『第一村人』殺人事件

二廻歩

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夢章 事件編完結 

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それにしてもここはどこだろう? いきなりだったからな。

たぶん山湖村なのだろうな。助手とコウ君の話を聞いてれば分かる。

問題はなぜ我々は追い駆けられているかだ?

別に何もしてないのだ。逃げなくたっていい気がする。

皆殺しの件だってコウ君の早とちりかもしれない。

村人だって悪い人ばかりじゃない。ちゃんと説明すればきっと分かってくれる。

勘違いだと。関係ないと証明できればいいのだ。

しかしいくらそう思っていようと相手に伝わらなければ意味がない。

結局訳も分からず逃走することに。


森の奥の奥へ。

仮にコウ君の話が正しかったとしてもこの危機を乗り切れば生還のチャンスはある。

まあここで捕まるようなことがあれば命はないだろうな。

一人でも捕まってしまえば人質に取られ……

ダメだ。悪い考えしか浮かばない。最悪の未来が頭をよぎる。

「先生静かに。奴らが来ますよ。息を潜めて」

優秀な助手で助かる。

後はルーシーが騒がなければ完璧。


ザワザワ
ザワザワ

「どうした見つかったか? 」
 
「今人影が。必ずこの近くにいますぜ」

「フン。愚かな奴らだ。逃げ切れるはずがないだろう。火を放て」

「ヘイ」

何のためらいもなく手にした松明を森へ放つ。

一気に燃え広がる前にここを脱出せねばならない。


「これはまずい。奴らは本気だ。皆急げ」

「オーノー」

ルーシーが叫ぶ。

「コウ。大丈夫かコウ」

「火を放つとは何て愚かな」

もはや誰も村人の暴走を止められない。

全力で走るも火の勢いが強すぎる。

これでは森全体に広がるのも時間の問題。

必死に逃げ惑う。


容赦なく火が襲い掛かってくる。

「ベリーハード…… ゴホッホッホ…… 」

ルーシーが最初の犠牲者に。

煙を吸ったらしくその場でうずくまる。

「ああ、ルーシー 」

ハンカチを口に当て助手が救出にかかる。

しかし火の勢いが強すぎてどうすることもできずにお手上げ状態。

助手とコウの連携プレーでどうにか連れ出すが火の勢いは増すばかり。

このままでは皆火あぶりになってしまう。


「コウ。先生を頼む。先に行ってくれ」

ルーシーを助手に任せ二手に分かれることに。

コウ君は私の手を掴みもっともっと奥へ。

「待ってくれコウ君…… 」

その後助手とルーシーがどうなったか不明。

火にやられそのまま焼け死んだか。村人によって惨殺されたかのどちらかであろう。

上手く行けばこの村から脱出した可能性もあるが…… それは万に一つもない。

焼死か惨殺かの二択が現実的。

まあどちらにしろ悲惨な最後に変わりない。


「コウ君…… 」

「気持ちは分かります。でも自分たちだけでも逃げ延びなければなりません。

この村の真実を伝える者がいなくなってしまう。どうか堪えてください」

必死に説得するコウ君。

彼も辛いのだろう。だが迫られれば決断するしかない。

今、甘い考えは命取り。

もちろん私だってそれくらい心得ている。でもどうしても自分が許せない。

私が逃げるために犠牲や囮、生贄などあってはならない。

だからと言って犠牲を無駄にはできない。

「しかしコウ君。私は探偵なんだぞ」

「すみません。これ以上は無理です」

「くそ」

二人とは今生の別れ。

助手とルーシーの尊い命を犠牲にし村から脱出。

無事生還を果たす。

結局二人の遺体が見つかることはなかった。


            事件編 完

次回から解決編へ
新章 遅れてきた名探偵。
夢章編を終えついに事件は解決に動き出す。

この物語は一応ミステリーなので犯人はいます。
要するにフーダニット。

読者に告ぐ!
真犯人は誰なのか?
第一村人とは誰なのか?
たぶんもう分かってると思うのでヒントはいいよね。
ヒントは第一村人はこの村の中にいる。

続いて探偵。
今回見事に事件を解決する名探偵は誰か?
ヒントは登場人物紹介に。
少なくても二度以上は登場している。

最後にこの事件の真相すべてを推理することができたらそれはもう推理好き。
最後の最後に真相すべてを当てたらそれはもう天才。

             解決編に続く





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