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Dead End ユ キ・サクラ (54)

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皆が抱いているイメージとは真逆だよ?私の発想の根源って地球とか、他所の星の知識を始祖様が私達短命種を不憫だと思って用意してくれた資料を閲覧できるだけ、それを見て知っているからこそ、その概念を応用、転用できないかって私が使える技術を使って再現しようと足掻き続けているだけの凡人なんだよな~私って~、私自ら、ゼロから生み出したものなんて殆どないからね?…得意分野がそもそもこっち方面じゃないってのもあるんだよな~…
「…」
沈黙が辛い~…ちらっとユキさんを見てみると、此方から視線を外して、周囲を見渡してる…向こうも気まずいんだろうなぁ~…
「あ、あの、姫様…」
「な~に~?」
励ましの言葉とか?そういう気遣いは別にいらないよ~?
凹んでるわけでも無し、現状、既定路線だもん。

実験に失敗はつきもの、初めて挑む異世界の技術なんだもん、いきなり成功する程、簡単じゃない、今までだってそうだった。
そもそも、同じ素材があれば直ぐにでも再現できるそうなくらい資料が揃ってる感じだもんな~、細かく手順も記載されているから同じ素材があれば実はあっさり成功しそうな気もするんだけど、同じ素材が無いんだよなぁって、自分を言い聞かせるように何度も何度も心の中で言い訳をしてみる、私って惨めだなー…
「わた、ぼ、僕でも出来る事って…ある、かな?ううん、ありますか?」
「あるよー?人手が足りてないってのは非常に重要なファクターだからねー…この街は、何時だって人手不足だよー」
へ~るぷみ~っと脊髄反射のように適当に答え、情けない声を出しながら、目を瞑る…希望を込めて尊敬を抱いている新兵を…見るのが辛い…
「時間がある時、ここに来てもいいですか?」
「いいよー、鍵が開いてたら私がいるってことだから、気兼ねなく入ってきていいよー」
自分の中にある、どうしようもない無意味で情けないプライドが踏ん反り返っていて内心苛立っている人物を、どうしようもない人だと、遠くで見ている様な感じを抱きながら適当に返事をしてから、気が付いた…

ん?今の流れだと手伝いに来てもいいですかって方向での意味だったりする?私はてっきり
「やった!姫様も私に、おっと、僕に頼みたいことがあったらいつでも言ってね!ぁ、ぃや、くださいね?ぁ、お申し付けください?」
あ、そっちの意味になっちゃったか遊びに来るのは問題ないけれどさ、手伝いってなると、学者的な部分を、今から教育したとしても…芽吹くまでに時間が掛かるだろうしな~。

そんな時間があれば実験している時間にまわしたい…ぁーでも、今日みたいなゴミ掃除とかだったら、何も問題ないか、適材適所ってやつか…

それに、実験しながらでも軽い説明くらいは出来る…
ユキさんが学べば、勇気くんも学んだことになるかもしれない。勇気くんがその事を知って、ユキさんの中で考えてくれて、新月の夜に気になったことを話してくれれば?…

新しい閃き、現状を打破するきっかけ、ユキさんが自身の体を想像する為に希望を見出す…全てのパーツが今揃ったかもしれないじゃん!!
突如、舞い降りた完璧な流れに、私の中にある靄が霧散していく。

そうじゃん、そういう風にすれば、何時だって隣に勇気くんが居るってことになるじゃん!
渡りに船!!棚から牡丹餅?ってやつ?やった!いいじゃんいいじゃん!

湧き上がる歓声の中、冷静に、確認しておかないといけないことがある、嬉しそうな浮かれてしまっている様なそぶりを見せず、冷静に確認しよう。
「手伝ってくれるの?それは凄く助かる!でもね、一つだけいいかな?」
「ぇ、ぁ…な、なにかいるの?…っは、そうか、研究にはお金?いる、よね?共同出資?…お母さんが項垂れていた、ときとおなじ?」
ちがうちがう!なんでそうなるの?ユキさんのお小遣いなんて巻き上げたところで雀の涙!焼け石に水!足しにもならないよ!まったくもう!この子ってずれてるよなぁ~…
「条件は一つ!敬語は無くてもいいよ!二人っきりのときはね!あ、でも、流石に、新兵が馴れ馴れしくさ、街を管理する幹部に話しかけるのは良くないけれど!ココの中とかだったら、フランクに接していいよ!」
馴れない敬語で脳のリソースを無駄に使うのなら無くても良い、自然体で自分の中で最大限のポテンシャルを出せる環境こそが、ココでは求められることだからね。
「…ぇ、でも、失礼じゃないのですか?あと、お金?」
「お金なんていらないよ!手伝ってもらうのだから、寧ろ特別手当だすから!予算なんて潤沢にあるからそっち方面はまったくもって問題ないよ!常に足りてないのは人の力だから!それっと!失礼になるような態度をとるの?そういう失礼な人なの?ユキさんって」
ゆっくりとソファーから上半身を起こすと、ちょっとからかわれているのがわかったみたいで、少しムッとした表情をしている。
「しないよ!失礼な!」
自分が下げられていることに気が付いたか、悪意に敏感じゃのぅ。被害妄想も持ちやすい人なのかもしれない…
ぁーでも、子供ってそういう変なところですねたりするものかも、小さな弟もそうだったし。妹が本を読んで欲しいって近づいてきて妹に絵本を読んであげていたら、お姉ちゃんだけ特別扱いずるい!って、文句を言われたことがある、私としては平等に接しているつもりだったんだけど、変にすねられたことあったなぁ…

ユキさんがすねたりする仕草を見ると、どうしても、実家に居た頃の小さな弟や妹たちを思い出してしまう。これもユキさんの心が子供よりだからなのだろう。
つい、ユキさんをからかいたくなるのはそういう部分かもなぁっと、ついつい、微笑んでしまいたくなる、っていうかたぶん、今の私は作り笑顔じゃなくて本当の笑顔なんだろうな。
「なら、問題なし!ユキさんが手伝える時に、ドアに鍵がかかってなかったら手伝ってね!ドアに鍵がかかっていない時は私が外にいるってことだから、その時は諦めてね!」
「うん!」
綺麗な返事に、屈託のない綺麗な笑顔…この時点で気が付いていれば、誤解も回避できたのかもしれなかった、まぁいいか…
些細な問題だよね…私とユキさんが恋仲じゃないかって噂が広がってしまったなんてね?些細な問題だよね。

予定時刻まで私は休憩するつもりだったので、ついつい、ユキさんと談笑をしていたら、メイドちゃんが普段通りに私を呼びに地下室に入ってきて、談笑している私達を目撃したんだよね。
っで、何食わぬ顔で、時間ですよーっと呼びに来たからさ、視線をメイドちゃんに向けると、何かを悟ったみたいでニマニマしてたのが始まりだろうな!

そしたら、いつの間にかさー、お母さんに会ったときもニマニマしててーそういうことね~って言ってくるんだよね!いったよね?ユキさんの心って女性だよって!でも、お母さん的にはそういう恋も恋愛も愛もあるのよって、話を聞いてくれない!!もしかして、私って女性が好きな人って思ってない?思ってるでしょ!?

勘違いのスパイラルは加速して、気が付けば、街中ではそう思われていることに…気が付いた時には時すでに遅し!
幸いにしてユキさんは他人の視線とかに敏感なようで鈍感、だから、気にしていない?のかな?よくわかんない!

そのおかげなのかどうかはわからない、だけれど、ユキさんが手伝ってくれるようになって研究は少しずつだけれど、前進している。

前進している様で、他の問題が出てきた時もあった!この間だって…
研究しているとユキさんが手伝いに来たよっと声を掛けてくれたので、焼却炉に持って行ってと大量に積んであるゴミ、搾りかすを頼み。
運び終わったユキさんがアレって何なのか質問されたので、こめかみに血管が浮き出てしまいそうな程に怒りを覚えながらも説明してあげたんだよね。

他の大陸から取り寄せた千年生きたと言われる大樹の葉っぱ(偽物)とか、
伝説と言われるドラゴンの干物(ただの大きな鰐)とか、
何かの生き物が遺したと言われる命の結晶(透明な石の中に、偶然的にじゃなく誰かが故意に生き物の血を入れて蓋をしただけ、中身はただの鳥の血だった)とか、
不可思議な淡い光を放つ石(本物)とかね

葉っぱから成分を抽出しようにも、出てこなかった。
ドラゴンの干物だったら特殊な魔力を含んでいるかもって期待したけれど、届いてみたらただの鰐の干物。
命の結晶だなんて大袈裟に表現するから取り寄せてもらったら、誰かが作った変な作品。
不可思議な淡い光を放つ石は本当に淡い光を放っていてこれはこれで、研究対象として研究するために砕いたら光らなくなっちゃった…まぁ、数を取り寄せているからこれに関しては次に届いたら研究塔行、かな?

ってな感じで説明すると、取り寄せたってことは相当なお値段じゃないの?っと聞かれたので値段を教えると、驚きの余り腰を抜かしていた、そりゃそうだよね、平民の人からすると、大金も大金だもんね!こればっかりは私もお怒りだよ?

この私に、偽物を掴ませてきたなんてね!!

それらを掴ませに来た商人に通達済みだよ!
お前と関わりのある商人全てに警告として次、邪なことを考えたら二度と此方の商品を卸さないし、そちらの商品を買わないからなってね!
私と取引したい大陸の商人はお前だけじゃないっての!大国以外にも取引する他所の大陸の人達もいるんだからね?ほんっと人を騙し掠め取ることしか考えない連中は嫌い!

私が開発する魔道具一つを転売すれば、豪邸を買えるの知ってるからね?
畜産エリアで生産している食料も高値で売れているの知ってるからね?
さらには私達が調合する薬品とか、術譜とかも王族御用達っていうのも知ってるからな?
それを、吹っ掛けないで、ちょっと高めで卸してあげているっていう、恩を仇で返したんだから当然の報いだよね?

まったく!貿易の為に海を渡って仕入れに来て居るっていうのは評価に値するけどさ!
噛みつく相手を間違えるなっての!目利きが出来ないのって商人として致命的だぞっと!

そんな愚痴をユキさんに言うと、まったくだよね!っと同調して怒ってくれる。
たぶん、内容は理解していないけれど、私が怒っているから一緒に怒っているって感じなのだろう。
そういう反応が私としては嬉しく感じてしまう、だって、年齢が近くて、一緒に単純に怒ってくれる人っていなかったから…
私が怒っていると、私を怒らせてきっかけを作った人物を咎めて私に恩を売ろうとする人達ばっかりだもの、本当に共感してくれた人ってお母さんとユキさんしかいないんじゃないかな?


そんな日々を過ごした、そんな大切な時間が走り抜けていった…

この一か月も、充実した一か月だった
多少のトラブルもあったし、現在進行形で変な誤解が街の中を包んでいるけれど、人の噂も七十五日…って長いな、2か月以上もいるのか…
ひそひそと、ニマニマに囲まれるのは慣れているから別にいいけどね?
社交界なんて常にそんな感じだもん。慣れているからいいけれど、ユキさんの心理的ストレスの方が大事かも?

その辺りを次の新月にそれとなく聞いてみるのもありかも?

…次はさ、勇気くんが生きていた時代の話とか聞いてみたいなぁ。聞いてもいいのかな?…あと、最近、少しずつ、胸の奥でチクチクするこの感情!嫉妬だってわかっているから、すっきりさせたいんだよね!!

初代聖女様とはどういうご関係なのかしらって、圧をかけちゃいたくなってるんだよな!!
…別に、彼は私一人だけの存在ってわけじゃないのに、独占欲が湧き上がってきちゃってる…はぁ、私って意外と重いのかも?

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