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Dead End 6■■の黙示(6)

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迸る感情が落ち着きを取り戻すと、胸が熱くなる。神から賜りし魔道具から伝わってくる熱、その熱が何を意味するのか考えるまでもありませんね。


どうやら、器が目を覚ましたようですね、ではでは、私も活動を再開しましょう。

ベッドから起き上がると体の痛みはもとより感じにくいが、好調であるのは感じ取れる。我が肉体が喜びに満たされているからであろうか?満たされつつあるからでしょうね。
大願が悲願が成就するその刻が近いからでしょうか?近いからでしょう。確信に至っている。時は近い。
この瞬間が私の絶頂であると感じ取っているのでしょうか?頗る体調がよろしい。つまりはそういうこと!最高ではありませんか!!


昂る感情が私の体を動かし続ける、歩を進め続ける。
外に出て上空を見上げる、曇り空とはいえ、目に映る全てが明るく感じるではありませんか!!おお、我らが神よ、今しばらくの信望でございます、大願成就、神の台本は順調でございますれば…

自然と、祈りを捧げる姿勢をとっていると、後ろから声を掛けられる、無粋にもほどがあるでしょうに、司祭という階級が祈りを捧げているのですよ?それに向かって無粋に声を掛けるなんて配慮がなっていませんね、愚劣なる弟よ。

振り向くと、少し眠たそうにしている、まだまだですね、睡眠なんぞ10分でも目を閉じれば十分でしょうに、神への祈りが足りてないから肉体からの苦しみから解放されないのですよ。まぁ、貴方達が崇める始祖という存在はそのような御業を齎してはくれないでしょうけれどね。

二人で、談笑という名のポーズでもしながら、待ち続けると器が此方に向かってくるのを感じる…
教会のドアが開かれると器とはいえイラツゲ様にしか見えないお姿に世界が白き輝きにでも包まれるような気持ちになる、いや、後光がさしているとしか思えれない、その光で私の目は輝く光に包まれ瞬きすら忘れてしまいそうになりますね。
痛みを感じないので目が乾くといけないので、瞬きをしませんとね、目を瞑ると同時に、イラツゲ様、その器ではあるが、素晴らしきご降臨を目に焼き付けておく。


全員の支度が終わったので予定していた視察というか、何といえばよいのでしょうかね?知見を得る為ってことにしておきましょうか?近寄りがたいエリアに足を運ぶといたしましょう。
到着してから感じることなんて、たかが知れていますよ。とてもじゃないがまともに歩くことすら困難なエリアを歩き続ける、匂いがきつく汚れも酷い、衛生面としてもよろしくなく、ありとあらゆる箇所が穢れだらけの場所。このような場所で、何を得られるというのでしょうか?私にはわかりかねますね。そんな風に感じていたが、意外と馬鹿にできませんね、得られるときは得られるものですね。

何も発見できないと高を括っていたこの場所で、奇跡を間近でみることになるとは…幼き時にイラツゲ様から見せて頂いた聖女様である証し…

癒しの力

近くで見れば見るほど、聖なる輝きに心が奪われる、怪我した肉体が現在を忘れ、過去、元気だったあの時を思い出すかのように、悩み苦しめられてきた痛みなど無かったかのように傷口が過去の栄光を取り戻す様に綺麗になる。まさに聖女としての器として正しく機能しているではありませんか!素晴らしい、素晴らしい!!すばらしいぃぃぃいぃ!!!

イラツゲ様!嗚呼!イラツゲ様!!はやく、はやく目覚めてください!!!私の心を満たしてください!!!

イラツゲ様の面影しかない器の行動一つ一つが私にイラツゲ様が近くに居るのだと感じさせてくれる、慈愛に満ちた私のイラツゲ様にはやく、はやく!!お会いしとうございます…


私の心は穢れたエリアと対となる程、清らかな心に満たされていくのを堪能させていただきました。そうですね、このエリアも私の心と同じようにしたほうがよいでしょう。
神の火でも、何でもよいので浄化が必要なほど腐り果てた腐臭漂うエリアを後にしましょう。

エリアを出ると当然の如く、満場一致で浴場に行くこととなり、浴場に寄らせていただく流れとなる。
この近くにある浴場は私もたまに利用させていただいている歴史ある古き浴場ですからね。イラツゲ様もお忍びで来られたことがある思い出の場所でもあるのですよ。

なので、浴場には数多くの信徒が居るのですよね、シスター達も時折、利用しているからこそ教会の服装でも特に誰も気に留めることなく受け入れてくれるのはありがたいことですけどね…受け入れてくれるのは良いのですが、ここぞとばかりに話しかけてくる人達は一定数居ますからね、それが難点ではありますね。

そうなるとですね、立場ある身としては信徒の方達と軽く会話をしたりしないといけなくなるのですよ。
相手をするのも気苦労と言いますか、心が落ち着かなく休める事叶わずと成りえることがありますので、普段であれば、人が多い時間には出来るだけ利用しないようにしていたのですよ、当然ながら、この時間帯はそこそこ人が多い致し方ありません、此度は心の洗浄ではなく、肉体の洗浄なので、幾らでもお相手してあげましょう。

護衛の騎士と愚劣なる弟と共に中に入ると、予想通りとはいえ、人が多いですね、この時間帯は、早朝からの作業を終えた人たちが汗を流しにくる時間ですからね。
あのエリアの後でない限りこの時間に訪れるなんて、出来ればしたくありませんからね、心休まることが無し。


護衛の騎士が気を利かせてくれたのか、思っていた以上に快適に過ごせたことには感謝せねばなりませんね、どうですか?お風呂上がりの一杯でも奢らせてくれませんか?と浴場で売られている水を購入し三人で飲み干してから浴場から出て外に出ると。

ふむ、何事か?人だかりが出来ていますね…

何事かと集団を眺めていると集団の隙間から見えるではありませんか、麗しき御姿が。
イラツゲ様が色々な方に言い寄られているではありませんか、助けに行くべきなのでしょうが躊躇ってしまいますね、私個人としましては目の間にある、あの慈愛に満ちた表情を眺めれるという至福といいますか、眼福をもっともっと感じていたいのか、私の体は動こうとはしませんでしたね。
器が徐々にイラツゲ様に近づいて行っているのでしょう、胸が熱くなるのを感じますね。

ずっと眺め続けていたい、そんな気持ちに駆られてしまいますが、私以外の人達はそう思っていないのでしょうね。
愚劣なる弟が助け舟をだし、騎士に民衆をかき分けさせて、侍女に器を連れてこさせるではないですか、まぁいいでしょう。
我々の時計は常に動いております、この瞬間を大事にしたいのですが、それよりも大事な瞬間が待ち遠しいわけでもありますのでね、良き判断ですよ。

全員が集合したので、教会に戻るとしましょう。
さて、教会に戻ってきて、時刻を確認すると前々から決められていた所用の時間ですね、可能であれば器の観察をしていたのですが、こればっかりは他者に任せるわけにはい開かないのですよ、何故なら司祭としての仕事ですからね、時間が惜しいけれども、イラツゲ様が目覚められたその先を見据えるのであればこそ、そちらに向かわないといけないですね。

ふむ、私個人の意見としては常に面倒と感じてはありますが、教会を支えるために必要な責務ですからね、致し方なし、止む無し、さぁ頑張りましょう。

教会で皆と別れて、向かう先は聖女様を信仰されている方達が待っている場所。
教会に足を運べないやんごとなき事情があるとはいえ、司祭を呼びつけるというのは、何とも言えない気分になりますね。

相手の事情を考えれば致し方なしと考えるしかありませんね、寄付金も馬鹿にできませんし。

ええそうですよ、今から向かう場所は愚かなりし愚劣なる俗物、貴族のお宅ですよ。
貴族という立場でありながら今もなお考えを変えずにいてくえるのはありがたいことではありますけどね。
何故なら、貴族たちは王族の意見に倣えが基本ですからね、当然、周りの貴族達が次々と始祖を崇めているのにもかかわらず、今から訪問するお宅は、流されることなく己の信念をもって聖女様を信仰してくださっている同好の士ですからね。金づるとしても大切にしないといけないのですよ。
それに彼らも肩身が狭いというものですからね、周りからは未だに過去の遺物を崇めているのかと嘲笑われようと、聖女様の教えを忘れずに感謝の気持ちが途絶えぬのですからね、いいえ、途絶えさせないように日々活動していた成果という物ですかね?
ただ、惜しむらくは残念なことに、その信徒の数多くが年を召された貴族の方達なのですよね、一線を退き、現時点で発言力や権力などを一切合切、持ち合わせていない負の遺産と陰口を囁かれるような人達。
その様な人達に媚び諂い寄付金を募るだけの愚者として認識されているのでしょうね、そう考えると私自身も肩身が狭いというわけですね。

新しい時代の流れに逆らうような者たちと関わるのは時間の無駄だと思われる方もいらっしゃるでしょうが、私としても今までの金色の恩義があるからこそ無碍にはできませんとも。

金色の恩義、それだけの為では、ありませんがね、彼らのめんどくさ…信仰を支えてきたという勘違いも重なっているのですよ。
彼らの力添えによって私が司祭の席へと座れたのだと、愚者はそのように勘違いしておりますからね。

それゆえ、断ると少々めんどくさいのですよ。

それだけじゃなく少々、上から目線の時がありますが、貴族という立場にご年配という状況ですからね、愚かな生き物とはいえ、その様にしか振舞えない悲しき生き物なのですよ、そう考えれば、多少の無礼は致し方ありませんねぇ…

そんな事を考えていると訪問先に到着する…さぁ、聖書を開いて教えを救いの手を差し伸べるとしましょうか。教会の稼ぎ頭として頑張りますとも。

聖書を閉じ、笑顔で貴族の屋敷から離れていく…これで5件目ですね、私の記憶が確かであれば、今日の外回りは終わりですかね。
この様な外回りも慣れたものですよ、もう何年も続けてきていますからね。

教会内部で受け継がれてきた責任ある立場の人が行う仕事、通称外回り。

単純に考えれば、営業のようなものですからね。
寄付金は後日、使用人が教会に届けてくれますからね、それに今回のは聖女様を信仰してくださっている方達ですので、愚かな生き物とはいえ、まだ、語りがいのある有意義な時間でしたとも。
当然、教会として聖女様を信仰している人達意外に始祖なぞを崇め奉る奴らにも聖書を語りに赴く時がありますとも…
その時は本当に苦痛ですからね、仕事だと割り切って頑張ってはいますが、あのような環境で聖書を読む此方の気持ちも考えて欲しい物ですね。

教会の存続を考えれば、王からのお達しに従うしかないので始祖を受け入れたのでしょうが、私個人の考えとしましては、火の様な力の権化を、何も救わなかった非情で冷酷な存在を崇め奉る気になれないのですよね。

敬愛する代々の聖女様、その全てが、彼を特別視するので表立って否定などしたことはないですがね。私の中にある秘め事の一つですよ。

心の奥底にしっかりと蓋をして誰にも気づかされない様にしてきたのが、私が出世した理由の一つだと私自身も感じておりますのでね、迂闊な発言はしてはいけませんよ狡猾に生きねばならない、階級という物は面倒な物ですよ。席が空いているからと言って相応しくないものがこの席に座ることはできないのですからね。

仕事とはいえ、振りまきたくもない愛想を振りまき、凍り付いたかのように張り付けた笑顔のまま、教会へと向かって歩いていく。
笑顔で歩き続けるのも慣れたものですね、この立場に成って長いですからね、若かりし頃は疲れを表情に出してしまい心配されたものです。

笑顔で歩き続けて、笑顔が崩せなくなりそうな頃合いに教会へとたどり着くのですが、何やらソワソワとしますね?なんでしょうか?
教会の中に入ると、何故か懐かしい感覚がする?どうして、でしょうか?
不思議な感覚に包まれながら廊下を歩いているとうつ…


いや、ちが、あれは、いらつげ、さま?


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