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Dead End ユ キ・サクラ (45)

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何でかわかんないけれど、落ち着かない…そわそわしちゃうんだけど?
何時も通り、何も考えず出たとこ勝負でいいんじゃないの?…何の勝負をするんだっての?
明日会うっていうのに、昨夜から落ち着かないってのも、らしくないなってわかっていても、落ち着かない

準備も万端だっていうのに、これでいいのかな?が抜けない。
報告する資料も頭の中に叩き込んであるので漏れはないっていうのに、何か忘れていないかな?っと、不安になる。
新着状況も概ね問題なし、発注してある仕様書通りの魔道具も順調に組みあがっている、王都にいる金属とか建築とかの職人さんフル動員で頑張ってもらっているから問題なんてさ何一つないってのに、無意味に仕様書を見直したりして粗を探そうとしちゃってる…

ウロウロと机に座っては資料を見直して
ウロウロとソファーに座って会話のシチュエーションをシミュレーションしてみたりして
ウロウロと無意味に着ることが無い鎧をチェックしたり
ウロウロとその辺に転がっている本を拾ってパラパラっと捲ってはその場にポイ捨てしたり
ウロウロと窓を開いては閉じてを繰り返したり
ウロウロと唐突に歯を磨いたり、爪を磨いたり
ウロウロと・・・鏡の前で何も考えずにぼんやりと立ち姿をながめてみた、みた…り…服、もっと清楚な感じの方がいいかな?それとも、月が無いから月光を意識せずに白めの服の方がいいかな?それとも、情熱的な赤色とか…始祖様といえば青色!藍色?藍染?…紫もいいなぁ…あ、でも紫のやつはフリルがふんわりし過ぎてて社交界用のやつなんだよなぁ…頭、普段は何も被ったりしないけれど、リボン…リボンとかどうかな?んー…ぬぅーリボン、つけたことないからイメージがわかないし、綺麗な結び方わかんない。もう寝るよって時にお母さんにリボン結んでなんて言えない…何処に夜這いにいくのかなー?って絶対にからかわれる。髪型。三つ編みとかしてみようかな?…したことないからやり方わかんない、おしゃれには気を使ってきたけれど、服がメインでその他に拘ったことが無い、メイドちゃんとか、お母さんが行く場所、その場のシーンに合わせて選んでくれたから、アクセサリーに拘ったこと無いんだよなぁ…いや、多少は拘りあるよ?宝石でも好きな宝石の種類とかあるし?装飾が好みじゃないのもあるよ?でも、強いこだわりはない、かなー?って!豪華なアクセサリー着けているのを誰かに見られたら何言われるかわかったもんじゃないじゃん!夜中だっていっても!お酒を飲みに出たり、巡回している人もいるって!普段しないおめかしなんてしてるの見られたら直ぐに噂になっちゃうでしょ!ダメだって!普段通りにしないと!!

普段通りに、アウトドア用に買ってあるデニムコートに、黒とか、紺色の濃い目のスカート…っは、ちょっと暗く感じるから、淡いピンクがかった白に近い色合いのフリルが可愛いロングスカート…でいいかな?
ちょっと出してみようとクローゼットから一式取り出して着替えて鏡の前に立つ、そこにはいつも通り、されど、何処かおめかししている様な普段とはちょっと違った自分が映っていた。
全体的にまとまっていてすごく綺麗!可愛いと綺麗が両立している最高のバランス!その中にちょっとしたカッコいいもある!いいじゃんいいじゃん!後は
自然と、足元に視線が行く、靴どうしよう?普段ならパンプスとか、サンダルとか、ヒールが低めのを選んでたりするけれど、この服装に合わせるとなると~…

何かいいモノあるかな?って考えると、お願いして作ってみたはいいけれど、何処で履けばいいのか悩んで履いていない、管理がめんどくさいってメイドちゃんがぼやいていた!ロングブーツ!!

女将のとこの牛さんの皮で作った、茶色のロングブーツ!

靴を取り出して、ソファーに座りながら履いてみて、鏡の前に立つと…靴がごつめで力強さを感じる!
外に出るアウトドア感も出しつつ!女の子らしいフリルが可愛いワンピースタイプのロングスカート!暗い足元でもしっかりと歩けるロングブーツ!いいじゃん!明日のコーデはこれでかんっぺきっしょ!!

うんうんっと、納得した後、コーデ一式をクローゼットにしまってネグリジェを着てベッドで横になる。
目を瞑ってお腹を手に置いて上向きで、寝る!…ぱちっと目が開く、ちらりと視線を時計に向ける。何時もなら熟睡している時間。
研究に没頭して我を忘れていなかったら絶対に寝てる時間
目を瞑る…ぱちっと目が開く、ちらりと視線を時計に向ける。針が少しだけ進んでいる。
外でお酒を飲んでいる人達は今頃、酔いが回って時間の感覚が無くなってくる時間。
目を瞑る…ぱちっと目が開く、特に物音がしたわけでもないのに、窓やドアを見てしまう。
目を瞑る…ぱちっと目が開く、もぞもぞと寝返りをうつ…寝れない。

がばっと起き上って、ソファーにどかっと座って適当にテーブルに置いてある本に手を伸ばして適当にパラパラと流し読みしていく。





「…様?…姫様?・・・・姫様ぁ!!」
揺れと私を呼ぶ声で目を開く!…メイドちゃんがメイド服を着ていない?珍しい、上下、青色のジャージ姿?
「起きてください、一緒に運動する約束してましたよね?」
…したような気がする
「はい、ネグリジェだと良くないですよね、此方に着替えてください」
寝ぼけながら指示通りにネグリジェを脱ぐために立ち上がると手早く脱がされ、服を着させられる。
服を着替えたら腕を引っ張られ外に出る、外に出て朝日を浴びるころには目が覚める。

そうだった、そんな約束をしたような気がする。

よりによって今日なのかと前を歩くメイドちゃんの背中を追いかけるように早歩きで歩き続ける。
よくよく考えたら新月の周期に合わせて休みを強引に調整しているから、メイドちゃんからすればこの数日で在れば、多少、私が筋肉痛になっても問題ないって考えてくれたんだろう…なら、昨日誘ってよ~~、どうして、今日なんだよー!夜起きれなくなるじゃん!!

ジョギングというよりも、ウォーキングをしていると、色んな人とすれ違う。
夜勤上がりで徒歩で帰還した巡回ルートの任務にあたっている人達、今日はボウズでしたーっと残念そうに声を掛けてくれる。
病棟からも、夜勤上がりの人達が出てきて挨拶をしてくれる、今日は平和でした~っと笑みを浮かべながら声を掛けてくれる。
医療の父と呼ばれる、この街を支え続けてくれた人が奥様と一緒に歩いている、偉いじゃないかっと手を振って声を掛けてくれる、去り際に娘も運動させねぇっとなぁっと聞こえた気がする。
ぐるりぐるりと、街中を散歩し終わるころには、お日様がだいぶ真上に来ているんだけど?何時間歩くの?
足を引きずりながら付いて行くと「はい!お疲れさまでした!」全身汗だくで汗が太陽の光で反射して眩しい、まさに輝く笑顔でメイドちゃんがやっと終わりの合図をくれる。
「よく頑張ったわね」
私達の寝床がある寮の前にはお母さんが待機してくれていたみたいで直ぐに私を抱えて何処かに連れて行ってくれる。
後ろの方から私はもう少し運動してきますーっという声が聞こえてきた…どうやらメイドちゃんとしてはこの程度では運動の範囲にならないってことなのだろう…

…そういえば、メイドちゃんが疲れただの何だの、聞いたことが無い、朝から晩まで働き続けて無限の体力を手に入れたって事?
まぁ、走ったのって最初の5分くらいで後は、終始歩いていたから、メイドちゃんからすれば物足りなかったってことかな?それとも…実は密かにダイエットしてたっとか?

気が付けば服を脱がされ、シャワーを浴びせられ、体を綺麗にされたあと、ぬるま湯に放り込まれ、久方ぶりにお母さんの上でぷかぷかと全身の力を抜いて浮かんでいる。
「運動不足を解消するためとはいえ1時間?2時間?くらい歩いていたわね、偉いじゃないの」
この時間になると夜勤組も誰もお風呂に入らない、っていうか、後1時間くらいしたら大浴場を清掃する為に一旦、大浴場は出入りできなくなる。
そんな時間まで歩かされるなんて思ってもいなかったよ!もうそろそろ、10時くらいだもんなぁ…
「…」
お母さんに抱きしめられながらノンビリとする、こういう時間も大切だとは思うけれど、今日じゃなくてもいいじゃんって思ってしまう。
夜に大切な用事があるなんて誰にも言えないから、私のスケジュールを知っている人だとすれば3連休?5連休?って感じに見えちゃんだよなぁ…

お風呂の中で寝ちゃいけないけれど、眠たくなる…
「それにしても、貴女、少し背が伸びたわね」
うとうと、と、しながらうんっと返事をする。封印術式で成長を遅らせているとはいえ、まだ体が成長してくれるのは、お前の寿命はまだあるぞっと教えてくれるみたいで、正直なところ嬉しく感じる。理想はお母様みたいな出るところが適度に出て、身長もお母さんほどじゃなくてもいいから適度に高くなって欲しい。
「もう少しで、140センチになるって感じかしら?」
計ってないからわかんないけれど、たぶん、まだ130センチ台だと思うよ?お母さんって確か、170センチ台だったよね?
「胸もおおき…なんでもないわ」
こら!そこに触れるな!大きくなってるもん!なってるもん!!

失礼な発言でウトウトとしていた部分から一気に抜け出す!腹いせに後頭部にある柔らかい部分を攻撃する様に動かす
「っふ、無い物ねだりはやめな」
ぐぎぎッ!!圧倒的質量に!誰も勝てないからって!!
悲しくなる無駄な抵抗をし続けていると、お姫様抱っこをするようにぬるま湯から出させられる
「まだまだ、軽いわね~、筋肉が落ちた私でも軽々持ち上げれるのはどうなの?」
…これでも、ちっちゃい頃に比べて食事量は増えてるんだけどなぁ…
「運動をして、筋肉を付けなさい」
ゆっくりと地面に足がつく様に降ろされ腕を組む様に歩いていく、うぅ、歩きすぎて足がガックガクするぅ…
震える足を引きずる様に大浴場を後にして、自室に帰ってくるけれど、足がだるすぎるし、眠たくて仕方が無いのでベッドで横になる。



何かに起こされたような、夢の中で起きろと言われたような気がして体を起き上がらせる。
時計の針に視線を送ると、丁度いい時間だった。
ベッドから降りて、テーブルに視線を向けるとフルーツやパンにチーズとか、ハム?かな、冷めても美味しく頂けるスープが用意されている。
きっと、メイドちゃんが気を利かせてくれたのだろう、私が起きてすぐに何か食べれる様にね。
寝ぼけながらパンを割ってチーズと、ハムを入れ、よく見ると野菜も用意されていたので野菜も挟み込んでもそもそと小さな口を頑張って開けて齧りつく。
パンに口の中の水分が持って行かれるのでスープを啜りながらもぐもぐと何も考えず無意識で平らげていく。

食後のデザートとして葡萄を一つまみしたけれど、お腹がいっぱいみたいで、これ以上は食べる気になれなかったので、残りは冷蔵庫に放り込む。

食事を終えるころには目も覚める。
顔を洗って、歯を磨いて、ぼさぼさになった髪の毛を綺麗に整えて…
お化粧箱からファンデーション等を取り出して外に出かける準備を進めていく

ふと、最近作った新作の口紅があるのを思い出す。
そっと、手に取り、唇に色を乗せる。

鏡を見て、自慢したくなる、何処から見ても麗しのお姫様

昨日のうちに用意しておいた服を着て、ソファーに座りながら履きにくいロングブーツを履いて紐を綺麗に整える。
よしっとソファーから立ち上がり、時計を見ると、約束の時間まであと1時間ある
何時もの私なら待つのなんて時間の無駄!ギリギリまで、何か本でも読むか!ってなるけれど

今は少しでも早くあの場所に行きたい

ドアを開けて廊下を歩く、コツコツっとカツカツっと歩く音を廊下に響かせてしまう。
うっかりしていた、そうだった、夜遅くだから廊下を歩く音が響き渡るから外に出てから靴を履けばよかった
1時間早くで良かった、この時間なら私が外に出たとしても、気にする事も無いだろうし、これくらいの時間なら仕事とかでうろついてたりする。

外に出ると、お月様はしっかりと隠れている。
毎日、隠れてくれてもいいんだよ?って悪態をついてしまう。
ぼんやりと夜空を眺めていると声を掛けられる、医療班の人でお風呂上がりなのか頬がピンク色に染まっている
どうやら、これから一杯ひっかけに行くみたいで一緒にどうかと誘われてしまう、ちょっと軽く筋肉痛をならすために歩いてから寝るのでごめんねと断る
去り際に、今日も綺麗で可愛いねっと声を置いて去って行った。

あの人も長い事…私がこの街に来る前からずっとこの街を医療班の一人として支えてくれた人。
元は貴族だった、でも、貰い手がいなくてやけになってこの街に来た人
そのせいか、基本的に物静かで、自己主張が少ない人、心に傷を負って何処か人生を諦めてしまったような人…

それでも、懸命に、必死に、医療班を支え続けてくれた人…
こういう人が、この街には数多くいる、私はその人たち全てに新しい道を、新しい生き方を提案してあげたい。
貴方達の頑張りによってこの街は存続出来てきた、人類は前を進むことが出来ていると伝えたい。

胸の中に切なく輝く光をきゅっと抱きしめ、明日を願う気持ちが強くなるのを感じる。
復讐心で明日を生きる心
人々の想いを繋いで明日を目指す心
自分を生かしてくれたことへの感謝を、恩を返したいという心

様々な心が私の中に複雑に絡み合って、私はそれを背負って生きていく。

小さく小さく、されど、大きな背中を見送る。行く場所は女将のお店だろうけれど、彼女に誘われたことが久しぶりに会う親戚のお姉さんが気さくに声を掛けてくれたみたいで嬉しかった。

見えなくなるまで見送った後、彼がやってくるであろう広場に向かって歩いていく。
今宵の夜もステキな思い出が出来そうな気がする。



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