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Dead End ユ キ・サクラ (76)

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光が弾けても、私の意識がまだ残っている?
それに、バシャァァァっと上半身?全身に?何か液体のようなものが降り注ぐような感じがした?…この匂いは…私は…よく知ってる…


血の匂いだ…


誰かが私をかばった…


なら…なら!無駄にするな!月の裏側へと連れていかれる寸前に!誰かが私をこの大地に繋ぎ止めてくれた!
死に体の私を救うっということは!打開してくれるのを願ってだ!その想いに!我が身を犠牲にしてまで未来を託してくれた!!
その願いを受け止めろ!叶えろ!期待を背負って立ちあがると決めたんだろ!!!

全力で己を鼓舞し、折れた心に釘でも叩きつけるように打ち込み折れた心を再び真っすぐへと強引に立てかける!!

諦めるな!私の意識はまだある!!命を無駄にはしない!意識があるなら立ち上がれ!
霞む視界が真っ赤に染まっているなんて些細な問題を無視して、姿勢を起こそうとするが右腕に力が入らない!?右側から叩きつけられたか!?
なら!膝をつき、左腕で上半身を起こす!顔を上げて状況を読み取る!!敵を見据える!!
半分真っ赤に染まった視界、まだ霞み続ける視界に映し出されたのは、二つの大きな影、その影の形を見て先ほど霞む視界に映りだされた、光に違和感の正体がわかってしまった。
「あああらぁあああああ!!!」「GaYAHaaaaagyyyyyyyyyyy」
違和感の正体は一つの影、その一つが…右腕が…
霞む視界から薄っすらと見えた情報と、先ほどの情報を合体させ、過去から今を演算するように状況を予測する!!

弾けると思った光、その光は確かに弾けた、閉じた瞼を貫く程なのに…聞こえてきたのは轟音ではなく水しぶき…マリンさんの右腕を犠牲にして防いでくれた!!

視界が正常では無くても、聴覚は機能している!聴覚から伝わってきた情報と霞む不確かな情報を掛け合わせろ!
けたたましい程に力強く敵を殺す為に叫ぶ雄々しい叫びが一つ!いや、二つ聞こえてくる!?
一つはマリンさんだ、もう一つは恐らく敵だろう!どうして、敵が叫んでいるのか、真っ赤に染まる視界を正常するに為に額の上から滴ってくる温もりを拭い視界を確保する。
霞む視界がある程度、回復すると、見えてしまう…わかっていたけれど、見えてしまうと胸が締め付けられてしまう…マリンさんの剛腕が欠けた…

あの腕から伝わってくる力強さを思い出し泣き崩れそうになるのを必死にこらえ、少しでも弱くなろうとする己に喝を叩きこむ!!
犠牲を無駄にするな!脳に酸素を送れ!固定概念を捨てろ!状況を即座に判断!もう見誤るな!!!
「カジカぁ!!」「応!!」
声がした方に視線を向けるとカジカさんが敵に向かって攻撃を仕掛けようとしている。
直ぐに、視線を敵に向けると、杖の先端に光が宿っている!?まだ、撃てるの!?

マリンさんが光り輝こうとしていた杖の先端を狙う様に、残された左腕によって、豪快に振り下ろされた大きな槌で砕かれた!!
砕かれた杖の先端に集まった光が行き先を失ったのか、その場で弾けそうになるのをカジカさんが光に盾を構えて全ての衝撃をお酒込むように飛び込み、盾によって今にも弾けそうになっている光の粒を地面に叩きつけ、そのまま盾ごと覆いかぶさった!!
光の粒が地面に吸い込まれるように見えなくなった、瞬間、盾と地面が光り輝き、激しい光と轟音によって、カジカさんが上空へ吹き飛んでいった…

激しい閃光と爆発の衝撃波が降り注ぐ最中、私にできることを見つけるために、杖を失った敵がどの様な行動を取るのか判断するために敵を見据えると、どうして敵が叫んでいたのか理解する!!

僅かに見えた敵の右目には矢が刺さっていた!!何処かのタイミングで弓が得意な戦士が虚を突き打ち込んでくれた!勝機はそこにある!!

敵は爆発の衝撃によって一瞬だけ怯んだ程度!?爆発などの衝撃に対して耐性でもあるのか、すぐに動こうとしている!!
だけど、マリンさんは衝撃に対する耐性なんて無い!
先ほどの激しい爆発による衝撃によって、上半身が仰け反ったマリンさんに向けて先端が砕けた杖で殴りかかろうとしている!!

瞬時に悟る。これから何が起きようとするのか
私はその光景を否定する、私はその光景を見るに耐えらない、その光景を見てしまったら私は狂う



気が付くと叫んでいた。真っ赤に染まって見えにくい視界なんて必要ない。視界の半分くらいくれてやる!!
光は熱!光は質量!光は収束し質量と熱量を天へ返せ!!弾けよ!!ほーりーえれぷしょん!!

昇華して手に入れた魔力を即座に術式へ変換し、勝機の機転へと打ち込む!!!

矢が刺さった眼球が光り輝くと、敵の頭が眼球を中心に溶ける様に天に向かって爆ぜる。

マリンさんに向けられた先端が砕かれた杖は、彼女の体を貫くことなく地面に突き刺さる。
頭の半分が吹き飛んだ躯は、地面に吸い寄せられるように倒れ…動きを完全に停止させた。

急激な魔力減少に伴う意識消失が近づいてくるのを感じていると、何処か遠くで地面に何かが叩きつけられる様な音と同時に悶絶するような声が聞こえてきた。
声が出せるくらいならきっと、彼は生きている。その声が気付になったよ、ありがとう…まだ、意識を飛ばすわけにはいかない!

っぐ、っと、歯を食いしばり、戦闘態勢を維持する!!
再度、霞む視界…視界を頼るな音を拾え!!

動きを停止させた人型の近くで音がしたので、視線を敵に向け、意識を集中させたが…杞憂だった。
頭の半分が吹き飛んだ人型を念のために首を落とす為に振り下ろした刃の音だった。

そうだよね、そう、訓練して来たよね…
過去には、極稀に頭が吹き飛んだ後も自爆してくる人型とかがいたので、人型は首を落とすまで油断はするなってのが、先達者たちの尊い犠牲によって得られた鉄則だったよね…
構造をしっている私からすれば脳がある場所を吹き飛ばせば、そういった危険性は一気に下がるから、しなくてもいいんだけど…首を撥ね飛ばした戦士の表情を観ちゃったらね…

何も言えないよ…あの形相…恨みを晴らしたかっただけなのかもしれない。

敵を倒したという安堵感で緊張感が抜けてしまう…直ぐにでも意識が飛んで行ってしまいそう、だが、ここで意識を落とすわけにはいかない!まだ、私にしか出来ないことがある!!意識を飛ばすのはその後!!救わないと!!一歩も歩けない、足が欲しい!移動手段が欲しい!だから、声を出す!
「誰でも良いから、お願い!私をマリンさんの近くに連れて行って!」
その声に反応した、軽度の負傷で動ける戦士が駆け寄り、私を抱き起してくれる。
たった、それだけの衝撃で、動かない右腕や、肋骨辺りから尋常じゃない痛みがくる、こりゃ、確実に…私の方もよくないね…

両膝を突いて、左腕だけで体を支えているマリンさんの近くにおろしてもらい、状態を診察する。
右腕が…上腕骨から…先が無い、前腕と肘関節部…その全てが吹き飛んだのだろう。
上半身は、鎧によってかなり守られている、命に別状はない、だが火傷の範囲を考えると、予断を許さない状況って感じ。

現状で、急がないといけない、直ぐに手当てをしないといけないのが…出血死!早急に止血しないと!

運んでくれた戦士にポケットに入れてある回復を促す陣を描いた紙と術譜を渡し指示を出す。
まず、戦士が持っている短剣に、この術譜を巻いて発動してもらう。
短剣に巻かれた術譜が起動すると術譜は直ぐに燃え上がり、短剣を熱する、熱した短剣を使って吹き飛び、今も血液が滴っている右腕の傷口を焼いてもらって止血する様に指示を出す。

焼いた短剣によって患部が焼かれる音がする…
マリンさんも意識が残っているのか、歯を食いしばって声を漏らさないように腕が焼かれる痛みに耐えている。

止血が終わったらすぐに、回復の陣を起動させ、患部や焼けた皮膚を回復してもらう。
これで、マリンさんが動けるようになってくれると信じて!早く!直ぐにこの場から撤退しないと!今の状況で追撃されたら全滅する!!
「状況報告は後!動ける人は動けない人に肩を貸して!直ぐに撤退するよ!!」
吹き飛ばされたカジカさんが直ぐに駆け寄り、マリンさんに肩を貸す様に担ぎ、他の戦士達も傷ついて動けない戦士達を担ぐ。
直ぐ近くにいた戦士が私を担いでくれるので
「全力で撤収!!戦利品よりも命を優先して!」
指示を出すと、戦士達が無言で隠蔽部隊、医療班が居るであろう拠点に向かって駆けだす。
道中で、此方に向かっている最中の隠蔽部隊から派遣された人達が声を掛けてくれるので、敵が居ないようであればという前提で、先ほどまで、闘っていた場所に隠蔽術式を最大出力で展開してから、直ぐに、その場を離れ、部隊長がいる拠点に帰ってくるように指示を出す。

全身から伝わってくる痛みが限界点を越えようとしているし、魔力が…もう…もたない…私を担ぎ運んでいる戦士にだけ聞こえる様に
「ごめん、もう、意識が…あとは、おねが、ぃ…」
後の事を託すように声を掛けると、意識が闇の中へと沈んでいった…


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