17 / 22
光と闇
しおりを挟む
時は過ぎていく。
もう辺りは真っ暗。
ライトアップの光が僅かに僕らを照らす。
彼女の足が急激に悪化しもう見ていられない。
僕はおろおろするするばかりでどうすることもできずにいる。
せっかくいいところを見せるチャンスなのだが頭が回らない。
彼女が怒っていないのが唯一の救い。
弱った声で微笑むヨシノさん。
息が苦しそうだ。
「痛みますか? 」
間抜けな質問に苦笑いを浮かべ首を振る彼女。
もう口も開くのも辛いのだろう。
彼女の足の急激な悪化は彼女自身にも意外らしく、ただこう言うのみだ。
「どうしちゃったんだろう? 」
どんどん血の気が引いていく。
その蒼白な彼女の様子をただじっと見守るだけの自分がいる。
血の気が引いた彼女も美しい。そんな感想しか言えない。
「まずいですよヨシノ先輩。痛みますか? 分かりました。
病院に行きましょう。どうしようもなければ救急車を呼びますが」
彼女は僕の提案のすべてに首を振る。
どうしたと言うのだ?
我がままを言うなと叱り飛ばしたい。
彼女は依然辛そう。
助けが必要な状況に変わりはない。
何とも不甲斐ない。
彼女は僕を信頼していないのか?
ベンチまで戻ってきた。
光と闇。
ライトアップの公園と夜道。
彼女と僕。
月の光と心の奥の欲望。
一緒になる。
混じり合う。
僕は自分の心の奥のさらに奥にしまってある愛と言う名の欲。
決して表には出してはいけない感情が見え隠れするようになった。
何度も声をかけるが反応は薄い。
ベンチに座らせ上着を着せてやる。
ありがとうと弱々しく返す彼女。
何とも痛々しい限りだ。
しかしそれでも美しいのだ。
なぜこんなにも惹きつけられるのか?
輝きは決して失われてなどいない。
いや、逆に増しているようにも見える。
「フフフ…… どうしたの? 」
「いえ、僕はちょっと飲み物でも買ってきます。そこで大人しく…… 」
動く体力も残されていない。ぐったりしている。
急いでドリンクを調達。
「ヨシノ先輩…… 」
大丈夫だ。どうやらそのまま眠ってしまったらしい。
寝顔がライトに照らされ映えている。
何と美しいことか。
見事までの芸術作品。
これがアートであるならばこの格好では物足りない。しかしまだ春でしかも強風だ。
このままゆっくり鑑賞するのがいいだろう。
もう誰も邪魔をする者はいない。
今が絶好のチャンス。
心に秘めた思いを伝えねば。
今ならできる。
自分を鼓舞する。
ほら自分!
勇気を出して!
寝ている彼女の横へ。
偶然を装ってこんな事やあんな事も……
気持ちよさそうに寝息を立てる彼女に肩を貸してやる。
よし今だ!
決行の時。
後戻りはできない。
後悔もしないしさせもしない。
ダメだ……
体が言うことをきかない。
なぜだ?
どうしても緊張してしまう。
ためらう。
自分よしっかりしろ!
もう彼女は許しているではないか。受け入れているはず。
それが分からないのか!
何をためらう必要がある?
救ってやれ!
彼女の気持ちに応えてやれ!
求められているのが分からないのか?
ほら今も目を閉じて待っている。
笑みが何よりの証拠だ。
誘っている。それが分からないのか?
続く
もう辺りは真っ暗。
ライトアップの光が僅かに僕らを照らす。
彼女の足が急激に悪化しもう見ていられない。
僕はおろおろするするばかりでどうすることもできずにいる。
せっかくいいところを見せるチャンスなのだが頭が回らない。
彼女が怒っていないのが唯一の救い。
弱った声で微笑むヨシノさん。
息が苦しそうだ。
「痛みますか? 」
間抜けな質問に苦笑いを浮かべ首を振る彼女。
もう口も開くのも辛いのだろう。
彼女の足の急激な悪化は彼女自身にも意外らしく、ただこう言うのみだ。
「どうしちゃったんだろう? 」
どんどん血の気が引いていく。
その蒼白な彼女の様子をただじっと見守るだけの自分がいる。
血の気が引いた彼女も美しい。そんな感想しか言えない。
「まずいですよヨシノ先輩。痛みますか? 分かりました。
病院に行きましょう。どうしようもなければ救急車を呼びますが」
彼女は僕の提案のすべてに首を振る。
どうしたと言うのだ?
我がままを言うなと叱り飛ばしたい。
彼女は依然辛そう。
助けが必要な状況に変わりはない。
何とも不甲斐ない。
彼女は僕を信頼していないのか?
ベンチまで戻ってきた。
光と闇。
ライトアップの公園と夜道。
彼女と僕。
月の光と心の奥の欲望。
一緒になる。
混じり合う。
僕は自分の心の奥のさらに奥にしまってある愛と言う名の欲。
決して表には出してはいけない感情が見え隠れするようになった。
何度も声をかけるが反応は薄い。
ベンチに座らせ上着を着せてやる。
ありがとうと弱々しく返す彼女。
何とも痛々しい限りだ。
しかしそれでも美しいのだ。
なぜこんなにも惹きつけられるのか?
輝きは決して失われてなどいない。
いや、逆に増しているようにも見える。
「フフフ…… どうしたの? 」
「いえ、僕はちょっと飲み物でも買ってきます。そこで大人しく…… 」
動く体力も残されていない。ぐったりしている。
急いでドリンクを調達。
「ヨシノ先輩…… 」
大丈夫だ。どうやらそのまま眠ってしまったらしい。
寝顔がライトに照らされ映えている。
何と美しいことか。
見事までの芸術作品。
これがアートであるならばこの格好では物足りない。しかしまだ春でしかも強風だ。
このままゆっくり鑑賞するのがいいだろう。
もう誰も邪魔をする者はいない。
今が絶好のチャンス。
心に秘めた思いを伝えねば。
今ならできる。
自分を鼓舞する。
ほら自分!
勇気を出して!
寝ている彼女の横へ。
偶然を装ってこんな事やあんな事も……
気持ちよさそうに寝息を立てる彼女に肩を貸してやる。
よし今だ!
決行の時。
後戻りはできない。
後悔もしないしさせもしない。
ダメだ……
体が言うことをきかない。
なぜだ?
どうしても緊張してしまう。
ためらう。
自分よしっかりしろ!
もう彼女は許しているではないか。受け入れているはず。
それが分からないのか!
何をためらう必要がある?
救ってやれ!
彼女の気持ちに応えてやれ!
求められているのが分からないのか?
ほら今も目を閉じて待っている。
笑みが何よりの証拠だ。
誘っている。それが分からないのか?
続く
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。
矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。
女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。
取って付けたようなバレンタインネタあり。
カクヨムでも同内容で公開しています。
隣人はクールな同期でした。
氷萌
恋愛
それなりに有名な出版会社に入社して早6年。
30歳を前にして
未婚で恋人もいないけれど。
マンションの隣に住む同期の男と
酒を酌み交わす日々。
心許すアイツとは
”同期以上、恋人未満―――”
1度は愛した元カレと再会し心を搔き乱され
恋敵の幼馴染には刃を向けられる。
広報部所属
●七星 セツナ●-Setuna Nanase-(29歳)
編集部所属 副編集長
●煌月 ジン●-Jin Kouduki-(29歳)
本当に好きな人は…誰?
己の気持ちに向き合う最後の恋。
“ただの恋愛物語”ってだけじゃない
命と、人との
向き合うという事。
現実に、なさそうな
だけどちょっとあり得るかもしれない
複雑に絡み合う人間模様を描いた
等身大のラブストーリー。
【短編】三姉妹、再会の時 ~三姉妹クロスオーバー作品~
紺青
恋愛
あれから十年後、三姉妹が再び会う時、お互いなにを思うのか? 離れ離れになった元スコールズ伯爵家の三姉妹がそれぞれの家族と幸せになり、互いの家族と共にひょんなことから再会することになった。大人になった三姉妹の再会の物語。
※「私はいてもいなくても同じなのですね」次女マルティナ、「私がいる意味はあるかな?」三女リリアン、
「私は生きていてもいいのかしら?」長女アイリーンのクロスオーバー作品。いずれかの作品を読んでいないとわからない内容になってます。
もし学園のアイドルが俺のメイドになったら
みずがめ
恋愛
もしも、憧れの女子が絶対服従のメイドになったら……。そんなの普通の男子ならやることは決まっているよな?
これは不幸な陰キャが、学園一の美少女をメイドという名の性奴隷として扱い、欲望の限りを尽くしまくるお話である。
※【挿絵あり】にはいただいたイラストを載せています。
「小説家になろう」ノクターンノベルズにも掲載しています。表紙はあっきコタロウさんに描いていただきました。
My Doctor
west forest
恋愛
#病気#医者#喘息#心臓病#高校生
病気系ですので、苦手な方は引き返してください。
初めて書くので読みにくい部分、誤字脱字等あると思いますが、ささやかな目で見ていただけると嬉しいです!
主人公:篠崎 奈々 (しのざき なな)
妹:篠崎 夏愛(しのざき なつめ)
医者:斎藤 拓海 (さいとう たくみ)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる