『第一村人』殺人事件

二廻歩

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呪われた村

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もう三月だと言うのにまだまだ寒い。

特に夜になる足元が冷えてくる。

特別冷え性という訳でもないが体に堪える。

関節も痛み出した。

「では三女が今回の一連の事件の犯人だと? 」

「何を言ってるんだい。岩男氏は自殺さ。長女はそのうちフラッと帰ってくるよ。

三貴さんを疑っているようだけど絶対に一人では動かないタイプ。

もしこれが連続殺人事件だとしても彼女一人の犯行とは思えないね」

そこまで言い切るならば…… だが三女が裏で糸を引いてる恐れもある。

「手助けが必要? 」

「ああ。姉たちをたぶらかすだけの度胸とルックスを持った男が必要さ」

「それからそれから」

先を促す。

気持ちよく話す彼女をもっともっとおだてて知っていることをすべて吐いてもらう。


「あらま。私何を言ってるんだろう。ついつい喋り過ぎてしまったようだね。

もうこれくらいでいいだろう? 寝よう」

「待ってもう少しだけ。あなたは長女が東の館に入る姿を見ましたか? 」

話が脱線していなければこの質問をするつもりだった。

「それはもちろん。遠くの方からだから歩いている後姿しか見えなかったがね。

前に居た者は見たはずだよ。本当に美しいって自慢してたから。

そうなんだよ。長女は物凄い美人でね着飾ればそれはもう右に出るものはいないよ。

私も昔はそうだったからね」

「はあ、そうですか…… 」

つまらない冗談はさておき美人でオーラもあればさすがに見間違いはないだろう。

「あとは上からの物言いと男癖を直せば次期当主として村の皆から慕われるだろう」

長女性格に難あり。改善の兆し見られず。


「少し変な質問していいですか? 」

「変な質問? 下世話なのは嫌いだよ」

もう十分している気もするがまあここは言う通りにしよう。

「違います。東の館には抜け道なんかありませんよね? 」

「抜け道? あああそこから出入りしていたと。

それで騒ぎになって帰るに帰れなくなったって話かい? 」

さすがについて行けないのか布団をかぶって反対を向いた。

「違うんですよ。隣に繋がる道があればいいのになあっと」

もはや聞いてないので独り言になってしまう。

「面白いと思いませんか? 」

女は反応しない。本当にもう寝てしまったのか。

今夜は二女の二姫が儀式を終え西の館から姿を現す。

これ以上何事も起こらなければいいのだが。連続失踪事件など誰も望んでいない。

気のせいか外が騒がしくなってきた気がする。

まさか…… 良からぬ事態が発生した? 

だがもう眠い。これ以上は起きていられない。

おやすみなさい。


翌朝。

外が騒がしい。

爆音が村を襲う。どうやらヘリらしい。

話では警察のヘリが何台も押し寄せてきたのだとか。

村に異変が起こったのは間違いない。

まさか長女に続いて二女まで失踪した?

とにかく話を聞く。その上で先生のところへ。


「何だってそれは本当かい? 」

「そうさ。とうとう現実になっちまった。怖いねえ」

近所の者が詳細を報せに来た。今外で話し合っている。

随分と話が長引いている。

お喋りは十分以上。気持ちがばかりが先行して要領を得ない。

それでも一つだけはっきりしているのは二女が失踪したということ。

長女一葉に続き二女二姫までが姿を消した。

もはやこの儀式は呪われている。

いや山湖村事態が何らかの悪霊に取りつかれているのかもしれない。


話は警察の悪口に移った。

「隣村から参加してるコウってのがいるだろ」

「ああ。あの子かいそれは覚えてるよ。渡しだったけかな」

「そのコウが捕まっちまった。今回の失踪事件に深く関わってると駐在と村長が」

「それは確かに怪しいね。でもその子には動機が無いだろ。

この村の者でもないのになぜ? 動機が思い当たらないが」

「そう言われても。とにかく駐在じゃ手に負えないから警察が乗り出してきたとさ」

「警察? 」

「ああ県警だ。ヘリで乗りつけやがって。

ここをどこだと思ってるのかね。うるさくて敵わない」

ついに警察まで動き出し本格的に捜査が始まる。

「二女探しで村全体を捜索するから協力してやって。

駐在からの頼みだから断れなくてそれじゃあまた」

一陣の風のように通り過ぎた情報の嵐。


先ほどからプロペラの回転音と騒々しい人の動き。混乱が続く。

まさか本当に二女までが失踪するとは。これはゆっくりなどしてられない。

何としても第三の失踪だけは食い止めねばならない。

                続く
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