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二日目 トラブル発生
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コウが語る一葉像は決して好ましいものではなかった。
ここから察するに村人から姉妹揃って受け入れられていないことが分かる。
結局一葉からの電話は皆無。
仕方なく食事に出かける。
コウ君を誘って三人で遅い夕食。
ガヤガヤ
ザワザワ
当たりが騒々しい。外では何やら言い争いが起きている。
「お腹空いたなあ。さあ夕食にしましょうよ」
何も考えずに呑気に笑っている助手。
我々は観光で来たのではない。晩飯にしろ昼飯にしろ勝手に食べて欲しいものだ。
「そうですね。自分の知っている店にでも行きましょうか」
コウ君お薦めのお店。
コウがそう言うと賛成と言って助手が私の背中を押す。
うーん困ったなあと思い悩む。
「何がいいですかね? やっぱりまたそばにしますか」
助手は昼に食べたそばの味が忘れられないのか夜も同じがいいと騒ぎ出す。
私としてはそばでもいいのだができれば違う方が助かる。
「そばでももちろんいいがそばはそばでも近くの定食屋はどうだ? 」
三人は未だに騒がしい一角に足を踏み入れる。
もうとっくに日は沈み数少ない観光スポットのサンセットはお預けを喰らう。
それでも助手は上機嫌。
「先生うまい。一本取られました」
別に冗談とかではなく本気なんだが。困ったなあ。どう伝えればいいか分からない。
「待ってくれ誤解だ。やはり夜は白いご飯じゃないかね」
「時代遅れですよ先生」
さっきから余計なことしか言っていない助手。舐めてるのか?
「いやこの村も十分時代遅れだからちょうどいいじゃないか」
助手とのつまらない言い争いでコウ君を困らせる。
食事とはそれだけ重要。やはり昼よりも夜を豪勢に行きたい。
これこそが旅の醍醐味。食い倒れもいいがお高いお店での満足感と言ったらない。
妄想を膨らます。ダメだ。よだれが出そう。
「申し訳ありません。実は…… 」
コウ君は言いにくそうに頭を掻く。
「この時間になるとそば屋は閉まってしまうんです。自分としては鍋料理をお勧めします。それでしたらまだやっているはずですから」
コウ君お薦めの鍋料理。うん悪くない。
「まさか鶏が入ってませんよね? 」
そうだった。助手は昨夜のことがトラウマになっていたのだ。
気にするなとは言ったがやはりだめなようだ。
「嫌ですよ絶体」
助手は昨夜のトラウマから決して首を縦に振らない。嫌ですの一点張り。
これは困った。まさかのお預け? 冗談じゃない。
他に選択肢が無い以上無理矢理引っ張っていく。
「止めて嫌だ」
「我慢しろ。鶏そばが大丈夫なら問題ない。君は空腹に耐えられるのか? 」
大丈夫ですと意地を張る可愛げのない助手。
「どうします? 」
「しょうがないな置いて行くか」
トラブルは解決。と思った矢先辺りが一層騒がしくなった。
「おい。お前たち。岩男が亡くなったってのは本当か? どうなんだ答えろ」
酔っぱらいのトラブルかと思いきやどうも違う。様子がおかしい。
「だから知らねえって言ってるだろ。そんなことは知らねえと。邪魔だからどこかに行っちまえ」
老人と若いのが何か揉めている。どうしたと言うのだろう。
「何じゃとこのガキども生意気な。儂は奴の死に様が見たいのじゃ。早く案内せぬか。この儂を誰だと思っているのじゃ」
老人は顔を真っ赤にしてすごむ。若者はお構いなしにへらへらしている。
「うるせえな。今はただの爺じゃねいか」
「何じゃとこのガキども」
一触即発の状態。
「まあまあ。抑えて抑えて」
老人が文句を垂れる。そこに若者たちが反抗する。そして老人の孫が止めに入る。
この展開が続く。終わりが見えない無限ループ。
「どうしたんでしょう。コウ君は何かご存じで」
コウはふうっと一息ついてから詳しく話してくれた。
コウによると老人は元村長で昔は絶大な権力で君臨。
しかし岩男一族権力者と対立。ついには村長の座を追われる。
そして新たな村長は権力者の言いなり。結果この村は絶対権力者岩男の思うがまま。
このことを恨みに思いことあるごとに嫌がらせをする哀れな元村長の成れの果て。
もはや誰からも相手されない哀れで醜い存在。
彼がなぜここまでするのかその真意は誰も分からない。
一歩下がって控える孫は爺さんの言うことは何でも聞く忠実な僕。
その彼はこの村の伝統であるかのように細身のシュッとした影の薄い若者。
虫をも殺さない優男として近所の奥様方から評判が高い。
しかし祖父の命令には忠実で噂もどこまでが真実か分からない。
「勝手にせい。まったく不愉快だ。行くぞ」
お騒がせ爺が折れた。孫を連れて闇に消える。
悪化する前にいざこざは収まり一安心。
続く
ここから察するに村人から姉妹揃って受け入れられていないことが分かる。
結局一葉からの電話は皆無。
仕方なく食事に出かける。
コウ君を誘って三人で遅い夕食。
ガヤガヤ
ザワザワ
当たりが騒々しい。外では何やら言い争いが起きている。
「お腹空いたなあ。さあ夕食にしましょうよ」
何も考えずに呑気に笑っている助手。
我々は観光で来たのではない。晩飯にしろ昼飯にしろ勝手に食べて欲しいものだ。
「そうですね。自分の知っている店にでも行きましょうか」
コウ君お薦めのお店。
コウがそう言うと賛成と言って助手が私の背中を押す。
うーん困ったなあと思い悩む。
「何がいいですかね? やっぱりまたそばにしますか」
助手は昼に食べたそばの味が忘れられないのか夜も同じがいいと騒ぎ出す。
私としてはそばでもいいのだができれば違う方が助かる。
「そばでももちろんいいがそばはそばでも近くの定食屋はどうだ? 」
三人は未だに騒がしい一角に足を踏み入れる。
もうとっくに日は沈み数少ない観光スポットのサンセットはお預けを喰らう。
それでも助手は上機嫌。
「先生うまい。一本取られました」
別に冗談とかではなく本気なんだが。困ったなあ。どう伝えればいいか分からない。
「待ってくれ誤解だ。やはり夜は白いご飯じゃないかね」
「時代遅れですよ先生」
さっきから余計なことしか言っていない助手。舐めてるのか?
「いやこの村も十分時代遅れだからちょうどいいじゃないか」
助手とのつまらない言い争いでコウ君を困らせる。
食事とはそれだけ重要。やはり昼よりも夜を豪勢に行きたい。
これこそが旅の醍醐味。食い倒れもいいがお高いお店での満足感と言ったらない。
妄想を膨らます。ダメだ。よだれが出そう。
「申し訳ありません。実は…… 」
コウ君は言いにくそうに頭を掻く。
「この時間になるとそば屋は閉まってしまうんです。自分としては鍋料理をお勧めします。それでしたらまだやっているはずですから」
コウ君お薦めの鍋料理。うん悪くない。
「まさか鶏が入ってませんよね? 」
そうだった。助手は昨夜のことがトラウマになっていたのだ。
気にするなとは言ったがやはりだめなようだ。
「嫌ですよ絶体」
助手は昨夜のトラウマから決して首を縦に振らない。嫌ですの一点張り。
これは困った。まさかのお預け? 冗談じゃない。
他に選択肢が無い以上無理矢理引っ張っていく。
「止めて嫌だ」
「我慢しろ。鶏そばが大丈夫なら問題ない。君は空腹に耐えられるのか? 」
大丈夫ですと意地を張る可愛げのない助手。
「どうします? 」
「しょうがないな置いて行くか」
トラブルは解決。と思った矢先辺りが一層騒がしくなった。
「おい。お前たち。岩男が亡くなったってのは本当か? どうなんだ答えろ」
酔っぱらいのトラブルかと思いきやどうも違う。様子がおかしい。
「だから知らねえって言ってるだろ。そんなことは知らねえと。邪魔だからどこかに行っちまえ」
老人と若いのが何か揉めている。どうしたと言うのだろう。
「何じゃとこのガキども生意気な。儂は奴の死に様が見たいのじゃ。早く案内せぬか。この儂を誰だと思っているのじゃ」
老人は顔を真っ赤にしてすごむ。若者はお構いなしにへらへらしている。
「うるせえな。今はただの爺じゃねいか」
「何じゃとこのガキども」
一触即発の状態。
「まあまあ。抑えて抑えて」
老人が文句を垂れる。そこに若者たちが反抗する。そして老人の孫が止めに入る。
この展開が続く。終わりが見えない無限ループ。
「どうしたんでしょう。コウ君は何かご存じで」
コウはふうっと一息ついてから詳しく話してくれた。
コウによると老人は元村長で昔は絶大な権力で君臨。
しかし岩男一族権力者と対立。ついには村長の座を追われる。
そして新たな村長は権力者の言いなり。結果この村は絶対権力者岩男の思うがまま。
このことを恨みに思いことあるごとに嫌がらせをする哀れな元村長の成れの果て。
もはや誰からも相手されない哀れで醜い存在。
彼がなぜここまでするのかその真意は誰も分からない。
一歩下がって控える孫は爺さんの言うことは何でも聞く忠実な僕。
その彼はこの村の伝統であるかのように細身のシュッとした影の薄い若者。
虫をも殺さない優男として近所の奥様方から評判が高い。
しかし祖父の命令には忠実で噂もどこまでが真実か分からない。
「勝手にせい。まったく不愉快だ。行くぞ」
お騒がせ爺が折れた。孫を連れて闇に消える。
悪化する前にいざこざは収まり一安心。
続く
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