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Dead End ユUキ・サクラ (23)

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無心で動く、実験に感情はいらない。もう、慣れた、何回したのか、何回もぐったのか、何回見上げたのかわからない。もう…慣れた…
水槽に体の半分が浸かるくらいに液体を貯める。
培養液に浸してある贓物を取り出して水槽にいれる。だぽんっと水面が揺れる音が研究室に響き渡る。

最近、ノイズも静かだ…聞こえてくる声が統一されてきている気がする。

服を脱いで液体に浸かる、体温が低くなっているのか、それとも…感覚が鈍くなっているのか、もうわからない。
意識を水の中に沈め術式を開始する…もう何回目だろうか?水の中から見る自分を眺めるのは…回数なんて忘れてしまう程に…



「…ぅ」
小さな違和感を感じる、水の中から意識を戻すときはいつもそう、水の中の感覚と肉体の感覚は違う。
その違和感に脳が混乱する。吐き気は無い。慣れたのだろう。
「ぅ、ぁ…はぁ、っく、ぅ、ぁぁ」
嗚咽を垂れ流しながら魔力を編み込み体を持ち上げ水槽から抜け出る。
トクントクンっと心臓の音が聞こえる…うん…うん…うん…

最後の人体実験は成功した…

動かないと判断したら念動力で永遠と強引に動かす予定だったけれど…動いてよかったよ。
非常事態に備えて用意しといた陣も起動しなくてよかった。

私の心臓が止まったら発動する様にリンクさせておいた陣…
地球の人工心臓などを参考にして作った陣、その上であれば、魔力さえあれば、私の心臓は一定の周期を保ちながら念動力によって動かされ続ける。
その間に、再度、心臓移植を行う為の保険

発動していない様子から、私の心臓は無事、自らの意思で動こうとしてくれている。

最後の難関は終えた…後は…脳の移植…こればっかりは帰ってこれる自信がないので、出来ない。
それ以外は全部した、骨も血管も筋肉も!神経も!!全部…ありったけを培養し交換した…

この状態で後、半年、私が生きれば、問題ないだろう

この半年で異変を感じたらすぐにでも、研究を終える…つまり、私は人生を終える。
その時は…不甲斐ないけれど、次の私も犠牲になってもらう。

理論上は問題ない、他の生物も問題ない、人に近しい哺乳類も問題が無かったんだ。
人に問題がある道理はない。ないはず…研究は完璧で完全だ…

異例を覗いてね…

つい、お腹を摩ってしまう。アレが無いだけで、こんなにも楽で…らくで…
自然と涙が零れ落ちていく、床に黒い点をつくってしまう、摩っていた手が気が付くと力強く握り込まれていた…床に赤い点をつくってしまう。
口の中に、何か、変な味がする。どこか、懐かしい…味がした…

口から零れ出る液体を拭い、前を向く、最後の実験は終わった、後は成果レポートを作って、各研究をまとめて資料を見直して…
最後の最後までやることはある、動こう…

ふと、試験管に映った自分が見えた…口から零れ出た液体を拭ったときに唇についたのだろう…嗚呼、真っ赤なルージュ…新作のルージュも…こんな色だったかな?
どうだった?首を横に振られる、頷いてくれない。






困ったことがある…
日付の感覚がない、意識も飛び飛びだ…
今が何時で何日で何か月経過したのか、わからない。

あれから、何日経ったのかわからないけれど、私の体はまだ動いている、変な痺れも無いし、変な痛みも無い。
培養液で生み出してきた膨大なデータも、もうじき…たぶん、まとめ終わる。

はぁっと溜息を溢してしまう、喉が渇いた。
こんっと、机の上に置かれる瓶
だれだろう?嗚呼、ユキさん、こんばんは?こんにちは?でいいのかな?
わざわざとってくれてありがとう。
蓋を開けて喉を潤す。ふぅ、たぶん、何かのジュースなのだろう、味覚が分かりづらい、これは…前々からある症状だから仕方がない。
首から上は一切いじっていないから、これは研究とは関係ない。

ぽんっと肩を叩かれる
叩かれた方をみる、嗚呼、勇気くん!久しぶりな気がするね!槍はどうなの?
え?報告したいことがあるの?何々?

え!!うそ!凄いじゃん!凄いじゃん!大活躍じゃん!さすが勇気くん!!
あの盾、役に立った?…そっか、役に立ったんだね、よかったぁ…
思っていた以上に耐えてくれたんだ、そっかぁ、残滓共も良かっただろ?私が用意した盾は役に立ったぞ?
自慢をしたいが、返事が返ってこない。寝ているのだろう
今はそれよりも、どうやって敵を倒したのか、どういう流れだったのか、教えて欲しい

うん、まずは敵を見つけて、出現時期と位置はちょっとずれがあった?それは仕方が無いよ
一番最初に見つけたの私じゃないもん。
敵を見つけてすぐに、行動を共にしていた変に懐いてきた貴族のお坊ちゃん達を使いに出して部隊長であるカジカさんに盾を持って駆けつけてもらったんだ。
でも、すぐに目的の敵だってわかったね?長い杖のような得物を持っている猿なんて、あいつしかいないだろうって?確かに!

敵に気が付かれない様に全力で、私が用意して渡していた魔道具を使って身を隠していたんだ、渡してよかったよ。
何時間も、何分も、何秒も…時が分からなくなるまで、息を潜めていたらカジカさんが到着したんだけど、その足音で敵に見つかっちゃったんだ。
まったく、彼はちょっとあわてんぼうだよね?ぇ?自分の身を案じて急いで駆けつけてくれたのだから仕方がないって?勇気くんは優しいね~
そういうところ、好きだよ?…にへへ…

敵がカジカさんを見つけると直ぐに杖の先端が光って小さな光がカジカさんに向かって飛んでいったけれど盾をカジカさんが持っていたお陰で防ぐことが出来たんだ!
意図せずにしてカジカさんが囮役を務めることになったんだね!いいじゃん!敵は狙った獲物に固執するから盾を持ったタンク役に狙いを定めてくれる方が攻めやすいもんね!
…まさか、それを狙ってカジカさんに盾を持ってきてもらったり?ぁ、やるじゃ~ん、流石は王様、計略には通じてるって?…うん、勇気くんに任せて良かった。
ぇ?安心するのはまだ早いって?そうなの?そうなったらもう勝ちでしょ?なんで?

敵に向かって攻撃をするのだが、敵が持っている得物が普通に鈍器として有効だった?
あ~そっか、あいつらが振り回しても壊れないようにできているから結構、頑丈なモノが多いんだよね、敵が持つ得物って、前回は…そっか、この世界最強の怪力の持ち主だからこそ、砕けたのかな?それとも、幾度となく光を放ったから先端が熱を持っていて脆くなっていたのかな?どうだろう?…残滓は返事をしてくれない、いいやもう。

何度も攻撃を仕掛けて注意を逸らしながらも、徐々に光が杖の先端に集まっていく?っげ、自動で魔力を吸収し集めれるタイプかな?
それとも、敵がそういったモノを扱うのが手慣れているとか、かな?
ある程度、光が溜まってきたらいったん離れて、離れるタイミングを見計らってカジカさんがスリングショットで敵に向けて石を飛ばして大声を上げて挑発したんだ

挑発された敵はカジカさんに向けて光を放って、それを盾で受け止める。
その都度、物凄い音と振動が周囲に響き渡って、地面が抉れる。

けれども、カジカさんは無傷だった?熱とかの影響は無さそうだった?
それは、当事者しか、わからない?そっか、そうだね。カジカさんなら熱くても心配かけない様に見栄を張りそう。

光が弾けた瞬間に、爆風と音に紛れて何度も敵の背後から攻撃を繰り出してはいたんだけど、中々、刃が通らなかった?
そりゃそうだよ、あいつらの毛って硬いでしょ?あ~うん、そうだよね、ああいう特別製のやつは一段と硬い奴が多いんだよね。
敵が杖型魔道具を振り回すの対して幾度となく切り結んでいる間に、視界の端でカジカさんが盾や鎧に何か液体をかけていて、それが終わると適度に弓矢で足元を狙ってくれてたりしてたんだ?
たぶん、液体って、たぶんだけど、耐熱様に用意しておいた液体かな?残量とか手持ちとか大丈夫だったの?
カジカさんの後ろにはそういった物資を抱えているお坊ちゃん達が控えている様に予め策を講じているから、大丈夫だって?へ~…やるやん?
カジカさんがタンク、勇気くんがアタッカー、そして、カジカさんの後方には補給部隊、完璧の布陣じゃん!

敵の杖の先端に光が見えてくると、先ほどと同じように挑発して、攻撃を煽ってくらって、その間に攻撃をするを何度か繰り返していると
持っていた片手剣が刃こぼれしてきて、亀裂も入っちゃったんだ…ごめんなさい、武器に強度なんていらないって思ったの間違いだったんだ…
そうだよね、交換しようにも易々と交換させてくれる状況に持って行けないっていうのを想定していなかった…これは、私の落ち度だ、ごめんなさい。
それでどうなったの?折れちゃったんだ…敵の腕に攻撃したらバキンって…ごめんなさい、私が…

頭を撫でて慰めなくていいよ?これは、反省すべきことだもん…でも、撫でてくれるのは、好きだから、もっと撫でて欲しいかな?にへへ…

剣が折れたから、一旦、引くべきかと敵から視線を外した瞬間に敵の頭に石が当たる音が聞こえて、直ぐに敵に視線を向けなおすと光り輝く杖の先端が此方に向けられていたの!?盾を構えたところで敵の攻撃を防げるとは思えれなかったから、直ぐに胸元にある槍を握って大きさを変えて杖の先端に突き刺したんだ!!
どうなったの?笑みを浮かべていないで教えてよー!はやくはやく!え?私の推察通りだった?魔を切る力があるって?
槍の先端が杖に刺さると光が消えて発動しなかったんだ!!うわー!!役に立ったじゃん!!!
っで、どうなったの!?それって最大の好機だと思うんだけど?
それを見逃す男じゃないって?だよねー!ぁ、でも、得物が無いじゃん?
トントンっと肩を叩かれる?どうしたの?ユキさん?なになに?口角あげちゃって?
ええ!?そうなの!?うっわ、凄いじゃん!二本あってよかったね!!

ユキに言われて、もう一つの槍を直ぐに取り出して大きさを変えるんだけど、短刀ぐらいの大きさにしか出来なかった…けれど!何とか敵の喉元に突き刺すことが出来たんだ!
それをみたカジカさんが盾を置いて駆けつけてくれて、敵の得物を奪う様に槌で叩いたら、突き刺さった槍に当たってその衝撃で杖の先端が砕けたんだ!やるぅ!これで、敵は魔道具をただの鈍器として使うか、手放すか、それしか選択肢がなくなったわけだ!
敵の魔道具が壊れたのを見て直ぐに、カジカさんに手を向けると、カジカさんが持っていた短剣を投げてくれたんだ!いい連携だね!
投げられた短剣の持ち手が綺麗に手に収まる様に投げてくれて、それを手に取って敵の膝を足場にして跳躍して目に短剣を突き立てたんだ!へぇ~身軽だねぇ!ぇ?それくらい出来ないと馬上の敵を仕留めれない?…戦乱の時代はこわいねぇ…

痛みと、勇気くんが圧し掛かった影響で敵が地面に倒れて、直ぐにカジカさんが槌で喉に刺さった槍を叩いて敵の首の骨を折ったんだ!
流石は、長年、人型と闘い続けてきただけあって、判断の速さが段違いだねー!
ん?勇気くんもそう思う?尊敬に値する?だよね…なんてったってさ、私達の最大戦力の一人だもん。心は弱いけれど、土壇場での動きは目を見張るものがあるんだよね。
追い込まれると強いタイプだもん、それまでが、ウジウジしたり、情けなかったりするんだけど、腹を括ったら、強いんだよね、彼って…

首の骨を折って直ぐに、敵の目に刺さった短剣を抜いて、直ぐに敵の首元にあてて、槍と短剣をハサミの様にして両手で敵の首を寸断したんだ。
骨が折れてしまえば後は切りやすいって?うへぇ…手慣れてるねぇ…次は首を落とす為だけの厚みがある武器を用意して欲しい?ん~…あることはあるんだけど、やだなぁ、作りたくないよ、何でって、そりゃぁ…死刑執行人が持つ…首落としのやつだもん、やだよ、作ったら最後…人にも向けられるじゃん。
死罪の為に作られた剣は、豪が深い…だよね?勇気くんもそう思うよね?人が人を裁き殺すような世界は…来て欲しくないもん。そんなのに、効率的に首を落とす道具なんて、考えたくない…死を尊重するべきだよ…効率的に殺しやすく感情を失うくらい作業的に…人を殺しちゃダメだよ。

殺すなら、その人の罪を背負って、噛み締めて、慈悲をもって断罪すべきだよね?
勇気くんもそう思うよね?ぇ?殺す事には変わりはないって?結果はそうだけど、過程は、大事にしようよ?作業的に人を殺すのは…駄目だよ。
全ての生き物にそれはいえるのかって?…ぅ、ごめんなさい、人だけが特別じゃないよね、そうだよね…
ケモノだって生きている、だから、慈悲を込めるべきなんだろうけれど…ごめん、死の大地にいるあれらに慈悲は与えれないよ。
あいつらを殲滅できるのなら効率重視だよ、慈悲なんて無い、滅ぼす為に…滅ぼす為なら!どんな手を使ってでも私は…やるよ。

それには同意?勇気くんもあれが、純粋な生き物じゃないって痛感した?へへ、だよね~
首を撥ね飛ばしても動ける生き物なんて見たことない?…そうなんだよ、あいつらって時たま、首を飛ばしても動く奴がいるんだよね~…とんだ執念だよ。
首だけにね!なんつって!…ぇ?笑えないって…ちぇ、笑ってよ、もう。
暗い雰囲気を和ませようと頑張ったが、内容が穏やかじゃないって?確かに!それはそう!手厳しいなぁ…
ん?ユキさん、勇気くんの手を掴んでどうしたの?ぁ、時間?そっか…うん、またね。また…来てくれるよね?もう、会えないなんてないよね?

曖昧な笑顔で二人は消えて行った…

また、会えるよね?頷いてくれない。
会えなくなるの嫌だなぁ…

頷いてくれたように見えた…
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