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第一章

22.推し見っけたわ!

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あまりにも自分の知ってる姿のbeforeとAfterの差がえげつなさ過ぎて混乱する。

「え?本当にエイトなの?」

「だから僕だって言ってるだろう」

ムスッとする姿さえ美しすぎて固まる。
すると隣にいたケインがエイトに話しかけた。

「初めましてだな。
貴方がテミス連合の頭領【エイト】様なのか?」

「あぁ、そうだぞ。ロドリゲス子爵」

「ケインでいい。
我は貴方の戦略や先を見通す行動にはいつも感心している」

「僕もエイトでいいよ。
君の戦略も何度か影で拝見したが実に素晴らしかったぞ」

「光栄だ」

お互い握手してケインは素の表情で嬉しそうに笑った。
当然、俺たち以外にそういう笑顔を見せるなんて珍し過ぎて困惑する。

「けっケインが僕達以外に笑ったよ!!?」

「明日は落雷が降るかもしれないな」

「……てか吹っ飛ばされた人大丈夫なのか?」

ケインの事も驚きだけどそれよりも倒れてる人の方が気になって仕方ない。
チロっと見ると、ピクリと動いて勢いよく起き上がって叫んだ。

「エイト!!なんで蹴っ飛ばしたんだ!!」

「煩いぞダリウス」

「ゴメン!てかそこのイケメン!!
ずっとエイトの手握ってんじゃねぇよ」

倒れてた場所からズカズカと来てエイトとケインの手を無理やり離した。

「ダリウス。幾らなんでも子爵相手に失礼だぞ」

「だって俺のエイトが狙われると思って」

「安心しろ、僕はお前のものでも無い」

……初っ端から色々と濃すぎて胃が痛い。
取り敢えず屋敷の中に入れよう。

「えーと、取り敢えず中に入って話そうぜ」

「「「「「そうだな」」」」」

食堂で紅茶を飲みながら少し雑談した後に改めて自己紹介から始まった。

「改めて皆で自己紹介しようぜ」

「なら僕から始めるよ。
僕はテミス連合の頭領をしているエイトだ」

「同じくテミス連合の幹部のダリウスだ。
エイトに手出したら殺すからな」

ギロリと殺気を出しながら俺達を睨んむ。
いや、誰もエイトの事手出さないって。

「えーと、一応王国騎士団長を務めている侯爵のアーク・ウィルソンだ」

「同じく一応、王国研究開発研究長をやってる伯爵のエリック・ガルシアだよ!」

「我も同じく一応、王国海軍艦艇軍元師を任命されている子爵のケイン・ロドリゲスだ」

「俺は公爵のアベル・ダニエリック。
取り敢えず初めましてのダリウスさんもよろしくな」

「「「「「よろしく」」」」」

その後は各自それぞれで会話が始まった。
ケインが珍しく自分からエイトに話しかけに行って、楽しそうに会話をしていた。

いつもなら絶対に隣から離れないケインが自分から離れてエイトと話している光景に心がモヤッとする。

するとダリウスがドスンと隣に座ってきた。

「ダリウスさん」

「なぁ、ケイン子爵はエイトとどういう仲なんだ?」

「さぁ?俺にも分かんない」

前世のアベルはケインと全く接点なかったし。

「ケイン子爵がもしもエイト狙ったら後悔させながら殺してやる」

ケインを睨みつけてるけど全く気づいてなくてダリウスさんは舌打ちをした。
俺は内心、暴れないで黙ってたらエイト好みのイケメンなんだよなぁと紅茶を啜りながら宥める。

「まぁまぁ、落ち着きなよダリウスさん。
2人とも戦略を考えるのが大好きだから語り合ってるだけだよ」

「それなら良いが。出会った頃からエイトは魅力的だったから心配で仕方ないんだ」
 
「へぇ~!どんな出会い方したの??」

「…詳しくは話せないが死に物狂いで暗殺者から逃げっきてズタボロ状態だった所をエイトに助けられた」

「サラッと言ってるけど暗殺者ってやばいな」

「まぁな。でも明らかに訳ありな俺を見殺しにしないで助けて貰っただけでも有難いのに、仲間にまで入れてくれて今は相棒として隣に居るだけでも奇跡みたいなもんだな」

そう愛しそうにエイトを見ながら話す姿がめちゃくちゃイケメン過ぎる。

「やっぱエイトの事すきなの?」

「好きよりも愛してる…が伝えるつもりは無い」

「お"っ、そっそうなんだ」

一瞬変な声が出たけど何とかにやける顔を抑えながら会話を数分続けた。
そろそろケインと楽しそうに会話をするエイトに痺れを切らしたのかダリウスはちょうどいいタイミングで会話を切り上げた。

「悪いがそろそろエイトと話したいから行くな」

「あぁ、どうぞ」

隣からダリウスが居なくった瞬間。
ゲンドウポーズをしながら尊さに振るえた。

やべぇぇこの世界で推し見っけたわ!!

だってビジュのいい男の甘いセリフと微笑みの威力がえげつなさ過ぎだしさ。こんなにも一途に思ってるのに想いは伝えないとかラノベのヒーローすぎて推しになるだろ。

リアルでハァハァしかけながら気づかれない様に3人を凝視すると。

「エイト」

「ん?なんか用か?」

「いい加減ケイン子爵より俺を構って」

「……ケイン、すまないがダリウスが構って欲しいらしいから一旦切り上げてもいいか?」

「あぁ、いいぞ」

ぐぁぁぁぁ!!!キュンキュンが止まらん。
ラノベでもこんなに胸キュンになるシーンねぇぞ。
独占欲強い犬系イケメン×無自覚俺様系な飼い主とか最高すぎて心の中で笑いがとまんねぇよ。

真顔のまま、ふひっと声が漏れてるのに気が付かずいつの間にか近くにいたケインが心配して声をかけてきた。

「どうしたんだアベル」

「…ケイン!?いやっ!なんでもない」

「そうか、隣いいか?」

「あっ、いいよ」

慌てながら答えると心配そうに見てくる。
ごめん、あの二人の関係にキュンキュンしてたとか口が裂けても言えないんだわ。

「先程から様子が変だが体調悪いのか」

「いやぁ?別に普通だけど」

「ならいいが、体調が悪くなったら直ぐ我に言って欲しい」

「はは、ケインは心配症だな」

心の底から心配してくれるケインにホッコリすると、突然エイトがダリウスの顔を引っぱたいて俺の所にズカズカと近づいた。

「えっエイト?」

「来い」

「えぇぇ」

ガシッと腕を掴まれてズルズルと食堂を後にした。



続く
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