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内部犯? 外部犯?
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「おいおい。何をメモしてやがる」
「まあいいでしょう。犯人にせよ協力者にせよ村の誰かと言うことになりますね」
「知るかそんなこと。お前らじゃないのか?
こんな事件この村では一度も起こったことがない。村の奴を疑うのも大概にしろよ。
絶体にお前らの方が怪しい。タイミングが良すぎるだろうが」
この村の者を疑ったあまり男の怒りを買う。
だがよく考えてみて欲しい。この村にはサライ伝説やアリサ伝説があるのだ。
失踪は現実にあったと見るべきだ。
今回もその一環。伝説をなぞったものと捉えるのが一般的。
何と言っても村の連中は一度ならず二度までも我々を襲ったのだ。
彼らが普通であるはずがない。
「我々は探偵ですよ。どうして事件を起こさなければならないんですか?
解決するのが本分ですよ」
ついつい熱くなってしまった。だがこれ以上の侮辱は許さない。
「分かった。分かった。あんたは偉いさ探偵さん。
でもなあのロンゲの兄ちゃんや隣村の小僧が犯人じゃないとなぜ言い切れる?
外人さんは当然としてもな。まるで俺らの村が悪いみてえじゃねいか。ああん? 」
「それは…… 関係もありませんしアリバイもあるので…… 」
「意外な奴が犯人かもしれねえんだぞ。それによう二女の事件ではあの小僧が第一容疑者じゃねえか。怪しくないって言うのか探偵さんよ」
彼の言う通りだ。彼が犯人として疑われるならコウ君だって疑わしい。
「あなたはコウ君を疑っているんですか? 」
「知るかよ」
隣の牢を見つつ男は続ける。
「三姉妹の上二人はかなり評判悪いぜ。若い男には目が無くてな。
村の若いのだけでなく時にはガキにまで手を出してたって噂だぜ。
俺は若くもねえしルックスだってこんなんだ。相手にしてもらえるはずもねえ。
儀式の前もよう一度も顔を合わせようとしなかった。ふざけた女だろ?
偉え奴の娘じゃなかったらぶっ飛ばしてやるところさ。
まあ俺のことは放っておくとしてもどうだ? 」
自慢のはずもなく…… まあ顔の違いはあるか。
感想を求められてもどう返せばいいものか。自分を卑下するなと言いたい。
「おいおい憐れむように見るな。俺よりもそこの小僧の方がよほど疑わしいだろ?
相手させられて恨んでるかもしれねえんだぞ。
うまいとこ手なずけられてよう逃亡に手を貸した可能性だってあるぜ。
いいか小僧を侮るな。俺だってたまに小僧の美しさにドキドキするんだからな。
女なら狂わない訳がない」
色々と御託を並べるが要は自分は怪しくもないし助けろって話だろう。
その為にコウ君を侮辱するなどあってはならない。
彼の名誉のためにもここは決闘を申し込むか……
「あーあ。余計なことまで喋らせやがってまったく探偵さんは口がうまいぜ」
勝手にしゃべっただけだろうが。まったくこの男は…… どこか憎めない。
「いいですか。コウ君に限って…… 」
完全否定するつもりだったが言葉が出てこない。
彼の言い分にも一理ある。認めたくはないが仕方ない。
確かにコウ君はかわいらしい。うちの助手と並んで抜きに出ている。
助手も行きの電車内ではそのルックスが仇になっていた。
うーん。私もコウ君の虜になっている気がする。
「だから可能性は可能性さ」
自分の疑いを逸らすために仲間を売る。
決してそんなことがあってはならない。
もはやここの四人は仲間であり大切な同志。
同じ牢に入った運命共同体。
誰かが抜けることもない。
一人が救われれば皆が救われる。
そうこの事件が解決すれば全員ここから脱出できる。
男の真意は分からないが確かに誰にも可能性はある。
誰であれ疑わないのはあり得ない。
彼の忠告を心に刻み前を向く。
それにしてもこの村で起きた一連の事件。
繋がっているのか?
不連続の可能性もある。
失踪なのか?
殺人事件なのか?
それさえ未だに分からない。
第一村人からの挑戦状には具体的な事が一切書かれていない。
不気味な影を落とす第一村人とはいったい誰なのか?
次の事件は果たして起こるのか?
それは再び失踪事件となるのか?
いくら探偵でも地下牢の中では打つ手がない。
ただ事件の行方を見守るしかない。
続く
「まあいいでしょう。犯人にせよ協力者にせよ村の誰かと言うことになりますね」
「知るかそんなこと。お前らじゃないのか?
こんな事件この村では一度も起こったことがない。村の奴を疑うのも大概にしろよ。
絶体にお前らの方が怪しい。タイミングが良すぎるだろうが」
この村の者を疑ったあまり男の怒りを買う。
だがよく考えてみて欲しい。この村にはサライ伝説やアリサ伝説があるのだ。
失踪は現実にあったと見るべきだ。
今回もその一環。伝説をなぞったものと捉えるのが一般的。
何と言っても村の連中は一度ならず二度までも我々を襲ったのだ。
彼らが普通であるはずがない。
「我々は探偵ですよ。どうして事件を起こさなければならないんですか?
解決するのが本分ですよ」
ついつい熱くなってしまった。だがこれ以上の侮辱は許さない。
「分かった。分かった。あんたは偉いさ探偵さん。
でもなあのロンゲの兄ちゃんや隣村の小僧が犯人じゃないとなぜ言い切れる?
外人さんは当然としてもな。まるで俺らの村が悪いみてえじゃねいか。ああん? 」
「それは…… 関係もありませんしアリバイもあるので…… 」
「意外な奴が犯人かもしれねえんだぞ。それによう二女の事件ではあの小僧が第一容疑者じゃねえか。怪しくないって言うのか探偵さんよ」
彼の言う通りだ。彼が犯人として疑われるならコウ君だって疑わしい。
「あなたはコウ君を疑っているんですか? 」
「知るかよ」
隣の牢を見つつ男は続ける。
「三姉妹の上二人はかなり評判悪いぜ。若い男には目が無くてな。
村の若いのだけでなく時にはガキにまで手を出してたって噂だぜ。
俺は若くもねえしルックスだってこんなんだ。相手にしてもらえるはずもねえ。
儀式の前もよう一度も顔を合わせようとしなかった。ふざけた女だろ?
偉え奴の娘じゃなかったらぶっ飛ばしてやるところさ。
まあ俺のことは放っておくとしてもどうだ? 」
自慢のはずもなく…… まあ顔の違いはあるか。
感想を求められてもどう返せばいいものか。自分を卑下するなと言いたい。
「おいおい憐れむように見るな。俺よりもそこの小僧の方がよほど疑わしいだろ?
相手させられて恨んでるかもしれねえんだぞ。
うまいとこ手なずけられてよう逃亡に手を貸した可能性だってあるぜ。
いいか小僧を侮るな。俺だってたまに小僧の美しさにドキドキするんだからな。
女なら狂わない訳がない」
色々と御託を並べるが要は自分は怪しくもないし助けろって話だろう。
その為にコウ君を侮辱するなどあってはならない。
彼の名誉のためにもここは決闘を申し込むか……
「あーあ。余計なことまで喋らせやがってまったく探偵さんは口がうまいぜ」
勝手にしゃべっただけだろうが。まったくこの男は…… どこか憎めない。
「いいですか。コウ君に限って…… 」
完全否定するつもりだったが言葉が出てこない。
彼の言い分にも一理ある。認めたくはないが仕方ない。
確かにコウ君はかわいらしい。うちの助手と並んで抜きに出ている。
助手も行きの電車内ではそのルックスが仇になっていた。
うーん。私もコウ君の虜になっている気がする。
「だから可能性は可能性さ」
自分の疑いを逸らすために仲間を売る。
決してそんなことがあってはならない。
もはやここの四人は仲間であり大切な同志。
同じ牢に入った運命共同体。
誰かが抜けることもない。
一人が救われれば皆が救われる。
そうこの事件が解決すれば全員ここから脱出できる。
男の真意は分からないが確かに誰にも可能性はある。
誰であれ疑わないのはあり得ない。
彼の忠告を心に刻み前を向く。
それにしてもこの村で起きた一連の事件。
繋がっているのか?
不連続の可能性もある。
失踪なのか?
殺人事件なのか?
それさえ未だに分からない。
第一村人からの挑戦状には具体的な事が一切書かれていない。
不気味な影を落とす第一村人とはいったい誰なのか?
次の事件は果たして起こるのか?
それは再び失踪事件となるのか?
いくら探偵でも地下牢の中では打つ手がない。
ただ事件の行方を見守るしかない。
続く
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