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Dead End ユ キ・サクラ (27)
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「ぅっわ!?ぇ、な、敵!?」
突如、今まで感じたことのない感覚が伝わってくる。
寵愛の加護とリンクさせてある索敵術式から伝わってくる情報の一部が欠損してっていうか、突如、索敵術式を完全に弾く空間が私達の街で生まれる。
椅子から勢いよく立ち上がり、窓を開けて耳を澄ませるが敵が襲来したことを知らせる鐘が鳴ることはない
っということは、何かしらの術式に精通した人がこの街に突如現れたっということになる。
【柳が…きたんだよ…】
誰だろうと考えようとした瞬間だった、突如、脳裏に声が響き渡る。
この感覚にも覚えがある、突如降り注ぐように飛来する情報、それを感じた時は、何時もの様に目を閉じて、祈りを捧げるような姿勢をとる。
【柳の…話を…聞いて、そして、信じて。お願い…】
それっきり、言葉が聞こえてくることはなかった。
新しい何かの技術や対策、敵の情報などは無かった。
つまり、切羽詰まった状況で私は死んだのだろう。
そして、そんな状況下で過去の私に伝える為に振り絞った言葉。
その言葉の意味を考えれば、突如飛来した術者は柳という人物なのだろう。
そして、この如何にも怪しいと言わんばかりの状況を産み出した人物の話を聞いて信じろと未来の私は言う。
つまり、未来の私は、彼の話を聞いてみたはいいけれど、突拍子も無さ過ぎて、尚且つ信憑性も薄かったから信じ切れなかったのだろう。
その結果、私は死んだってことかな?…そっか、未来の私には協力者がいたんだね。
なら、どう見ても怪しくて、信じ切ることが出来そうもない人物が実は、最良の協力者でしたってオチだったんだね。
そうと決まれば、会いに行くとしましょう。
ネグリジェから普段着に着替えて…お化粧はしなくてもいいか?新月の夜だし、広場には小さな灯りが灯っているとはいえ、お化粧なんて気が付かないよね
化粧箱を眺めていると、どうしてかわからないが、化粧をして会いに行けという自分が居る…
新月の暗がりで化粧をする意味がわからない…
無駄な時間だと一笑したいが、我儘を言う自分に少し頭を悩まされてしまったけれど。
効率重視!っという今代の私の意見を突き通す!
化粧はしないで、部屋から出て、夜中という事もあって足音を消すために裸足になってペタペタと廊下を歩いていく
ゆっくりと多くの仲間達、多くの愛する人たちが眠る建物から出て、ふと、後ろを振り返ると涙が溢れ出てくる?
どうやら、今夜の私は涙もろいみたい…幸いにもお月様のお顔はお隠れになられているから、幾らでも泣いてもいいよね?
センチメンタルな気分に浸りながら涙を拭ってから、靴を履いて、ぽっかりと空いてしまった空間に向かって駆けだしていく。
駆け出していく、風を切って、拭ったはずの涙がまた、溢れ出てくる、涙を後にしながら走っていく
どうしてかわからないけれど、真っ暗なはずの、新月の夜なのに、世界が明るく感じられる
過ぎ去っていく、風景が嬉しくて仕方が無かった、この世界がまだ存在していることに対して歓びを感じている
息が切れても、肺がくるしくても、脇腹がいたくなっても気にすることなく走り続け
「おや?姫様?こんな夜更けに」
気が付けば私は、全力で、全速力で、真っすぐに、彼の胸に飛び込んでいた
彼もまた、いきなり飛び込んできた人物を優しく受け止め抱きしめてくれた…
その優しさに甘えるように顔を擦り付け続けると、彼もまた、何も言わずに頭を撫で背中をぽんぽんっと優しく叩いてくれた
たったのこれだけなのに、何故か満ち足りることなく満たされていく…その刹那に未来で起きた出来事がフラッシュバックしていく…
未来の私達から受け取った願いを抱きしめ、すっと、彼の今はまだ薄い胸板に手を触れ、離れたくないけれども、離れないと話が進まない、彼には時間がないから。
ぐっと力を入れて彼の胸板を押して離れ、溢れ出てくる涙を拭うことなく
「また、お会いしましたね、遠き過去の王、柳さん」
頑張って精一杯の笑顔で彼に挨拶をすると、彼は微笑みながらポケットからハンカチを取り出し、優しく私の涙を拭ってくれた
私の一言で、柳という人物は全てを察したみたいで何も言わずに手を引いてベンチの上にハンカチを…二枚持っていたみたいで、私の涙を拭った時とは別のハンカチを敷いたと思ったら、綺麗な所作で座らされてしまう。
流れるような動きに感動?驚き?それとも、この人はこうだよねっという安心できる人に出会ったときのような落ち着けれる感情?
よくわからない多くの感情が私の中で湧き上がり拍手を、喝采を湧き起こしている。
心の中がお祭り騒ぎ状態になっているのを落ち着かせようとしていると、隣に彼も優雅な所作で座り
「君は、どうして、俺の事を知っているんだい?」
優しく、確認する様に話しかけてくれる、その言葉に、次々と私の中で何かが弾けるようにフラッシュバックし、未来の出来事が再生され、その押し寄せる感情の波に涙が溢れ出てしまう
「…まさ、か、君も、なのか?君も」
嗚咽してしまいそうになる喉を抑えているせいで言葉を出せずに、ただただ、柳を見つめぽろぽろと涙を流し続けていると
「言葉にできない状況って事か…致し方ない、今から説明する内容に同意してくれたら首を縦に振ってほしい」
溢れる涙をハンカチで優しく肌に触れるか触れないかってくらいに丁寧に拭ってくれながら、優しく語り掛けてくる。
此方を真剣に見つめる瞳、自然と私は、彼の目を見つめてしまう、真っ黒な瞳の奥に小さな青い光が見えるような、不思議な瞳を見つめていると、心が、感情が、私の全てがその瞳に吸い込まれてしまうような感覚を抱きながら、視線をそらせることが出来ず、見つめ続けてしまう。
「俺の事を知っているっという事は、俺が特殊な術を扱えれることを知っていると思うのだが」
この質問に対してゆっくりと頷くと、彼は驚く様な表情をした後、深くため息をついて
「そう、か、君もまた…っであれば、可能だろうな」
何処を見ているのかわからないような愁いを帯びた表情で此方を見つめ続けている?優しく微笑む表情が似合って輝いている、そんな、貴方にはそんな表情をしてほしくないなぁ…
「これから、特殊な術を使う、俺はこの術を魂の同調と呼んでいる」
たましいのどうちょう?魂をシンクロする?重ねる?どういう意味だろうか?
「君と俺の魂を同調させ、君が感じた世界、君が伝えたい世界を俺が追体験する。だから、君が俺に伝えたい事、世界を創造し心を委ねて欲しい」
っだ!?
その説明を聞いた瞬間に心が急速に冷静になる
だって、私の考えていることが相手に伝わるって事でしょ!?ってことは、今の私が見られちゃうって事じゃん!!
私の中にいる私達が総動員で心に壁を創り、夢の内容を必死に搔き集め、総動員で柳に伝える為の世界を構築していく!!急げ私!!
超高速で思考を加速させるように瞬時に世界を創造させ、柳にはコンマ数秒っという時間しか与えずに、即座に頷く
「ありがとう、そのまま、じっとしていてほしい」
優しく微笑んだ後、腕を私の背中にまわされたと思ったら、優しく抱擁する様に抱きしめられる。
まるで、父親のように…
嗚呼、そういえば、物心ついてから、お父様にこの様に抱きしめられた記憶ってなかったかも…まぁ、お父様に抱きしめられたら反吐が出るから嫌だけどね!
っとと、いけないいけない、思考が逸れてしまった、直ぐに、構築した世界を表に出して…彼にゆだねよう。
抱きしめられた彼の体からは、汗くさいっていう匂いは無く、何処かフローラルな香りだった。
嗚呼、そっか、香水とか使うタイプなのかな?…ううん、違う、これ、私が用意してある大浴場の石鹸の匂いだ…落ち着く。
包み込まれていく父性に、身も心も安心して委ねていく、心も体も緊張の糸が切れ、完全にリラックスしていきダランっと力が抜けていくのがわかる。
「そう、君は術式に聡いんだね、そう、相手に委ねて、そのままでいるんだよ」
優しく頭を撫でられ、背中をぽんぽんっと叩かれると、気持ちが高揚することなく、寧ろ、少し眠くなってしまう。
「魔力とは心…魔力とは魂…魔力とは肉体…魂の境界を越え、心を灯せ、我が魂と彼の者の心を重ね、量ね、重音…」
詠唱だ、私達が使う術式とは根本的にルールが違う、私達は特殊な文字を思い描き独自に構成されたルールを参照し、そのルールに従い術式を構築するための文字を並べ繋、発動する、または、その特殊な文字を音にだして、それを補助として構築する方法もあるけれど、柳が使う術式は根本的に私達とは違う。
彼の術式は、私達が理解できる日常的な言語をベースにして詠唱している。日常的な言語をベースとした場合、思いがけないシーンで術式が暴発する恐れがあるっという、文献を読んだことがあるから、廃れたのだと思っていた、でも、始祖様はそれをベースとしている。
つまり、柳もまた、始祖様と同じタイプのルールをベースとした術式だ…
術式を研究し続けてきた私だからこそ、瞬時に理解できる、ここまで徹底的に私達が普段使う術式とは違う術式ってだけで、彼が特殊で特別な存在だという事を理解できるし…
それだけで、彼が特異な存在であり、信用してはいけない人物なのだと瞬時に理解してしまう。
ああ、そっか、だからか、未来の私は未知なる術を扱う術士を瞬時に信用できなくなってしまったのだろう。
「・・・・」
長いようで短い時間、ずっと続いて欲しいなって感情がふっと降りてくるのと同時に、直ぐにダメ!って声が聞こえてくるので慌てて壁を創り
夢の残滓を搔き集め、世界を構築する!!
あっぶねー、っていうか、これ以上先の感情も今はダメ!しゅうちゅうしゅうちゅう…
心を無にして彼に伝えたい事だけに集中していくと、だんだんと、不思議な感覚が伝わってくる?
見えない何かが見えるような、見たことの無い様な世界が見えるような…不思議…
私が知らない世界の匂いを感じる…
私が知らない世界の光を感じる…
私が知らない世界の音を感じる…
私が知らない世界の人を感じる…
これは、誰?
これは、何?
これは、どこ?
近くにいる貴方は誰?白く輝く、されど、眩しくない不思議な甲冑を着た貴方は誰?
真っ白で、ううん、違う、輝いている、光が収束しその一帯から離れないようにしている?光を屈折させている?反射させている?
原理は、わからないけれど、太陽のように輝き、されど、光の色は白い、でも、眩しいと感じない、目が痛いと感じない、嫌な感じがしない不思議な光を纏った人物…
嗚呼、これが、白き黄金の太陽?聖女伝説に深くかかわったと言われる伝説の騎士?
そして、その近くには、白き髪をした長き髪の人物、見た目も幼い…たぶん、12?かな?14かな?くらいの女性が白き黄金の太陽の傍にいる。
これが、聖女様?どんな傷であれ、どんな病であれ、無くしてしまった四肢ですら、内臓ですら再生させたと言われる、私達の始まりの人?
その二人が楽しそうに会話をしている、そして、それを何処か遠く?ううん、距離は近い、でも、心は遠い?
違う、敢えて距離を離している?二人を見守るために?
そっか、あなたは…二人の関係を尊きものと感じ、二人の生末を見守り続けてきたんだね…
そして、結果的に、王の一人になったんだね…柳…の…過去…思い…私にも伝わってくるよ。
世界を憂い、世界を嘆き、世界を救いたいと願って動き、出会ってしまった…
世界を変える救世の人物に出会った、貴方の旅路を、私も知ることが出来た気がする。
…敵は、こんなにも清い人物を…人々が平和に暮らせる世界を願った聖人を穢したのか…
ゆるすわけにはいかない
またひとつ、わたしの決意をゆるぎないものへ…またひとつ わたしが わたしのこころが 折れない 折れるわけにはいかない理由が
またひとつ 宿る…
突如、今まで感じたことのない感覚が伝わってくる。
寵愛の加護とリンクさせてある索敵術式から伝わってくる情報の一部が欠損してっていうか、突如、索敵術式を完全に弾く空間が私達の街で生まれる。
椅子から勢いよく立ち上がり、窓を開けて耳を澄ませるが敵が襲来したことを知らせる鐘が鳴ることはない
っということは、何かしらの術式に精通した人がこの街に突如現れたっということになる。
【柳が…きたんだよ…】
誰だろうと考えようとした瞬間だった、突如、脳裏に声が響き渡る。
この感覚にも覚えがある、突如降り注ぐように飛来する情報、それを感じた時は、何時もの様に目を閉じて、祈りを捧げるような姿勢をとる。
【柳の…話を…聞いて、そして、信じて。お願い…】
それっきり、言葉が聞こえてくることはなかった。
新しい何かの技術や対策、敵の情報などは無かった。
つまり、切羽詰まった状況で私は死んだのだろう。
そして、そんな状況下で過去の私に伝える為に振り絞った言葉。
その言葉の意味を考えれば、突如飛来した術者は柳という人物なのだろう。
そして、この如何にも怪しいと言わんばかりの状況を産み出した人物の話を聞いて信じろと未来の私は言う。
つまり、未来の私は、彼の話を聞いてみたはいいけれど、突拍子も無さ過ぎて、尚且つ信憑性も薄かったから信じ切れなかったのだろう。
その結果、私は死んだってことかな?…そっか、未来の私には協力者がいたんだね。
なら、どう見ても怪しくて、信じ切ることが出来そうもない人物が実は、最良の協力者でしたってオチだったんだね。
そうと決まれば、会いに行くとしましょう。
ネグリジェから普段着に着替えて…お化粧はしなくてもいいか?新月の夜だし、広場には小さな灯りが灯っているとはいえ、お化粧なんて気が付かないよね
化粧箱を眺めていると、どうしてかわからないが、化粧をして会いに行けという自分が居る…
新月の暗がりで化粧をする意味がわからない…
無駄な時間だと一笑したいが、我儘を言う自分に少し頭を悩まされてしまったけれど。
効率重視!っという今代の私の意見を突き通す!
化粧はしないで、部屋から出て、夜中という事もあって足音を消すために裸足になってペタペタと廊下を歩いていく
ゆっくりと多くの仲間達、多くの愛する人たちが眠る建物から出て、ふと、後ろを振り返ると涙が溢れ出てくる?
どうやら、今夜の私は涙もろいみたい…幸いにもお月様のお顔はお隠れになられているから、幾らでも泣いてもいいよね?
センチメンタルな気分に浸りながら涙を拭ってから、靴を履いて、ぽっかりと空いてしまった空間に向かって駆けだしていく。
駆け出していく、風を切って、拭ったはずの涙がまた、溢れ出てくる、涙を後にしながら走っていく
どうしてかわからないけれど、真っ暗なはずの、新月の夜なのに、世界が明るく感じられる
過ぎ去っていく、風景が嬉しくて仕方が無かった、この世界がまだ存在していることに対して歓びを感じている
息が切れても、肺がくるしくても、脇腹がいたくなっても気にすることなく走り続け
「おや?姫様?こんな夜更けに」
気が付けば私は、全力で、全速力で、真っすぐに、彼の胸に飛び込んでいた
彼もまた、いきなり飛び込んできた人物を優しく受け止め抱きしめてくれた…
その優しさに甘えるように顔を擦り付け続けると、彼もまた、何も言わずに頭を撫で背中をぽんぽんっと優しく叩いてくれた
たったのこれだけなのに、何故か満ち足りることなく満たされていく…その刹那に未来で起きた出来事がフラッシュバックしていく…
未来の私達から受け取った願いを抱きしめ、すっと、彼の今はまだ薄い胸板に手を触れ、離れたくないけれども、離れないと話が進まない、彼には時間がないから。
ぐっと力を入れて彼の胸板を押して離れ、溢れ出てくる涙を拭うことなく
「また、お会いしましたね、遠き過去の王、柳さん」
頑張って精一杯の笑顔で彼に挨拶をすると、彼は微笑みながらポケットからハンカチを取り出し、優しく私の涙を拭ってくれた
私の一言で、柳という人物は全てを察したみたいで何も言わずに手を引いてベンチの上にハンカチを…二枚持っていたみたいで、私の涙を拭った時とは別のハンカチを敷いたと思ったら、綺麗な所作で座らされてしまう。
流れるような動きに感動?驚き?それとも、この人はこうだよねっという安心できる人に出会ったときのような落ち着けれる感情?
よくわからない多くの感情が私の中で湧き上がり拍手を、喝采を湧き起こしている。
心の中がお祭り騒ぎ状態になっているのを落ち着かせようとしていると、隣に彼も優雅な所作で座り
「君は、どうして、俺の事を知っているんだい?」
優しく、確認する様に話しかけてくれる、その言葉に、次々と私の中で何かが弾けるようにフラッシュバックし、未来の出来事が再生され、その押し寄せる感情の波に涙が溢れ出てしまう
「…まさ、か、君も、なのか?君も」
嗚咽してしまいそうになる喉を抑えているせいで言葉を出せずに、ただただ、柳を見つめぽろぽろと涙を流し続けていると
「言葉にできない状況って事か…致し方ない、今から説明する内容に同意してくれたら首を縦に振ってほしい」
溢れる涙をハンカチで優しく肌に触れるか触れないかってくらいに丁寧に拭ってくれながら、優しく語り掛けてくる。
此方を真剣に見つめる瞳、自然と私は、彼の目を見つめてしまう、真っ黒な瞳の奥に小さな青い光が見えるような、不思議な瞳を見つめていると、心が、感情が、私の全てがその瞳に吸い込まれてしまうような感覚を抱きながら、視線をそらせることが出来ず、見つめ続けてしまう。
「俺の事を知っているっという事は、俺が特殊な術を扱えれることを知っていると思うのだが」
この質問に対してゆっくりと頷くと、彼は驚く様な表情をした後、深くため息をついて
「そう、か、君もまた…っであれば、可能だろうな」
何処を見ているのかわからないような愁いを帯びた表情で此方を見つめ続けている?優しく微笑む表情が似合って輝いている、そんな、貴方にはそんな表情をしてほしくないなぁ…
「これから、特殊な術を使う、俺はこの術を魂の同調と呼んでいる」
たましいのどうちょう?魂をシンクロする?重ねる?どういう意味だろうか?
「君と俺の魂を同調させ、君が感じた世界、君が伝えたい世界を俺が追体験する。だから、君が俺に伝えたい事、世界を創造し心を委ねて欲しい」
っだ!?
その説明を聞いた瞬間に心が急速に冷静になる
だって、私の考えていることが相手に伝わるって事でしょ!?ってことは、今の私が見られちゃうって事じゃん!!
私の中にいる私達が総動員で心に壁を創り、夢の内容を必死に搔き集め、総動員で柳に伝える為の世界を構築していく!!急げ私!!
超高速で思考を加速させるように瞬時に世界を創造させ、柳にはコンマ数秒っという時間しか与えずに、即座に頷く
「ありがとう、そのまま、じっとしていてほしい」
優しく微笑んだ後、腕を私の背中にまわされたと思ったら、優しく抱擁する様に抱きしめられる。
まるで、父親のように…
嗚呼、そういえば、物心ついてから、お父様にこの様に抱きしめられた記憶ってなかったかも…まぁ、お父様に抱きしめられたら反吐が出るから嫌だけどね!
っとと、いけないいけない、思考が逸れてしまった、直ぐに、構築した世界を表に出して…彼にゆだねよう。
抱きしめられた彼の体からは、汗くさいっていう匂いは無く、何処かフローラルな香りだった。
嗚呼、そっか、香水とか使うタイプなのかな?…ううん、違う、これ、私が用意してある大浴場の石鹸の匂いだ…落ち着く。
包み込まれていく父性に、身も心も安心して委ねていく、心も体も緊張の糸が切れ、完全にリラックスしていきダランっと力が抜けていくのがわかる。
「そう、君は術式に聡いんだね、そう、相手に委ねて、そのままでいるんだよ」
優しく頭を撫でられ、背中をぽんぽんっと叩かれると、気持ちが高揚することなく、寧ろ、少し眠くなってしまう。
「魔力とは心…魔力とは魂…魔力とは肉体…魂の境界を越え、心を灯せ、我が魂と彼の者の心を重ね、量ね、重音…」
詠唱だ、私達が使う術式とは根本的にルールが違う、私達は特殊な文字を思い描き独自に構成されたルールを参照し、そのルールに従い術式を構築するための文字を並べ繋、発動する、または、その特殊な文字を音にだして、それを補助として構築する方法もあるけれど、柳が使う術式は根本的に私達とは違う。
彼の術式は、私達が理解できる日常的な言語をベースにして詠唱している。日常的な言語をベースとした場合、思いがけないシーンで術式が暴発する恐れがあるっという、文献を読んだことがあるから、廃れたのだと思っていた、でも、始祖様はそれをベースとしている。
つまり、柳もまた、始祖様と同じタイプのルールをベースとした術式だ…
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それだけで、彼が特異な存在であり、信用してはいけない人物なのだと瞬時に理解してしまう。
ああ、そっか、だからか、未来の私は未知なる術を扱う術士を瞬時に信用できなくなってしまったのだろう。
「・・・・」
長いようで短い時間、ずっと続いて欲しいなって感情がふっと降りてくるのと同時に、直ぐにダメ!って声が聞こえてくるので慌てて壁を創り
夢の残滓を搔き集め、世界を構築する!!
あっぶねー、っていうか、これ以上先の感情も今はダメ!しゅうちゅうしゅうちゅう…
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私が知らない世界の光を感じる…
私が知らない世界の音を感じる…
私が知らない世界の人を感じる…
これは、誰?
これは、何?
これは、どこ?
近くにいる貴方は誰?白く輝く、されど、眩しくない不思議な甲冑を着た貴方は誰?
真っ白で、ううん、違う、輝いている、光が収束しその一帯から離れないようにしている?光を屈折させている?反射させている?
原理は、わからないけれど、太陽のように輝き、されど、光の色は白い、でも、眩しいと感じない、目が痛いと感じない、嫌な感じがしない不思議な光を纏った人物…
嗚呼、これが、白き黄金の太陽?聖女伝説に深くかかわったと言われる伝説の騎士?
そして、その近くには、白き髪をした長き髪の人物、見た目も幼い…たぶん、12?かな?14かな?くらいの女性が白き黄金の太陽の傍にいる。
これが、聖女様?どんな傷であれ、どんな病であれ、無くしてしまった四肢ですら、内臓ですら再生させたと言われる、私達の始まりの人?
その二人が楽しそうに会話をしている、そして、それを何処か遠く?ううん、距離は近い、でも、心は遠い?
違う、敢えて距離を離している?二人を見守るために?
そっか、あなたは…二人の関係を尊きものと感じ、二人の生末を見守り続けてきたんだね…
そして、結果的に、王の一人になったんだね…柳…の…過去…思い…私にも伝わってくるよ。
世界を憂い、世界を嘆き、世界を救いたいと願って動き、出会ってしまった…
世界を変える救世の人物に出会った、貴方の旅路を、私も知ることが出来た気がする。
…敵は、こんなにも清い人物を…人々が平和に暮らせる世界を願った聖人を穢したのか…
ゆるすわけにはいかない
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