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第一章
13.黙れ
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【ケインside】
急いで隠れ家から出ていき自分の愛馬でその紙に指示されていた場所に向かった。
ミカの名前を出した瞬間にアベルは恐ろしく冷めた目で我を見てゾッと背筋が凍った。
「我はアベルだけなのにな」
確かに皇子が連れて来たミカという男は女性のように可愛らしい見た目と性格だなとは思ったが全く興味すらない。
我の心を動かすのは美しいアベルだけだ。
あの2人もきっとそうだろう。
アベルのことを考えながら馬を走らせる。
数時間してその指定された場所に着いた。
その場所は田舎の酒屋だった。
「急いで戻らなければ」
キイっと寂れた木のドアを開ければカウンターらしき場所に1人ぽつんと座っていた。
ヅカヅカと近づくと、こちらに気づき、ポロポロと涙を流してた。
「ケイン様」
「…早く我を呼んだ用件を言え」
「っ、僕、あのデビュタントの後にアベル様が急に来て皇子様にもう近づくなって言われました」
ん?何言ってるんだコイツ?
アベルは我らと一緒にいるからありえないぞ。
それに、もしそれが本当だとしても婚約者なんだから当たり前だろう。
「……それで?」
「うっ、ぐす、皇子様にその事を伝えたら怒ってアベル様を探して殺してやるって!!」
あぁ、だからあの2人が皇子に呼び出されたのか。
怖いのを含めて我はアベルの味方だと思ったから。
それからもミカは有り得ない事ばかり我に話す。
最低限の相槌を打ちながらミカの話を聞いた。
それにしてもコイツ先程から妄言しか吐かないから今直ぐにでも殺してやりたい。
「事情は分かったが我を呼んだのは何故だ?」
「それは、ぼっ僕は皇子様とは大切な友人でアベルが僕と皇子様が恋人同士だと勘違いしていて」
「そうか」
「ぼっ僕が好きなのはケイン様なんです!」
ぎゅっと抱きつかれウルウルとした瞳で我を見上げた。
…………ほぉ?友人と言いつつお揃いの服を着てデビュタントで皇子と入場し、挙句の果てにはアベルの婚約者を奪っときながら今度は我を所望するのか。
今この場で殺しても良いがそれでは駄目だろう。
アベルが落とし前をつけるだろうからな。
……それにデビュタントでお揃いの服を来てきた2人を見てアベルは無意識だろうが泣きそうな表情をしていた。
アベルは出会った頃から我らの前で皇子の事を散々言っていたが、我は心の奥底では皇子を愛しているのだろうと気づいてしまった。
だからアベルが傷ついても堪えた。
抱きついてきたミカの顎を掬い上げ見つめる。
「我を好きなら何故アベルを嫌う」
「それはアベル様と親しくされていてつい嫉妬してしまって」
「そうか、だがお前は我の友人を嫌う。だから好きになれない」
パッと掬い上げていた手を離す。
すると更に力強く抱きしめてきて必死だった。
「でっですが!僕はケイン様が好きなんです!」
「黙れ」
「っ!」
「本当に我の事を好きならば友人の皇子と縁を切ってこい。話はそれからだ」
グイッと体を離して出口に向かうと後ろから大きな声でミカは叫んだ。
「絶対に約束してください!」
「あぁ、楽しみにしてるぞ」
なんの感情も籠っていない声でそのまま外に出た。
しつこく追いかけて来るかと思ったが追いかけて来なくて少し安心した。
来た時には明るかった空も暗くなり始める。
「……急いで帰るか」
愛馬に乗り、アベル達が待っている隠れ家へ急いで走らせた。
急いで隠れ家から出ていき自分の愛馬でその紙に指示されていた場所に向かった。
ミカの名前を出した瞬間にアベルは恐ろしく冷めた目で我を見てゾッと背筋が凍った。
「我はアベルだけなのにな」
確かに皇子が連れて来たミカという男は女性のように可愛らしい見た目と性格だなとは思ったが全く興味すらない。
我の心を動かすのは美しいアベルだけだ。
あの2人もきっとそうだろう。
アベルのことを考えながら馬を走らせる。
数時間してその指定された場所に着いた。
その場所は田舎の酒屋だった。
「急いで戻らなければ」
キイっと寂れた木のドアを開ければカウンターらしき場所に1人ぽつんと座っていた。
ヅカヅカと近づくと、こちらに気づき、ポロポロと涙を流してた。
「ケイン様」
「…早く我を呼んだ用件を言え」
「っ、僕、あのデビュタントの後にアベル様が急に来て皇子様にもう近づくなって言われました」
ん?何言ってるんだコイツ?
アベルは我らと一緒にいるからありえないぞ。
それに、もしそれが本当だとしても婚約者なんだから当たり前だろう。
「……それで?」
「うっ、ぐす、皇子様にその事を伝えたら怒ってアベル様を探して殺してやるって!!」
あぁ、だからあの2人が皇子に呼び出されたのか。
怖いのを含めて我はアベルの味方だと思ったから。
それからもミカは有り得ない事ばかり我に話す。
最低限の相槌を打ちながらミカの話を聞いた。
それにしてもコイツ先程から妄言しか吐かないから今直ぐにでも殺してやりたい。
「事情は分かったが我を呼んだのは何故だ?」
「それは、ぼっ僕は皇子様とは大切な友人でアベルが僕と皇子様が恋人同士だと勘違いしていて」
「そうか」
「ぼっ僕が好きなのはケイン様なんです!」
ぎゅっと抱きつかれウルウルとした瞳で我を見上げた。
…………ほぉ?友人と言いつつお揃いの服を着てデビュタントで皇子と入場し、挙句の果てにはアベルの婚約者を奪っときながら今度は我を所望するのか。
今この場で殺しても良いがそれでは駄目だろう。
アベルが落とし前をつけるだろうからな。
……それにデビュタントでお揃いの服を来てきた2人を見てアベルは無意識だろうが泣きそうな表情をしていた。
アベルは出会った頃から我らの前で皇子の事を散々言っていたが、我は心の奥底では皇子を愛しているのだろうと気づいてしまった。
だからアベルが傷ついても堪えた。
抱きついてきたミカの顎を掬い上げ見つめる。
「我を好きなら何故アベルを嫌う」
「それはアベル様と親しくされていてつい嫉妬してしまって」
「そうか、だがお前は我の友人を嫌う。だから好きになれない」
パッと掬い上げていた手を離す。
すると更に力強く抱きしめてきて必死だった。
「でっですが!僕はケイン様が好きなんです!」
「黙れ」
「っ!」
「本当に我の事を好きならば友人の皇子と縁を切ってこい。話はそれからだ」
グイッと体を離して出口に向かうと後ろから大きな声でミカは叫んだ。
「絶対に約束してください!」
「あぁ、楽しみにしてるぞ」
なんの感情も籠っていない声でそのまま外に出た。
しつこく追いかけて来るかと思ったが追いかけて来なくて少し安心した。
来た時には明るかった空も暗くなり始める。
「……急いで帰るか」
愛馬に乗り、アベル達が待っている隠れ家へ急いで走らせた。
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