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岩男氏溺死事件の真相と新たな謎
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「第一の事件、岩男氏殺害ですが…… 」
婆さんの実力は如何に?
馬鹿な。だってあれは……
当主岩男氏殺害。
確かに殺人事件だろう。でも自分ではない。自分は殺してなどいない。
これまで一緒にされては困る。ただの冤罪。
お願いだ誰か気付いてくれ。自分は関係ないぞ。
「今回の事件の…… いえ連続殺人事件の幕開け。
岩男氏殺害は真犯人の思惑通り事故死扱い。正確には限りなく殺人に近い事故死。
泳げない岩男氏を湖に放置。そのまま溺死させた。
犯人は酩酊状態の岩男氏を夜桜見物と称して湖まで誘い出した。
踊りや舞など岩男氏が喜ぶもので気を引き最後にボートに乗せ中央で突き落とす。
信頼関係のあった真犯人はまんまと泳げない岩男氏を死に追いやった」
事件当日。
「おいもっと舞って見せよ。物足りないぞ。ガッハハ。実に愉快愉快」
「しかし危険です岩男様。これ以上ボートでふざけてはバランスを崩しかねません」
「構わん。今が楽しければそれでよいのじゃ。もっともっと我を楽しませよ」
だいぶ酔いが回ってきた岩男様はここがどこであるのかを忘れている様子。
今ここで踊りだせば間違いなく湖の底だ。
「ご容赦願います」
「ならん。好きにさせよ」
「何卒ご理解を」
「ううん? 我がそのような聞き分けの悪い頑固者だとでも言うのか」
返す言葉が見つからない。
「よい。お主が踊らぬと言うなら我が舞ってみせようぞ。
ほれ桜たちも舞っておるではないか。ははは…… 」
岩男氏はよろけながら懸命に舞う。もう夢中で何にも注意を払わない。
少しでもバランスを崩せば船から転落するというのに。
「危ない岩男様。お止めください。どうかどうか」
酩酊状態の岩男様は聞く耳を持たない。
最後の舞を終えると満足したのか力なく転落。
「おい何をしておる。早く助けぬか。この馬鹿者が」
あれだけ注意しても聞き入れなったのに今さら救いを求めるなど……
何とか救い出し必死にボートへ乗せ難を逃れる。
陸へ。
「お待ちください」
「何をしておる。風邪をひくではないか。まったく親子共々使い物にならぬわ。
いいから早くせぬか。この馬鹿者が」
一時間少々要したが館の者に不審がられることもなく服を調達。
「岩男様。岩男様。どこですか? 」
見つからない。
ライトを当て湖の周りを見て回る。
どこにも見当たらない。
岩男氏が姿を消す。
「岩男様。どちらへ」
どうやら待ちきれずに帰られてしまったようだ。
相当怒っているに違いない。何と言い訳すればいいだろうか?
館の者に無断で連れ出し危険な目に遭わせたことがばれたら自分はお払い箱。
この館をいやこの村を追い出されてしまう。
まあいいか。あと少しの辛抱なのだから。
それにしても今日は本当に疲れた。
色々あったものな。
計画通りにいかなかったがまあいい。自分はその都度修正していくのだから。
それにしてもどこに行ったのだろう……
ついつい岩男氏との最期の別れを思い出す。
あの婆さんが変なことを言うものだから。
婆さんは続ける。
「事故死に見せかけて殺された岩男氏。しかし事件はこの前に発生していたのです」
「岩男氏が先じゃねいのか? 事件の幕開けだって言ったろ」
堪らずにゴリラ刑事が口を挟む。
「思っていたのと順番が逆なのさ」
「逆? 本当かよ。待てよそうか……
三日三晩籠っていればその間にいつでも殺害チャンスはあったな。
よし長女の死亡推定時刻を割り出せ。
それから岩男氏の遺体をもう一度確認するんだ」
部下に指示を送る。
うんおかしいぞ? まだ長女の遺体は見つかってないはず。
何て言ったってあそこにあるんだから…… これは一体どういうことだ?
婆さんの推理が核心に迫る。
「岩男氏の遺体が見つかったのは長女よりも先です。
ただ実際には長女の事件が第一の事件で岩男氏殺害は第二の事件になるのです。
これが何を意味するかと言うと……
儀式から戻る直前に殺害されたのではなく前日の晩に殺害されたことになるんです」
一旦話を切ると探偵の方に視線を送る。
花を持たせようと探偵に振る。
先生。先生とプレッシャーをかけては探偵さんも答えない訳にはいかないか。
「今度の一連の事件の犯人は三女の三貴さん。そうですね。
三貴さん。間違いない。何とか言ったらどうなんだ三貴さん。
罪を認め白状してください。今ならギリギリ間に合います」
探偵は明後日の方向に話を進めてしまう。
「先生。先生。そんなはず…… 」
口をあんぐり開けたまま棒立ちの二人。
さすがに三貴はあり得ない。
どうしてしまったんだい探偵さん。
続く
婆さんの実力は如何に?
馬鹿な。だってあれは……
当主岩男氏殺害。
確かに殺人事件だろう。でも自分ではない。自分は殺してなどいない。
これまで一緒にされては困る。ただの冤罪。
お願いだ誰か気付いてくれ。自分は関係ないぞ。
「今回の事件の…… いえ連続殺人事件の幕開け。
岩男氏殺害は真犯人の思惑通り事故死扱い。正確には限りなく殺人に近い事故死。
泳げない岩男氏を湖に放置。そのまま溺死させた。
犯人は酩酊状態の岩男氏を夜桜見物と称して湖まで誘い出した。
踊りや舞など岩男氏が喜ぶもので気を引き最後にボートに乗せ中央で突き落とす。
信頼関係のあった真犯人はまんまと泳げない岩男氏を死に追いやった」
事件当日。
「おいもっと舞って見せよ。物足りないぞ。ガッハハ。実に愉快愉快」
「しかし危険です岩男様。これ以上ボートでふざけてはバランスを崩しかねません」
「構わん。今が楽しければそれでよいのじゃ。もっともっと我を楽しませよ」
だいぶ酔いが回ってきた岩男様はここがどこであるのかを忘れている様子。
今ここで踊りだせば間違いなく湖の底だ。
「ご容赦願います」
「ならん。好きにさせよ」
「何卒ご理解を」
「ううん? 我がそのような聞き分けの悪い頑固者だとでも言うのか」
返す言葉が見つからない。
「よい。お主が踊らぬと言うなら我が舞ってみせようぞ。
ほれ桜たちも舞っておるではないか。ははは…… 」
岩男氏はよろけながら懸命に舞う。もう夢中で何にも注意を払わない。
少しでもバランスを崩せば船から転落するというのに。
「危ない岩男様。お止めください。どうかどうか」
酩酊状態の岩男様は聞く耳を持たない。
最後の舞を終えると満足したのか力なく転落。
「おい何をしておる。早く助けぬか。この馬鹿者が」
あれだけ注意しても聞き入れなったのに今さら救いを求めるなど……
何とか救い出し必死にボートへ乗せ難を逃れる。
陸へ。
「お待ちください」
「何をしておる。風邪をひくではないか。まったく親子共々使い物にならぬわ。
いいから早くせぬか。この馬鹿者が」
一時間少々要したが館の者に不審がられることもなく服を調達。
「岩男様。岩男様。どこですか? 」
見つからない。
ライトを当て湖の周りを見て回る。
どこにも見当たらない。
岩男氏が姿を消す。
「岩男様。どちらへ」
どうやら待ちきれずに帰られてしまったようだ。
相当怒っているに違いない。何と言い訳すればいいだろうか?
館の者に無断で連れ出し危険な目に遭わせたことがばれたら自分はお払い箱。
この館をいやこの村を追い出されてしまう。
まあいいか。あと少しの辛抱なのだから。
それにしても今日は本当に疲れた。
色々あったものな。
計画通りにいかなかったがまあいい。自分はその都度修正していくのだから。
それにしてもどこに行ったのだろう……
ついつい岩男氏との最期の別れを思い出す。
あの婆さんが変なことを言うものだから。
婆さんは続ける。
「事故死に見せかけて殺された岩男氏。しかし事件はこの前に発生していたのです」
「岩男氏が先じゃねいのか? 事件の幕開けだって言ったろ」
堪らずにゴリラ刑事が口を挟む。
「思っていたのと順番が逆なのさ」
「逆? 本当かよ。待てよそうか……
三日三晩籠っていればその間にいつでも殺害チャンスはあったな。
よし長女の死亡推定時刻を割り出せ。
それから岩男氏の遺体をもう一度確認するんだ」
部下に指示を送る。
うんおかしいぞ? まだ長女の遺体は見つかってないはず。
何て言ったってあそこにあるんだから…… これは一体どういうことだ?
婆さんの推理が核心に迫る。
「岩男氏の遺体が見つかったのは長女よりも先です。
ただ実際には長女の事件が第一の事件で岩男氏殺害は第二の事件になるのです。
これが何を意味するかと言うと……
儀式から戻る直前に殺害されたのではなく前日の晩に殺害されたことになるんです」
一旦話を切ると探偵の方に視線を送る。
花を持たせようと探偵に振る。
先生。先生とプレッシャーをかけては探偵さんも答えない訳にはいかないか。
「今度の一連の事件の犯人は三女の三貴さん。そうですね。
三貴さん。間違いない。何とか言ったらどうなんだ三貴さん。
罪を認め白状してください。今ならギリギリ間に合います」
探偵は明後日の方向に話を進めてしまう。
「先生。先生。そんなはず…… 」
口をあんぐり開けたまま棒立ちの二人。
さすがに三貴はあり得ない。
どうしてしまったんだい探偵さん。
続く
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