76 / 109
サライちゃん出産と大家さんとの出会い
しおりを挟む
東の館にて老女によるイリュージョン。
大家さんは助手としては凄く優秀。しかしどうも勝手に動くところがあって困る。
若い助手も問題は起こすがこちらの想像の範囲内だから何とでもなる。
大家さんは想像の遥か先を行くからコントロールできない。
まあする気もあっちだってされる気もないだろうが。
自由にさせるのが一番。それで助けになるならいい。事件解決に導くならなおいい。
だが今回はどうなのか? 不安になる。
「イリュージョン」
大家は立ち上がると体を動かし再びサライちゃん人形と対峙する。
どうやらぎっくり腰にはなってないようだ。
ただこのまま任せていいものか。老人の冷や水にならなければいいが。
大家は人形を持ち上げようとはせず横にずらす。
たったそれだけのことで暗示に掛ったかのようにサライちゃんが動く。
うん? うん? 一体何が起きた?
まさしくイリュージョン。
パチパチ
パチパチ
何が何だか理解できずに反射的に手を叩く。
いつの間にかサライちゃんはこちらを睨んでいた。
僅かに動かしたことで起きた変化。門番の証言通り。
僅かとは言え男二人がかりでもびくともしなかったものをいかに動かしたのか。
ハンドパワー? 超常現象? ポルターガイスト?
秘密のベールに包まれた東の館はついにその正体を現した。
「もういいよ。出ておいで」
まずいこれはボケてしまったか?
それともサライちゃんに話しかけているとでも……
とにかく様子を見守るしかない。
ブツブツ独り言を続ける。
イリュージョンとは何だろう?
サライちゃんから人が? 人が? 人が?
出産シーンに立ち会う。
いやそんはずはない。目の錯覚に違いない。
目はいい方だが逆に見えてはいけないものが見えることもある。
いや本当に人がニョロニョロと。
人とも思えない動き。
うわああ。
つい大声を出してしまう。
「どうしたんですか先生。怯えないでくださいよ」
笑顔で近づく大家さんとサライちゃん?
「いやでも…… 人みたいなものが出て来たから」
まずいな地下牢が堪えたか。見てはいけないものが見える。
落ち着け。落ち着くんだ自分。
探偵だぞ。探偵がこの程度のことで我を失ってどうする。
ほらこれは大家さんの暗示にかかっただけだ。
イリュージョンとはそう言うこと。
「先生。先生」
「大丈夫。大丈夫。私は大丈夫。おかしくない」
「はあ…… 見えてるんですよね。別に何の問題もありませんが」
大家さんはあちらの世界の住人。
私を引き込もうとしている。
「悪霊退散。サライちゃんどっかに行ってくれ」
これはもはや自分の手には余る事象。
大家さんに全て任せよう。
大家さんは自信満々だ。すべての謎が解けたんだろう。
そう言えばあの時もそうだった。
大家さんと出会った日のことを思いだす。
コーヒーショップで優雅なひと時を過ごしていると突然話しかけられる。
「あんたそれでいいのかい? 」
随分失礼なおばさんだとその時は思った。でも違った。
すべてを見抜いていた。その眼で。探偵としての眼力で。
「あんた住むところを探してるね」
ずばっと言い当てる老女。
先月でマンションを追い出された。
ついでに始めたばかりの事務所も家賃が払えず整理することに。
今はその準備が終わり一息ついていたところ。
「ねえ、あんたこれかい? 」
何かを疑っている様子。
「すいません急ぐもので」
コーヒーを飲み干して出ようとするが。
アチチ……
まだ熱くひっくり返してしまう。
うわああ。
やってしまった……
結局服は濡れるは周りの女性客から笑われるはで踏んだり蹴ったり。
今日は厄日に違いない。
「ほら拭きな。まったく子供じゃないんだから」
お婆さんにまで心配される始末。もう完全に心が折れてしまう。
折角のお気に入りのお店がお婆さんの出現といつものドジで行きづらくなる。
「なあ、あんた」
店を出てもしつこく追いかけてくるお婆さん。
これ以上付きまとわれては迷惑。
まさかあの筋の人からの依頼を受けての嫌がらせ?
いやいや…… まさかね。
老女の追及をかわすため駆け出す。
続く
大家さんは助手としては凄く優秀。しかしどうも勝手に動くところがあって困る。
若い助手も問題は起こすがこちらの想像の範囲内だから何とでもなる。
大家さんは想像の遥か先を行くからコントロールできない。
まあする気もあっちだってされる気もないだろうが。
自由にさせるのが一番。それで助けになるならいい。事件解決に導くならなおいい。
だが今回はどうなのか? 不安になる。
「イリュージョン」
大家は立ち上がると体を動かし再びサライちゃん人形と対峙する。
どうやらぎっくり腰にはなってないようだ。
ただこのまま任せていいものか。老人の冷や水にならなければいいが。
大家は人形を持ち上げようとはせず横にずらす。
たったそれだけのことで暗示に掛ったかのようにサライちゃんが動く。
うん? うん? 一体何が起きた?
まさしくイリュージョン。
パチパチ
パチパチ
何が何だか理解できずに反射的に手を叩く。
いつの間にかサライちゃんはこちらを睨んでいた。
僅かに動かしたことで起きた変化。門番の証言通り。
僅かとは言え男二人がかりでもびくともしなかったものをいかに動かしたのか。
ハンドパワー? 超常現象? ポルターガイスト?
秘密のベールに包まれた東の館はついにその正体を現した。
「もういいよ。出ておいで」
まずいこれはボケてしまったか?
それともサライちゃんに話しかけているとでも……
とにかく様子を見守るしかない。
ブツブツ独り言を続ける。
イリュージョンとは何だろう?
サライちゃんから人が? 人が? 人が?
出産シーンに立ち会う。
いやそんはずはない。目の錯覚に違いない。
目はいい方だが逆に見えてはいけないものが見えることもある。
いや本当に人がニョロニョロと。
人とも思えない動き。
うわああ。
つい大声を出してしまう。
「どうしたんですか先生。怯えないでくださいよ」
笑顔で近づく大家さんとサライちゃん?
「いやでも…… 人みたいなものが出て来たから」
まずいな地下牢が堪えたか。見てはいけないものが見える。
落ち着け。落ち着くんだ自分。
探偵だぞ。探偵がこの程度のことで我を失ってどうする。
ほらこれは大家さんの暗示にかかっただけだ。
イリュージョンとはそう言うこと。
「先生。先生」
「大丈夫。大丈夫。私は大丈夫。おかしくない」
「はあ…… 見えてるんですよね。別に何の問題もありませんが」
大家さんはあちらの世界の住人。
私を引き込もうとしている。
「悪霊退散。サライちゃんどっかに行ってくれ」
これはもはや自分の手には余る事象。
大家さんに全て任せよう。
大家さんは自信満々だ。すべての謎が解けたんだろう。
そう言えばあの時もそうだった。
大家さんと出会った日のことを思いだす。
コーヒーショップで優雅なひと時を過ごしていると突然話しかけられる。
「あんたそれでいいのかい? 」
随分失礼なおばさんだとその時は思った。でも違った。
すべてを見抜いていた。その眼で。探偵としての眼力で。
「あんた住むところを探してるね」
ずばっと言い当てる老女。
先月でマンションを追い出された。
ついでに始めたばかりの事務所も家賃が払えず整理することに。
今はその準備が終わり一息ついていたところ。
「ねえ、あんたこれかい? 」
何かを疑っている様子。
「すいません急ぐもので」
コーヒーを飲み干して出ようとするが。
アチチ……
まだ熱くひっくり返してしまう。
うわああ。
やってしまった……
結局服は濡れるは周りの女性客から笑われるはで踏んだり蹴ったり。
今日は厄日に違いない。
「ほら拭きな。まったく子供じゃないんだから」
お婆さんにまで心配される始末。もう完全に心が折れてしまう。
折角のお気に入りのお店がお婆さんの出現といつものドジで行きづらくなる。
「なあ、あんた」
店を出てもしつこく追いかけてくるお婆さん。
これ以上付きまとわれては迷惑。
まさかあの筋の人からの依頼を受けての嫌がらせ?
いやいや…… まさかね。
老女の追及をかわすため駆け出す。
続く
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/mystery.png?id=41ccf9169edbe4e853c8)
それは奇妙な町でした
ねこしゃけ日和
ミステリー
売れない作家である有馬四迷は新作を目新しさが足りないと言われ、ボツにされた。
バイト先のオーナーであるアメリカ人のルドリックさんにそのことを告げるとちょうどいい町があると教えられた。
猫神町は誰もがねこを敬う奇妙な町だった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/essay.png?id=5ada788558fa89228aea)
舞姫【中編】
友秋
ミステリー
天涯孤独の少女は、夜の歓楽街で二人の男に拾われた。
三人の運命を変えた過去の事故と事件。
そこには、三人を繋ぐ思いもかけない縁(えにし)が隠れていた。
剣崎星児
29歳。故郷を大火の家族も何もかもを失い、夜の街で強く生きてきた。
兵藤保
28歳。星児の幼馴染。同じく、実姉以外の家族を失った。明晰な頭脳を持って星児の抱く野望と復讐の計画をサポートしてきた。
津田みちる
20歳。両親を事故で亡くし孤児となり、夜の街を彷徨っていた16歳の時、星児と保に拾われた。ストリップダンサーとしてのデビューを控える。
桑名麗子
保の姉。星児の彼女で、ストリップ劇場香蘭の元ダンサー。みちるの師匠。
亀岡
みちるの両親が亡くなった事故の事を調べている刑事。
津田(郡司)武
星児と保が追う謎多き男。
切り札にするつもりで拾った少女は、彼らにとっての急所となる。
大人になった少女の背中には、羽根が生える。
与り知らないところで生まれた禍根の渦に三人は巻き込まれていく。
彼らの行く手に待つものは。
誘発
井浦
ミステリー
「おれはお前がいなくなって、運命が変わることに期待していたんだと思う」
同じサッカークラブに所属する慧と佑真。二人は良きライバルであり親友だったが……
関係者それぞれの視点から『子どもの心の闇』を描いた短編ミステリー。
SP警護と強気な華【完】
氷萌
ミステリー
『遺産10億の相続は
20歳の成人を迎えた孫娘”冬月カトレア”へ譲り渡す』
祖父の遺した遺書が波乱を呼び
美しい媛は欲に塗れた大人達から
大金を賭けて命を狙われる―――
彼女を護るは
たった1人のボディガード
金持ち強気な美人媛
冬月カトレア(20)-Katorea Fuyuduki-
×××
性悪専属護衛SP
柊ナツメ(27)-Nathume Hiragi-
過去と現在
複雑に絡み合う人間関係
金か仕事か
それとも愛か―――
***注意事項***
警察SPが民間人の護衛をする事は
基本的にはあり得ません。
ですがストーリー上、必要とする為
別物として捉えて頂ければ幸いです。
様々な意見はあるとは思いますが
今後の展開で明らかになりますので
お付き合いの程、宜しくお願い致します。
伏線回収の夏
影山姫子
ミステリー
ある年の夏。俺は15年ぶりにT県N市にある古い屋敷を訪れた。某大学の芸術学部でクラスメイトだった岡滝利奈の招きだった。かつての同級生の不審死。消えた犯人。屋敷のアトリエにナイフで刻まれた無数のXの傷。利奈はそのなぞを、ミステリー作家であるこの俺に推理してほしいというのだ。俺、利奈、桐山優也、十文字省吾、新山亜沙美、須藤真利亜の六人は、大学時代にこの屋敷で共に芸術の創作に打ち込んだ仲間だった。グループの中に犯人はいるのか? 脳裏によみがえる青春時代の熱気、裏切り、そして別れ。懐かしくも苦い思い出をたどりながら事件の真相に近づく俺に、衝撃のラストが待ち受けていた。
《あなたはすべての伏線を回収することができますか?》
呪鬼 花月風水~月の陽~
暁の空
ミステリー
捜査一課の刑事、望月 千桜《もちづき ちはる》は雨の中、誰かを追いかけていた。誰かを追いかけているのかも思い出せない⋯。路地に追い詰めたそいつの頭には・・・角があった?!
捜査一課のチャラい刑事と、巫女の姿をした探偵の摩訶不思議なこの世界の「陰《やみ》」の物語。
パラダイス・ロスト
真波馨
ミステリー
架空都市K県でスーツケースに詰められた男の遺体が発見される。殺された男は、県警公安課のエスだった――K県警公安第三課に所属する公安警察官・新宮時也を主人公とした警察小説の第一作目。
※旧作『パラダイス・ロスト』を加筆修正した作品です。大幅な内容の変更はなく、一部設定が変更されています。旧作版は〈小説家になろう〉〈カクヨム〉にのみ掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる