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Dead End ユ キ・サクラ (84)

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『複雑な事情がありそうだが、その考えは正しいだろう…俺と言う前例が居るのだからな、あいつらが活動を開始していたのは…信じがたいことに俺が生きていた時代からだからな…』
そう、長い年月を潜伏し力を蓄えていたのだろう。
力を溜めに溜めて…地上を我が物顔で生きている私達を蹂躙するために!
勢いよく表にでてみたら、人類が弱くて弱くて…調子づいてこの大陸の覇者にでも名乗り上げようとしたところで、一人の…人って表現してもいいのか悩むくらいに強大な力を持った神の使徒に全滅させられそうになった。

そんな衝撃を味わってしまったら…そりゃ、慎重にもなるってわけだよね、下に見ていた人類から、力だけでは太刀打ちできないっと判断して、人が持つ、悪意…
ううん、知恵を利用しようと画策したんだろうな!人の思考を逆手に取った様な罠ばっかりだからなぁ…人を理解していないとできない。
『さて、話は戻るが、サクラ、どうする?敵が…かなり歩を進めてきている。俺の索敵範囲に見えるほどに…入って来たぞ?数は…かぞえきれないほどだ…済まないが種類までは特定できない』
勇気くん…
『なんだ?そんな悲しい目をしないでくれ、絶望だというのはわかっている、勝ち目が無いのはわかっている、諦めないでくれと言うのは非情な言葉だと思う、だが』
あきらめないよ…
『…その覚悟、付き合おう、目の奥に光を見た、何が用意されている?この街の全てを吹き飛ばすほどの威力を持った自爆用の魔道具でもあるのか?』
はは、いいね、次は用意してみようかな。
『冗談…では、なさそう、だな…なんだ?どんな秘策があるというのだね?我が姫よ』
ある意味、自爆みたいなものだよ…自決するんだから。
『…気でも触れたか?っと、言わざるを得ないが、その様子、触れた様には見えぬ。聞かぬが花か?』
ううん、この状況になったら隠す必要も無いよね。私の切り札を教えてあげる
『やはり、あるのだな、それはどんな切り札なのか、王と言う身であったとしても、好奇心が抑えきれぬな』
うん、その切り札を使う場所に向かおう…行こう、時間も無いみたいだし
『わかった!先の先導は任せてもらおう、宙にいるからこそ、大地を見渡すことが出来る、場所は何処だ?』

場所は、地下…
大型魔石が用意されている地下の研究所に…とある陣を用意してある。

そこに連れて行って…

それからは、勇気くんが先導してくれるので、遠回りだけど、人に見つかることなく進むことが出来ている…
出来ているのだが…徐々に…じょじょに…緩やかに私の体に小さな変化が起きているのが…勇気くんと会話している時から感じていた…

心臓の鼓動がおかしいリズムを刻むようになっているのを感じている、時計の針が止まる前に…急いで地下に向かわいといけないという焦りも生まれてくる。
誰かに見つからないように何かの陰に隠れている間に、今まで、ルの末裔って言っても過言ではない私がどの様な…

地獄のような人生を歩んできた…
人類の導き手として幾度となく死を経験し、未来の情報を出来る限り、過去の私に送るというのに、”寵愛の加護”と言う…
特殊な魔術…ううん、魔法だよ、奇跡を体現している様な存在を経由していることを伝える。

『なるほど、魂の同調で、見て感じてはいたが、手法までは知らされていなかったからな、その様な加護を…サクラよ、頼みがある』
今更、何?全てが終わった後なら何でもするよ?敵に特攻したい?決戦兵器を強引に起動したい?封印してある鍵なら地下室にも用意してあるから使ってもいいよ?
『それは…魅惑的な提案だが、違う』
最後にひとあばれしたいのかなって思ったけど、違う感じ?
『俺を…俺が得ている情報を過去の俺に渡すことはできないか?』
…過去の私に魂の同調をしてもらって伝えればいいんじゃないの?それではダメなの?
『ああ、それが出来るのなら、それで構わない、一言だけ、過去の俺に伝えて欲しい言葉がある』
その程度なら問題ないよ、何を伝えたらいいの?


『白き黄金の太陽に成れ』
…何かの合言葉?まぁいいか、伝えるね


『…頼む』


勇気くんから伝わってきた覚悟の言葉受け取ると、目的の場所が見える位置まで到着した…直ぐにでも地下へと向かいたいのだが…
遠めに見えた人影が二つ…研究所の地下へと通じる扉の近くに誰か…二人いる…耳を澄ませると、話し声が聞こえてきた。
物陰に隠れ、勇気くんに誰がいるのか見てきてもらうと

メイドちゃんと、お母さんの二人だった…何か言いあっているみたい、声の状況からして、険悪な状況だと伝わってくる。
何となく…わかる、恐らく、メイドちゃんが私に投与した薬について薬の出どころであるお母さんに文句を言っているのだろう。

愛する人になんてものを持たせて、愛する人を任せている人になんてものを使用させたんだと…

たぶん、そんな感じの内容でも言い合っているのだろう。
二人の仲は良好とはいえないからなぁ…

程なくしてメイドちゃんが執務室がある方へと走って行った…
お母さんなら、人型の姿であろうと、私だって、気が付いてくれるかもしれない。
残された時間を考えると、もう、時間が無い。

勇気くんが制止してきているのに、耳を貸さずに前へでる
お母さんが此方を見た瞬間に槍を構える…武器持ってるのなら教えてよ!!遠くから見えたときは見えなかった!!柱の陰にあったって感じ!?
うわ!ミスった!!お母さんってさ!下っ腹がぷよっとしてたりするから…運動しない人って感じがするかもしれないけれど!!
ああ、見えて武芸も、ある程度っていうか、ごく普通の貴族としての嗜み以上に扱えれるんだよね!?
ああ見えて、運動神経いいんだよ!?ああ見えて、意外と文武両道なんだよ!!

うわ!魔力が空っぽだから、催眠とか、睡眠とかの術式も使えないし、かといって、臓器を魔力へと昇華するのはちょっと、今回の情報を送るためにはかなり…
膨大な魔力が必要だから、その選択肢は選べない!

『だから、待てと言っただろうに…』武器持ってるって一言、言ってくれても良かったんじゃないかなぁ?かなぁ!?
「お母さん!私!さくら!お母さんなら私だってわかるよね?わかってくれるよね?お願いだから槍の切っ先をこっちに向けないで!」
必死に声を出して、説明してみるが、何も変化が無い、寧ろ、眉間に皺を寄せて私が出す音を不快そうな顔で見ている。
幻覚系で汚染されていると考えると、私の姿も声も何もかもが人型に見えて聞こえているって、感じだろうなぁ…

愛があれば…伝わると思ったんだけどなぁ…

愛する人に向けて…殺す為の…術式を使うという覚悟を決めろ…ってこと?それしかないの?

非情で冷徹な私が提案してくる…それしかないの?本当に?
臓器は、最小限でいいか、な?どの程度、昇華すれば、いい、のかな?

腕を上げて、お母さんへ向けて人差し指を真っすぐに伸ばす…

幻覚系に犯されている人に催眠や、睡眠の類は、その幻覚を打ち破る程には、膨大な魔力が必要…下手に少量の魔力だと突破はできない…そんな余裕は私には…
賢い私が一番最初に提案した内容は…殺す事…しかも、魔力の消費をとことん少なくして…
幻覚を突破して、怪我も無く…制圧できる選択肢を探してみても、賢い私はこの状況を突破する方法は一つしか無いと…相手を傷つけずにこの場をどうにかする術は…

私には無い…と、何度も警告を出してくる。

唯一、殺さないでどうにか出来そうな術式が思い浮かぶ、けれども、その選択肢は危険すぎる。
念動力で頸動脈を止める、そんな半端なの、力加減を間違えたら頸動脈をちぎっちゃう、逆に込めた力が弱かったら、最速の突きが私の胸を貫く。

後は…あとは…おもい うかぶ ていあん される せんたくし は 
ぜんぶ あいてを ころして しまう

私が研究してきた術式、攻撃系統の術式は脆弱な人に向けて使う術式じゃないんだもん…どう調整しても殺してしまう…

はぁはぁっと、吐息がもれる、指さす腕が震え始める。
呼吸が定まらない、視界が涙で滲む。
動悸が止まらない、心臓が自ら止まろうとしている。
お母さんに手を出すなと全ての細胞が警告している。

臓器を魔力へと、昇華しようと…頭の奥にあるスイッチを押そうとしても、全ての私が立ちはだかって押せない!!

だけど!このままじゃ、このままじゃ!全てを失う!!
『さくら!いそ』「人型がいたぞ!!」
後ろから大きな声が聞こえる、目の前に槍を構えた人がいるのに、つい、振り返ってしまった。
迂闊な行動を取ってしまったと、直ぐに気が付き、再度、槍を此方に向けている人物へと視線を向き直すと…

喉元に槍の切っ先が当てられている…そして、すぐ、手を伸ばせば、後、一歩でも前に進んだらお母さんに触れるという距離まで近づいている。
嗚呼、お母さんとこうやって面を向かって、会話するのなんて、いつぶりだろうか?

凄みを利かせた視線…こんな視線を…向けられても、私は愛する人を傷つける覚悟が…ううん、殺す覚悟が出来ない。
幼い時に約束したけれども、その時とは、状況が違う…できるわけがない。

…もう、いいや、お母さんをころさないといけないのなら、もういい。

過去に情報を送ったとしても、お母さんと喧嘩しない、嫉妬しないだけでいいや、それくらいでいいや…
今と同じ結果になったとしても、今よりかはましだろう…

喉元に槍を突きつけられたまま、両指を編むように組み、願いの姿勢を取る

お母さんに手を出さないのであれば、魔力を昇華してもよいと、スイッチを押させてくれる。
我が願いを、届けよう…

遠くで弓がしなる音が聞こえた、音をパンっと裂くような音…矢を誰かがいったのだろう、脳に直撃しないのであれば、大丈夫…
痛みに備えながら、腎臓を昇華する…魔力が体をめぐるのを感じる…

だけど、放たれた矢の衝撃が伝わってこない?痛みが来ない?どうしてだろうか?
目を開けると、喉元に槍が無い?お母さんもいない?
背中に温もりを感じる
「ごめんなさいね、お母さん失格よね…あいつが教えてくれるまで、気が付かないなんて、悔しいったらないわね。貴女の叔母に一つ借り…ね」
「お母さん…!?」
背中の温もりはお母さんの背中だった!気づいてくれたんだ!!
「いきなさい!貴女にしか出来ないことがあるのでしょう!地下には誰も通させない!貴女を守るのが、母親ってものでしょう!!」
背中で背中をトンっと押される…止まりかけている心臓に迄、その衝撃がつたわり、まだ、動こうとしてくれる!!

後ろから、色んな人たちの声がする、当たらなかった矢をまた撃たれないように急いで地下の扉を開けて地下へと通じる階段を転げ落ちそうになるくらいの勢いで進んでいく!

地下に到達して直ぐに誰かが入ってこないように、普段一切動かすことが無かった防御壁を使用する!
階段を降りてすぐ横に備え付けてある鉄板を動かす為にセットしている魔道具、その起動部に魔石がセットされるスイッチを押して封鎖する。
ガゴンっと大きな音で入り口が塞がれ、試しに自身の力で動かそうとするが重すぎて動かさせない。
これで、暫くは安心、かな?

地下に降りてくると上の音が殆ど聞こえない、お母さんが何とかしてくれると信じているけれど、数の暴力、暴挙、暴動は、一人じゃどうしようもない。
鉄板で塞いだとはいえ、鉄板を乗せた滑車台を押し出す様にした程度だから、筋肉モリモリの戦士が二人でも到着しちゃったらあっさり開けれるんだよな!

一分一秒も、勿体無い!この一年で生み出してきた成果物をまとめたレポート用紙を脳みそにもう一度確認するように叩き込む
全ての資料を頭に叩き込んだ後は、研究所の隣にある【絶対!誰であろうと立ち入り禁止】っと、大きく赤文字で書かれているドアを開けて奥へ進んでいく。

大きな大きな広大な部屋には、大型人造魔石が10基…用意されている。
この魔石一つ一つ…何年も、何年も!!この大陸にいる多くの人達から受け取った…溜め込んだ魔力が流れている

この魔力全てを使って過去の私に情報を届ける!!…それもかなり過去…遠い遠い過去に…

一年程度前の自分に送ったところで時間のかかる研究を進める事なんて出来やしない、まだ、動きやすく、まだ、溢れる資金をどういう風に使えばいいのか悩んでいるころ…
固定概念に囚われることなく自由な発想で、全てを想像しようとしていた、もっともアクティブでもっとも…人生を羽ばたく様に輝いていたころに…情報を届ける!!

…その間に邪魔されると、めちゃくちゃ困る、から…できるのかな?出来ると信じよう。

勇気くん!
『なんだ?』
外の様子を見てきて欲しいんだけど大丈夫?
『…ああ、わかった、任されよ』
…なんで一瞬だけ、反応が遅かったんだろうか?自信がないの?
『ああ!ないな!肉体が無いのにどうやってここに来ようとするやつらを防げばいいのか、自信は…冗談抜きで本当に…無いぞ?』
そうだよね、でもいいの、誰かがあの鉄板を越えようとしたら教えて!ここに居ると外の音が聞こえてこないから!
他にもセキュリティ関係の魔道具があるからそれを起動する!
『なら、今のうちに起動しておいてはどうだ?』
…やだ。それをすると…
『…なら、仕方がないな、見張るだけだからな?』
…うん、お願い。
『任されよ』
その声と同時に、近くに何かが…いたような感覚が消える。

お願い、ね。我儘いって、ごめんね。
そのセキュリティ使っちゃうと、ココから出られなくなっちゃうから…全てが終わって…命つきる…最後くらい、お母さんに謝りたかったの…
それにね、どうせならさ、最後くらいさ…お母さんの腕の中で


死にたいから


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