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ある少女の記憶
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<間奏>
少女は下を向き泣きじゃくっていた。
「泣くんじゃないみっともない」
皆喪服の中少女だけはドレス。
場違いとも思えるが彼女らしい。
葬式を無事済ませ自宅に戻る。
少女はなぜ不幸に見舞われたのか?
母の名をアリサと言った。
父の名は知らされていない。
アリサはシングルマザーで少女を一人で育てた。
大人の話では何人もの養女がいるらしい。
なぜ私が居ながら他に子供を? まったく理解できない。
子供心にも疑問がわく。
少女には母のみだ。
少女に兄弟が居たなど嘘だ。
少女は独りぼっち。
少女とアリサの親子二人暮らし。
ヨウシ?
ワカラナイ……
兄弟どこにイルネ?
姉サンはどこ?
妹は?
いつも想像していた。
いつも思い描いていた光景。
でも決して誰一人として姿は見せなかった。
少女は兄を求め、弟を切望し、姉の帰りを待ち、妹をねだった。
しかしどれも叶わなかった。
母一人子一人。
貧しくまではないが寂しかった。
虚しい虚しい毎日。
ワタシニキョウダイナドイナイ
ワタシニシマイナドイナイ
アリサは外国人。
少女はハーフ。
家は都会とは正反対の田舎で……
それから近くの親戚の家に身を寄せた。
少女は暗い青春時代を送った。
性格は内気で引っ込み思案。
日本語もカタコトで。
英語も難しいのはついて行けない。
学校にもなじめなかった。
休みがちになってしまった。
そんな少女ももう二十歳を過ぎた。
母との死別を乗り越え前を向く決心をする。
そんなある日一人の男性が突然訪ねてきた。
彼は使いだと言う。
焼香を済ませると一言。
「我が村へ一度来ていただきたい」
ぽかんと口を開けたままの少女。
「これは失礼。アリサさんは我が山湖村に住んでいました。
君も幼い頃一緒に生活をしていたんだよ。覚えてないかな? 」
少女は記憶を辿る。
ダメ……
思い出そうとするとなぜか火が火が。
一体なぜ火?
少女は思い出すことを諦めた。
「覚えてませんか? 」
首を振る。
「そうですか…… 自分…… いえ…… 」
ううん?
「一度村へお越しください。
あなたの母が愛した村。訪れる価値は十分にあると思いますよ。
これが行き方です。
もう間もなく儀式が行われます。ぜひその時にお越しください。
当主の岩男様が首を長くしてお待ちです。ぜひぜひお忘れずに。
それではこれで」
「イワオ? 」
「はいそうです。岩男様の使いです。
儀式の日にお越しください」
男は何度も念を押し帰って行った。
男は名を名乗らずに行ってしまった。
一体何者なのか?
帽子を取りもせず季節外れのコート。マスクもしたまま。
声も何だか変だった。
イワオ……
少女は決意した。
自分のルーツを探る旅へ。いわゆる自分探しの旅。
母の思い出の地山湖村へ。
少女は旅立つ。
村へ。
今住んでいる村よりもっともっと田舎で未開な土地へ足を踏み入れる。
少女の名をルーシーと言った。
現在。
「こちらA班。ルーシーが動き出しました」
ルーシーはつけられているとも知らずに闇夜を駆ける。
私たち一家を不幸に追いやった張本人は亡くなった。
まさかイワオが実の父なんてありえない。
私の中にイワオのDNAがあると思うだけで吐き気がする。
イワオは死んだ。
不幸な事故。そんなはずはない。殺されたのだ。
報いを受けたに違いない。
イワオ…… イワオ……
すべての元凶。イワオ。
ルーシーは東の館へ向かう。
同時刻。
老人はむくっと起き上がる。
寝間着から温かい格好で外へ。
孫を従え東の館へ。
「こちらE班。元村長以下二名動き始めました」
「了解。引き続き任に当たれ」
ザザザ……
「本部より。F班動きは? 」
「今のところ特にありま…… 」
人影が映し出された。
太郎・次郎も動きを見せた。
これで皆動き出した。
後は動向を見守るのみ。
おかしな行動を取った者を取り押さえる。
舞台は整った。ショーの始まりだ。
隣村の犬が何かを察知したのか遠吠えをしだす。
それに呼応するようにあちらこちらから遠吠えの音。
その音に混じり叫び声が上がる。
しかしすぐに止んでしまう。
犬たちは決して遠吠えを止めようとはしない。
まるで何かが起ころうとするのを予期しているかのように。
解決編<完>
謎解き編へ続く
少女は下を向き泣きじゃくっていた。
「泣くんじゃないみっともない」
皆喪服の中少女だけはドレス。
場違いとも思えるが彼女らしい。
葬式を無事済ませ自宅に戻る。
少女はなぜ不幸に見舞われたのか?
母の名をアリサと言った。
父の名は知らされていない。
アリサはシングルマザーで少女を一人で育てた。
大人の話では何人もの養女がいるらしい。
なぜ私が居ながら他に子供を? まったく理解できない。
子供心にも疑問がわく。
少女には母のみだ。
少女に兄弟が居たなど嘘だ。
少女は独りぼっち。
少女とアリサの親子二人暮らし。
ヨウシ?
ワカラナイ……
兄弟どこにイルネ?
姉サンはどこ?
妹は?
いつも想像していた。
いつも思い描いていた光景。
でも決して誰一人として姿は見せなかった。
少女は兄を求め、弟を切望し、姉の帰りを待ち、妹をねだった。
しかしどれも叶わなかった。
母一人子一人。
貧しくまではないが寂しかった。
虚しい虚しい毎日。
ワタシニキョウダイナドイナイ
ワタシニシマイナドイナイ
アリサは外国人。
少女はハーフ。
家は都会とは正反対の田舎で……
それから近くの親戚の家に身を寄せた。
少女は暗い青春時代を送った。
性格は内気で引っ込み思案。
日本語もカタコトで。
英語も難しいのはついて行けない。
学校にもなじめなかった。
休みがちになってしまった。
そんな少女ももう二十歳を過ぎた。
母との死別を乗り越え前を向く決心をする。
そんなある日一人の男性が突然訪ねてきた。
彼は使いだと言う。
焼香を済ませると一言。
「我が村へ一度来ていただきたい」
ぽかんと口を開けたままの少女。
「これは失礼。アリサさんは我が山湖村に住んでいました。
君も幼い頃一緒に生活をしていたんだよ。覚えてないかな? 」
少女は記憶を辿る。
ダメ……
思い出そうとするとなぜか火が火が。
一体なぜ火?
少女は思い出すことを諦めた。
「覚えてませんか? 」
首を振る。
「そうですか…… 自分…… いえ…… 」
ううん?
「一度村へお越しください。
あなたの母が愛した村。訪れる価値は十分にあると思いますよ。
これが行き方です。
もう間もなく儀式が行われます。ぜひその時にお越しください。
当主の岩男様が首を長くしてお待ちです。ぜひぜひお忘れずに。
それではこれで」
「イワオ? 」
「はいそうです。岩男様の使いです。
儀式の日にお越しください」
男は何度も念を押し帰って行った。
男は名を名乗らずに行ってしまった。
一体何者なのか?
帽子を取りもせず季節外れのコート。マスクもしたまま。
声も何だか変だった。
イワオ……
少女は決意した。
自分のルーツを探る旅へ。いわゆる自分探しの旅。
母の思い出の地山湖村へ。
少女は旅立つ。
村へ。
今住んでいる村よりもっともっと田舎で未開な土地へ足を踏み入れる。
少女の名をルーシーと言った。
現在。
「こちらA班。ルーシーが動き出しました」
ルーシーはつけられているとも知らずに闇夜を駆ける。
私たち一家を不幸に追いやった張本人は亡くなった。
まさかイワオが実の父なんてありえない。
私の中にイワオのDNAがあると思うだけで吐き気がする。
イワオは死んだ。
不幸な事故。そんなはずはない。殺されたのだ。
報いを受けたに違いない。
イワオ…… イワオ……
すべての元凶。イワオ。
ルーシーは東の館へ向かう。
同時刻。
老人はむくっと起き上がる。
寝間着から温かい格好で外へ。
孫を従え東の館へ。
「こちらE班。元村長以下二名動き始めました」
「了解。引き続き任に当たれ」
ザザザ……
「本部より。F班動きは? 」
「今のところ特にありま…… 」
人影が映し出された。
太郎・次郎も動きを見せた。
これで皆動き出した。
後は動向を見守るのみ。
おかしな行動を取った者を取り押さえる。
舞台は整った。ショーの始まりだ。
隣村の犬が何かを察知したのか遠吠えをしだす。
それに呼応するようにあちらこちらから遠吠えの音。
その音に混じり叫び声が上がる。
しかしすぐに止んでしまう。
犬たちは決して遠吠えを止めようとはしない。
まるで何かが起ころうとするのを予期しているかのように。
解決編<完>
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