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Dead End 6Ⅵ6の世界(8)

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ドスドスと重い体を全力で動かす、あたいの体は体力はあるけれど、走るという速さは人並みだからねぇ…
あたい達の戦士が各々、自分たちにとって思い入れのある場所へ向かって駆けだしたのを見て、王都に縁もゆかりもないあたいにとって駆けつけないといけない場所なんて無いと思っていたけれどよ。

あるじゃねぇか!戦う術がなく今の状況に困惑しているであろう、あたいにとって縁もゆかりもある場所が!

戦士長の奥さんに息子さんだ!!

ドスドスと豪快な足音を出すものだから、人の形をした変なのが襲い掛かってくる、掴んでは首を圧し折り引きちぎり、その場に捨てる
敵が多いせいで王都の端っこの方にある畜産、生産エリアって呼ばれる場所に辿り着けない!!

何体の物、変なのを壊していると、一瞬だけ、光も音も、なにもかんもが消えたように感じた?よくわかんねぇが、何かあったのだろう
変なのも、先ほどの影響か動きが鈍くなってやがる!事態が好転したって考えてもよさそうさぁね!!

急いで、過去に一度だけ訪れた家の位置を思い出しながら走る。

奥様の顔と息子さんの顔は正直おぼえてねぇ!でも、向こう側から助けを求めてやってくる人達を助けていれば何とかなるだろ!
道中でも数多くの変なのを壊してきたし、あたいの通った道であれば安全だろ?

走っていくと、あたいより、いや、同じくらいか?それくらいの年齢の方と男の子が慌てて横を通り過ぎていく…
男の子は王都でも珍しい黒髪だった…戦士長と同じ黒髪…もしかして?
慌てて振り返り声を掛けて呼び止める
「ぁ、その、すいません、いまは、いまは」
困惑したような表情で息を切らしながらなんとか声を出そうとする女性の前に、黒髪の男の子はお母さんを守るように前に出てくる。
良い根性してんじゃねぇか、そうなると!
名前を確認するとやっぱり戦士長とこの奥様と息子さんじゃねぇか!!
自分が戦士長に育てられた弟子であると告げ、助けに来たと伝えると安堵したような表情になる。よかった!まにあった!!

後は、二人を王都の外で避難者を守るために陣を築いている場所まで守ればいいか!事態はしゅうしゅうし…てなさそうだね。

二人にあたいが走ってきた道のりを教え、王都の外に出ると医療班が待機しているのを伝え、走るように声を掛ける。
二人が走っていくのを見送った後、後ろから殺気を飛ばしてくる相手の方へと体の向きを変える。
相当な手練れがこの暗闇の先に居るのは間違いないねぇ…脳裏に過る、死の象徴、デッドラインで何一つできなかったアイツと同じくらいの何かの気配を感じる。
全身が震える、武者震いってやつじゃねぇ、死の恐怖を感じてやがる、何とか愛用の斧を握りしめるが…はは、あたいはだめだねぇ、なんて心が弱いんだ、何時までもいつになってもあの時から前に進めてねぇ…でもな、でもなぁ!あの獣じゃない限りあたいはたたかえ

ああ、これはむりだ、いくら、あたいでもあんたはきれねぇよ…

「愛する人を壊す為には、あたいの拳はできてねぇよ…戦士長」

暗闇から出てきた、愛する人の一撃であたいの物語は終わりを告げた…






この世は地獄となった。
愛する妻をこの手で殺した、愛する孫をこのてにかけた、守りべきものをこの手にかけた時点で俺は、俺の手は悪道へと堕ちた。

どうしてこうなったのだろうか?先ほどまで、そう、先ほどまでノンビリと穏やかにお茶を飲んでいたではないか…
何もすることが無く、庭で紅茶でも飲んでいたら、突如、上空に禍々しい眼が現れると、周囲の者たちが頭を抑え込みながら次々と倒れ始める。
突如、起こった異変に慌てて家の中に入ると、妻も、遊びに来ていた孫達も床に倒れている、慌てて駆け寄ると愛する妻が正気を失ったのか突如、襲い掛かってくる。
何とか、取り押さえようとするが、妻とは思えない程の怪力に為す術がなく、つい、床に落ちていたフォークを首に刺して、その場から離れ、壁にかけてある切る為というよりも美術品として置いてある剣をとり、襲い掛かる妻と孫をこの手で…

それだけじゃない、使用人たちも次々と襲い掛かってくる、アレはもう、人とは思えない何かだった。だが、見た目は愛する家族たちだ…

おれは、おれは、わがみかわいさに…守るべきもの全てを切った、切り殺した…

失意のどん底で中庭に出る

そうか、最後はお前か

「一度、お前とは切り結んでみたいと思っていた、我が手は悪へと転じた、裁きに来たのだな月の裏側から」

さぁ、俺を殺せ!悪逆を!悪道を!罪を重ね!騎士としての享受も忘れてしまった愚かなる騎士を殺してくれ!!

愛する息子!シヨウよ!!

俺の物語は愛する息子の手によって終わりを告げた…






お母さんの手を握って前へ前へと走っていく!大きな大きな姿の戦士が教えてくれた道を走っていく!
道の脇には大きな戦士の人が倒したのかな?いっぱい人の形をした人じゃないものが転がっている。

お母さんが、何か声をだしている、まって?待てないよ!立ち止まったら死んじゃう!お母さんは私が守るの!お父さんがいないのなら、私が守らないといけないの!

それに、もう少しで正門!あの人が言ってた!外には医療班が待ってるって!そこまでそこまで逃げきれたら
握っていた手がするりと離れる、慌てて止まるとお母さんが転んでしまったのか倒れている!
急いでお母さんの傍に駆けよろうとすると、人じゃない者たちがお母さんに這いずりながら近寄ってきてる!?
わ、私じゃ、ど、どうすれば
周りに武器になるような物が無いか探すが何もない!!せめて、せめてシャベルでもなんでもいいから硬くて鋭利なものがあれば!お爺ちゃんに教えてもらった武術でどうにか、どうにか出来るのに!

私の弱い力じゃあいつらを倒せない!!
お母さんが涙を浮かべながら「あなただけも、逃げて」悲しそうな言葉が聞こえてくる…そんなの、そんなの出来るわけがない!!!
非力でもいい、弱くてもいい!この体は男の子体!今なら、いまならわたしのてはとどくはずでしょ!!あのときみたいにわたしはよわくない!!

お母さんの体に魔の手が届きそうになった瞬間、路地裏の方から金属が地面を蹴るような音が聞こえる、騎士だ!金属の具足を履いた騎士がこっちにむかってきている!?
希望の音が瞬時にお母さんに纏わりつきそうになった人ならず者の首を切り落としていく。
騎士なのに具足と片手剣しか持っていない大きな、おおきな、まるで、おとうさんみたいな、騎士がお母さんを抱き起すと私に渡してくる、お母さんを受けったときにちらりと見えた顔は…お父さんだった。
何か理由があって言葉が出せないみたいだけど、言葉が伝わってくる

『お母さんを守れ!』

うん!お父さん、信じてた!私達が危ない時は絶対に駆けつけてくれるって!
お母さんに肩を貸して何とか立たせる、足首を捻ったみたいで歩きにくそうで意識も絶え絶えだけど、何とか歩ける!
お母さんと共に出口へと歩いていくと、お父さんは方々を駆け巡りながら何かを倒している様な音だけが聞こえてくる。
きっと、周囲にいる危険を排除してくれているのだと伝わってくる…

なんとか、正門を抜けると、遠くにテントが建てられているのが見える、あれが大きな戦士の人が言っていた医療班なのだろう。
お母さんを引きずってなんとか、テントに辿り着く。
年老いた人にお母さんを任せて、私もお父さんの手助けをしようと王都に戻ろうとするが引き留められてしまう…

うん、そうだね、武器も何もない私が何かすることなんて出来ない…後は、お父さんに任せよう…






王門を抜ける、リビングデッドと化した騎士共が私に向かって歩いてくる。
指を鳴らすリビングデッドの頭が吹き飛ぶ、腕を振る念動力で生み出した不可視の刃によって首を飛ばす、地面を踏むように蹴る大地が鋭く隆起し串刺しにする、視線を向ける此方に向かってくる死者の軍勢の一人が燃えその炎が次々と軍勢に引火していく…
両手を横に振る、引火して脆くなった軍勢の胴体が真っ二つに切れる、地面に倒れる軍勢の頭上に氷を作り出し落とし頭蓋を粉砕する。

明日への魔力を考慮しないのであれば、私を止めれるやつはこの世界に居ない…

我が一族の魂から得た魔力を行使するのは後、今は自前の魔力を使って蹂躙する…腎臓はもうない。

王城の門は固く閉ざされているので念動力を使い強引にこじ開けて王城に入る、奥で震えている殺すべき相手が見える。

王城にはまだ人が生きているみたいで刃を此方に向けて何か話しかけてくるがどうでもいい、死ね。
刃の切っ先を自分たちの喉元に向けさせ自害させる。誰に向かって刃を向けていると思っているの?

私に向かってくる民を守れない愚者共が次々と自害していく…
死んだあとリビングデッドになられるのも面倒なので、しっかりと頸椎の神経を切るように自害させている。
下半身不随にでもなってくれれば、這ってでも追って来るにしても相手はしやすいからね。

道中、どうしても気になる部屋があったので、立ち寄る…
ある人物の部屋、豪華な部屋、その奥に隠し通路がある、ギミックを直ぐに理解し通路を開かせる。
そこには、裸体の女性が転がっていた…私が入ってくるのと同時に起き上がり襲い掛かってくる。

慈悲を込めて頭を吹き飛ばす…

【おねがい、燃やして、なくし、て】

うん、わかったよ、こんな不幸な場所無くなってしまえばいいよね。
言われたとおりに、全力で炎の術式を埋めこむ、あいつを殺した後に発動するね…子宮はもうない。

不幸が産まれ続ける部屋に別れを告げ、歩を進める

王が居る、愚者が居る、謁見の間に到着するとアレが踏ん反り返ってこちらを見下ろしている、周りにいた騎士が同じように刃を向けるので同じように自害させる。
アレは何が起こっているのか理解できていないのか慌てている…城下町で起きている事態にも気が付いていないのだろう。

慌てて剣を取り出して此方に切っ先を向けてくるので腕を念動力で捻じ切る
突然、捻じ切られた腕からの痛みに騒ぎ立てているが鬱陶しい耳障り、声門を念動力で引きちぎる
私の白い髪を見て何か察したのだろうか下卑た笑みを浮かべているので片目を爆破させる
痛みにもんどりを打ちながら捻じ切られていない方の腕を上げて指を指してくるので指を向けられるのは不快、指を一つ一つ捻じ切る
出血死されてもつまらないので、血が流れている箇所全てをその箇所だけを焼くように術式を発動させる
燃えながらアレが転がるから床に引いてある絨毯が焦げ付いている、ああ、そういうこと?馬鹿の考えは私には理解しずらい
燃えてる箇所を擦り付けても消えるわけないじゃん、馬鹿なの?
そんなに冷やしてほしいなら冷やしてあげる
消えない火をどうにか消そうとする愚者の真上に氷の塊を作り叩き落す
避けきれなかったのか氷はアレの下腹部に直撃したみたい
それから動かなくなったので、死んだのだろう

リビングデッドになっても面倒なので、首を念動力で捻じ切る…お母さん達の魔力を感じない

すぐ傍に感じていたお母さんが失ったことにより悲しみという感情が押し寄せてくる
「ぅ、ぐ、うあ、うあああああああああああああああああああああ」
だれもいない、しのせかいで、しのちゅうしんで

愛を求めた愚者は叫ぶ

声が出せなくなるほど、叫び続ける…

失ってしまった愛を求めて…



かえろう、おかあさんのもとへ、かえろう…


もう一度、立ち上がり、ふらふらと、ふらふらと、お母さんが居る教会の地下へと向かおうとあるいていく…
廊下には生きる者はないも無い…
侍女もいない、家臣もいない、騎士もいない…全ての生者が死者へと転じている

これこそが地獄だと言われたら、そうだねって納得してしまう

体から徐々に力が抜けていく、どこか、臓器を魔力に変換しないと、動けなくなっちゃう、どこ、どこだと直ぐ死なない?
副腎皮質はとっくにない、腎臓もない、子宮もない、そうなるとあ、そっか片方の肺なら

片方の肺を溶かす、その衝撃でつい、口から少量の血を吐いてしまう…勿体無い、血も魔力に変換できるのに

王城を出るために門を潜ると広がる世界は真っ赤に染まっている…あ、そうだ真っ赤で思い出した
指を鳴らす、あの部屋に施した術式が発動したのを感じる、今頃あの一帯は火の海になっている。

足を一歩進めようとするが動かない、しまった、先ほどの術式を発動させただけで魔力が底をつきそうになっている。
両方あるモノを片方溶かせばいい、左目を昇華させる…

魔力が少しだけ満ちたのを感じる、歩こう…お母さんの下へ歩こう…

ゆっくりと歩いていくと、後ろで物が崩れる音が聞こえてくる、熱も感じる…燃やすの早かったかも、このままだと私も燃えてしまうかも
お母さんに辿り着くことはできないかもしれない、だったら、もう、今持てる情報を願おうかな…

最後くらいお母さんに会いたかったな

目を瞑り祈りを捧げる姿勢をとると誰かに抱きかかえられる?
誰だろうと目を開けると、お母さんの腹部を刺した人が私を抱き上げている?
リビングデッドがどう、して?
かしゃかしゃと音がする、そういえば、こいつは無から産まれたはずなのに、どうして具足を履いているのだろうか?

どうでもいいか、祈りを捧げようとすると
『いこう、僕も会いたいんだ、君なら知ってるよね?』
声が聞こえたような気がした、こいつには心がある、魂がある?…嗚呼、そうなのね、貴方も降りてきてしまったのね、行きましょう騎士様。
貴方が愛する、貴女を愛した…私達の想い人の下へ…行きましょう。

騎士様に抱っこされながら死の街を駆ける、かしゃかしゃと金属音を響かせながら走り続ける、騎士様の腕が少しずつ形が崩れていく…
どうやら、お互い残された時間は少ないみたい、間に合うといいな…

教会の地下に辿り着くと騎士様の片腕は無くなっていた。
お母さんに近づこうとすると、お母さんの腹部に刺さっている片手剣を抜いて、リビングデッドが此方に向かって襲い掛かってくる
残された魔力を使えば!迎撃しようと臓器を溶かそうとしたとき

万全な状態のリビングデッドに向かって騎士様が駆け出す、状況判断でわかるよね、そいつが貴方の愛する人を殺したやつだって
視線を横に向けると司祭が自分の心臓を自ら取り出して握りつぶした状態で果てているのが見える、リビングデッドになられると面倒なので、頭を吹き飛ばす。

剣戟の音が響く中、お母さんに辿り着く…
死んで間もないのか、まだ薄っすらと暖かい…
お母さんに抱き着く様に寄りかかる

頭を撫でて欲しい
抱きしめて欲しい
笑っていて欲しい
慰めて欲しい
子守唄を唄って欲しい
一緒に美味しいご飯と食べて欲しい
汚れた体を綺麗に洗って欲しい

あの温もりが、欲しい…

溢れる涙を拭うことなく嗚咽を出しながら泣き続ける…
泣き続けていると敵を倒したみたいで片腕と片足を失い這いずりながら近づいてい来る具足を履いたリビングデッド…勝ったんだね。
お母さんの頬に触れると満足そうな、悲しそうな、何とも言えない顔を残して崩れていった…

貴方もきっと、守りたかったんだよね

静寂の中、私に残された時間が残り僅かだと時計の針が教えてくれる…お母様、教えてくださりありがとうございます。

目を瞑り寵愛の巫女、始祖様から授かりし加護へと意識を向ける
願うは狭間、乞う願いはただ一つ時空への干渉

時への介入、過去に、過去の私へと思念を飛ばす、時空干渉術式をここに発動する

始祖様  寵愛の巫女が願い奉ります

此度の事件、その全てを、私が知りうる限りの情報をお伝えください、この悲劇を繰り返させないために

私の中にある臓器全てを魔力へと変換し捧げる…

薄れていく意識の中、光り輝く加護につつまれ
「この時を待っていた」
声が聞こえてきた方を見るとお母さんの目が開かれている!?
「失われし加護を開くときを待っていた!!」
違う、お母さんじゃない!!叔母様!?だめよ!叔母様!貴女の体は…巫女の体じゃないの!そんな事をすれば貴女の魂は!!
「今回は失敗した!でも次がある!次は貴女を利用させてもらおうかしら、足らなかった!ダーリンの情報が少なすぎた!骨が足らなかった!だから失敗した!次こそは次こそは!!!」
お願い叔母様!やめて!干渉しないで!嗚呼、駄目、私が送ろうとした情報が欠落する!干渉しないで叔母様!!
「はは、はははは!!ぁぁ、始祖様をかんじる、かんじ…」
すっと手をお腹に…「わたしの・・あか、ちゃん?は、ど、こ?」狂ったような叫び声をあげながら叔母様の体が光へと、魔力へと変換されていく…

お互いが干渉する中、光の中へと私達の魂が寵愛の加護へと吸い込まれていく・・・

その最中、天に昇ろうとする私は見てしまった
獣の軍勢が王都に襲撃し王都から逃げ延びた人たちを喰らいつくしているのを…
王城の真上に全てを嘲笑うかのように高らかな声を上げているドラゴンが居た…

そうか、そうか、そうか!!全ては、全てはお前たちの策略か!!死者の魂を弄び!死者の魂から知恵を奪い!死者の魂を騙し利用する!!
王都に蔓延り暗躍していたのはお前か!!!

っくそ、くそくそくそ!!この情報こそが一番の情報じゃない!だ、め、いまのおねがい!おねがい!!つたえ、つたえないと!!ぁぁ、だめ、きえ、る…



一つの大陸が滅び、全ての人類が死へと迎えた…


Dead End 6Ⅵ6の世界


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