『第一村人』殺人事件

二廻歩

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三日目 朝のゴタゴタ

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<間奏>

「ふう。それで? 」

「だから分かるでしょう? 」

「いいや」

「あっそ。いいのね。この村を追い出されても」

「そんなお嬢様」

「ほら青くなった」

まったく……


男は無防備に横たわる女の柔らかい首を何度も何度も締めようとする。

まだだ。まだだ。今はその時ではない。まだ早い。早すぎる。

男は女を残し部屋を出る。

ただ外の空気を吸いに行く訳ではない。

部屋を出ると急いで目当ての場所へ。

もう間なもなく夜明け。


「遅いじゃない」

「うるさい」

「何? 何なのその態度は? 」

「困った奴らだ。姉妹揃って淫乱ときたものだ」

「あらそう。ふふふ…… 」

「お前もどうせ俺の体が目当てなんだろ? 」

「ふふふ…… どうかしら」

「ちくしょう」

「ふふふ…… 可愛い。大人しくするのね」

「早くしろってんだ」

夜明けが近い。

「ふふふ…… なら早くしなさいよ」

「ふん。分かったよ」

男女が絡み合う。


「ふふふ…… 」

「あんたも相当な女だな」

「あらそんな態度とっていいのかしら」

「だからよう。もう吹っ切れたぜ」

「一葉ね。一葉ったら。かわいそうに。私は違うわ」

もちろん口だけだ。姉よりも良く見せようとありもしない優しを見せつける。

だったら呼びつけなければいい。それで済む。


「なあ。お前にだって相手ぐらいいるだろ? 」

「ええ。いるわよ。いくらでも」

「ならこんなことしないでもよ。満足できるだろ」

「そうね。ふっふふ…… でもそれでは面白くないでしょう」

「完全にイカレてるなお前」

「いいから早くしなさいよ」

「そう急かすなよ」

二人は愛し合った。少なくとも交わった。


「姉妹揃って本当にどうしようもないな。姉も姉ならお前もお前だ」

「ほらほらもう早くしなさい」

「少しは我慢できないのか? 」

「早く早く」

「まったく反吐が出るぜ」

「いい? 」

「ああ。好きにしろ」

「気持ちいい? 」

「知るか。あーもう」

「ふふふ…… 」

「もういいだろ? 」

「ダメ。ふふふ…… 」

「もう疲れたぜ」

「ふふふ…… 」

「許してくれよ。今日は早いんだよ」

「許さない」

「それはないよ。頼むぜ」

「ふふふ…… どうしようかな。言うことを聞いてくれたら許してあげる」


<新章>

旅三日目。山湖村に来て二日が経った。


朝十時前。すっかり眠ってしまったようだ。

うーん。頭が痛い。これは二日酔い?

しかし昨夜はほんのちょっと五杯か六杯しか飲んでないよな。

おかしいな。風でも引いたのかだるい。

確かあの後助手はすぐに寝たものだから…… あれ何か変だ。

そうだいびきがうるさくて朝方まで寝つけなかったんだ。

ただうるさいならまだ良かった。

無防備なリスのよな顔で一定のリズムでイビキを掻くものだから困る。

隣のコウ君などイビキに加え寝言から急に恐ろしい呪文を唱えだす始末。

いくら止めてくれ止めてくれと願っても聞き入れる訳もなく困り果てる。

寝るに寝れない状況で気がつけば外は明るくなり始めていた。

結局寝たのは五時過ぎ。


一昨日は私が先に寝たものだから気が付かなかったが二人とも癖が強い。

あの見た目から想像できないイビキ魔であり安眠妨害野郎である。

二人ともこの悪い癖は早いうちに治したほうがいい。

今後も迷惑をかけるようなら注意しなければこっちの身が持たない。

まあただ寝てる間のことだから強くは言えないが……

変な癖は早いうちに治すに限る。なくて七癖なんて流行らない。


「おい。起きろ。起きろって」

あれだけ早く寝たはずなのに起きる気配がない助手。

調査がどんどん遅くなる。もはや何しに来たのやら。観光だったけ?

「どうしたんですか先生? うーん眠い。おやすみ」

まだ夢の中の助手。

叩き起こすのも忍びないが時間がない。ここは一度心を鬼にして怒鳴りつける。

「おい。ふざけるな。今何時だと思っているんだ」

「えーっと何時ですかねえ」

そう言うとまた夢の中に逃亡。

「十時だぞ。十時。もう朝飯を食う暇もない。いいから早く起きろ」

せっかく朝飯がてら今日の予定を話し合うつもりだったがもうそんな時間もない。

助手はまだ抵抗。布団に丸まって臨戦態勢に入る。

「おい。まだ起きないつもりか? 助手の仕事を放棄するんじゃない。

時間管理も健康管理もお前の役目だろうが」

巻きついた布団を剥がし寒がる助手を無理矢理起こす。

眠かろうが寒かろうが関係ない。

さあ調査開始だ。


                     続く
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