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真犯人第一村人はこの中にいる
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目が眩むほどの強い光が我々を捉える。
うわあ目が目が。何てことしやがる。
非常識なことするのはやはり警察か。
「お時間をとらせて申し訳ない」
ゴリラのような面をした刑事がライトを振り回す。
「失礼。ここにお前らを呼んだのはこの俺だ。少し大人しくしていてもらおうか」
「迷惑な。何と迷惑な輩じゃ」
「ファット? ホワイ? 」
刑事登場に関係者招待。最悪の状況だ。
これはいよいよ追い詰められてきたかな。
果たしてこのまま無事に切り抜けることが出来るのか?
彼ら警察がどこまで証拠を揃えているのか気になる。
「本当にすみませんね。夜分遅くに集まって頂いて改めてお礼申し上げます」
やけに丁寧な物言い。真相に辿り着いて余裕と見える。
これではますますこちらの立場が危うくなる。
「皆さんに集まって頂いたのは他でもない真犯人の目星がついたからなんです」
「オーノー」
皆が絶句する中ルーシーだけはマイペースではしゃぐ。
周りの者を見回す。皆何が起きたのか分からずに戸惑っている。
まあそれはそうだろう。こう言った時に心当たりがあるのは犯人くらいなものだ。
「ねえ皆さん…… 」
これはまずい。早くこの危機的状況から逃れねば。
逃げ道。逃げ道。どこかに逃げ道があるはずだ。
「おい。そこ動くな」
ゴリラのような刑事はその厳つい体を揺らして威圧する。
「警告だ。一歩でも動いたり不審な行動をする者は取り押さえる。分かったな? 」
「ちょっと刑事さん。やり過ぎだよ」
ライトの方角。刑事の後方から現れた謎の女。
近所のおばさん? 通りがかりのお婆さん?
ざわざわ
ざわざわ
俺を嵌めた不愉快な存在。
どこまでの能力を有しているか計り知れない。
女が前に出る。
「自己紹介はまだだったね。私が誰かなどまあそんなのはどうでも良いか。
初めまして皆さん。あなた方は一連の事件の容疑者です。質問のある方はどうぞ」
容疑者たちは一様に慌てる。
「このおばさんは誰? 」
突如現れた謎の女性に困惑する面々。
そろそろ私の出番かな。
「あんた一体誰なんだよ? 」
代表して太郎さんが問いただす。
次郎さんも近くにいるはず。
終始存在感の無い二人の兄弟。役目はこれぐらいしかないのが虚しい。
東の館の隣人と言うだけでほぼ無関係な二人。
門番と共に容疑者リストからすぐに消えた影の薄い兄弟。
同情を禁じ得ない。
今回も外が騒がしいので来ただけらしい。
ほぼ数合わせの二人。
ここで存在感を示さなければ最後まで活躍の場はないだろう。
実に不運な太郎次郎であった。
「自己紹介を済ましてしまいますか。私は玉子と申します。どうぞよろしく。
今は探偵の助手をやらせてもらっています。
そちらにいらっしゃる先生の指示でこの事件を解決に参りました」
大家さんの推理ショー第二幕が上がる。
もう土俵際に追い込まれた第一村人。
後は大人しく罪を認めてくれると助かる。
ううん?
一斉に睨まれる。
いや私はただの観客で傍観者。それどころか容疑者の一人だ。
だから皆と変わらない。睨むのは止めて欲しい。
仕方なく一礼する。
探偵? 助手?
あの婆さん。探偵さんの助手だったとはこれは侮れない。
最悪の展開に備えて冷静に行動しなければならない。
修正に修正を重ねてこのピンチを乗り越えてやる。
三貴待ってろよ。必ず迎えに行ってやるからな。もう少しの辛抱だ。
「では私が刑事さんに代わって命令するよ。警察の協力を得ている。
大人しく従うように。無駄な抵抗は止すんだ。分かったかい」
牽制する婆さん。
「では名前を呼ぶよ。大人しく返事しな」
元村長。
その孫。
太郎と次郎。
ルーシー。
コウ。
助手。
門番。
村長。
最後に先生。
容疑者は揃った。
犯人はこの中にいる。
真犯人は……
長い沈黙。
誰も決して口を開こうとはしない。
皆相手の出方を窺っている。
仮に犯人でなくても下手に発すれば疑われる。その為誰も何も言えない。
緊張の一瞬。
この中に犯人がいる?
まさか?
自分以外の者は一体何が起ころうとしているのか分からず困惑している。
この状況を逆手に取るのも悪くない。
追い詰められる前に使える切り札となり得るか。
「では順番に見て行こうか。第一の事件岩男氏殺害」
婆さんは皆を見回し動きを探る。
それ以上に刑事がつぶさに表情を読み取っている。
婆さんと刑事たちによるコンビネーション。
これはまずい。
いくら自分でも確信を突かれては表情を変えない自信など無い。
だがそれでも乗り切るしかない。
汗が滴り落ちる。まさかこれも見えているはずないよな……
婆さんの実力は如何に?
お手並み拝見と行こう。
続く
うわあ目が目が。何てことしやがる。
非常識なことするのはやはり警察か。
「お時間をとらせて申し訳ない」
ゴリラのような面をした刑事がライトを振り回す。
「失礼。ここにお前らを呼んだのはこの俺だ。少し大人しくしていてもらおうか」
「迷惑な。何と迷惑な輩じゃ」
「ファット? ホワイ? 」
刑事登場に関係者招待。最悪の状況だ。
これはいよいよ追い詰められてきたかな。
果たしてこのまま無事に切り抜けることが出来るのか?
彼ら警察がどこまで証拠を揃えているのか気になる。
「本当にすみませんね。夜分遅くに集まって頂いて改めてお礼申し上げます」
やけに丁寧な物言い。真相に辿り着いて余裕と見える。
これではますますこちらの立場が危うくなる。
「皆さんに集まって頂いたのは他でもない真犯人の目星がついたからなんです」
「オーノー」
皆が絶句する中ルーシーだけはマイペースではしゃぐ。
周りの者を見回す。皆何が起きたのか分からずに戸惑っている。
まあそれはそうだろう。こう言った時に心当たりがあるのは犯人くらいなものだ。
「ねえ皆さん…… 」
これはまずい。早くこの危機的状況から逃れねば。
逃げ道。逃げ道。どこかに逃げ道があるはずだ。
「おい。そこ動くな」
ゴリラのような刑事はその厳つい体を揺らして威圧する。
「警告だ。一歩でも動いたり不審な行動をする者は取り押さえる。分かったな? 」
「ちょっと刑事さん。やり過ぎだよ」
ライトの方角。刑事の後方から現れた謎の女。
近所のおばさん? 通りがかりのお婆さん?
ざわざわ
ざわざわ
俺を嵌めた不愉快な存在。
どこまでの能力を有しているか計り知れない。
女が前に出る。
「自己紹介はまだだったね。私が誰かなどまあそんなのはどうでも良いか。
初めまして皆さん。あなた方は一連の事件の容疑者です。質問のある方はどうぞ」
容疑者たちは一様に慌てる。
「このおばさんは誰? 」
突如現れた謎の女性に困惑する面々。
そろそろ私の出番かな。
「あんた一体誰なんだよ? 」
代表して太郎さんが問いただす。
次郎さんも近くにいるはず。
終始存在感の無い二人の兄弟。役目はこれぐらいしかないのが虚しい。
東の館の隣人と言うだけでほぼ無関係な二人。
門番と共に容疑者リストからすぐに消えた影の薄い兄弟。
同情を禁じ得ない。
今回も外が騒がしいので来ただけらしい。
ほぼ数合わせの二人。
ここで存在感を示さなければ最後まで活躍の場はないだろう。
実に不運な太郎次郎であった。
「自己紹介を済ましてしまいますか。私は玉子と申します。どうぞよろしく。
今は探偵の助手をやらせてもらっています。
そちらにいらっしゃる先生の指示でこの事件を解決に参りました」
大家さんの推理ショー第二幕が上がる。
もう土俵際に追い込まれた第一村人。
後は大人しく罪を認めてくれると助かる。
ううん?
一斉に睨まれる。
いや私はただの観客で傍観者。それどころか容疑者の一人だ。
だから皆と変わらない。睨むのは止めて欲しい。
仕方なく一礼する。
探偵? 助手?
あの婆さん。探偵さんの助手だったとはこれは侮れない。
最悪の展開に備えて冷静に行動しなければならない。
修正に修正を重ねてこのピンチを乗り越えてやる。
三貴待ってろよ。必ず迎えに行ってやるからな。もう少しの辛抱だ。
「では私が刑事さんに代わって命令するよ。警察の協力を得ている。
大人しく従うように。無駄な抵抗は止すんだ。分かったかい」
牽制する婆さん。
「では名前を呼ぶよ。大人しく返事しな」
元村長。
その孫。
太郎と次郎。
ルーシー。
コウ。
助手。
門番。
村長。
最後に先生。
容疑者は揃った。
犯人はこの中にいる。
真犯人は……
長い沈黙。
誰も決して口を開こうとはしない。
皆相手の出方を窺っている。
仮に犯人でなくても下手に発すれば疑われる。その為誰も何も言えない。
緊張の一瞬。
この中に犯人がいる?
まさか?
自分以外の者は一体何が起ころうとしているのか分からず困惑している。
この状況を逆手に取るのも悪くない。
追い詰められる前に使える切り札となり得るか。
「では順番に見て行こうか。第一の事件岩男氏殺害」
婆さんは皆を見回し動きを探る。
それ以上に刑事がつぶさに表情を読み取っている。
婆さんと刑事たちによるコンビネーション。
これはまずい。
いくら自分でも確信を突かれては表情を変えない自信など無い。
だがそれでも乗り切るしかない。
汗が滴り落ちる。まさかこれも見えているはずないよな……
婆さんの実力は如何に?
お手並み拝見と行こう。
続く
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