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Dead End ユ キ・サクラ (64)

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気候的にもさー、死の大地で変幻自在に水を扱われると困るんだわ!
死の大地ってさ、基本的に暖かい地面で触れるとほんのりと熱を帯びてるって感じなんだよね。
でも、夜中になると冷たい風が吹く、冷たい風によって気温は下がる、そうなるとね~色々と不利になるんだよね。

長期戦になればなるほど、周囲の気温が下がっていくと兵士達の動きが鈍くなる、寒い状態で緊張を維持するのは難しい、当然、指揮も体力もごりごりと削られていく…
精神も体力も、何もかもが、寒さによってじわじわと奪われていく。

水によって、足場が悪いってだけでも相当なストレスになる、重い鎧を着た状態でのぬかるんだ大地ってのはそれだけで敵なんだよね!敵に強烈な渾身の一撃をお見舞いするには、大地の理は必須、踏み込む力が抜かるんだ大地に吸われちゃったらもう…敵に必殺の一撃は届かない…

そうなってくると考えなくてもわかる、目に見えて被害が大きくなる。

やるのなら短期決戦がベスト!なんだけどさぁ…
敵が生み出す水の量が多いと、敵を封殺するために私達が良く用いる火の連携が使えない恐れがあるんだよなぁ~。

それを見越したうえで、策を練らないといけない、私に救援を求めて、尚且つ、敵が持っている魔道具が何をしているのかっていう情報を添えてってことは、私が有効的な策を用意して駆けつけてくれることを願っているって事!

…水かぁ…
純粋な水だったら、まだ、マシなんだけど…水に変な特性を付与されてたら最悪だよね、例えば臭いとか、粘つく粘液性が高いとか、鎧を腐食させるアシッドタイプとか、水に特性を付与できるタイプだったら阿鼻叫喚!最悪の事態も想定しないといけない!
それだけじゃない、水って結構ね、質量が重たいんだよね、質量が重たい物質の塊をさ、私達が気が付かない上空にセットされて叩き落すような技法を持っていたら最悪だし、ダムを決壊したような如き勢いで濁流を産み出されてしまったら、部隊が全滅しかねない!敵がどの程度扱えれているのかってのも気になるよね。

最悪のケースばかりを考えても仕方がない!前向きに考えよう!どういう風に仕留めるか、対策も考えながら動かないと。
水だったらさ、敵事、凍らせるっていうのも一つの手だとは思うけれど…敵が生み出す水の量が常に流動的、つまり、流れる川のようになっていたら、表面の水を凍らせたところで流されてお終い。
当然、油もダメ、水と油は混ざらない、油を投げつけたところで流される。油よりも燃えやすく燃焼性の高いやつもある、あるが…被害が怖いから使えない。
土を尖らせたところで、あいつ等の毛を貫くほどの威力は無い。
風で敵が生み出す水を風圧で飛ばすってのは出来ない事も無いけれど、その風を産み出す魔道具は魔力の消費が激しい、扱う術者が持たない。
毒も水が邪魔をするから使えない。
電気は…魔道具も無ければ、扱いきれないから無理、っていうか、魔力が持たない。

ほーりーばーすとは使いたくない、ほーりーばーすとは何かしらの方法で光に熱と質量を付与して放っていると推察されているから、水で曲がる可能性があるから、下手すると周りに被害が出かねない。

八方房がりって思うじゃん?…そうでもない。
試運転はまだしていないけれど、開発している魔道具がある…切り札の一つ…決戦兵器として開発している魔道具がある。
最終決戦に備えて開発している切り札だから、敵に見られたくない!敵に、どんな性能なのかお披露目したくない!…とっておきの魔道具だけど、致し方ない…使ってみるか…

ポケットに手を入れて一枚の紙を取り出し、一つだけ、言葉を書きメイドちゃんに持たせ、研究塔に届けて欲しいと指示を出すと
「これを、研究塔にもって、いけば、いいんですか?」
紙の中身を見て、これって何の意味があるのか、理解はしていない様子。
それはそう、だってそれは、暗号だから、その暗号を知っているのは私と研究塔の長だけだもん。私からと、その暗号が書かれていない限り、絶対に決戦兵器等の封を解かない。

ほら急いで!っと急かすと、はいっと元気な声と共に駆け出していく。

健気に一生懸命に、時折、悪態をついたり、我儘を言う長い付き合いで妹のように感じている人、その後ろ姿を見て、明日を生きよう願おうと心に力が宿る。
私もまだまだ、皆を守るために動かないといけない、心の奥底にある決意という松明に明日を目指すという心を燃料にし火を灯すと、体の内側から力が廻ってくるように感じる。戦場へ行く覚悟が決まっていく。人は憎悪だけで動いてはいけない、憎悪だけで動くと明日を顧みなくなってしまう。私はまだこの世界で結果を残していない。

戦う覚悟が昂る作用で一歩地面を踏み、一歩地面を蹴るたびに少しずつ歩を進める速度が上がっていく。
気が付けば、急ぎ足となって、転送陣がある場所に到着していた。

転送陣の近くに待機していた戦士の一団に戦況を確認すると…想像していたよりも、人型に関しては問題なさそうな感じ?あれ?緊急事態じゃないの?
念を押す様に確認すると、緊急事態なのは間違いなく、敵を倒せれる人がいなく、人型を倒せれる程の強者が、違う現場での対応に追われているのね。

魔道具持ちが現れた現場に居るのが、まだ、人型討伐経験のない騎士部隊。
成程、指示通り、倒そうとせず、様子を伺いつつ、指示を請うたわけね!優秀じゃん!

必死に、懸命に、敵を食い止めているって状況で被害が出るのは時間の問題って、わけね、うんうん、状況判断能力が高い人がいるね。
誰がその部隊にいるのか確認すると、納得、逃げの一手、危険察知能力に関しては、非常に秀でている。流石!王族の隠し子こと、オリンくん!彼ならギリギリのラインを見極めてくれるから、被害は出て無さそう!なら、少しだけ此方もゆとりがありそう!経験が豊富じゃない部隊が対応していたら直ぐにでも出撃しようと思ったけれど、何とかなりそうかな。

オリンくんを信じて、此方も万全の状況で出撃する為に、魔道具の準備が整うまで、他の戦場の状況を確認する…
嫌な流れだと感じる。例えるなら、将棋で言うと、敵が角と飛車と前に出してきて、尚且つ、後ろには金と銀、更には桂馬も攻撃できる位置に配置されているって感じ!…いや、違うか、敵からすると馬鹿みたいに強い歩兵かもね…角と飛車はもっと奥で不敵な笑みでも浮かべながら様子見てるんだろうなぁ…いうなれば二回行動できる歩が前列同時に攻めてきているって感じかな?しかも無限湧きするタイプ…

どの部隊がどの敵と闘っているのか、内容を聞けば聞くほど、的確な配置だと思う…敵側がね…
要所要所、的確に此方の戦力を見定めた敵の配置、少しでも油断すれば根こそぎ持っていかれそうな布陣、その一手として投じられた魔道具持ちの人型

この布陣、この状況…考えられるのが、私達側の強い駒を引き釣り出して視線を釘付けにするために長期戦用を目的として投入された魔道具持ち人型と見ていいんじゃないかな?っていうか、私ならそうするん、だけど…報告に上がっている内容だとそうでも、ないのか?それとも、想定外な状況なのか?敵からすると強い駒だと思って配置したが、思っていた以上に戦果を出せていないって感じかな?

もう一度考える。
敵からすると、一筋縄ではいかない手ごわい敵を惹きつける布陣を展開して、私達の防衛ラインに絶対的な何処かしら、手薄になる場所が出来るのを待っている?
手薄になったところに長期戦用で運用可能な強い駒を配置して、私達の切り札的な強い駒をおびき寄せて…拮抗状態、ないしは、攻めていける状況を作って、じわじわと前線を上げていく。
ある程度、敵が用意している本陣を目的の場所まで進ませることが出来たら…私なら、何かしらの一手を打つ。

自爆タイプを大量投入でも良いし、純粋な駒として能力が高い、熊・虎・猿を一気に突入させれば、私達が展開している部隊を瓦解させることができる。

つまり、敵の作戦の流れ通りに進められてしまうと、私達は王手まであと少しって状況まで追い詰められているってこと。私達が負ける可能性が高いってわけ、ね。
人型と接敵した、オリンくんが即座に状況判断し、適切なタイミングでこの状況を街に…私に知らせてくれてよかった。
この状況を判断する人物がオリンくんではなく、武勇を求めて欲を出す人物だったら、確実に一手遅れるところだった。

敵からすれば攻めの一手、私達からすれば、守りの一手を選ぶのが定石だろう。だが、守ってばかりではじり貧となるのは目に見えている悪手だ。
私はその選択肢は捨てている。攻めの一手を既に選んでいる。この流れを断ち切るためには、私達は起死回生の一手を打つべきって考えるべき!

今から使う決戦用に開発しておいた魔道具の試運転に持ってこいって研究者としては、実験できるっていう喜びを感じちゃうけれど!
指揮官としては、正直に言うとお披露目はしたくないんだけどね!敵に見られるってことは対策を講じられる可能性があるからね!つっても、理想通りに最終段階にまで、この魔道具を開発改良できたら敵からすれば対策なんて、どう足掻いても出来るはずがないがな!

不敵な笑みを薄っすらと浮かべながらも、現場にいる戦士達に指示を出していく。
前線にいる各部署、各部隊に新兵器を投入すると伝令は飛ばしている。伝令内容もシンプルに敵をあるポイントに向かって引き付けたり誘導する様にってね。
指示を出し終えた後は、もう一度、現状、確認されている敵達の数を頭に入れ、魔道具からぶっぱなす素材の数が足りているのか大雑把に計算する。

思考超加速を使って念入りに何重にも策を巡らせればいいんだけど、あれは全てにおいて体への負担が強いから、なるべく使いたくない。

…うん。問題は無さそう、予想できる範囲での問題はね、敵の魔道具の内容も、最悪の想定から大きく外れている、ぶっちゃけると、なんだ雑魚かって感じがする。
現状、各部隊が闘っていて把握している範囲の敵、数に種類、情報通りであれば、全てを一点に向かって集めてくれれば、ぶっぱなしても問題ない量はある、思う。
問題は…魔道具に装着する為の後付けの筒…こっちの方が、連続起動に耐えきれるかなって、感じかな?かなり頑丈に作っているし、魔道具が生み出す風の力を利用して筒に飛ばす素材が当たらない様に工夫は凝らしているけれども、完全にまもれる構造ではない。

耐久テストって、何時したっけ?…直近だと一切していないんじゃないかな?っとなると、設計段階で完全に机上の空論状態で作成した状態のままってことになるんだよなぁっと一抹の不安を感じてしまうが、この頭脳が導き出した計算が大きく狂っているとは思えない!思いたくない!きっと大丈夫!!

不安によって少し手のひらに汗が滲み出てくるのを感じ、ついつい、スカートのポケットに入れてあるハンカチを取り出して汗を拭ってしまう。
皆に不安を感じてることを気取られない様に何時だって気丈に振舞っている、どんなプレッシャーの中だろうと私が要だという事を忘れてはいけない、心を全ての人が望む最上の姫に向けて切り替えていると声がかかる。
「姫様!準備整いました!」
声を掛けられた方向に視線を向けてコクリと頷く、さぁ、出撃…敵にこれ以上好き勝手にさせないよ。
不安を感じるのは実験をしていないから、机上の空論、私が考えた構造に間違いはない、開発している魔道具の耐久力をたぶんじゃない、弱気になるな。
素材的にこの程度は耐えれるだろう、心を研ぎ澄ませ、ココは戦場だ、例え耐久力が想定よりも弱くても、予備はある。問題はない。
「出撃するよ!転移陣起動して!」っと、声を出すと、私と共に出撃する親衛隊二人が応!っと、周囲の空気を震わせるように声を出す。
その衝撃は、近くにいる私の肌を通り抜け心臓にまで届くと言わんばかりだった。

人型に対しての殺意が込められているとても良いと感じる気迫が伝わってくる。
いいじゃん、その気迫に呼応して私の思考も完全に敵を殲滅する為に容赦なく冷酷な思考へと切り替えることが出来る。
冷酷な思考へと切り替わっていく最中、再生され続けていく、数多くの悲しき出来事、忘れるわけにはいかない恨み…幾度なく殺され続けてきた怨讐…
思い出せ、あれらがどれ程迄の人類を殺してきたのか、思い出せ、あれらが、私達に対して何をしてきたのか!
あいつらは、存在するだけで悪だ…恨みつらみ…山ほど、倍にして返しても返しきれない程に憎悪は募る一方…誰もお前たちは許しはしない断罪し尽くすまで私は止まらない

恨み辛みが足先から頭のてっ辺まで染まっていくのを感じる、滾る殺意のみで動くと視界が狭くなる。少し調整しないといけない、熱くもあり冷酷もあれ。
過去の恨みつらみだけじゃない、忘れるな希望を掴む為でもあることを…気迫を込めるのは、油断してはいけない相手だから、純粋に…相手が脅威だから。

魔道具持ちの人型だ、相性が悪い魔道具を持たされていてそうな感じだが、魔道具を持っている事には変わりはない…魔道具持ちの人型が出てくると誰かしら、人が死ぬっというジンクスがこの街にはこびりついている。努々忘れるな、魔道具は危険だと。
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