『第一村人』殺人事件

二廻歩

文字の大きさ
上 下
48 / 109

夢章 事件編完結 

しおりを挟む
それにしてもここはどこだろう? いきなりだったからな。

たぶん山湖村なのだろうな。助手とコウ君の話を聞いてれば分かる。

問題はなぜ我々は追い駆けられているかだ?

別に何もしてないのだ。逃げなくたっていい気がする。

皆殺しの件だってコウ君の早とちりかもしれない。

村人だって悪い人ばかりじゃない。ちゃんと説明すればきっと分かってくれる。

勘違いだと。関係ないと証明できればいいのだ。

しかしいくらそう思っていようと相手に伝わらなければ意味がない。

結局訳も分からず逃走することに。


森の奥の奥へ。

仮にコウ君の話が正しかったとしてもこの危機を乗り切れば生還のチャンスはある。

まあここで捕まるようなことがあれば命はないだろうな。

一人でも捕まってしまえば人質に取られ……

ダメだ。悪い考えしか浮かばない。最悪の未来が頭をよぎる。

「先生静かに。奴らが来ますよ。息を潜めて」

優秀な助手で助かる。

後はルーシーが騒がなければ完璧。


ザワザワ
ザワザワ

「どうした見つかったか? 」
 
「今人影が。必ずこの近くにいますぜ」

「フン。愚かな奴らだ。逃げ切れるはずがないだろう。火を放て」

「ヘイ」

何のためらいもなく手にした松明を森へ放つ。

一気に燃え広がる前にここを脱出せねばならない。


「これはまずい。奴らは本気だ。皆急げ」

「オーノー」

ルーシーが叫ぶ。

「コウ。大丈夫かコウ」

「火を放つとは何て愚かな」

もはや誰も村人の暴走を止められない。

全力で走るも火の勢いが強すぎる。

これでは森全体に広がるのも時間の問題。

必死に逃げ惑う。


容赦なく火が襲い掛かってくる。

「ベリーハード…… ゴホッホッホ…… 」

ルーシーが最初の犠牲者に。

煙を吸ったらしくその場でうずくまる。

「ああ、ルーシー 」

ハンカチを口に当て助手が救出にかかる。

しかし火の勢いが強すぎてどうすることもできずにお手上げ状態。

助手とコウの連携プレーでどうにか連れ出すが火の勢いは増すばかり。

このままでは皆火あぶりになってしまう。


「コウ。先生を頼む。先に行ってくれ」

ルーシーを助手に任せ二手に分かれることに。

コウ君は私の手を掴みもっともっと奥へ。

「待ってくれコウ君…… 」

その後助手とルーシーがどうなったか不明。

火にやられそのまま焼け死んだか。村人によって惨殺されたかのどちらかであろう。

上手く行けばこの村から脱出した可能性もあるが…… それは万に一つもない。

焼死か惨殺かの二択が現実的。

まあどちらにしろ悲惨な最後に変わりない。


「コウ君…… 」

「気持ちは分かります。でも自分たちだけでも逃げ延びなければなりません。

この村の真実を伝える者がいなくなってしまう。どうか堪えてください」

必死に説得するコウ君。

彼も辛いのだろう。だが迫られれば決断するしかない。

今、甘い考えは命取り。

もちろん私だってそれくらい心得ている。でもどうしても自分が許せない。

私が逃げるために犠牲や囮、生贄などあってはならない。

だからと言って犠牲を無駄にはできない。

「しかしコウ君。私は探偵なんだぞ」

「すみません。これ以上は無理です」

「くそ」

二人とは今生の別れ。

助手とルーシーの尊い命を犠牲にし村から脱出。

無事生還を果たす。

結局二人の遺体が見つかることはなかった。


            事件編 完

次回から解決編へ
新章 遅れてきた名探偵。
夢章編を終えついに事件は解決に動き出す。

この物語は一応ミステリーなので犯人はいます。
要するにフーダニット。

読者に告ぐ!
真犯人は誰なのか?
第一村人とは誰なのか?
たぶんもう分かってると思うのでヒントはいいよね。
ヒントは第一村人はこの村の中にいる。

続いて探偵。
今回見事に事件を解決する名探偵は誰か?
ヒントは登場人物紹介に。
少なくても二度以上は登場している。

最後にこの事件の真相すべてを推理することができたらそれはもう推理好き。
最後の最後に真相すべてを当てたらそれはもう天才。

             解決編に続く





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生したら55歳の中年オバさんでした

綾羽 ミカ
ファンタジー
目が覚めた瞬間、全身に感じる違和感。 いや、これは違和感というよりも、現実の重み……? 「ん?……腕が……太い?」

Energy vampire

紫苑
ミステリー
*️⃣この話は実話を元にしたフィクションです。 エナジーヴァンパイアとは 人のエネルギーを吸い取り、周囲を疲弊させる人の事。本人は無自覚であることも多い。 登場人物 舞花 35歳 詩人 (クリエーターネームは 琴羽あるいは、Kotoha) LANDY 22歳  作曲家募集のハッシュタグから応募してきた作曲家の1人 Tatsuya 25歳 琴羽と正式な音楽パートナーである作曲家 沙也加 人気のオラクルヒーラー 主に霊感霊視タロットを得意とする。ヒーラーネームはプリンセスさあや 舞花の高校時代からの友人 サファイア 音楽歴は10年以上のベテランの作曲家。ニューハーフ。 【あらすじ】 アマチュアの詩人 舞花 不思議な縁で音楽系YouTuberの世界に足を踏み入れる。 彼女は何人かの作曲家と知り合うことになるが、そのうちの一人が決して関わってはならない男だと後になって知ることになる…そう…彼はエナジーヴァンパイアだったのだ…

伏線回収の夏

影山姫子
ミステリー
ある年の夏。俺は15年ぶりにT県N市にある古い屋敷を訪れた。某大学の芸術学部でクラスメイトだった岡滝利奈の招きだった。かつての同級生の不審死。消えた犯人。屋敷のアトリエにナイフで刻まれた無数のXの傷。利奈はそのなぞを、ミステリー作家であるこの俺に推理してほしいというのだ。俺、利奈、桐山優也、十文字省吾、新山亜沙美、須藤真利亜の六人は、大学時代にこの屋敷で共に芸術の創作に打ち込んだ仲間だった。グループの中に犯人はいるのか? 脳裏によみがえる青春時代の熱気、裏切り、そして別れ。懐かしくも苦い思い出をたどりながら事件の真相に近づく俺に、衝撃のラストが待ち受けていた。 《あなたはすべての伏線を回収することができますか?》

マクデブルクの半球

ナコイトオル
ミステリー
ある夜、電話がかかってきた。ただそれだけの、はずだった。 高校時代、自分と折り合いの付かなかった優等生からの唐突な電話。それが全てのはじまりだった。 電話をかけたのとほぼ同時刻、何者かに突き落とされ意識不明となった青年コウと、そんな彼と昔折り合いを付けることが出来なかった、容疑者となった女、ユキ。どうしてこうなったのかを調べていく内に、コウを突き落とした容疑者はどんどんと増えてきてしまう─── 「犯人を探そう。出来れば、彼が目を覚ますまでに」 自他共に認める在宅ストーカーを相棒に、誰かのために進む、犯人探し。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

港までの道程

紫 李鳥
ミステリー
港町にある、〈玄三庵〉という蕎麦屋に、峰子という女が働いていた。峰子は、毎日同じ絣の着物を着ていたが、そのことを恥じるでもなく、いつも明るく客をもてなしていた。

警視庁鑑識員・竹山誠吉事件簿「凶器消失」

桜坂詠恋
ミステリー
警視庁、ベテラン鑑識員・竹山誠吉は休暇を取り、妻の須美子と小京都・金沢へ夫婦水入らずの旅行へと出かけていた。 茶屋街を散策し、ドラマでよく見る街並みを楽しんでいた時、竹山の目の前を数台のパトカーが。 もはや条件反射でパトカーを追った竹山は、うっかり事件に首を突っ込み、足先までずっぽりとはまってしまう。竹山を待っていた驚きの事件とは。 単体でも楽しめる、「不動の焔・番外ミステリー」

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

処理中です...