘇ったのだろう。
穴。サライちゃんで隠れていた穴が突如出現した。
東の館守護神サライちゃんが最後の砦として君臨。今、目に見えない役目を終える。
外へと通じる穴が開いていた。
穴はさほど大きなものではないが大人一人が何とか入れる作り。
もし閉所恐怖症等でなければ十分に出入り可能。
ただ体格のいい者は注意が必要で途中で引っかかったら誰も助けてくれない。
アリサの頃は少女たちだったからまったく問題なかっただろう。
うわわ……
穴から人の顔が見える。
「こちら…… 上手く行きましたか? 」
新米警官のようで無線に何か話しかけている。
「おい、無線はもういい。そのまま話してくれ」
刑事が命令する。
タイミングを見計らって再び婆さんが語る。
「これが秘密の穴さ。この事件の肝だね。この事実を知っているのは今では元村長さんだけになっちまったよ。それから真犯人もだったね」
監視は緩まない。
まったくもう分かってるくせに。しらじらしい。
なぜ早く指摘しない。
犯人は俺だと。第一村人はこの俺だと。
なぜ捕まえない。もうとっくに覚悟は出来てる。
じわじわと追い詰めて俺が弱っていく様を楽しむつもりか。
もういいだろ? これ以上は時間の無駄。疲れたよ。
頼むよ探偵さん。頼む。
続く
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
パンアメリカン航空-914便
天の川銀河
ミステリー
ご搭乗有難うございます。こちらは機長です。
ニューヨーク発、マイアミ行。
所要時間は・・・
37年を予定しております。
世界を震撼させた、衝撃の実話。
『非常套的殺人事件』~ミス研殺人事件~
勇士(仮)
ミステリー
【小説に出てくるような、ありふれた殺人事件だと思っていた…】
大学生ミステリー研究部の8人、サークルの合宿のために集まったペンション
そこで起こる不可解な連続殺人事件
犯人はこの学生の中にいるのか。それとも...
後宮生活困窮中
真魚
ミステリー
一、二年前に「祥雪華」名義でこちらのサイトに投降したものの、完結後に削除した『後宮生活絶賛困窮中 ―めざせ媽祖大祭』のリライト版です。ちなみに前回はジャンル「キャラ文芸」で投稿していました。
このリライト版は、「真魚」名義で「小説家になろう」にもすでに投稿してあります。
以下あらすじ
19世紀江南~ベトナムあたりをイメージした架空の王国「双樹下国」の後宮に、あるとき突然金髪の「法狼機人」の正后ジュヌヴィエーヴが嫁いできます。
一夫一妻制の文化圏からきたジュヌヴィエーヴは一夫多妻制の後宮になじめず、結局、後宮を出て新宮殿に映ってしまいます。
結果、困窮した旧後宮は、年末の祭の費用の捻出のため、経理を担う高位女官である主計判官の趙雪衣と、護衛の女性武官、武芸妓官の蕎月牙を、海辺の交易都市、海都へと派遣します。しかし、その最中に、新宮殿で正后ジュヌヴィエーヴが毒殺されかけ、月牙と雪衣に、身に覚えのない冤罪が着せられてしまいます。
逃亡女官コンビが冤罪を晴らすべく身を隠して奔走します。
裏切られた令嬢は死を選んだ。そして……
希猫 ゆうみ
恋愛
スチュアート伯爵家の令嬢レーラは裏切られた。
幼馴染に婚約者を奪われたのだ。
レーラの17才の誕生日に、二人はキスをして、そして言った。
「一度きりの人生だから、本当に愛せる人と結婚するよ」
「ごめんねレーラ。ロバートを愛してるの」
誕生日に婚約破棄されたレーラは絶望し、生きる事を諦めてしまう。
けれど死にきれず、再び目覚めた時、新しい人生が幕を開けた。
レーラに許しを請い、縋る裏切り者たち。
心を鎖し生きて行かざるを得ないレーラの前に、一人の求婚者が現れる。
強く気高く冷酷に。
裏切り者たちが落ちぶれていく様を眺めながら、レーラは愛と幸せを手に入れていく。
☆完結しました。ありがとうございました!☆
(ホットランキング8位ありがとうございます!(9/10、19:30現在))
(ホットランキング1位~9位~2位ありがとうございます!(9/6~9))
(ホットランキング1位!?ありがとうございます!!(9/5、13:20現在))
(ホットランキング9位ありがとうございます!(9/4、18:30現在))
縁仁【ENZIN】 捜査一課 対凶悪異常犯罪交渉係
鬼霧宗作
ミステリー
【続編の連載を始めました。そちらのほうもよろしくお願いいたします】
近代において日本の犯罪事情は大きな変化を遂げた。理由なき殺人、身勝手な殺人、顔の見えぬ殺人――。常軌を逸脱した事件が日常の隣で息をひそめるような狂った世界へと、世の中は姿を変えようとしていた。
常人には理解できぬ思考回路で繰り返される猟奇事件。事態を重く見た政府は、秘密裏に警察組織へと不文律を組み込んだ。表沙汰になれば世の中が許さぬ不文律こそが、しかし世の中の凶悪事件に対抗する唯一の手段だったのだから。
その男の名は坂田仁(さかたじん)――。かつて99人を殺害した凶悪猟奇殺人犯。通称九十九人(つくも)殺しと呼ばれる彼は、数年前に死刑が執行されているはずの死刑囚である。
これは死刑囚であるはずの凶悪猟奇殺人鬼と、数奇なる運命によって対凶悪異常犯罪交渉係へと着任した刑事達が、猟奇事件に立ち向かう物語。
スナック【サンテラス】の事件奇譚に続く、安楽椅子探偵新シリーズ。
――今度は独房の中で推理する。
【事例1 九十九殺しと孤高の殺人蜂】《完結》
【事例2 美食家の悪食】《完結》
【事例3 正面突破の解放軍】《完結》
【事例4 人殺しの人殺し】《完結》
イラスト 本崎塔也
愛脳中毒
じえり
ミステリー
世の中に疲れた紀田聖
お金欲しさに臨床試験の被験者となる
昔好きだった奏に偶然であってまた恋に落ちる
人生に色がついていく感覚に心躍る毎日
そんな時奏とは全く違うタイプのヨンこと真由に好きだと告白される
自分の人生の奇跡
しかしコウキが参加した臨床試験には秘密があった
謎の研究機関√が若者を集めて行なっている恐ろしい人体実験
コウキがたどる人生のラストとは?
虹色アゲハ【完結】
よつば猫
ミステリー
自分の全てだった存在から結婚詐欺にあい、何もかも失った揚羽は…
水商売で働きながら、赤詐欺専門の復讐代行をしていた。
そしてぶっきらぼうな天才ハッカーとバディを組み、依頼をこなしていたある日。
不可解なターゲットと出会い…
かつて自分を騙した結婚詐欺師とも再会する。
※ 表紙はミカスケ様のフリーイラストをお借りしてます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる