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Dead End ユ キ・サクラ (94)

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心の疲れを少しでもお湯に溶かす!そういった行為が…私は好きだ。非効率?ううん、最も効率的にストレスが抜ける一つだと、心の底から実感してるよ。
一人でお風呂に入るよりも、皆と一緒に入る方が…不思議と心が落ち着く、独りで研究ばっかりしているから、人恋しいのかもしれない。そうなると選択肢は一つだけってね!
多くの人達の中に混ざって大浴場でゆっくりと体と心を休めてきてから、部屋に帰ってきました。
心も体もぽっかぽか、さぁ気持ちよく寝れそう。眠りにつくためにパジャマに着替えようとする…

嫌なタイミングで、ふと、未来の事が思い浮かぶ。すっきりした心が靄に包まれてしまう。

どうしてこう、寝ようかなって思ったときに、狙いすましたかのようにそういったさぁ、不安を感じさせるようなことするわけ?はぁうっざ…

突如浮かんだ未来の事…
明日以降の事を考えると、心臓がきゅっと小さくなるのを感じてしまう。
こうなってしまうと、なかなか寝付けないし、思考の迷路から出れなくなり、結果的に寝れなくなる。
安眠の為にも、一人で寝るのが嫌になった。こういう時はお決まりのパターン。

パジャマ一式をもって、お母さんの部屋に向かう。

ドアをノックもせずに堂々と開けると、呆れた顔で此方を見てくる。
夜中にお母さんが誰かと一緒とか、そういう甘い蜜月なんて…あるわけ無いでしょ?っと言わんばかりに我が物顔で中に入り。
そそくさと、持って来たパジャマに着替えてベッドにダイブして
「寝るの!!」っと叫ぶと、お母さんが勝手に寝なさいっと呆れた声で返事を返してくれる。
「ね・る・の!!」っと叫ぶと、お母さんがため息をついて、服を脱ぎ始める音が聞こえてくる、きっと寝巻に着替えているのだろう。
「仕方ないわね、ほら、詰めて詰めて、寝るわよ~」
背中をぺちぺちっと手で叩かれるので、うつぶせのまま体をベッドの端っこへとずらしていく。
隣に体温を感じたので、逃さないと言わんばかりに抱き着きしがみ付く様に巻き付くと
「…何か嫌なことでもあったの?」ぽんぽんっと背中を叩いてあやしてくれる
「…お母さんにだけ、先に言っておくね…ごめんなさい」
唐突っというか、初手で謝られたことに警戒したのか、私の背中を叩く手が止まる
「何をしたの?いや、違うわね、先に言っておく…何か、するのね」
コクリと頷きながらもう一度ごめんなさいっと謝罪の言葉を抱き着いた体の奥へと染み込ませるようにつぶやき、何をするのか本題は今は言えないっていうか言いたくないけど、お母さんなら何をするのか答えに辿り着けそうなギリギリの範囲を…伝えよう。
「…うん、とんでもない事、しないといけない。研究の為に、ごめんね。私、地下室から出れなくなる」
力強く抱きしめられる、手が震えているのがわかる、少ない言葉でも何を意味するのか察してくれたのだろう。
「…未来で何かあったのね、ここ数年、予算の使い方がおかしいと思っていたのよ、戦士達の武具を強化すればするほど、対人戦を想定しているのだと疑われる可能性が高くなるっていうのに…王族が警戒する事すら気にすることなく、戦士達の装備を強化したり。地下に関係者以外立ち入り禁止っと言う施設を作り、研究を続けていたけれど…事情があるのは察していたわ、だけれど…だけれど!出れなくなるっていうのは予想できなかった…集中しないといけない…つまりは、そういう未来が襲い掛かってくる…備える為にってことね…なるほどね、そういうことだったのね…」
直ぐに理解してくれて、直ぐに言葉の意味をわかってくれるくらい、お母さんと私の関係性は深い、相棒っていっても差しさわりが無い。
「…会えるの?」
「うん、関係者であれば、立ち入りは許可する予定」
抱きしめられている力がすっと抜ける?
「なら、別にいいじゃない!もう会えないのかと思ったでしょ!畏まって言うから何事かと思ったじゃないの!」
ペチンっとお尻を叩かれてしまう…なるほど、もう二度と会えないのかと思ってしまったから、力強く抱きしめられてしまったのか。
「うーうー!だって、私は地下から出れないんだよ?会いに来てくれないと会えないんだよ!?」
「…別に階段から出てきなさいよ?出れないって何よ?出れるでしょ?外に出る時間すら勿体無い程に切羽詰まってるの?」
うん、その意見にはごもっともだけど、出来ないんだよ、出来なくなるんだよ…物理的に、さ…出れなくなる理由は、まだ、言う勇気がない。
今後行う予定の内容を伝えるべきなのだろうけれど、お母さんにそれを言う決心がまだ私には完全にできていない。
未来の事、人類が勝つための確立を上げるためにも絶対にしないといけないのはわかってる。でも、する勇気と決断が…決意が漲ってこない。

唐突に押し付けられた現実に抗いたい、受け入れたくない、したくない。
だって、私は…今代の私は好き勝手に遊んでいない!滅んだ私達は遊んだり好き勝手にできた時間が少なからずあった!
でも…私には無かった…押し付けられた研究を進めるだけで、自由にできる時間は消えて行った!!何もできなかった!!

残滓たち未知に遊べてない!遊びたい!自由に遊びたいの!!

今までもさんざん、やりたくない実験ばっかりやらされて嫌気が刺しているってのに、私の未来全てをそれに注ぎ込まないといけない…
そんなのを唐突に突き付けられて、お前は犠牲になれ、なんて未来を提示されても、直ぐに、はいそうですね!ってな感じで、納得なんてできないよ。

出来る事ならさ!未来の事なんて、観たくも聞きたくも無かった!!
なんで、こんなにも…こんなにも押し付けてくんだよ!!理不尽すぎるってぇ!!
私だって…私だって…色んな事をしたかった…なんだよもう、なんだよ…私が何したってんだよぉ…
ちゃんと、研究進めてきたじゃん、やってきたじゃん!…最後くらい遊ぶ時間くれよぉ…

押し付けられた現実がストレスとなってお腹が痛くなる。
それを直ぐに察してくれたのか、優しく背中を撫でてくれる。
甘えるように、触り心地の良い生地をきゅっと掴んでしまう、暖かい体温が慰めてくれるような気がする。

少しだけストレスが下がったおかげか、ストレスによってちくちくとしたお腹の痛みが引いていくのがわかるんだけど…
腹の底から湧き上がってくる感情を少しでも吐露しないとやっていけない!
愛だか、恋だか、何だかしらないけど!私の人生は私のだ!!

私だって…自由に色々としたかった…

そりゃぁ、研究は嫌いじゃないけどさぁ、術式の方が私は専門なの!分野が違うの!それでも、私以外に見せるわけにはいかない資料だからさ!嫌でも頑張ってやってきた!
最初はさ?そりゃ、興味出たよ?ちょっと面白そうだなって、さ…
だからさぁ、未来の為に…なんてきれいごとじゃないけどさ、それでも、何とか奮い立たせて頑張って取り組んでみたんだけれどさぁ!!読めば読むほど!噛めば噛むほど嗚咽が出てしまいそうな味だったわけ!

なんだよ!あの、悪意の塊みたいな本は!これを参考にしろっていうのが無理ぃ!!いやだぁ!!って幼い私が吐き気を催すほどに悪意たっぷりの罠ばっかりだったんだからね!!

ストレスのせいで嗚咽と闘い乍らさ!頑張って来たのに!!さぁ!!ある程度、研究も進んでさぁ!!
ちょっとゆとりできたんじゃね?少しくらい好きなことしてもいいんじゃね?
頼りになりそうな新兵も入ってきたし?好きな時間つくってもいいんじゃね?なんて思った矢先にこれだよ!!

この仕打ちだよ!!!やってらんねーー!!私は捨て駒じゃねぇってのぉ!!初っ端から諦めてんじゃねぇっての!私なら出来るかもしれねぇだろっての!最後まで抗えさせろよ!!…無駄かもしれないけれど、やってみさせろっての!!!
湧き上がる感情がずっと、朝起きてからず~~っと!もう、エンドレス!終わりなきロンド!!吐き出す場所が何処にもなかったぁ!!

うぐぅ、ふぐぅっと声にならない声を抱き着いた人に向かって漏らし続けると、優しく頭を撫でられる。
おかげで、少しだけ、心が落ち着く。

わかってるよ。どう足掻いても、今の状況じゃ先に進めることが出来ない、詰みの状況だから、次に備えるターンだってのは…わかるよ。わかってるよ。渡された情報が真実だって言うのは疑いようのない話だけどさ!もっと早く教えろっての!!…いや、知ったらしったで、それが敵に筒抜けになったら、先手を打たれて終わるから、ギリギリまで打ち明けれなかったんだろうなってのはわかるけどー!!

理不尽過ぎるよ…唐突に肩を掴まれて引っ張られてさ、用意された椅子に座らされたと思ったら、戦えって耳元で囁かれてさ。
何だろうかって感じで、目の前にある盤上を見てチェスかな?って思ってさ、ほうほう?どんな感じです?私に任せてみなさいって、盤面みたら、後2手でチェックメイトみたいな状況…無理いうなよ、これをひっくり返せって?不可能じゃんって状況ってわけ。

…はぁ、溜息が溢れ出てきて仕方が無いよ。ったく…

こんな我儘を言っても無駄なんだろうなぁってくらい、切羽詰まっているっていうのは理解したよ。
なら、もっと早く、その情報寄こせって言いたい!!出来ない状況ってわかっているけれどさ!敵に情報が抜けたとしてもその先を裏をかけばいいじゃん!!…それが出来ないから、出来るとは思えれないから、そうしたんだろうけどさぁ!!やる前から負けるつもりでいる馬鹿が何処にいるんだっての!

事情を察しているから仕方がないってわかるけどぉ!!これでもギリギリなんだろうなぁ…伝えれる時期を狙って伝えてきたってことだよね…
この状況で最良の未来を選択できる可能性はゼロだ、研究が求める水準に到達していないのであれば、犠牲に成れ。
…ってな感じだよ、だからさ、最低でも、あと一回は死なないといけない、世界を諦めないといけない、人生は明るくなく暗いままとして研究に生きろって…

私に残されたであろう時計の針もさ、たぶん、長くないんだろうなぁって薄々感じてきている時にさ、最後くらい楽しく、過ごしてもいいよね?って思い始めた時にさぁ…
突き付けてくんなよ…私は、私の人生を歩ませろよ…最後くらい、少しくらい…自由にさせてくれよ…

心が折れてぺしゃんこに潰されてしまいそうになり、このままだと、今すぐにでも時計の針を自らの手で折って投げ捨ててしまいかねない程に精神が、保てなくなりそうになる。

つい、その感情から抜け出したくなり救いを求めるようにぐりぐりと何かに抵抗するかのようにおでこをお母さんに押し付けていると優しく頭を撫でられ優しく背中を叩かれる。
溢れる涙が零れないように気を付けながら、研究ばっかりで辛かった!自由に私のしたい研究がしたかった!仕事一杯で辛い!っという愚痴が喉から零れ落ちていき、お母さんのおなかへと吸い込まれていく…

その日の夜は、ひたすら…永遠と、愚痴をこぼしていく、耳を塞ぎたくなるような聞きたくない様な…うっとおしい言葉の数々を、嫌な態度を一切せずに、ずっとずっと…
駄々をこねる子供をあやす様に…優しく受け止めてもらった。
眠りにつく頃には、この温もりを守らないといけない、守れるのは私以外にありえないのだと…少しだけ、少しだけだけど、明日を進む為の力が心に宿った気がした。


お母さんのこういうところが好きー!守ってやんよちくしょー!!

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