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聞き込みは探偵の基本 噂話は蜜の味
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まずは西湖村で入念な聞き込みを行う。
村は隣村の儀式の話題で持ち切り。
詳しく話を聞くなら話しかけずにただ静かにしているのが一番。
そうすれば勝手にベラベラとしゃべりだす。
隣村で交流もあり昔同じ村だったこともあって詳しい。
「ちょっと奥さん聞いて下さらない? 」
「長女が…… 」
「ねえ。そうでしょう」
「うんうん。私もそう思う」
「儀式はね…… 」
真偽不明の噂話。面白おかしく誇張しだす。
地元だろうとそうでなかろうともはや誰であろうと構わない。
聞いて欲しいのだ。今さっき仕入れたネタを披露したくて仕方がないのだ。
だからそれとなく耳を立てハイハイと返事しながら情報を精査していく。
「他にはありませんか? 」
「それからそれから? 」
具体的に話を聞いて行く。
「儀式の夜に長女の一葉さんが死亡? 」
「違う。違う。いなくなっただけよ。誰そんなこと言ったの? 」
「もう大袈裟なんだから皆」
「でも心配。心配よね」
「本当、本当」
昼も過ぎると儀式の話も収束に向かう。
「へい鶏ソバお待ち」
昼、特産のブランド鶏を使ったそばを食す。
「うん、あっさり。でも味がしっかりしてるから何杯でも行けるね」
「そうかいお替りはサービス。腹いっぱい食べて行ってね」
大将と奥さんは上機嫌。
特に最近観光客からの評判が良くリピーターが何度も足を運ぶので大盛況だとか。
ただこの辺りでそば屋が増えてしまい困ってるとのこと。
「そんなに凄いことに? 」
「ああ。と言っても県内の者がほとんどさ。もうちょっとうまく宣伝してくれりゃあここももっともっと発展していくだろうな」
「何を言ってんだい。そんなに来られちゃ迷惑だよ。
今だって大変なのに。ほらボケっとしてないで早く戻りな」
「大変ですね。ホホホ…… 」
「ええ朝から晩まで。年中無休にしちまうもんですからもう本当に忙しい。忙しい」
テーブルを片付けデザートを持ってくる。
ピークは過ぎ店内には奥に見える程度。
昼休憩になる。
「どこから来たの? 」
「東の方から参りました」
「へえ。山湖村に行くって。今は儀式で何かと騒がしいが普段は長閑で何もない。
つまらないところさ。行く人の気が知れないね」
「何か知りませんか? 」
「隣村を支配している爺は本当にどうしようもない奴だったよ。
だったってのは昨日死体が上がったからさ」
評判はすこぶる悪い。
相槌を打ち先を促す。
「ずいぶん前だったから詳しく覚えちゃいないが奴が若い頃。
そう言っても結婚した後だからまあそれなりにね。それはもう酷いものだったよ。
ここ最近落ち着いたが女をとっかえひっかえさ。観光客にまで手を出す鬼畜ぶり。
日本人に限らず海外の女にまで入れあげてね。後始末する方は大変だ。
無理矢理がほとんどだったから恨みは相当だよ。私だってね…… 」
「お前は関係ねえだろ」
大将が強く否定する。
「そう。そう言うこと。あの男の選んだ娘らはそらあべっぴんさんでね。
私には生憎縁の無い話さ」
大将は大笑い。奥さんはむくれる。
このまま放っておけば喧嘩に発展しそうな雰囲気。ここは退散するが吉。
「ありがとうございます。助かりました」
巻き込まれては面倒。店を出る。
山湖村方面へ。
一族。特に長女の一葉さんについて話を聞く。
「長女? ああ、本当に性格の悪い嫌な女でさ。
何様のつもりだと思ってるのよまったく」
「そう悪く言うでない」
「うるさいわね。真実なんだからしょうがないでしょう」
「そうよそうよ」
ここでも雲行きが怪しい。
姉妹とその父がいつの間にか口論になる始末。
「まあきれいだけどあの性格じゃあ男は逃げていくに決まってるでしょう」
「止さぬか。悪口などみっともない。それに…… 」
「うるさいわね。悪口じゃなくて人隣りを教えてあげてるんでしょう。もう」
「まったく困った娘達で。ははは…… 」
「うるさいって言ってるでしょう」
「そうよ。そうよ。立派な娘ならこんな悪い噂立つ訳ないじゃない。
本当ちょっと美人だからって肩もつんだから」
「しかし…… いやそのな…… 」
情けないことに反論できずにいる。
見た目の美しさにコロッと騙される単純な男たち。
それに対して裏の裏まで見抜く嫉妬深い女たち。
これが山湖村も含めた男女間の相違。
山湖村ではより近いためより真実に迫ることになるだろう。
続く
村は隣村の儀式の話題で持ち切り。
詳しく話を聞くなら話しかけずにただ静かにしているのが一番。
そうすれば勝手にベラベラとしゃべりだす。
隣村で交流もあり昔同じ村だったこともあって詳しい。
「ちょっと奥さん聞いて下さらない? 」
「長女が…… 」
「ねえ。そうでしょう」
「うんうん。私もそう思う」
「儀式はね…… 」
真偽不明の噂話。面白おかしく誇張しだす。
地元だろうとそうでなかろうともはや誰であろうと構わない。
聞いて欲しいのだ。今さっき仕入れたネタを披露したくて仕方がないのだ。
だからそれとなく耳を立てハイハイと返事しながら情報を精査していく。
「他にはありませんか? 」
「それからそれから? 」
具体的に話を聞いて行く。
「儀式の夜に長女の一葉さんが死亡? 」
「違う。違う。いなくなっただけよ。誰そんなこと言ったの? 」
「もう大袈裟なんだから皆」
「でも心配。心配よね」
「本当、本当」
昼も過ぎると儀式の話も収束に向かう。
「へい鶏ソバお待ち」
昼、特産のブランド鶏を使ったそばを食す。
「うん、あっさり。でも味がしっかりしてるから何杯でも行けるね」
「そうかいお替りはサービス。腹いっぱい食べて行ってね」
大将と奥さんは上機嫌。
特に最近観光客からの評判が良くリピーターが何度も足を運ぶので大盛況だとか。
ただこの辺りでそば屋が増えてしまい困ってるとのこと。
「そんなに凄いことに? 」
「ああ。と言っても県内の者がほとんどさ。もうちょっとうまく宣伝してくれりゃあここももっともっと発展していくだろうな」
「何を言ってんだい。そんなに来られちゃ迷惑だよ。
今だって大変なのに。ほらボケっとしてないで早く戻りな」
「大変ですね。ホホホ…… 」
「ええ朝から晩まで。年中無休にしちまうもんですからもう本当に忙しい。忙しい」
テーブルを片付けデザートを持ってくる。
ピークは過ぎ店内には奥に見える程度。
昼休憩になる。
「どこから来たの? 」
「東の方から参りました」
「へえ。山湖村に行くって。今は儀式で何かと騒がしいが普段は長閑で何もない。
つまらないところさ。行く人の気が知れないね」
「何か知りませんか? 」
「隣村を支配している爺は本当にどうしようもない奴だったよ。
だったってのは昨日死体が上がったからさ」
評判はすこぶる悪い。
相槌を打ち先を促す。
「ずいぶん前だったから詳しく覚えちゃいないが奴が若い頃。
そう言っても結婚した後だからまあそれなりにね。それはもう酷いものだったよ。
ここ最近落ち着いたが女をとっかえひっかえさ。観光客にまで手を出す鬼畜ぶり。
日本人に限らず海外の女にまで入れあげてね。後始末する方は大変だ。
無理矢理がほとんどだったから恨みは相当だよ。私だってね…… 」
「お前は関係ねえだろ」
大将が強く否定する。
「そう。そう言うこと。あの男の選んだ娘らはそらあべっぴんさんでね。
私には生憎縁の無い話さ」
大将は大笑い。奥さんはむくれる。
このまま放っておけば喧嘩に発展しそうな雰囲気。ここは退散するが吉。
「ありがとうございます。助かりました」
巻き込まれては面倒。店を出る。
山湖村方面へ。
一族。特に長女の一葉さんについて話を聞く。
「長女? ああ、本当に性格の悪い嫌な女でさ。
何様のつもりだと思ってるのよまったく」
「そう悪く言うでない」
「うるさいわね。真実なんだからしょうがないでしょう」
「そうよそうよ」
ここでも雲行きが怪しい。
姉妹とその父がいつの間にか口論になる始末。
「まあきれいだけどあの性格じゃあ男は逃げていくに決まってるでしょう」
「止さぬか。悪口などみっともない。それに…… 」
「うるさいわね。悪口じゃなくて人隣りを教えてあげてるんでしょう。もう」
「まったく困った娘達で。ははは…… 」
「うるさいって言ってるでしょう」
「そうよ。そうよ。立派な娘ならこんな悪い噂立つ訳ないじゃない。
本当ちょっと美人だからって肩もつんだから」
「しかし…… いやそのな…… 」
情けないことに反論できずにいる。
見た目の美しさにコロッと騙される単純な男たち。
それに対して裏の裏まで見抜く嫉妬深い女たち。
これが山湖村も含めた男女間の相違。
山湖村ではより近いためより真実に迫ることになるだろう。
続く
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