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Dead End ユUキ・サクラ (5)

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できるんだぁ…へーほ~?ふぅ~ん?できちゃうんだぁ~?はぁ~ん?あ~、へーふぅーん?でき、ちゃっ、たん…だぁ…や、やるじゃん?
「っふぅ、なるほど、意識体、マテリアルボディっとでも表せばよいか?それを魔力で薄い膜を張って、その膜を伸ばして伸ばして、本体と繋ぎ止めていれば意識が溶け込む事も無い、魔力の消費が激しいっと言う点が問題だな。だが、それ以上に…素晴らしいのが、この液体の中で力場を簡単に発生させることが出来るっと言う点だ!リンゴの皮をこんな薄く切れるとは…」
水槽から取り出したリンゴの皮は、覗き込むと向こう側が透けて見えてしまいそうになるくらいに薄い…っく、私でもその薄さは難しい。
それを、初手で軽々とやってのけるってのは…やってくれんじゃん、嫉妬の心が燃え上がってくるじゃん?劣等感が洪水のように押し寄せてくるじゃん?うぎぎ、ぐやじい!

「どうだ?俺だって捨てたものではないだろう?」
ふふんっと自慢げに汗一つすらなく余裕を見せてくる。
魔力の扱いにおいては彼の方が大きくリードしていると痛感している、そこに関しては素直に負けを認めている!悔しいけれど、彼の方が上手だ!!

どうして、そんなに魔力の扱い方が上手いの?っと血管をピクピクさせながらも、作った笑顔で質問をする
「何が気に喰わないのか、困惑するが。そうだな…俺も物心ついたころから、魔力を扱ってユキの体をサポートし続けてきたから、だろうか?」
…ん?サポート?幼少期からってこと?何をサポートするのさ?
あ、そっか、確か、ユキさんって近所のお手伝いもしてたとかなんとか、言ってたような?その時に身体強化したりとサポートしてたのかな?
「そうだな、ユキは知らないだろうが、いろんな場面で力を貸していたさ」
今頃、彼の頭の中でユキさんがそうなの!?って驚いているんだろうな。

私と彼との違う点はただ一つ、魔力の総量だろうなぁ…彼は魔力が豊富だからこそ、日常的に魔力を扱ってきていた。
そして、私は少ない魔力で術式の研究に魔力を充てていた、その違いかな?魔力を使う方向性が違った、その年季の差かな?うん、そうだよね、うんうん。まけてらんねぇ…

その後も、これできる?これは?っと、次々と私が昇ってきた階段を登らせてみたら…私のプライドがどんどん圧し折る様に一段飛ばしでドンドンと駆けあがっていく。
2時間後には、私と遜色変わらない技術力に到達されてしまう。
「むぅ、液体が濁ってくると扱いが難しくなるのだな」
うん、そうだね。ここまで不純物が混ざると私では意識をダイブさせることなんて出来ないけどね!おっかしぃなぁ!成分が変化したらダイブなんて出来るわけないって思ってたんだけどなぁ!卓越した技術を持っている彼だったら、そんなことないってこと?へー!純粋に私が未熟だったってだけー?ふぅ~ん?へぇ~?ほぉん?ぅぎぎぎぎぎぎ・・・
「それにしてもピーマンの種を取り出す為に、内側から皮を切って種を取り出してから塞ぐ、そんな芸当も出来る上に、普通は傷口っていうものが出来るっていうのに、これだ…」
手に持っているピーマンの表面に傷一つない。組織を繋ぎ合わせる方法も難なくやってのけやがった…

もしかして、この人って浸透水式の才能バリ高だったりしない?誰にも負けない唯一無二の才能をお持ちで?
…あれ?お母さん要らなくね?医療の知識叩き込んで、彼にして貰ったらいいんじゃね?私が麻酔で微睡みながらやるよりか、成功確率高くね?

おい!残滓ども!どうなんだ?可能性は高いのか?
心の奥底にいる残滓共に声を掛けると返事が返ってこない?あー魔力が足りてないなのかも?今はスリープしてんのかもな。
注いでもらったと言っても、満タンじゃないからね。仕方がない、この議題はまた今度かな?

仕方がない、時間が無いけれど、これ以上の問いかけはやめておこう。
勇気くんに視線を向けると様子がおかしい、ぼんやりと壁を見つめている…あ、魔力切れか。
仕方ねぇな、アレをプレゼントしてやるか


「?ぁ、ああ、のめば、よいのか」
小さな小瓶二つを渡し、ニマニマとしたくなるのを抑え真剣な眼差しで見守る。
蓋を開けて特に匂いを確認せずに口に含んだ瞬間、何処を見ているのかわからない表情をした後、一気に顔面が崩壊した。
「っぐぁ、っが!?ぇ、おぇ。ぉぉ?」
あのえぐみと苦み、そして、口の中で広がる土の香り、そして時折感じる優しい甘さがよりえぐみと苦みを際立たせてくれる。
これがさらっとした液体であれば直ぐに口内を通り、胃へと運ばれるのだが…困ったことに粘性を持っていて、呑み込んだとしても少量、口の中に残るんだなぁこれが!
「っは!?ぅ、っぐ!?ん、んぐ、っふ、ぉぇ…」
何度も何度も唾を飲み込んで口の中に放り込んだ液体を飲み干そうとしているんだけど、上手い事いかないみたいで四苦八苦してる。
ふっふっふ、研究塔一同、術式研究所一同、医療班一同、身体強化訓練中の騎士達一同、ほぼ、この街で頑張ってる人たち、全員が通過する魔力回復促進剤のお味は。どーぉ?
「っはぁ?っは、っはぁ、っふ、っふ、くぅぅぅ」
目を見開いて、渡された瓶を見つめている、手には二本、飲み干せと言わんばかりに真剣に見つめ続ける私。

逃げ場はない

っという追い詰められた状況に視線を彷徨わせ始める。ドンドン呼吸が荒くなるので、これは、うん、あれだね。流石に可愛そうかな。
冷蔵庫からついでに持って来た、葡萄ジュースだよっと渡すと、直ぐに蓋を開けて口に流し込む。
器用に指と指の間に魔力回復促進剤の小瓶を片手でもって、もう片方で飲む辺り、指先器用だよね~なんて思いながらも苦しむ姿を見ていると心がほっこりとする。

悦に浸りながら、美しい顔がぐしゃっと崩れ悶絶する姿を眺めていると
「の、飲み干したが、あ、あれはなんだ?魔術を行う為の儀式的な何かか?」
うん、邪法だと思うよね、あのえっぐい味は。
私だってアレを飲むの嫌だもん、慣れてきているけれど飲みたくないもん。
飲むときは舌に触れないように術を使って喉に押し込んで飲んでるからね。

アレが、魔力を消費し過ぎたりした人に処方されるお薬の一種だと伝え、原材料が何か伝えると
「はぁ~なるほど、お隣さんとかが育てていた花がそうだったのか、不思議な方法で育てていた花が原材料になるのか。勉強になったよ」
月見草だね、王都では月見草を上手い事、育てることが出来たらちょっとしたお小遣い稼ぎになるから主婦たちにとって人気なんだよね。

「はー、後味が悪い…もう、良い時間だ、今夜の手伝いはここまでにしてもらってもよいか?」
うん、勇気くんが担当してくれているのがこの部屋の掃除とか、素材をすり潰したり、必要な個所を捌いて取り出してもらったりだから、別にいなくても良いんだけど、その間、私が他の事が出来るから助かってはいるんだよね。その程度の作業だったら別に慌てるような事も無いから、いつ帰ってもらってもぶっちゃけ問題ない。
ただ、彼から得られる情報で有効的なものがあるかもしれないから、毎日来てくれると、嬉しいな♪…本当は独りでいるのが悲しくなっちゃったからっていうのは言うわけにはいかない。

…そうだ、念のために、覚えれるとは思えれないんだけれど、ちょっと待っててと声を掛けてから本を取りにいく。


「ん?この本は?ここから、ここまでを、読んでおいて欲しい?あぁ、わか、った。一読しておこう」
表紙を見てから、一瞬だけ表情が曇った、読みたくないって思ったのか、だけど、直ぐに一瞬だけ眉毛が上がって嬉しそうにした?ユキさんが読みたいと言ったのか表情がコロコロっと変化していた。解剖学の本を渡して見送った。

もし、彼が渡した本を理解することが出来たら、彼にお願いするのも一つの選択肢として考えてもいいかな。

静かになった研究室には彼が好奇心だけでバラバラにした食材が散らかっている。
実家の弟もそうだった、男ってやつは片付けが出来ないんだよなぁ、しかたねーなー片付けてやっか!

一通り、散らかした場所を掃除し終わったので、休憩するためにソファーに座る。
そして、目の前にあるテーブルには山積みになった資料や、殴り書きで何かをメモした紙、ペンの数には至っては何個転がっているのかわからない。
乱雑に物が置かれていて、一部では消しカスが積もったまま…

…っさ、私も軽く仮眠とってから、お風呂に入ろうかなぁっと、おっやすみ~!!



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