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御触書 ちょっと昔のあの頃
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再び起きた消失。
二度ある事は三度あると言う。
もはや一刻の猶予もない。
何としても第三の消失だけは食い止めねばならない。
バタバタしたこんな時期に泊めてもらい感謝しかない。
礼を述べる。
「ああ、気をつけるんだよ。早くその先生に会えるといいね。
私も忙しいから後は任せたよ」
一宿一飯の恩義に報いることもできずに別れる事に。
任せるとは事件を解決せよと暗に要求しているのだろう。
私は一応助手なんですけど。
先生のお手伝いができるだけで満足。
先生が今回の一連の事件を解決するところを陰ながら見守っていたい。
そう思っていた。
だがもはやその時にあらず。
もし第三の消失が起きるなら全力で止めるのが元探偵としての義務。
探偵を引退したとは言えまだ腕は衰えていない。うんいいね。昔の血が騒ぐ。
「あの最後に教えてください。抜け道の類は一切ないんですか? 」
「うーん。それは分からない。いや少なくても我々村人には伝わってこないよ。
ただ関係があるとしたらアリサさんかな。詳しくは村長か元村長が知ってるだろう。
直接会って聞いてみるといいよ」
調査開始。
まず長女失踪から調べることに。
村中がパニックになっている。なぜ再び消失が起きたのか誰にも分からない。
村人たちは疑心暗鬼になっている。
「お助け」
「サライちゃんの呪いよ」
「アリサさんよ。アリサさんに決まってる」
皆それぞれ好き勝手に推理を始め収拾がつかなくなっている。
危険な兆候。
村全体が異常な熱気に包まれている。
誰が犯人だとか誰が次に殺されるだとか根拠もなくただ勝手に推理。
推理と言う名の当てずっぽう。
御触書。
上からお達しが下る。
村人全員に事件解決まで厳しい外出禁止令が出された。
特に夜中の一人歩きは絶対にしないようにとのお達し。
「おいそこの婆さん。ちょっといいか」
親切で物静かと噂の駐在とはえらく違う尊大な態度の警察官の二人組と遭遇。
「ちょうどよかった。あの…… 」
さっそく話を聞こうとした矢先。
「あの張り紙が見えねえのか。いいか。この事件が解決するまで一歩も外を出歩くな。いいな分かったな? 」
話も聞かずに行ってしまった。
あーあ。
ただ聞きそびれただけでなく刑事への不信感が募る。
まあそれだけ真剣だとも言える。もう少し何とかならない?
張り紙には村長直々のお墨付きがある。
これでは村人は従わざるを得ない。それにしても誰が好き好んで出歩くと言うのか。
一人歩きなどするはずがない。
ただ口ではいくら分かっていても守らない者もわずかばかり存在する。
それらがサライちゃんの呪いと称して消されていくのだが今回はそれも阻止。
お触れを守らせることで惨事を繰り返させないと強い意思を感じる。
お触れなど少々大げさにも思えるがこれも村人を守るため。
早く事件が解決して元の生活に戻れればいい。
本当の意味での元の生活を取り戻す。
あの頃を。あの頃を。あの頃を。
失われたあの頃を。
それが村の総意。いやこの小さな国の総意。
「ほら婆さん。ちょろちょろと歩いてないで早く帰りな。
悪いが命の保障はできないからな」
二人組が戻ってきた。
「ご心配なく。私は観光客ですので。ああ、ちょうど良かった。
あの建物に入りたいんですが一緒に来ていただけませんか」
「あのなあ。あそこは最初の消失が起きた館だろ。常識で考えてみろ。
中に入れる訳がないだろう。非常時の今も。通常でもだ。
悪いことは言わない。早く帰りな」
そうは言われても関所は閉じられている。どうやって帰ればいいやら。
途方に暮れる。
「頼むよ刑事さん」
「うるさい。捜査の邪魔だからどっかに行っちまえ」
「まあまあ。落ち着いて。落ち着いて」
刑事二人組。
先輩刑事が邪険に扱う。もう一人が遠慮がちに宥める。
「それで婆さん。ここには観光で? 」
失礼な態度を取る感じの悪い刑事。
ベテランで頭も切れるのだろうが常識がない。
年寄りだと馬鹿にする態度にイライラする。少しは敬ったらどうだい。
「あんたみたいな若造じゃ話にならない。上司を呼んできな」
「何だと」
刑事が凄む。
民間人相手に脅しをかけるなんてあってはならない。
特に私のようなおばあちゃん相手に大人げない。
これが今の刑事の質かと思うと情けない。
押し問答を続ける。
しかし刑事は折れてくれない。
こっちだって折れるもんか。もはや意地の張り合いだ。
「いいから入れな。ガキの遣いじゃないよ。先生の代わりに調べてるんだ」
「誰だそれ? 」
「先生と言ったら先生だろ。心配で心配で」
「はあ? 何を言ってやがる。一応本部に確認を取ってやるがホラだったらただじゃおかないぞ」
駐在所に臨時本部を設置。村の者が引っ切り無しに入ってくるので大忙し。
数人が警察官。それ以外は村の者。
一人ずつでは一生終わりそうにないのでまとめて取り調べを行う。
村の若者を中心に怪しい奴を片っ端から調べる。
だが手掛かりは今のところなし。
続く
二度ある事は三度あると言う。
もはや一刻の猶予もない。
何としても第三の消失だけは食い止めねばならない。
バタバタしたこんな時期に泊めてもらい感謝しかない。
礼を述べる。
「ああ、気をつけるんだよ。早くその先生に会えるといいね。
私も忙しいから後は任せたよ」
一宿一飯の恩義に報いることもできずに別れる事に。
任せるとは事件を解決せよと暗に要求しているのだろう。
私は一応助手なんですけど。
先生のお手伝いができるだけで満足。
先生が今回の一連の事件を解決するところを陰ながら見守っていたい。
そう思っていた。
だがもはやその時にあらず。
もし第三の消失が起きるなら全力で止めるのが元探偵としての義務。
探偵を引退したとは言えまだ腕は衰えていない。うんいいね。昔の血が騒ぐ。
「あの最後に教えてください。抜け道の類は一切ないんですか? 」
「うーん。それは分からない。いや少なくても我々村人には伝わってこないよ。
ただ関係があるとしたらアリサさんかな。詳しくは村長か元村長が知ってるだろう。
直接会って聞いてみるといいよ」
調査開始。
まず長女失踪から調べることに。
村中がパニックになっている。なぜ再び消失が起きたのか誰にも分からない。
村人たちは疑心暗鬼になっている。
「お助け」
「サライちゃんの呪いよ」
「アリサさんよ。アリサさんに決まってる」
皆それぞれ好き勝手に推理を始め収拾がつかなくなっている。
危険な兆候。
村全体が異常な熱気に包まれている。
誰が犯人だとか誰が次に殺されるだとか根拠もなくただ勝手に推理。
推理と言う名の当てずっぽう。
御触書。
上からお達しが下る。
村人全員に事件解決まで厳しい外出禁止令が出された。
特に夜中の一人歩きは絶対にしないようにとのお達し。
「おいそこの婆さん。ちょっといいか」
親切で物静かと噂の駐在とはえらく違う尊大な態度の警察官の二人組と遭遇。
「ちょうどよかった。あの…… 」
さっそく話を聞こうとした矢先。
「あの張り紙が見えねえのか。いいか。この事件が解決するまで一歩も外を出歩くな。いいな分かったな? 」
話も聞かずに行ってしまった。
あーあ。
ただ聞きそびれただけでなく刑事への不信感が募る。
まあそれだけ真剣だとも言える。もう少し何とかならない?
張り紙には村長直々のお墨付きがある。
これでは村人は従わざるを得ない。それにしても誰が好き好んで出歩くと言うのか。
一人歩きなどするはずがない。
ただ口ではいくら分かっていても守らない者もわずかばかり存在する。
それらがサライちゃんの呪いと称して消されていくのだが今回はそれも阻止。
お触れを守らせることで惨事を繰り返させないと強い意思を感じる。
お触れなど少々大げさにも思えるがこれも村人を守るため。
早く事件が解決して元の生活に戻れればいい。
本当の意味での元の生活を取り戻す。
あの頃を。あの頃を。あの頃を。
失われたあの頃を。
それが村の総意。いやこの小さな国の総意。
「ほら婆さん。ちょろちょろと歩いてないで早く帰りな。
悪いが命の保障はできないからな」
二人組が戻ってきた。
「ご心配なく。私は観光客ですので。ああ、ちょうど良かった。
あの建物に入りたいんですが一緒に来ていただけませんか」
「あのなあ。あそこは最初の消失が起きた館だろ。常識で考えてみろ。
中に入れる訳がないだろう。非常時の今も。通常でもだ。
悪いことは言わない。早く帰りな」
そうは言われても関所は閉じられている。どうやって帰ればいいやら。
途方に暮れる。
「頼むよ刑事さん」
「うるさい。捜査の邪魔だからどっかに行っちまえ」
「まあまあ。落ち着いて。落ち着いて」
刑事二人組。
先輩刑事が邪険に扱う。もう一人が遠慮がちに宥める。
「それで婆さん。ここには観光で? 」
失礼な態度を取る感じの悪い刑事。
ベテランで頭も切れるのだろうが常識がない。
年寄りだと馬鹿にする態度にイライラする。少しは敬ったらどうだい。
「あんたみたいな若造じゃ話にならない。上司を呼んできな」
「何だと」
刑事が凄む。
民間人相手に脅しをかけるなんてあってはならない。
特に私のようなおばあちゃん相手に大人げない。
これが今の刑事の質かと思うと情けない。
押し問答を続ける。
しかし刑事は折れてくれない。
こっちだって折れるもんか。もはや意地の張り合いだ。
「いいから入れな。ガキの遣いじゃないよ。先生の代わりに調べてるんだ」
「誰だそれ? 」
「先生と言ったら先生だろ。心配で心配で」
「はあ? 何を言ってやがる。一応本部に確認を取ってやるがホラだったらただじゃおかないぞ」
駐在所に臨時本部を設置。村の者が引っ切り無しに入ってくるので大忙し。
数人が警察官。それ以外は村の者。
一人ずつでは一生終わりそうにないのでまとめて取り調べを行う。
村の若者を中心に怪しい奴を片っ端から調べる。
だが手掛かりは今のところなし。
続く
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