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Dead End 6■■の黙示(7)
しおりを挟む放心しているとあの時のように優しく出迎えてくれる、労っていただける言葉に、お淑やかな佇まい、傍にいるだけで心の全てが癒されていくような、慈愛に包まれている感覚、まさに目の前に居るのはイラツゲ様、イラツゲ様!!
放心状態で何も考えられない私は、彼女に誘われる様に休憩室に歩を進めていく、当たり前のように何時もしてくれていたようにあの頃のように…
休憩室に入るとポンポンっと私がいつも座っている席に座りなさいと椅子を叩き、自身はお湯を沸かす為の場所に歩を進めていく、そこに何があるのか知っていると言わんばかりに。
お湯を沸かしながら何かを探していらっしゃる様子で直ぐに何を探しているのか察する、あのころと違って物の配置はシスター達が変えているのでいつもの場所にジャムがない、私が紅茶にジャムを入れるのを好きなのを知っているからこその行動、イラツゲ様!イラツゲさまぁ!!
立ち上がり、イラツゲ様にジャムの場所が変わったことをお伝えすると振り返りながら小声で優しいのねっと微笑んでくれる、あの慈愛に満ちた微笑みこそ求めていたもの、イラツゲ様ぁ…
今すぐにでも後ろから抱きしめたいがイラツゲ様にその様な大それたことを一度もしたことないのでイラツゲ様を困惑させるわけにはいかないので堪える。
紅茶の準備が終わったみたいなので、イラツゲ様に運ばせるわけにはいかないので手伝おうとするが、微笑みながら一緒に運びましょうと仕草で伝わってくる、懐かしいこの感覚、この瞬間をどれ程までに待ちわびたか!!!!
席について、紅茶を飲むのだけれど、イラツゲ様はジャムを入れて飲むのだけれど、イラツゲ様の趣向として気持ち程度、紅茶の薫りを邪魔しない程度にジャムを入れるのがお好きなのに…まだ完全には目覚めておられないのですね、ジャムを入れずにストレートで飲まれている…
器の意志がまだ完全に消えていないのですね、はやくきえてほしいものですね。
特に会話も無く紅茶を楽しむ、この一秒ですら、愛おしく感じる、待ち望んでいた時間だから。
あと少し、欲を言えば、何時もだったら私に聖書やお伽噺を読み聞かせてくれたらあの時と同じように至福の時間となるのですが、してはくれないでしょう、これ見よがしに机の上には聖書が置かれているのが心苦しい、餌を前に待たされているみたいで、落ち着きませんね。
福音の如き私の心を満たしてくれる甘美なるお声に包まれたいのはまだまだ、先になりそうですね。
そんな事を思っていたらすっと、手が聖書に触れるではありませんか!?我が願いを聞き届けてくれたのですか!?願いは叶うのですか!?
私の甘い考えは結果に至らず、パラパラっと捲って中身を確かめてみた後はすっと、閉じられてしまわれた。
完全にイラツゲ様へと覚醒していないのでしょう、気が付けば胸が熱くなっている、それだけじゃない雰囲気からでもわかる、今の彼女は器の方だと感じ取れる。
ついつい、聖書を眺め続けてしまう、物欲しそうな卑しい者のように、それは、仕方が無いと思いませんか?
何年も何年も待ち続けているのだから、乾いた私の渇望を満たしてくれる日が待ち遠しいのですよ。
卑しき者の如く、物欲しそうにしていると、ドアが開かれズカズカと愚劣なる弟一行が中に入ってくる。
入るときくらいノックの一つや二つ、やれやれ、礼儀作法がなっていませんね、ここは貴方の庭ではないのですよ?好き勝手に、まったく、王族としての佇まいがなっていませんね。
子供の時のように注意するべきかと悩んでしまう行いに心の中でため息をつきながらも、中に入ってきた集団の事を考えると注意はできませんね、それがわかっていての行動なのかもしれない辺り狡賢いのですよね。
我が物顔でテーブル周りにある椅子に座るのだが、さらっと器の隣に陣取るではありませんか。
こういった、さり気無い部分も油断できないのですよね。
王族として生きるのには狡猾に生きないと生きていけないのでしょうね、王族として正道を王道を歩める人は今後、現れるのでしょうかね?
…現れるわけがありませんね。イラツゲ様の様な方が王位になられるのであれば何を捨ててでも全力でお力添えをするのですけれど、実現は不可能でしょうね。
そんな事をぼんやりと考えていると会議が始まる…始まったのだけれど、語る言葉が薄っぺらすぎて反吐が出ますね。
相変わらず的を得ていない意見に、短絡的な考え、長期的な思考が欠如している内容、理想だけで物事が進むと思っているのですか?
愚劣すぎて頭を抱えてしまいそうになりますね。
先を見据えれていない愚劣極まれし内容についつい細かく指摘する、愚劣なる弟もそれには直ぐに反論してくる。
だがいかんせん、内容が薄い、愚劣なる弟よ人を説き伏せる為の説明に厚みがないのですよ。
だからこそ、貴方の様な存在は透かせば透けてみるほどの厚みしかないのです、その程度の存在が、王の器に届くことは叶わないでしょうね。
作戦内容の拙さを指摘し続けていると唐突にテーブルをトントンっとうつわがたた…いや、違う、イラツゲ様が何か物申すときは行き成り声を荒げることなく、場の空気を掌握するために机を叩いたりして視線を釘付けにする癖が、ただし、この注目を集める行動の中でもこれを選択をされる時は、怒りを感じている時にされること、私は何を間違えたのですか?
幼き日に怒られた悲しきもあり、懐かしきもある記憶が呼び起こされる。
真剣な瞳、何処か遠い世界を見据えるような果て無き未来を見つめるような慈悲深いお顔。イラツゲ様…どうか愚かなりし私達に聖なる定めの未来へと導いてください。
注目するように視線を向けると、イラツゲ様からのお小言が始まる、内容が子供を叱るような内容に戸惑いを感じるのと共に、歓喜の感情が湧き上がってくる、慈愛に満ちた教会として本来あるべき姿を問われるとは、この階級に至ってから久しく感じたことのない感情!!
反論しようにも正論過ぎて何を申し上げればよいのか、愚かなる私では答えが出てきません。
ついつい、幼き子供の時のように感情が前面に出てしまうような内容を口走ると、それを見透かされてしまいイラツゲ様も感情で応えてくださる!!
頬を膨らませたその仕草!あの頃を変わらないですね、お茶目なその仕草、また拝謁賜るとは、私の中に湧き上がる感情がぐしゃぐしゃで言葉を選べれない。
すぐさま、矛先が今回の問題として一番の根っこの部分である愚劣なる弟に向けられる、矮小なりし愚かなる愚物を見る。
その下げずんだ視線を向けてもらえれるなんて、なんて幸せを!!その機会を私に譲っていただきたい!!!私も、イラツゲ様にその様な哀れみの瞳で見詰められたい!!!!理屈と正論で諭してもらいたい!愚者である私にもそのようなお慈悲を頂きたい!!!
イラツゲ様の視線を一身に受けている愚劣なる弟に嫉妬以上の今までの人生で一度も感じたことのない感情にどうやって向き合えばよいのかわからずに一部始終を眺めていると
いらつげさまが わたしいがいの あたまを なでている
感情が制止し、目の前で見えた光景に何かが壊れそうな破壊されたような、これまでの人生で一度も感じたことのない感情が次々と湧き上がり、思考が上手く働かない。
呆けていると、イラツゲ様が立ち上がるので、思考が停止した私は本能のままに立ち上がる、彼女が行く先こそ、我が道と言わんばかりに、条件反射で立ち上がる。
歩を進めて近づくと制止される、どうして制止されるのですか?イラツゲ様の隣は、頭を撫でてもらえれる場所は、私の場所ですよね?
イラツゲ様が何か仰っておられるのですが、今の私では言語を理解できません。
困惑し、言葉が理解できないでいるとイラツゲ様の上半身が今にも倒れそうになる、条件反射で支えると
「大きくなりましたね」
その様な言葉が聞こえたような気がするのと同時に、制止した世界が動き出す、腕の中にあるのはイラツゲ様、触れているのはイラツゲ様のお体。
私は、得たのだ、イラツゲ様がお目覚めになられたのだ、私は、得たのだ!このときを、待ち望み続けた大願を得たのだと、確信した瞬間に私の制止した世界が色と音を取り戻したかのように動き出した。
嗚呼、神よ、感謝します、この御恩は、御身を降臨させる儀式をもって返させていただきます。
イラツゲ様のお体を支えていると愚劣なる弟が立ち上がるが笑顔で制止し、イラツゲ様を抱き上げ彼女の部屋に連れていく。
この役目は私の役目だ、至高なるイラツゲ様のお体に触れていいのは私だけだ、私だけだ!!愚劣が気安く触れていい存在ではないのだよ!!
敬愛するイラツゲ様をベッドで寝かせてから、安らぎの顔を見て今すぐにでも…いけない、いけない、そのような劣情を抱いてはいけない、御身のお体を穢すわけにはいかない。
目が覚める迄、近くに、御傍に居続けていたいが、休憩室に戻るのが遅くなればなるほど、要らぬ考えを抱かせてしまいますからね、心惜しいですが戻るとしましょう。
イラツゲ様の部屋を出た瞬間、今まで感じたことのない高揚感に心臓が跳ね続けている、今の私であれば、どの様な困難であろうと乗り越えれる気がする。
休憩室に戻ってからは、憑き物が落ちたかのように聖職者として至極当然の意見によって話を進め、取りまとめていく、愚劣なる弟もその言葉に濁りなく澄んだ瞳で真剣に聞き入れる、どうやら、貴方も先ほどの一件で自分の中に宿りし執念を打ち払えたのですね。流石はイラツゲ様です、私達を正道へと導くのは彼女しかいない。
話し合いも順調に進み、憂いなく、話し合いを終え、私達はイラツゲ様の下、一丸となって正道を歩むと心に決め解散した。
その日、ベッドで横になると、イラツゲ様との思い出が永遠と頭の中で思い出され、二度と思い出せないと思っていたあの日々が、永遠と再生され、私の心はかつてない程に満たされているのが心から実感を感じ取れた。
輝く世界が私の心を満たす、天に上る太陽の輝きを一身に受けながら穢れなき心を取り戻す。
私は今までの愚かな行動を振り返り、このままではイラツゲ様に愛されないと導いてもらえないという恐怖感に包まれてしまい恥ずべき行為だったのだと反省した。
聖職者として、民を導き救い生きる道を指ししめることが出来る真なる聖職者として王道を歩み始めるのが正しいのでしょう心を入れ替えて正道を歩めるように励みましょう。
健気に傷ついた人、愁いを帯びた人、困窮した人、魂の救済を願う人に真摯に向き合い続けていき、王都が混乱の渦にある影響もあり、迷える人達が多く明日への、未来への不安や不満を感じている人達が数多くいる為、仕事が絶えなかった。
外回りも普段以上に頑張りすぎてしまった影響もあり疲労を感じない肉体の痛みを忘れた私に痛みを思い出させようとするかのように心も体も疲弊していた。
少しでも体を癒す為にお風呂にゆっくりと浸かり一日の疲れをお湯と共に流して、休憩室で紅茶でも飲んでから寝ようと思い立ち入ると、イラツゲ様が紅茶を飲みながら聖書を読まれていたので、邪魔をしないように紅茶を淹れようと休憩室の中に入った瞬間に笑顔で隣の椅子に座りなさいと声を掛けていただいた。
甘く優しい声に導かれる様に座ると、イラツゲ様がご用意されたであろう紅茶が淹れられてあるポットから、紅茶をおすそ分けしていただいた、私の好きなジャムも入れられており懐かしい甘さによって、心が幸せだった日々を思い出させてくれるようで、心も体も暖かくなっていく。
癒される空間に魂が溶け込んでいきそうな程、リラックスしているとイラツゲ様が眠たそうにしているので声を掛けると、優しいねと頭を撫でていただいた。
その瞬間に私の思考は、世界は、完全に真っ白に染まる…
私の頭を撫でた後、気の抜けたような声と共に欠伸をしながら寝ますねと一言、囁く様に呟き、立ち上がると
私が教会に認められた際に捨てた幼き頃の名前で呼んでくれた…
これにて、私は完全に彼女がイラツゲ様として目覚めたのだと覚醒されたのだと確信を得ることが出来た。
何故なら、私の幼名を知っているのは、この世界にはイラツゲ様しかいらっしゃらないからだ。
書物には残されているが、その様な部分を調べるのに数多くの書物を隈なく探し続けなければいけない、その様な時間があるとは思えれない。
今の彼女はイラツゲ様が体験してきた過去すら記憶すら、その身に宿しイラツゲ様として完全なるものへと覚醒したのだ。
自然と、両の手を合わせ祈りの姿勢をとり、神に感謝を捧げる。我が願い、我が大願が完全なるものへと至ったことへ。
それからの日々は、全てが輝いて見えた。
幼き日に、私という愚かな存在に正道を、聖職者としての道を示してもらったときと、まったく同じ感情が、志が蘇り、純粋に人々の不幸を受け止め、不幸から解放され、安堵する人々の表情こそが私の喜びだと感じとれる世界が…輝きをとりもどしたのだと感じ取れる。
私を導いて正道を歩ませてくれるのはイラツゲ様以外にあり得ない、私は間違っていたのだ、悪魔信仰はもう必要ない、イラツゲ様さえ在れば、他に何が必要だというのだ?
恩は感じているがこれ以上の聖職者としてあるまじき非道は止めましょう。
ですが、私は恩知らずではありません、恩は返させていただきますよ、御身が降臨される儀式は出来る範囲で協力はします、ですが、出来る範囲での協力に留めさせていただきますね。
この輝かしい世界を失いたくないので…
毎日が輝いて輝いて、生きているのだと実感が湧き上がる、日々の業務は過酷であり苛烈であるが彼女の息吹を感じ取れるのであれば何も辛くない。
これ以上を望まない、この環境こそが私が求めていた世界、もう、何もいらない。これ以上を欲しがるなんて、その様な罪深き欲求、抱いてはいけないのです。
例え、イラツゲ様が恋という感情を口に出したとしても。その感情は器が経験した人生でしょう?
イラツゲ様が恋焦がれるているのは、死んだ存在、この世にはいないのですよ?願うだけ無駄じゃないですか…
いや、違いますね、無駄じゃない、私は知っているではないですか、魂と器さえあれば、イラツゲ様のように再度、目を覚まし現世に覚醒するのだと、私は知っているではないですか…
求めるべきなのか?幸せな世界を、イラツゲ様が望む世界を、私が…まさか、これも神の台本なのですか?イラツゲ様が恋を知るのも、それを叶えれることが出来るのが私達であると、その為には儀式を成功させよと?
笑顔で彼の事を語るイラツゲ様のその表情はまさに恋する乙女だった。
イラツゲ様だけが知りえる特殊な世界では愛する人の事をダーリンと呼ぶのだとか、彼との思い出を楽しそうに話されるのは良いのですが、そこまで狂おしい程の愛を感じておられるのですか?
っであれば、叶えることこそが私の幸せなのでしょう。迷うことなど無いのです…恋など、器の残滓、実際に会えば考えも変わるでしょう。
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