『第一村人』殺人事件

二廻歩

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重なり合う影と影 メモに隠された真実

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<間奏>

「本当に良いの? 」

そんな目で見ないでくれ。決心が揺らぐ。

「後悔しない? 」

馬鹿な。もはやそんな段階にない。分かってるくせに。なぜ惑わせる?

気持ちが変わるはずない。これだけ一緒に居てまだ分からない君じゃないだろ。

「後悔なんかするものか」

「信じていいんだよね? 」

「もちろん」

済まない。君を苦しめたくなどない。分かって欲しい。

「私はどうすればいい? 」

不安なのは分かるが俺を頼るな。自分で考えてくれ。

「なーに。少しばかり協力してくれるだけでいい」

指示に従っていれば成功間違いなし。大丈夫。恐れる必要などない。

「不安なの。不安で仕方がない」

分かっていたさ。自分…… いや俺だってそうだ。

「大丈夫だって。すべて上手く行く」

計画通りに進めば問題ない。

「予定通り? 」

「ああ今のところな」

「成功する? 」

「ああ百パーセント成功する」

これだけ言えば大丈夫かな。

「でも不安。やっぱり不安なの」

俺は君を利用するよ。君だって俺を利用すればいい。

「しょうがないなあ」

震える体を引き寄せる。

そして熱を失った唇にもう一度。

「嫌。私は姉さんたちとは違うの。お願い一緒にしないで」

軽蔑の目。

だがそれも承知の上だ。

「分かってるさ」

俺を求めているのは分かっている。

嫌がる素振りを見せる少女の唇を強引に奪う。


【メモ】

疑わしいのはあの人。だが他の容疑者も絶対違うとは言い切れない。

もし犯人が一人ではなく複数となれば途端に皆怪しくなる。


<太郎次郎兄弟>

存在感は薄い。

縁談をきっかけに一族と深く関わる。

動機は十分。

東の館の隣に偶然住んでいる。

家からよそ者を警戒。不審な動きを繰り返す兄弟。

もし秘密の抜け穴があるとしたら彼らのところに繋がっている可能性もある。

ただ元村長の話では違うらしい。


<元村長とその孫>

一族との関係は最悪。

特に当主に嫌われてしまい先の村長選で敵同士に。

動機は十分。

二人で協力すれば不可能ではない。

ただ一族郎党抹殺する程の強い恨みは見られない。

また元村長としての苦悩も見られる。

告白が真実ならもうすぐにでも解決するだろう。


<ルーシー>

片言の日本語で外国人観光客を装っているがただ者ではない。

岩男氏の愛人の子。アリサさんの娘。

一族の莫大な資産が目的の可能性あり。

もし仮に娘たちが亡くなった場合、一番得をするのは間違いなくルーシー。

アリバイもあってないようなもの。

彼女が母からどの程度知らされていたかは不明。

しかし自ら調査を行い過去の仕打ちに恨みを募らせた可能性もある。


<コウ>

隣村からこの儀式の為に参加した青年。

殺害動機不明。

亡くなった父の代わりに渡しの仕事。

第二の消失の第一発見者で疑わしいところも。

現在地下牢。

評判は上々。同情する声多数。

犯人には程遠くただの数合わせに近い。


<門番>

名もなき者。

第一消失の時に門番として疑われる。

村長の判断で現在は地下牢。

ルックスから姉妹に相手にされず逆恨みによる犯行か。

彼がたまたま東の館の門番をやったのかそれとも志願したのかも重要。

態度は横柄。疑われやすい。可能性はある。

ただそれではつまらないとの意見が村の多数を占める。


<山湖村の住人>

一族に対する積年の恨みが爆発。結託して一族の抹殺を企てる。

しかし計画の途中でよそ者や警察の邪魔が入り断念。


<当主の犯行>

実はこれが一番しっくりくる。

血の宴により一族に最悪の結末が。

当主自ら娘たちを手にかけその隠蔽。

村長たちを使って儀式を続行。

神隠しで消されたかのように工作。

当主はその罪の意識に耐えられなくなり湖に身を投げる。


<助手君>

第一村人の正体はまさか…… 意外な犯人像。

挑戦状を用意したのは彼で助手の立場を利用し先生をも利用して犯行を行う。

ルックスも良く伝統的な村の者の特徴にも合致。

我々を欺きていた。


<先生>

何らかの理由で事件を起こす。

村人の協力が不可欠。

大がかりなイリュージョン。

助手の力を見極めるためのテスト?

その場合は三姉妹は無事であろう。

ただ当主は遺体で見つかる矛盾。


<三女・三貴>

何だかんだ言って一番怪しいのが三貴。

姉たちを疎ましく思っていた。

一連の犯行には協力者が不可欠。

一族を恨んでいた?

財産の独り占め。

儀式で決定的な何かが起きた?


*シークレットノートより。


                 続く
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