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Dead End ユUキ・サクラ (17)

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「…こんなもんかな」
集中力が途切れそうになってきたので、思考超加速から抜け出ると
「こんばんは、姫様」
私の汗をハンカチで拭ってくれている…これは、勇気くんじゃない、ユキさんだね、だって表情と声色が違う。
「こんばんは、ユキさん」
にこっと可愛らしい笑顔、一輪の花が咲いたみたい。あどけなくて柔らかい笑顔はユキさん。
勇気くんの笑顔は涼やかっているか、Coolな感じがして尚且つ、優雅さも兼ね揃えていて綺麗。
汗を拭ってくれているユキさんの顔をちらっとみる、ハンカチの隙間から見えたユキさんの表情を見て心がほっこりとする。
うん、ユキさんの笑顔はあどけなさながあって、どことなく奥ゆかしい感じがして可愛い
「流石、姫様!一瞬でぼ…私ってわかっちゃうんだね」
それは、そうだよ、種明かしをすると次からは対策されそうだから言わないけれど、まず、勇気くんは私の事をサクラって呼ぶことが多い、次に、勇気くんが私の汗を拭ったりしない、次に、笑顔の形が違う。教えちゃうと次から面白くなくなるからいわな~い。にしし。
っま、私だし?それくらいの見分け方?直ぐにわかっちゃうね!観察眼だけは衰えさせるわけにはいかないからね?
「わかるよー。可愛い妹だもん」
にへへっと笑顔で返事を返すと、お互いにへへっと笑いあってしまう。
いいなぁ、こういう感じ、こういう時間…友達ってこんな感じなのかな?だとしたら、私は満たされている。未練なんて無くなっちゃいそう。
『ほら、ユキ、お姉さんに飲み物でも用意してあげたらどうだ?』
「言われなくてもするよー!」
脳内に響いた言葉でちょっとムっとした表情をする辺り、二人の関係性は本当の兄妹の様に変化してきているのだろう。遠慮や、配慮が消えてきているって感じかな?
家族だからこそ、兄妹だからこそ、簡単に踏み越えていけるラインがある。ってやつかな?つっても、勇気くんって人の懐に入り込んでいく何かがあるから、それもあるのかもなぁ、伊達に王様やってなかったってことかな?経験がなせる業ってやつか。

そんな二人のやり取りしている後ろ姿をつい見守ってしまいたくなる。
さて、私はちょっと脳に疲労が溜まっているから少しリフレッシュするためにも休憩しないとね
「お言葉に甘えてちょっと、休憩しよっかなっと」
念動力を使ってケーブルを持ち上げながら起座位で横になれるベッドに座る
「はい、姫様!」
座ってふぅっと一呼吸したら、直ぐに飲み物が入った瓶を持ってきてくれる。
ありがとうっと返事しながら受け取って、直ぐに蓋を開けて一口飲んでいる間に、本と椅子をもって隣に腰かける?なんだろう?
「お兄ちゃんが魔導書を読みたい読みたいってうるさいんだよもう!」
ああ、なるほどね。でも、どうして主人格をユキさんがしているの?

疑問を脳内に響く声を出す人物に投げかけてみると、届いているみたいで直ぐに返事が返ってくる。
『偶にはユキにもな、自由があるべきだろう?』
あ~…そうだね、ユキさんを表に出せる場所はもう
『そうだ、ここしかない、俺が表に出ている時間が長くなりすぎてな、俺とユキだと雰囲気も態度も…戦闘技能に置いても違いがありすぎる』
「二人の会話に割って入ってごめんだけどさ、どのページ?」
ちょんちょんっと肩を指先でつつかれるので、もう少しページを捲ってと指示を出し
「これ?」
そうそうっと、頷いて勇気くんが読みたがっている槍について記述されているページを開いてもらう
『では、早速だが読ませてもらおう』
「はいはい、私はよくわかんないから、お兄ちゃんは勝手に読んでてねー。私は姫様と女の子トークしてるからー」
『ああ、好きにしなさい』
「は~い、好きにしま~っす!へへ、やった。姫様にね聞きたいことあったんだけど、聞いてもいいかな?」
二人の流れるような会話にちょっと呆気に取られてしまい、少しだけ反応が遅れてしまう。
「あ、う、うん。いいけど、何がききたいの?」
「ぇと・・・その、教えて欲しいのは~」
それからは、ユキさんが気になることを色々と質問されるのだが…目の前の人物の動きに困惑のような驚きを感じてしまう。
そう、質問内容に驚いたわけじゃないんだよね。

二人の動きが不可思議で驚いちゃった。

だって、視線も手の動きも完全に本を読んでいるのに、口だけが私を見ている様な感じがしたって言うか、本を読んでいるのに、言葉の内容が完全に本とは全く違う内容。
一つの体を二人で上手い事、共存する様に動かしている、こんなにも器用に動かせれるモノなんだと驚いた…
まぁ、驚いただけ、それだけだったらいいんだけど~…この状況、私以外に対応できる人いねぇよ?ってか、脳を休ませたかったんだけど?

『サクラ、ここって、持続時間や、経過時間の概念はどうなっている?やっぱり、魔力を込めないと劣化するのか?』
「っでね、姫様!一緒の部屋にいるオリン君っがさ、私と勇気くんが入れ替わってから別人のようだねって気が付いてくれたんだよ!」
私も、その辺りは実物を作っていないから経過観察はしたことが無いんだよね、いっそのこと、槍を精製して魔力を込めてみるってのはどう?
「オリンくんだったら、気が付きそうだよね、同じ部屋にしない方がいい?何か理由をつけて別の部屋にすることもできるよ?」
「ええー、いや、このままで…いいよ?私、彼の事、嫌い…じゃ、ないもん?」
『なるほど、出来るのなら精製してみたい、が…髪の毛が触媒か…抜くのは怒られそうだから、櫛でといた時に抜けた髪を取っておくべきか?』
いや、それはダメだよ、抜けた髪だと魔力が霧散するから、触媒に適してない、だから触媒にするなら槍を精製する直前がベストだよ
「ユキさんって、ああいう大人しめの雰囲気の人が好みだったりするの?どうなの?気になってるんじゃないの?」
「ぴゃ!?ち、ちがうよ?そ、そんなことないよ?」
『そうか、ユキ…頼みがある』
「やだよ!髪の毛抜いて、禿げたら嫌だもん!」ぁ、こっちの会話も聞こえているんだ。聞こえていても敢えて無視して会話してこようとするなんてユキさんって意外と、我が強いのかも。
『なら、少し、すこーしだけ、カットするのはどうだ?』
「まだ、そこまで長くなってない!私だって理想は姫様みたいにロングヘヤーなんだからね!これ以上短くするの嫌!」

…ふぅ、会話が逸れた。助かった…二人同時に別々の話題はきっついって!話のベクトルが全然違うんだもん!感情が狂うわ!!
せめて、報告会とか、真面目な話とかで統一してくれたら何とかなるけれど…感情が居る会話と、無感情の会話は無理だって!
一瞬でも出来てた自分が恐ろしいわ!!

喉を潤す為に水を含んでいると、譲り合わない二人の会話が段々と不毛に感じてくる…

女性にとって髪の毛は大事だけど、男性からすれば些細な問題、永遠と分かり合えないだろうなぁ…
ユキさんは自身を男性として見てもらう為に短くしている。でも、本当は髪の毛を伸ばしたい!
でも、髪の毛を伸ばしたいけれど自分が女性の心だという事を隠したいために伸ばすことが出来ない、だけど、可愛いラインを崩したくないから今のボブカット風で前髪パッツンを維持したいんだろうね。
勇気くんからすれば、髪の毛は闘いの邪魔にならない程度であれば何でもいいって感じだもんなぁ…

これは永遠と交わらない、お互いが譲り合う事が無い…平行線だろうねぇ…

そういえば、私の髪の毛…毛先を手に取って眺めてみる…
全然、手入れをしていないから毛先もバラバラ、枝毛もある、艶も無い…
うん、今代の私はそういったものをする時間があれば、研究にまわしていたから、髪の毛への執着はない…

うん、この二人の不毛な争いを止めるにはこれが一番だろうね

「私の髪の毛で実験してみる?」
「ダメにきまってるよ!」『馬鹿なことをいうな』
二人同時に反対されるのは予想外なんだけど?
「ちょっと!お兄ちゃん!?私は良くて姫様はダメなのってなんで?」
『そろそろ、伸びてきているから訓練の邪魔だから多少切ってもいいだろ?サクラは、折角、長く伸ばしているのだぞ?思い入れが違うだろ?』
驚いたことに、このお父さんは乙女心っというものを理解しているのだった
パチパチっと無意識に拍手をしてしまっていると
『サクラよ…こればかりは、昔も今も変わらない、女性は髪の毛を大事にしてきたのだから、それくらいの配慮はあるぞ?』
「私にも、その配慮してくれてもいいんじゃない?」
その言い分はもっともだよね、ユキさんを蔑にするのは違うんじゃない?
『だから、頼み込んでいるのだ、配慮していなかったら問答無用で切っている、俺が普段している行動を見てきているのだから、配慮していなかったら躊躇わずに行動しているだろう?』
「確かに、お兄ちゃんは即断即決で直ぐ動くもんね、考え無しに」
『最後の棘は聞かなかったことにしてやろう、だから、髪の毛を』
「いーや!あと半年は切らない!!切りたくない!」
『半年後は遅すぎるだろ!あと一か月後には多少はカットしたいのだが!?』
不毛な争いが開始されそうだったので、念動力を使ってぱっと、髪の毛を切る
「はい、使って」切った髪の毛をユキさんの手のひらに乗せる
長さもばらつきがあったし、そろそろ、綺麗に揃える良いタイミングだったから、別にいいよ?気にしないで、切った長さも10センチも満たないしこれくらいならいいよ。
『だ、だが…』
わかってる、反対されるのは、だから、問答無用でぱっと即断即決で動いただけ、何時もと変わらない、この方が効率的でしょ?
「それなら、ちゃんと私が髪の毛を切って整えるのに…」
「いいの、悲しそうな声を出さないで、そろそろ長さを整えた方が良いのは事実だからいいの」
このままだと、二人の思考が停止したままだろうから、舵を取っていくのがベストだろうね。もうしちゃったんだから、気にせずに始めたらいいのに、非効率的だなぁ。

流れを、主導権を握るために、二人の目の前でパンパンっと手を叩いて、静かに方針を伝えますっと雰囲気を整える。
「私が良いって言ったら良いの!ほら!髪の毛に宿る魔力が霧散する前に術式を発動!」
「ぁ、ああ分かった!すまん、ユキ、体の主導権を返してもらうぞ」
『返事をする前に持って行ってるよね?』
お兄ちゃんってやつは横暴なモノだよ?妹は我慢しないといけないことがいっぱいだから、諦めるしか無いよ?
『ぐむむ、まぁいいよ。少しでも、外に出れて…久しぶりに空気を感じれたからいいよ』
うんうん、下の人間は何時だって抑えつけられるんだよ、およよ
「っぐ、む…わかった、わかった、二人して遠回しに攻めてこないで欲しい。以後気をつけよう」
受け取った髪の毛を大事そうに握りしめながら、目を瞑ってまで懺悔しなくてもいいんだよ?
「わかってくれたなら、良し!」
イェーイっとユキさんと心の中でハイタッチをしてから、勇気くんに術の手順を説明する

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