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サライちゃんの呪い
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西湖村は山湖村と隣村が分かれる前の名称。要するに山湖村も旧西湖村だった訳だ。
村が分かれるも隣村は西湖村のまま。ただ山湖村のお年寄りは昔からの呼び名に
愛着があるため西湖村と呼んでいる者も少なからずいる。
その為地元の者でも時々混乱することがある。
そんな時はこの村と隣村とするとすっきりする。
サライちゃん伝説は旧西湖村時代に広がったとされている。
「以上がこの西湖村に伝わる恐ろしい恐ろしい昔話です。
自分はここの生まれではないので大きくなるまでまったく知りませんでした。
もちろん興味もありませんでした」
「その話本当なのかコウ? どうも信じられない。
俺らよそ者を怖がらせるために近づかせないために作った与太話じゃないのか」
助手が罰当たりなことを抜かす。これは呪われても仕方がない。
さすがに助手だけだよね。私は関係ない。
いくら助手の不始末は私の不始末だとしてもここまでは付き合いきれない。
「そんなに疑うなら村役場にでも駐在さんにでも聞いてください。
ああここの住人に聞いてもはぐらかされるだけですから無駄ですよ」
そう家々には実際サライちゃん人形が置いてあるのだ。
「自分も最初は驚きました。でもまあ慣れればどってことない守り神です」
「ありがとうコウ君。貴重な話を聞かせてもらった。大変楽しい…… いや大変悲しい物語だね」
助手は急に大人しくなったかと思ったら震え始めた。
「おい大丈夫か? 」
耳を両手で塞ぎその場で座り込む。
真に受けるタイプ?
面白い話だとは思うが実際にあったと思うのは若さに寄るものか。
感受性が強いのは決して悪いことではない。
「俺サライちゃん…… サライちゃんの夢を見たんです」
そう言えば昨日そんな話をしていた気がする。
タイムリーな奴めでは済まされないだろうなきっと。
助手の顔から血の気が引いて行くのが分かる。
まずい。このままではいつぶっ倒れてもおかしくない。
「俺本当に呪われてるのかな? 」
ただの偶然。気にすることではない。そう諭すも効果が薄い。
「ねえ先生。帰りましょう。こんなところ一分だって居たくない」
「我がままを言うな。それでは第一村人の思う壺ではないか。
第一どう帰れと言うんだ。もうバスもない。歩いて帰るつもりか?
その方がかえって危険だ。少なくても明日の朝まで待つしかないさ」
「嫌だ帰る」
元々駄々っ子みたいなものだったが今はもう自分を見失っている。
「さあゆっくりしよう。なあ」
宥めるのも一苦労。
私だってできるなら帰りたい。こんな得体の知れない村にいつまでも居たくない。
実際死人も出た。これ以上ここに居たら私だってどうにかなってしまう。
ただ帰るにしたってあの関所を抜けなければ隣村にさえいけない。
それくらい冷静になれば分かりそうなものだが。
「あの…… 自分のせいで…… 」
コウ君に気を遣わせてしまう。
「俺たちだっていつ連れ去られるか。あああ…… 」
手が震えはじめると持っていたお茶で畳を濡らしてしまう。足も震えだす始末。
これは相当重症。もはや禁断症状と言っても過言ではない。
コウが慌てて雑巾で拭きとる。
「夢で夢で…… うわああ」
助手の精神状態が気になる。
「相当堪えたようですね。自分はまずいことをしてしまった…… 」
「彼のことは放っておいて続けてくれないか」
せっかく話してくれたコウ君にも悪い。
いつもの助手に戻ってもらわなくてはこちらも困る。
「はい。この話が村人に染みついてまして…… 今回もサライちゃんの呪いだとか
神隠しだとか言い出しまして罰が当たった何のと一族への批判が展開されています」
村人の反応は異常とまで言えない。想定の範囲内だ。
ただ不可解なことが起こると呪いだ祟りだサライちゃんだと超自然的なことに
逃げようとする傾向が見られる。
この科学が発達した時代にそんな超常現象に逃げるなんてありえない。
まあコウ君の話では未だに各家庭にテレビも電話もないらしい。
さほど違和感はないが少なくても今は二十一世紀のはずだ。
電波だって受信できない山奥の村。侮れない。
「まあ誰でもそう思うよ。仕方がないこと。でも我々は違う。これは連続殺人だ。
手紙によれば少なくともあと一人。いや二人かもしれない。もっとだってあり得る。
早く何とかしなければ大変なことになってしまう。私は第一村人の狂気を止めたい。
その為にもコウ君にはこれまで以上協力をしてもらいたい」
「分かりました。協力は惜しみません」
「頼むぞコウ。お前だけが頼りなんだ」
落ち着きを取り戻した助手の肩をポンポンと叩き様子を見守る。
続く
村が分かれるも隣村は西湖村のまま。ただ山湖村のお年寄りは昔からの呼び名に
愛着があるため西湖村と呼んでいる者も少なからずいる。
その為地元の者でも時々混乱することがある。
そんな時はこの村と隣村とするとすっきりする。
サライちゃん伝説は旧西湖村時代に広がったとされている。
「以上がこの西湖村に伝わる恐ろしい恐ろしい昔話です。
自分はここの生まれではないので大きくなるまでまったく知りませんでした。
もちろん興味もありませんでした」
「その話本当なのかコウ? どうも信じられない。
俺らよそ者を怖がらせるために近づかせないために作った与太話じゃないのか」
助手が罰当たりなことを抜かす。これは呪われても仕方がない。
さすがに助手だけだよね。私は関係ない。
いくら助手の不始末は私の不始末だとしてもここまでは付き合いきれない。
「そんなに疑うなら村役場にでも駐在さんにでも聞いてください。
ああここの住人に聞いてもはぐらかされるだけですから無駄ですよ」
そう家々には実際サライちゃん人形が置いてあるのだ。
「自分も最初は驚きました。でもまあ慣れればどってことない守り神です」
「ありがとうコウ君。貴重な話を聞かせてもらった。大変楽しい…… いや大変悲しい物語だね」
助手は急に大人しくなったかと思ったら震え始めた。
「おい大丈夫か? 」
耳を両手で塞ぎその場で座り込む。
真に受けるタイプ?
面白い話だとは思うが実際にあったと思うのは若さに寄るものか。
感受性が強いのは決して悪いことではない。
「俺サライちゃん…… サライちゃんの夢を見たんです」
そう言えば昨日そんな話をしていた気がする。
タイムリーな奴めでは済まされないだろうなきっと。
助手の顔から血の気が引いて行くのが分かる。
まずい。このままではいつぶっ倒れてもおかしくない。
「俺本当に呪われてるのかな? 」
ただの偶然。気にすることではない。そう諭すも効果が薄い。
「ねえ先生。帰りましょう。こんなところ一分だって居たくない」
「我がままを言うな。それでは第一村人の思う壺ではないか。
第一どう帰れと言うんだ。もうバスもない。歩いて帰るつもりか?
その方がかえって危険だ。少なくても明日の朝まで待つしかないさ」
「嫌だ帰る」
元々駄々っ子みたいなものだったが今はもう自分を見失っている。
「さあゆっくりしよう。なあ」
宥めるのも一苦労。
私だってできるなら帰りたい。こんな得体の知れない村にいつまでも居たくない。
実際死人も出た。これ以上ここに居たら私だってどうにかなってしまう。
ただ帰るにしたってあの関所を抜けなければ隣村にさえいけない。
それくらい冷静になれば分かりそうなものだが。
「あの…… 自分のせいで…… 」
コウ君に気を遣わせてしまう。
「俺たちだっていつ連れ去られるか。あああ…… 」
手が震えはじめると持っていたお茶で畳を濡らしてしまう。足も震えだす始末。
これは相当重症。もはや禁断症状と言っても過言ではない。
コウが慌てて雑巾で拭きとる。
「夢で夢で…… うわああ」
助手の精神状態が気になる。
「相当堪えたようですね。自分はまずいことをしてしまった…… 」
「彼のことは放っておいて続けてくれないか」
せっかく話してくれたコウ君にも悪い。
いつもの助手に戻ってもらわなくてはこちらも困る。
「はい。この話が村人に染みついてまして…… 今回もサライちゃんの呪いだとか
神隠しだとか言い出しまして罰が当たった何のと一族への批判が展開されています」
村人の反応は異常とまで言えない。想定の範囲内だ。
ただ不可解なことが起こると呪いだ祟りだサライちゃんだと超自然的なことに
逃げようとする傾向が見られる。
この科学が発達した時代にそんな超常現象に逃げるなんてありえない。
まあコウ君の話では未だに各家庭にテレビも電話もないらしい。
さほど違和感はないが少なくても今は二十一世紀のはずだ。
電波だって受信できない山奥の村。侮れない。
「まあ誰でもそう思うよ。仕方がないこと。でも我々は違う。これは連続殺人だ。
手紙によれば少なくともあと一人。いや二人かもしれない。もっとだってあり得る。
早く何とかしなければ大変なことになってしまう。私は第一村人の狂気を止めたい。
その為にもコウ君にはこれまで以上協力をしてもらいたい」
「分かりました。協力は惜しみません」
「頼むぞコウ。お前だけが頼りなんだ」
落ち着きを取り戻した助手の肩をポンポンと叩き様子を見守る。
続く
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