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二日目 昭和フォンブラック
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遅い昼食を終え本部に行ってみると当主の岩男氏が亡くなったことが分かった。
本部中、皆大慌て。混乱が生じている。
最悪のタイミングで訪れた我々はその波に巻き込まれてしまう。
今後のことをコウに相談することに。
「今日は混乱していますが明日になれば収束するでしょう」
「うーん。困ったな…… ちょっと言いにくいんだけど…… 」
コウ君に頼るのは忍びないがここはひとつ協力してもらいたい。
「宿ならご心配なく。自分が紹介します」
先回りして救いの手を差し伸べるコウ。
「それは助かるよ。何から何まで済まないね」
宿の当てなどあるはずもなく困っていた。そもそもここは観光地でもないのだ。
「いえいえ。何ならこの本部で寝泊まりしても構いませんよ。
自分も儀式の間はここを利用しますから。
できたら少々お手伝いいただければ助かるんですが。人手不足なもので…… 」
ただでさえ人手が足りていないのに岩男氏のことでもう収拾がつかない状態。
これは本当にまずい時に来てしまったものだ。
散々迷った末にコウ君の提案を受け入れる。
これから宿を見つけるのも億劫。果たして宿など存在するかも怪しい。
二階を使わせてもらうことに。
「では自分はこれで」
そう言うとすぐに出て行ってしまった。
儀式のせいで休む暇も無いコウ。今日は大忙しだったようだ。
予定外のトラブルもあり猫の手も借りたい惨状。
二十分経過。
荷物の整理を終え一息ついたところでコウが姿を見せる。
「さっそくで悪いんですが電話室まで来てください」
人手が足りないと言っていたがまさかすぐにこき使うとはコウ君も侮れない。
「電話室って何ですかね先生」
どうやら電話対応が我々のミッションのようだ。
コウに言われるまま電話室と書かれた部屋に。
そこには黒電話が二つ置かれていた。それ以外何もない。さっぱりしている。
今は他に誰も居ないがここが東西北各館との生命線になっている。
二台の黒電話は各館を結ぶもの。それ以外の各家庭には一切なく村では合計五台。
もちろん隣村には連絡できるがそれ以外には繋がらない。
緊急時は花火を打ち上げるのが決まりで隣村にはヘリポートが設置されている。
何かあればヘリが駆けつけてくれる。これで村人も安心して生活が送れる。
ちなみに診療所は隣村に一つだけ。
村にも以前あったが現在は医師がいない為隣村からの巡回に頼らざるを得ない。
お年寄りが多い両村では医師不足が影を落としている。
「どうです? 居心地が悪ければ自分が別の場所を紹介しますが」
別に観光で来たわけではない。寝れさえすればよくこだわりなど無い。
助手は嫌そうにしてるが移るのが面倒くさいのか反対するか決めかねている。
コウが時計を見る。
時刻は六時五分前。
「いやここで構わないよ」
「先生」
基本的には反対の立場の助手。目で訴えかけるが無視する。
結局は見知らぬ村人の家に転がり込むしかないのだ。
まだそれならここの方がましだろと説得する。
「そうですか。自分もできればそうしてもらうと助かります」
「それでコウ君。我々は何をすればいい? 」
「今から電話番をお願いします」
「電話番? 」
「いいですか。六時に定時連絡が来ますのでその対応をお願いします」
「ちょっと…… 」
もう少し具体的に説明してもらわなければ困ってしまう。
ボーン。ボーン。
どこからともなく六時を報せる音が聞こえてきた。
同時に黒電話が鳴る。けたたましい音が部屋中に響き渡る。
「出てください。後はお任せしました」
急に言われてもどうしたらいいものか。この手のことは助手の仕事。
私は様子を見守ることに。
「仕方がありませんね」
コウが電話に出る。
「はいはい。分かりました。それではまた何かありましたら何なりと」
「トラブルですか? 」
「いえ。今のは三女の三貴さんからの電話で儀式に使うお香が切れそうなので新しいのを持ってきてくれとのことです」
定時に連絡を取って何か必要なものがあれば持って行く仕組みになっている。
「自分はこれで。後は任せました」
コウが出て行こうとした瞬間再び耳を塞ぎたくなる程のけたたましい音が鳴り響く。
続く
本部中、皆大慌て。混乱が生じている。
最悪のタイミングで訪れた我々はその波に巻き込まれてしまう。
今後のことをコウに相談することに。
「今日は混乱していますが明日になれば収束するでしょう」
「うーん。困ったな…… ちょっと言いにくいんだけど…… 」
コウ君に頼るのは忍びないがここはひとつ協力してもらいたい。
「宿ならご心配なく。自分が紹介します」
先回りして救いの手を差し伸べるコウ。
「それは助かるよ。何から何まで済まないね」
宿の当てなどあるはずもなく困っていた。そもそもここは観光地でもないのだ。
「いえいえ。何ならこの本部で寝泊まりしても構いませんよ。
自分も儀式の間はここを利用しますから。
できたら少々お手伝いいただければ助かるんですが。人手不足なもので…… 」
ただでさえ人手が足りていないのに岩男氏のことでもう収拾がつかない状態。
これは本当にまずい時に来てしまったものだ。
散々迷った末にコウ君の提案を受け入れる。
これから宿を見つけるのも億劫。果たして宿など存在するかも怪しい。
二階を使わせてもらうことに。
「では自分はこれで」
そう言うとすぐに出て行ってしまった。
儀式のせいで休む暇も無いコウ。今日は大忙しだったようだ。
予定外のトラブルもあり猫の手も借りたい惨状。
二十分経過。
荷物の整理を終え一息ついたところでコウが姿を見せる。
「さっそくで悪いんですが電話室まで来てください」
人手が足りないと言っていたがまさかすぐにこき使うとはコウ君も侮れない。
「電話室って何ですかね先生」
どうやら電話対応が我々のミッションのようだ。
コウに言われるまま電話室と書かれた部屋に。
そこには黒電話が二つ置かれていた。それ以外何もない。さっぱりしている。
今は他に誰も居ないがここが東西北各館との生命線になっている。
二台の黒電話は各館を結ぶもの。それ以外の各家庭には一切なく村では合計五台。
もちろん隣村には連絡できるがそれ以外には繋がらない。
緊急時は花火を打ち上げるのが決まりで隣村にはヘリポートが設置されている。
何かあればヘリが駆けつけてくれる。これで村人も安心して生活が送れる。
ちなみに診療所は隣村に一つだけ。
村にも以前あったが現在は医師がいない為隣村からの巡回に頼らざるを得ない。
お年寄りが多い両村では医師不足が影を落としている。
「どうです? 居心地が悪ければ自分が別の場所を紹介しますが」
別に観光で来たわけではない。寝れさえすればよくこだわりなど無い。
助手は嫌そうにしてるが移るのが面倒くさいのか反対するか決めかねている。
コウが時計を見る。
時刻は六時五分前。
「いやここで構わないよ」
「先生」
基本的には反対の立場の助手。目で訴えかけるが無視する。
結局は見知らぬ村人の家に転がり込むしかないのだ。
まだそれならここの方がましだろと説得する。
「そうですか。自分もできればそうしてもらうと助かります」
「それでコウ君。我々は何をすればいい? 」
「今から電話番をお願いします」
「電話番? 」
「いいですか。六時に定時連絡が来ますのでその対応をお願いします」
「ちょっと…… 」
もう少し具体的に説明してもらわなければ困ってしまう。
ボーン。ボーン。
どこからともなく六時を報せる音が聞こえてきた。
同時に黒電話が鳴る。けたたましい音が部屋中に響き渡る。
「出てください。後はお任せしました」
急に言われてもどうしたらいいものか。この手のことは助手の仕事。
私は様子を見守ることに。
「仕方がありませんね」
コウが電話に出る。
「はいはい。分かりました。それではまた何かありましたら何なりと」
「トラブルですか? 」
「いえ。今のは三女の三貴さんからの電話で儀式に使うお香が切れそうなので新しいのを持ってきてくれとのことです」
定時に連絡を取って何か必要なものがあれば持って行く仕組みになっている。
「自分はこれで。後は任せました」
コウが出て行こうとした瞬間再び耳を塞ぎたくなる程のけたたましい音が鳴り響く。
続く
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