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刑事登場 身の引き方
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駐在所の主である爺さんの姿があった。
その横にはいかにも刑事といった輩。
いかつい体格に笑ったことのないつまらなそうな顔でこちらを睨みつける。
うわ。嫌な感じ。
「ではお座りください」
駐在の一言で聞き取りが行われる。
昨夜のアリバイと儀式や村について聞かれた。
その間も我々の仕種や態度をつぶさに見ている爺さんの横の奴。
面接でもあるまいし。まったく困った野郎。
ついつい不満から睨みつけ返そうになる。
圧が強い。知らず知らずに汗が滴り落ちる。
最初から疑いに掛っているから困る。
我々はただの旅行者であり探偵であり善良な市民ではないか。
まったくこれだから田舎の刑事は嫌なんだ。
「おいお前。文句あるのか? 」
無視を決め込む。
「ふん。まあいい。お前らよそ者だな」
「はい。東京から観光で…… 」
「嘘を吐くな」
どすの利いた声で脅しをかける田舎の刑事。
助手の表情を読み取ったのかそれとも単純にカマをかけただけなのか。
こちらを動揺させるだけさせてにやける。とんでもないのに当たったかな。
もう助手のパンツは使い物にならないだろう。
「正直に申しますと彼と捜査と言いますか探偵のような活動をしておりまして。
いえいえ。ただの便利屋に毛が生えたようなもので……
まったくの素人ですがどうぞお見知りおきを」
下手に出る。
国家権力と戦ってこちらに勝ち目など無い。
うまく警察を使って早期の解決に導くのがベスト。お互いの為と言える。
私は探偵。彼は刑事。
事件を早期に解決するには協力が不可欠。
そう言う意味では利害は一致していると捉えるのは…… 虫が良すぎる?
問題はこの男。上からの態度を何とかしなくてはだめだ。
これでは村人からも反感を喰らう。トラブルになりかねない。
「ふん。どうだかな。怪しい奴らめ」
全く信用していない様子。
まあ当然か。身分証明書すら持っていない。
名刺も切らしている。私が怪しくないはずがない。
「それでそちらの外人さんは」
これ以上彼の機嫌を損ねてはいけないとルーシーを紹介。
できるだけ捜査に協力してやることにした。
しかしそれにしても口の悪い男だ。
面だけでなく口まで悪いとなると最悪だ。
慣れるまでは我慢。我慢。我慢。
果たして慣れるだろうか?
助手など睨みつけられただけで泣いてしまうだろう。
ルーシーは雰囲気にのまれることはなく常にマイペース。
ただ表情は真剣でうまくごまかしている。
これは私も彼女の演技に騙されるかもな。
刑事は人を疑うと言うよりも人を見下しているように感じる。
態度が悪い。ここは一市民としてガツンと言ってやるべきか。
そんな風に考えてると再びこちらに視線を向けられる。
とっさに下を向く。
なおも睨みつけるので仕方がなく目を閉じる。
従順そうな市民に見えただろうか? まあここでは村人だが。
演じる必要がある。下手に動けば無実の罪で投獄されかねない。
一通り取り調べを終え満足したのか解放される。
抜け目なく指紋も採られる。
「一度取り調べって奴を経験したかったんですよ。
いやまさかこんなに早く取り調べられるなんて夢のようです」
助手は若さから危険性を理解していない。
「まあとにかくよかったですね。疑われずに済みました。
これも日頃の行いが良かったからでしょう。
先生さあ早く帰りましょう。いっそのことこの村から帰りましょう」
助手の気持ちは痛いほど分かる。彼はサライちゃんも恐れている。
ここにいたら殺されると思っているようだ。
警察も来たことだし我々の役目も終わったかもしれない。
後はプロに任せるのが一番だ。
我々素人がこれ以上首を突っ込んでも邪魔になるだけ。
ここは身の引き方もそのタイミングも大事。
「ゴーホーム」
ルーシーも賛成のようだ。
ただ荒っぽい英語だなと……
刑事から聞かされた話では昨夜の儀式で二女の二姫が失踪した。
いや正確には消失だろうか。
これで第一村人の予告通り二人目が犠牲になった。
まあ岩男氏の件を合わせれば三人目だが。
連続失踪事件となった。
不慣れな場所とは言え第一村人の正体は愚か二つの消失事件を止められなかった。
その責任はこの私にある。
何の為にこんな山奥の村に来たのか情けなくなってくる。
せめて手掛かりでも掴めていれば警察と協力して早期に解決に導けたかもしれない。
続く
その横にはいかにも刑事といった輩。
いかつい体格に笑ったことのないつまらなそうな顔でこちらを睨みつける。
うわ。嫌な感じ。
「ではお座りください」
駐在の一言で聞き取りが行われる。
昨夜のアリバイと儀式や村について聞かれた。
その間も我々の仕種や態度をつぶさに見ている爺さんの横の奴。
面接でもあるまいし。まったく困った野郎。
ついつい不満から睨みつけ返そうになる。
圧が強い。知らず知らずに汗が滴り落ちる。
最初から疑いに掛っているから困る。
我々はただの旅行者であり探偵であり善良な市民ではないか。
まったくこれだから田舎の刑事は嫌なんだ。
「おいお前。文句あるのか? 」
無視を決め込む。
「ふん。まあいい。お前らよそ者だな」
「はい。東京から観光で…… 」
「嘘を吐くな」
どすの利いた声で脅しをかける田舎の刑事。
助手の表情を読み取ったのかそれとも単純にカマをかけただけなのか。
こちらを動揺させるだけさせてにやける。とんでもないのに当たったかな。
もう助手のパンツは使い物にならないだろう。
「正直に申しますと彼と捜査と言いますか探偵のような活動をしておりまして。
いえいえ。ただの便利屋に毛が生えたようなもので……
まったくの素人ですがどうぞお見知りおきを」
下手に出る。
国家権力と戦ってこちらに勝ち目など無い。
うまく警察を使って早期の解決に導くのがベスト。お互いの為と言える。
私は探偵。彼は刑事。
事件を早期に解決するには協力が不可欠。
そう言う意味では利害は一致していると捉えるのは…… 虫が良すぎる?
問題はこの男。上からの態度を何とかしなくてはだめだ。
これでは村人からも反感を喰らう。トラブルになりかねない。
「ふん。どうだかな。怪しい奴らめ」
全く信用していない様子。
まあ当然か。身分証明書すら持っていない。
名刺も切らしている。私が怪しくないはずがない。
「それでそちらの外人さんは」
これ以上彼の機嫌を損ねてはいけないとルーシーを紹介。
できるだけ捜査に協力してやることにした。
しかしそれにしても口の悪い男だ。
面だけでなく口まで悪いとなると最悪だ。
慣れるまでは我慢。我慢。我慢。
果たして慣れるだろうか?
助手など睨みつけられただけで泣いてしまうだろう。
ルーシーは雰囲気にのまれることはなく常にマイペース。
ただ表情は真剣でうまくごまかしている。
これは私も彼女の演技に騙されるかもな。
刑事は人を疑うと言うよりも人を見下しているように感じる。
態度が悪い。ここは一市民としてガツンと言ってやるべきか。
そんな風に考えてると再びこちらに視線を向けられる。
とっさに下を向く。
なおも睨みつけるので仕方がなく目を閉じる。
従順そうな市民に見えただろうか? まあここでは村人だが。
演じる必要がある。下手に動けば無実の罪で投獄されかねない。
一通り取り調べを終え満足したのか解放される。
抜け目なく指紋も採られる。
「一度取り調べって奴を経験したかったんですよ。
いやまさかこんなに早く取り調べられるなんて夢のようです」
助手は若さから危険性を理解していない。
「まあとにかくよかったですね。疑われずに済みました。
これも日頃の行いが良かったからでしょう。
先生さあ早く帰りましょう。いっそのことこの村から帰りましょう」
助手の気持ちは痛いほど分かる。彼はサライちゃんも恐れている。
ここにいたら殺されると思っているようだ。
警察も来たことだし我々の役目も終わったかもしれない。
後はプロに任せるのが一番だ。
我々素人がこれ以上首を突っ込んでも邪魔になるだけ。
ここは身の引き方もそのタイミングも大事。
「ゴーホーム」
ルーシーも賛成のようだ。
ただ荒っぽい英語だなと……
刑事から聞かされた話では昨夜の儀式で二女の二姫が失踪した。
いや正確には消失だろうか。
これで第一村人の予告通り二人目が犠牲になった。
まあ岩男氏の件を合わせれば三人目だが。
連続失踪事件となった。
不慣れな場所とは言え第一村人の正体は愚か二つの消失事件を止められなかった。
その責任はこの私にある。
何の為にこんな山奥の村に来たのか情けなくなってくる。
せめて手掛かりでも掴めていれば警察と協力して早期に解決に導けたかもしれない。
続く
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