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第一章

19.何してるんだろ

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ーーーーーーー

両親が隠れ家に来てから再度みんなで熟睡をした。
俺が起きる頃には3人は俺の部屋でご飯を食べながら今後の事を真剣に話しあっていた。
俺が前世と全く違う行動をしたから、これから何が起こるかも分からない。
そんな不安を閉じ込めて眺めていた。

するとエリックが眺めているのに気づいて笑顔で抱きしめてきた。

「おはよーアベル」

「はよ」

それに気づいて2人もこっちに来て抱きしめてくる。

「アベル起きたのか!おはよう」

「おはようアベル。ぐっすりと寝ていたな」

「はよ、お前ら元気だな」

はぁとため息を吐いてベットから降りた。
俺もソファーに座ってさっき話していた続きを聞いた。

「えーと改めてなんだけどさ、執事から聞いた話だと僕は解雇とかされてなかったよ」

「俺もだな」

「我もそうだ」

「皇子あんなにイキってたのにお前らのこと解雇出来なかったんだな」

「ちょwアベルw」

「あはは」

「ふん、所詮はクズだな」

相変わらずケインの毒舌に苦笑する。
ふと、前世のアベルことエイトを思い出して提案してみた。

「なぁアーク」

「なんだ?」

「実はお前の領地に俺の友達いるんだけど会えたり出来ねぇ?」

「「「アベル友達いたのか!??」」」

「ぶち殺すぞ」

「すまんすまん、何処に暮らしているんだ?」

「市民街」

「市民街か、名前も教えてくれ」

「エイトって名前なんだけど分かるか?」

エイトの名前を出した瞬間、サーととアークの顔が血の気が引いた様に真っ青になった。

「えっと、本当にエイトって??」

「おう」

「………分かった。招待状を騎士に通じて渡してもらうよ」

「さんきゅー」

何でアークが青ざめたかは分からないけど、取り敢えずエイトに会えるってことか。

「あー、楽しみ♪」

今のエイトは何してるんだろう。


ーーーーーーー

ガッ、ドスッ、バキッ。

「ヒィ、ごっゴメンなさい!ゆっ許しっ、」

「うるせぇ裏切り者が」

ゴキっと何度折ったか分からない足を更に曲げると、ぎゃあああと苦痛に満ちた声が部屋に響く。
反対側も折るかと腕を動かす。
すると、後ろの扉が開いて場違いな呑気な声が聞こえた。

「おーい、エイトー!」

「…何だ【ダリウス】」 

「お前に金持ちの客きてるぜ」

「何時もの狸爺なら帰らせろ」

「いや、ウィソン侯爵様の紋章付けてるやつ」

「ウィルソン侯爵?」

「そうそう!
まぁ取り敢えず客室に待たせてるから行けば」

ふむ、と少し考えた後、その客の所に行く事にした。

「じゃあ僕が戻るまでソイツを頼んだ」

「おっけー」

椅子に括り付けた裏切り者を仲間に任せて、自分は客のところに向かう。
扉がしまった瞬間におぞましい叫び声が漏れて聞こえた。


客室の扉を開けると、そこには傲慢そうな若い騎士がソファーにふんぞり返っていた。
僕も向かいのソファーに座り笑顔で対応する。

「やぁ、お待たせ。
ウィルソン家の騎士様が僕に何の用かな?」

「はっ、アーク様が下賎で野蛮な下民に招待状を渡せと。有難く感謝しろよ」

雑に招待状をテーブルに置かれ、その手紙に手を伸ばした瞬間。足で招待状ごと僕の手を踏みにじり、ゲラゲラと汚い声で笑う。
僕は笑顔のまま、躊躇いなく銃でその足を貫いた。

「ぎゃあぁぁ!!!」

「おや?誇りある騎士様がこの程度の痛みで叫ぶなんて脆弱だなぁ」

騎士は涙を流しながら貫かれた足を抑えて叫び散らかす。

「貴様ぁぁ絶対に殺してやるぅぅ!!」

「そうかい、なら」

スっと立ち上がり騎士の顔を思いっきり掴んだ。

「お前がどう喚こうが、この場所は僕の領域だ。
拷問で殺してからお前の騎士団の前にバラバラになった肉片を置いても問題ないんだぞ?」

「……は」

さっきの威勢とは違い、覇気のない真っ青になった顔と絶望した声で呟く。
だから笑顔で頭に拳銃を突きつけて笑った。

「下賎な市民だからって舐めてると平和ボケしてるお前の命は一瞬で消えるって覚えておけ」

「ひぃぃ」

ガタガタと震えたあと、失禁して気絶した。

はぁともう何度目か分からない溜息を吐く。
傍で隠れてみていた仲間にソイツを外に捨てておけと後処理の命令をした。
まぁ結局ダリウスが僕の手を見たら絶対にさっきのやつは暗殺されると思うけどな。

裏切り者の部屋に戻りながら間に考え事をする。

この手紙は多分ウィルソン侯爵を通じてアベルからの招待状だろう。

アベル中では僕はただの幸せな一般市民だと思っているようだが違う。

僕は自国や他国の悪に手を染めた王族や貴族たちの間で怯えられている程デカい裏組織の親玉だ。

アベルが僕と繋がりがある事を知って、ウィルソン侯爵はさぞかし焦っただろう。
その顔を想像するだけで面白い。

「アハハ!!早く返事を書かなくてはなぁ」

気分が高まり、カツカツと歩みを進める。
誰もいない廊下に笑い声だけが響いた。

続く


ダリウス (22)

暗殺者に追われて傷だらけで行き倒れていた所をエイトに助けられからずっと傍に居る。
市民らしからぬ孤高の高貴さとオーラに心酔して恋心を密かに寄せている。
エイトに隠してるが実はかなり訳あり。
時々、長期で傍から居なくなったりするがエイトは何かの用事だろうと全く気にしない。





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