上 下
4 / 22

四分咲き

しおりを挟む
自己紹介を済ますとパーティー開始。

「ほらまず一杯」仲間の一人が紙コップに日本酒を注いでくれた。

僕も相棒もまだ未成年。断ろうとするもお構いなし。促されるままに一口。

悪くない味だ。

相棒は観念したのか紙コップを空ける。僕も負けじと飲み干す。

「良い飲みっぷりだね! 」リーダーが見直したと言い、褒めてくれる。

彼は気持ちよくなったのか笑い出す。そうすると周りの者も自然と笑う。

僕らもつられえて笑顔を作る。リーダーの機嫌を損ねないのは良いことだ。

この中で一番であろう体つき。襲いかかられたらたまったものではない。

他の者も僕らよりも年上で体格も申し分なくいわゆるアスリート系。

いや、ストリート系かな。


この中で一番厳ついのがこのサークルのリーダー。

それ以外は雑魚と言うことだ。敢えて光を当てる必要はないだろう。

「よし今度は俺の番だな」雑魚の一人が僕たちのコップに満杯まで注ぐ。

手を振って拒否するも注ぐが先で断れない。

他の奴らはその様子を面白がって眺めている。

嬉しいのか。気持ちいいのか。からかっているのか。親しみを込めてなのか。

悪意を持って笑っているのか。判断がつかない。とにかく皆笑っている。

僕たちもつられて苦笑い。

よし次は俺だと三杯、四杯と注ぎそれをすぐに飲み干す。

いくら紙コップとは言え四杯もとなればかなりの量で酔いが回ってくる。

相棒の頬も赤くなっているのがライトアップの光で確認できる。

彼の様子から察するに僕も似たような状態。

大げさな相棒の物言いでは酷く酔っぱらっているのだとか。

もう二人とも酔っぱらい。

しかし奴らに変化はない。そう見えるだけなのか。ただ我慢しているのか。

強いらしい。そこだけは尊敬できる。


辺りを見回す。

桜が綺麗だ。

しかし主役の桜はただ存在するだけ。誰も見ていない。

周りの客も似たようなもので大声を上げて騒いでいる。

何がそんなに楽しいのか分からないがよくそんなテンションでと驚く。

驚くし関心もする。だが呆れるが正しいのかもしれない。

僕らはついていけない。いや相棒はそうでもなさそうだ。

元来、陽気な奴で。緊張もほぐれて上手くやっている。

かわいがられるタイプ。それに比べて僕は変に冷静なのだから困る。


ほらよ。

再び勧めてくる。悪気が無いので厄介だ。

もう無理だときっぱり断るが全く動じない。慣れている。

「ほらこれ一杯だけ。これを飲み干したら良いことを教えてやる」

酔っぱらいの戯言を真に受けてもと思うがリーダーの鋭い視線を感じ五杯目へ。

「よしいいぞ。良いかこれは内緒だぞ」

首を縦に振る。

「あと少ししたら来るぞ。ハハハ」

誰が来るのかは謎のまま。

詳しく聞いてみる。

「あと三十分」六杯目へ。

促す。

「女性陣が追加を用意してくるのさ」

「本当ですか? 」ついつい興奮する。

「嘘なんか吐くかよ」七杯目。

テニスサークルは事実らしく後から参加するメンバーが二十人近くいるそうだ。

男女比は六対四。残りはほぼ女性だとか。

信用はできないが期待は膨らむ。

と言うよりもその計算間違ってないかと。

僕がバカなのか。彼らがバカなのか。ただの出任せなのか。


相棒はやったと赤い顔をこちらに。

紙コップとは言えこれで七杯目。もうそろそろ限界。

「それからな今日は他のテニスサークルと合同の飲み会がある。

あと一時間もしたら始まる。もちろんお前らも参加するよな」

「へー。まあいいか」八杯目。

「そこにはなんとお前らを誘った二人も来ることになってんだ。嬉しいか? 」

来れないんじゃなかったっけ? どうも信用できない。

「うおー! ラッキー! 」相棒は九杯目へ。

「それからよ…… 」この言葉を最後に僕は酔い潰れてしまう。

後は途切れ途切れの記憶しかない。


「おう! ダウン! 」

「こっちも」二人同時に酔い潰れてしまう。

リーダーが指示を出す。

それから少ししてぞろぞろと集団がブルーシートの前へ。

「遅くなりました」

合流メンバーが姿を現した。


夜桜パーティーは第二部へ。

「おい、誰かこの二人を駅まで送ってやってくれ」

さすがにまずいと判断したのか面倒なことを押し付けるリーダー。

意識が薄れる中、両肩を抱えられて駅の方へ。

親切にも送ってくれた者。

一人は男性。もう一人は女性。

薄っすらとした記憶と匂い。そこまでが限界。後は何も覚えていない。

せっかく楽しみにしていたのに第一部で脱落とは情けない。

奴らの物言いだとずいぶん良さそうに言っていたが果たして本当なのか。

                    続く
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

サイコーにサイコなカノジョ。

須藤真守
恋愛
大学4年生の青年・武田 孝介はバイト先の高校2年生の美少女・相澤 穂香に片思いしていた…はずだったが…。サイコサスペンスラブコメディが始まる…!衝撃のラストを目撃せよ!

お見合い相手は極道の天使様!?

愛月花音
恋愛
恋愛小説大賞にエントリー中。  勝ち気で手の早い性格が災いしてなかなか彼氏がいない歴数年。  そんな私にお見合い相手の話がきた。 見た目は、ドストライクな クールビューティーなイケメン。   だが相手は、ヤクザの若頭だった。 騙された……そう思った。  しかし彼は、若頭なのに 極道の天使という異名を持っており……? 彼を知れば知るほど甘く胸キュンなギャップにハマっていく。  勝ち気なお嬢様&英語教師。 椎名上紗(24) 《しいな かずさ》 &  極道の天使&若頭 鬼龍院葵(26歳) 《きりゅういん あおい》  勝ち気女性教師&極道の天使の 甘キュンラブストーリー。 表紙は、素敵な絵師様。 紺野遥様です! 2022年12月18日エタニティ 投稿恋愛小説人気ランキング過去最高3位。 誤字、脱字あったら申し訳ないありません。 見つけ次第、修正します。 公開日・2022年11月29日。

となりの吸血鬼がぼくの血ばかり吸ってくる

白い彗星
恋愛
 平凡な日常、普通の生活。  ぼくの周りは、しかし少し普通とは違っている。  幼馴染であるサキ、その正体はなんと吸血鬼。  サキの家に厄介になっているぼくは、彼女とある行為をしている。 「ねぇ、もう我慢できないの……」  吸血鬼である彼女の日課は、ぼくの血を吸うこと。  今日も今日とて、ぼくと彼女の、普通の日常は過ぎていく。  吸血鬼の彼女との、ちょっぴりドキドキの青春作品です。  全5話ですので、気軽に見てもらえたらなと思います。  小説家になろう、ノベルピア、カクヨムでも連載しています!

地味系秘書と氷の副社長は今日も仲良くバトルしてます!

めーぷる
恋愛
 見た目はどこにでもいそうな地味系女子の小鳥風音(おどりかざね)が、ようやく就職した会社で何故か社長秘書に大抜擢されてしまう。  秘書検定も持っていない自分がどうしてそんなことに……。  呼び出された社長室では、明るいイケメンチャラ男な御曹司の社長と、ニコリともしない銀縁眼鏡の副社長が風音を待ち構えていた――  地味系女子が色々巻き込まれながら、イケメンと美形とぶつかって仲良くなっていく王道ラブコメなお話になっていく予定です。  ちょっとだけ三角関係もあるかも? ・表紙はかんたん表紙メーカーで作成しています。 ・毎日11時に投稿予定です。 ・勢いで書いてます。誤字脱字等チェックしてますが、不備があるかもしれません。 ・公開済のお話も加筆訂正する場合があります。

彼女の幸福

豆狸
恋愛
私の首は体に繋がっています。今は、まだ。

隠れ御曹司の愛に絡めとられて

海棠桔梗
恋愛
目が覚めたら、名前が何だったかさっぱり覚えていない男とベッドを共にしていた―― 彼氏に浮気されて更になぜか自分の方が振られて「もう男なんていらない!」って思ってた矢先、強引に参加させられた合コンで出会った、やたら綺麗な顔の男。 古い雑居ビルの一室に住んでるくせに、持ってる腕時計は超高級品。 仕事は飲食店勤務――って、もしかしてホスト!? チャラい男はお断り! けれども彼の作る料理はどれも絶品で…… 超大手商社 秘書課勤務 野村 亜矢(のむら あや) 29歳 特技:迷子   × 飲食店勤務(ホスト?) 名も知らぬ男 24歳 特技:家事? 「方向音痴・家事音痴の女」は「チャラいけれど家事は完璧な男」の愛に絡め取られて もう逃げられない――

裏世界の蕀姫

黒蝶
恋愛
理不尽な家族の元から逃げ出した月見(つきみ)は、絶望の淵にたっていた。 食べるものもなく公園で倒れていたところを助けてくれたのは4人の男性たち。 家族に見つかるわけにはいかないと不安になる月見に、救いの手が差し伸べられる。 「大丈夫だよ。僕たち『カルテット』は簡単に人に話したりしないから」 彼等には秘密があった。 それは、俗に言う『裏社会』に関わる『カルテット』と呼ばれるチームメイトであるということ。 彼等の正体を知った瞬間、月見は自らの能力を使いながら共に蕀の道を突き進んでいくことになる。 「これから先、一緒にどこまでも堕ちてくれる?」 星空の下、彼と真実の愛を誓う。 ──さあ、あなたは誰の手をとりますか? ※念のためR-15指定にしてあります。

#この『村』を探して下さい

案内人
ホラー
 『この村を探して下さい』。これは、とある某匿名掲示板で見つけた書き込みです。全ては、ここから始まりました。  この物語は私の手によって脚色されています。読んでも発狂しません。  貴方は『■■■』の正体が見破れますか?

処理中です...