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第一章

28.思い出した皇子様(後編)

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あれから僕はミカに1度も会いに行かず公務に没頭した。
休まない僕を使用人達は心配してミカを呼ぼうとしていたが顔を見ただけで、殺してしまいそうになるから理由を付けて来るのを止めさせた。
まぁ言ったところで来るとは思わないけどな。

「…はぁ」

気づくまでは盲目にミカを愛していたのに今では殺したアベルを生き返らせて愚かな僕が犯した罪を一生償わせて欲しいと何度も願ってしまう。

「あぁ、アベルに会いたい」

虚ろな目でぽつりと呟くとバンっと扉が開いた。

「……ロドリゲス子爵」

誰も入らないように扉に鍵をかけ。
そしてロドリゲス子爵は怒りと憎しみに満ちた目で僕の胸倉を掴んで浮かした。

息が出来ずに苦しいが無気力だった。

「あの美しい人を自らの欲で殺したくせによく会いたいと言えるな」

「……ロドリゲス子爵はアベルを愛していたのか」

「あぁ、貴様を殺して略奪したい程に愛していた」

「……そうか」

「だがダニエリック公爵は心の底から貴様を愛してたから我はこの想いが報われなくても良いと遠くから思っていた」

「……」

「その結果がコレだ」

ハッと吐き捨てるように笑う姿は痛々しかった。

「……すまない」

目を見て言うと、ドサッと勢い良く床に叩き付けられる。
もう心も体もボロボロでピクリとも自力で起き上がれなかった。

「すまないの一言で済んだら良かったのにな」

「……」

「あのゴミは貴様が会いに来ないのを良い事に我を誘惑してきたから無味の毒で徐々に弱らせた」

「……」

「今夜中に病として亡くなるだろうな」

「………そうか」

もう何とも思わない。

「だが一つだけ救いをやろう」

「救い…?」

ボロボロの体で何とか起き上がる。
救いなんてもう無いのに。

「2日後の満月の日に子供連れてーー森に行け」

「何故ーー森に子供を連れるんだ」

「……そのーー森に居るある人間の話を聞いてから貴様が決めろ」

そう言い残して用が無くなったのか扉の鍵を開けて出ていった。

次の日になるとミカは謎の病として亡くなった。
久しぶりに見た顔はやせ細り可愛らしかった面影もなく死んだ。
僕に嘘を吐いていたメイド長は気まづそうに何処か青ざめた表情で声をかけてきた。

「皇子様」

「…死んだな」

「……」

「早く墓に埋めてやれ」

それだけ言い残して乳母に抱かれてた幼い子供をチラリ見て公務に戻った。 

それから皇妃が病で亡くなったと瞬く間に広がり、賛成派の貴族達や市民は泣きながらミカの死を嘆き追悼をしていた。
一方ロドリゲス子爵は、少ない荷物を持って城からいつの間にか居なくなっていた。

ーーーーーーーーー

満月の日がやってきて、僕はロドリゲス子爵に言われた通りに幼い子供を連れてーー森に入る。

入った瞬間、何かに誘われるように歩くと古い建物があり中に入ると。

そこには僕と同じ位の若い魔法使いが居た。

「おっ!ここに来れたって事は君がケイン子爵が言ってた王様かい?」

「あっあぁ」

「そう警戒しなくても大丈夫だよ」

ニコニコと人良さそうに笑っているが胡散臭くて仕方がない。
さっさと本題に入ろう、

「ロドリゲス子爵が子供連れていけば救いがあると言われた」

「おや?いきなり本題とはせっかちだね」

やれやれと態とらしい態度をした後に指を鳴らし目の前に突然机が現れた。

「さぁ座って」

「あぁ」

「では救いの話をしようか!」

もう一度指を鳴らすと目の前に契約書が現れる。

「ケインから聞いた話だと君は心の底から愛してくれた婚約者を蔑ろにして他のやつに惚れて邪魔になったから私欲で無い罪を被せて殺したんだね」

「……あぁ」

「ふぅん、何処も在り来りだねぇ。
よし、最後の質問だ。君は今でもその元婚約者を愛してるかい」

「愛してる」

「何を差し出してもかい?」

「当然だ」

「なら隣にいる子供を生贄に差し出してくれ」

ニッコリと無邪気に笑う。

「いいぞ」

「……え?」

「生贄に僕の子供が欲しいんだろう?」

「そうだけど一応君の子供だよ」

「だからなんだ?」

ミカとの子供を差し出してアベルに償えるなら当然だろう。

「……はぁぁ、予想外」

「で、契約の内容はどうなんだ」

「契約し終わったし回帰魔法をかける」

「回帰魔法?」

「最初っから過去に戻ってまた1からやり直せる魔法ってこと」

最初からリセットということは。

「子供を失う上に今までの記憶が無くなるって事!」

「また繰り返すかもしれないということか」

「そーゆー事。だけどケインが君に情をかけてくれたよ」

「ロドリゲス子爵が?」

「うん!仲が良かった家族との愛と引き換えに君が今の記憶を回帰しても思い出せるようにしてくれってね」

「……なぜ」

「私の推測だけど、ケインは君が元婚約者に犯した罪を消させないためじゃないかな?」

「……」

「それじゃあ記憶を呼び覚ます言葉を言ってくれ」

パッと出てきたのは僕が必ず何かあった時に言う言葉だろう。

「【僕は愚かだったのか】」

「OK!じゃあ頑張ってね笑」

次の瞬間、目の前が真っ暗になった。



ーーーーーーーー

そして現在に至り、俺は溜息を吐く。

「全て思い出したが過去とは全く違うな」

それに、あのアベルは僕の愛した【アベル】とは全く似ていないし何か問題があったのだろうか。
だが必ず見た目が違えど【アベル】は転生しているはずだ。

「こうしちゃいられないな」

まずは僕の愚行のせいで怒り狂った父を止めてから市民からの信頼を取り戻そう。

全て落ち着いたら、ミカの捜索を後回しにして何としても今のアベルとコンタクトを取り【アベル】を知ってるか聞こう。

例え【アベル】と出会えて君に犯した罪を許されなくて殺されても僕は構わないと思ってる。
それ程残酷な事をしたから。

ズキズキと痛む体を動かしてトビラを開く。

ドアの外に執事達や騎士が待機していた。

「皇子様!!?」

「今すぐ王にコンタクトをとれ」

「いっいけません!そんなお体では」

「これは命令だ!!

「はっ、かっかしこまりました」

サッとその場から急いで離れて、取り残され、困惑している騎士たちに命令をした。

「騎士の1人は僕の援助を。
残りは元にいた配置に戻ってくれ」

「ハッ!」

優秀な騎士が僕の援助をして、残りは元にいた配置に戻って行った。

こらからが勝負だなと密かにまたため息を吐いた。


続く……更新遅くなります。
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