『第一村人』殺人事件

二廻歩

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二日目 山湖村

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「おいおい一体何の夢を見たんだ? 楽しそうだな」

「楽しそう? 何が楽しいものですか。悪夢ですよ。悪夢」

助手は悪い夢を見たらしく汗がびっしょり。着替えが心配になる。

もちろん彼のことだ手抜かりはないだろうが。

とりあえず聞くだけ聞いて落ち着かせる。

ただ本人も夢の中身を忘れてしまったのかボーっとしている。


「サライ? 何だそれ? 」 

「とにかくサライがサライが…… 」

取りつかれたように何度も何度もつぶやく。

いい加減嫌になってくる。我慢の限界。

「夢はもういい。さあ行くぞ」

助手を起こし無理矢理連れて行く。

「先生もう帰りません? 物凄く嫌な予感がするんです。危険が迫っていると言うか

得体の知れない化け物がうごめいていると言いますか。

私の第六感が警告を発しています。ここは大人しく帰るべきです」

いつになく真剣な表情で訴えかける助手に押し切られそうになる。

しかしまだ何も起きてない上にまだ辿り着いてさえいない。

ここで引き下がっては探偵の名折れ。ただの臆病者でしかない。


「君ねぇ。早くいかないと事件が起きてしまう。そうなる前に阻止するのが我々探偵じゃないか。違うかい? 」

助手を諭すがはっきりしない。やはり悪夢が尾を引いているのか。

「君がそのままここに残るって言うなら止めないけど。ただ離れの探索を任せることになるけどそれでもいいか」

急いで布団を畳み着替える助手。

「いえ結構です。さあ行きましょう。最終目的地へ」

昨夜のことが堪えたのかごねる様子はない。


八時。開門の時間。

昨日の二人が睨みつける。

よそ者を煙たそうに時折嫌味を言いながらネチネチと。

それでも問題なしと判断されたのか通行を許可される。

開門。村へと。

凄まじい音を立て開いたと思ったらすぐに閉じられる。


「さあここからが山湖村です。どうです美しいでしょう? 」

熱心にコウ君が山湖村の魅力を語るが彼は確か隣村の人間。そこまで自慢する?

空気はきれいだし手つかずの自然が残っている。

観光にはもってこいののんびりした村のようだ。

察するに村人も優しく居心地もよさそうだ。

これから殺人事件が起こるような雰囲気はない。第一印象は悪くない。

「想像してたより自然豊かで空気もよく本当に気持ちいいな」

「そうですか? ただ寂れた村って感じですけど。まあ湖には興味がありますがね。サンセットが人気だって……」

「ええ、数少ない観光スポットです。これを目当てにやってくる観光客もいます。朝陽もいいですがやはり夕陽に湖は最高です。特に今は桜もきれいですよ」

ポツポツとソメイヨシノが配置されている。

「観光スポットや町おこしにはちょうどいいかもしれませんね」

「そうだね。私も一度はゆっくり回ってみるのも悪くない」

呑気に助手と観光気分に浸る。ついつい目的を忘れてしまいそうになる。

「自分は用がありますのでこれで。昨日話したようにすぐ近くに一葉さんが籠っている屋敷があるのでそこから始めるのがよろしいかと」

コウはそう言うと行ってしまった。


さっそく捜索開始。

「さあ初仕事だよ。張り切って行こう」

「はい…… 緊張するな…… 」

「こっちだったかな」

「違いますよ先生。こっちです」

恥ずかしい。方向音痴の探偵など格好悪すぎる。助手の尊敬も信用も失いかねない。

これならコウ君に詳しい村の地図を描いてもらうんだった。すぐに迷ってしまう。

歩いてすぐに館に突き当たった。


「ここかな? 」

「先生あそこに人が」

屈強な男が一人眠そうに目を擦り欠伸をしながら番をしている。

見た目は凶悪そのものだがどうだろう? 意外と臆病で怖がりかもしれない。

助手と共に男の様子を観察。どうしようかと迷っているとその館のすぐ隣から怪しい

視線を感じる。若い男の姿。警戒してかよそ者を排除するつもりなのかじっと見て気

持ち悪い。決していい趣味とは言えない。とりあえずこちらから片付けるか。


若い男の元へ。しかし彼は恐怖からか戸を閉め姿を消す。

激しく戸を叩くが全く反応しない。困り果てて大声を出すが出てくることはない。

「あの野郎。何か知っているのか…… もしかして犯人? 」

助手は弱いものには強いらしくひょろっとした若者には厳しい態度で臨む。

私に代わって何度もしつこくも戸を叩く。


「怪しい奴め」

「もううるさいね。あんたら何用? よそ者のくせして」

見かねた向かいの住人が注意をする。

「観光っす。ここの人がこちらを睨みつけたからつい…… 」

助手はルックスと話術を生かし情報を得る。

「そうかいそうかい。こんな田舎に観光とは嬉しいね。まあゆっくり見て行きな。何もないけど湖はあるからね」

住民を手懐け向かいの者の正体を探る。

「何者って太郎さんかい? 次郎さんかい? 年の近い仲のいい兄弟だよ。

少し臆病で警戒心が強いだけで悪い人じゃあないよ。

そうだ今暇だったら上がっていくかい? 」

誘いを受ける。だがこちらも調査で忙しい。断ることに。


館の方へ。

「おいお前たち。何をコソコソと嗅ぎ回っている。見ていたぞ。怪しい奴め。お前ら一体何者だ? 」

これはちょうどいい。


                続く
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