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Dead End ■■■■■儀式 D●y ●日目 (3)

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気を取り直して掃除を再開するとしましょう。
日がやや高くなるころには荒れ果てていた教会の周りも綺麗に整い、昨日と違って爽やかな風が流れるような、清らかな雰囲気に包まれるているような感じがする。
きっと、この雰囲気を感じ取れる場所が、普段通りの教会なのでしょうね、昨日のような鼻を落としてしまいたくなるような豊満な不潔な臭いが立ち込める場所ではないのでしょう。

でも、なぜか、昨日のような状況こそ、教会としてのあるべき姿じゃないかと感じてしまう。不穏な世界を望んでいるわけじゃないのにね。人の不幸を喜んではいけないわ、傷つき悩める人が多いのは良くないことよ。せんらんをいきたおとめはもういないのだから。

小さな耳鳴りの影響でぼんやりとしていると後ろから誰かが近づいてくるのに気が付かなかった
「これはこれは、毎朝、教会の為に手を取り合っていただき感謝の言葉しか出てきません」
後ろから近付いてきた人物が声を掛けてくれる、司祭様が穏やかに掃除を終えた私達に声を掛けてくる。
その労いの言葉に、おばちゃん達も「気にしないで、好きでしている事だから」と、肩肘張らずに気さくに返事をしている、あたかもこれが日常であるのだと伝える様に。
司祭様も偉ぶるようなことをせずに、笑顔を崩さないで奥様達の会話に付き合っている、聖職者としてというよりも、本質が大らかな人なのでしょうね、奥様達の井戸端会議の様な他愛のない会話に無言で頷き会話に参加する、お偉いさんだったらこの様な会話に時間を取りたくないでしょうに。
こういった場所を管理する人なのだから、もっと厳しい人なのかと思っていたけれど、そうでは無さそうね。ひとのきもちによりそえるやさしいのよね。

奥様達が司祭様と満足が行くほど会話を気持ちよく楽しみ、笑顔で帰っていくのを二人で手を振って見送り、奥様達が見えなくなると
「お時間をとらせてしまい申し訳ありません、では、参りましょう」
肩の上に手をポンっと気安く置いてくるけれど、初対面に近い相手に、スキンシップとしてボディタッチを選択する人は、個人的に好きじゃ無いのよね、まぁいいわ。
すっと肩の上に置かれた手を優しく払いのけると笑顔のままで踵を返して教会の中へと向かって歩いていくので付いて行く。

張り付けたような笑顔、払いのけた際に一瞬だけ眉毛が動いた辺り気に障る何かがあったのだろうけれど、それを隠すような嫌な雰囲気ね。
何かしらの本音を隠したい、本性を知られたくないって感じ?警戒は怠らないのが得策なのだろうけれど、どうしてかわからないがけいかいするひつようはないのだとだれかがかたりかけてくる。

後ろを付いて行くと、どんどんと奥の方にいくわね?何処に行くのかしら?
昨夜、訪れた教会の一番奥にある司祭様の部屋に行くのかと思いきや、懺悔室に通される?
まぁここであれば、誰かに話を聞かれることが無いって考えかしら?

懺悔室の中にある椅子に座って何か御用があるのでは?と説明を求められたので、どうして教会に訪れたのか説明をする。
説明をすると私がどうして教会を訪れたのか納得してくれたみたいで、教会側の事情も説明してくれる。

どうやら、末席の王子であるピーカとは教会側としては捨ておくことが出来ない繋がりがあるみたい、保護したくはないがその繋がりの影響もあって陰ながら保護している。
本来、教会という立場であれば、何処かの王族に教会が全てにおいて彼らの事情に足を踏み入れたり、支持するよな行為、助けとなるべく加担するような行為をしてはいけない、いけいないのだけれど、彼の血筋を知る人であれば、致し方ないとお目こぼしを貰っているのが現状。

この様な行為を見てきたシスター達や、地方の教会から批判でもされようものならすぐさま手を切ろうと思っていたけれど、幸いにもシスター達は彼の事を好いてくれているので、特に迷惑でもないので、致し方なく匿っている。

教会側にもあの子は迷惑をかけてしまっているのですね、ですが、王族と言えど迷える者には手を差し伸べるのが正しき考えですよ。
面倒ごとに巻き込まれたくない、教会の皆を守りたいという心は間違ってはいませんが、無碍にするのも如何なものかと、今度優しく説法してあげないといけないわね、貴方とあの子は兄弟のように育ってきたと思っていたのですけれどね…どうしてそんな事を考えてしまったのか、重箱の隅を突こうとすると酷い頭痛がするのでこれ以上、深入りするのはやめよう。

頭痛を我慢しながら、彼と話がしたいということを伝えると、今日の夜にでも此方に出向く様に伝えてくれることになった。
それまでの間、もし、都合さえよろしければ昨日のようにお墓の掃除をしたり、助けを求める人がいれば手を差し伸べる、つまりは、シスターとして教会の業務を手伝って欲しいっか…

此方に来て宿を探すのも面倒だし、これといって、することも無いし、人々の役に立つのであれば、ボランティア精神として活動するのも別に悪くはないわね、誰かに迷惑をかけるわけでもないし。
…そういえば、昨日の怪我をした人たちはどうなったのか気になるわね、司祭様なら知ってるでしょうから確認すると、騎士団の方達に協力を願い出て、彼らの住まいへと連れて行ってくれたと教えてくれる。

少々、納得できない内容ね。
あの騎士団が?誇り高き騎士団がそのような雑務を請け負ってくれるのだろうか?教会だからかしら?可能性は無い事もはないけれど、私が知らない繋がりがあるのでしょうね。

ちょっとした疑問が残りつつも、教会の全てを知っているわけではないので、そういう物だと鵜吞みにすることしか選択肢がない。
仮に違っていたとしても、確かめる術がない。爪のささくれが気になる程度、ほんの些細な疑問、放置していても左程、問題視するようなことも出ないはずなのに、どうしてか、ささくれが尖って、何かの弾みで当たって小さな痛みを訴えかけてくるような、全てが納得できる気持ちの良い状態とは言えない。
そんな何かを残して、頷くしかなかった。

納得しきれない状態で話し合いというか、報告会なのか、よくわからない時間を終え、昨日と同じようにシスターが着る為の礼服をお借りして、教会の掃除などの雑務を手伝う、念のために警戒はしていたけれど、昨日みたいな喧騒は街で起こっていないみたいで昨日のように大量の怪我人が運ばれてくることはなかった。
これに関しては安堵している、手持ちの薬なんて微々たるものしか無いし包帯も無いし、綺麗な縫合糸も心許無い。
かといって、教会に薬学に精通する人はいないので薬草とかも無いので薬を調合なんて出来ない。もしもに備えることも出来ない。

昨日のような状況を望んでいるわけではないけれど、余りにも暇!することがない!
暇すぎて、祈りの間にある月のオブジェを眺める事しかない、他のシスター達もすることが無いのか各々集まって雑談をしている。その輪の中に部外者が入っていく勇気なんてないわよ、それも年下ばっかり…まだ、朝の奥様達の方が会話に加わりやすいわね。

このまま、祈りの間で腐っていても仕方がないので、何か仕事が無いか探しましょう、取り合えず、墓地にでも向かうとしましょうか。
墓地に出向き、掃除でもと思ったのだけれど、この間、しっかりと掃除したので、汚れている様子はない。
引っこ抜いた雑草は、まだまだ枯れる様子はない、このまま放置していても問題は無さそうよね。

つい、誘われる様に自然と騎士様の墓前に立ち、祈りを捧げる姿勢をとり、祈りを捧げる。

特に何かを報告することも無いので、祈りの姿勢のまま目を瞑り、何も考えずに、祈りを捧げ続ける。
私の言葉が月の裏側にまで届くとは思えない、祈りが届くのであれば、始祖様が窮地を救ってくれているはずだもの。

救われていない…今もこの瞬間に、私達の街では騎士様が育てた大切な人たちが獣達と闘い続けている。
祈りが通じて始祖様が、全てに決着をつけ人類救済をしてくれるのなら、いくらでも祈りを捧げましょう、祈りが足りないのであれば、全ての人間が祈りを捧げよう

恐らく、この世全ての人が祈りを捧げたところで、助けてくれると決まったわけではない、けどね、祈りを捧げる必要なんてきっとないのでしょう。
なのに、私は祈りを捧げる、私が祈りを捧げているのは何に対して?未来?過去?現在?何を想って、祈りを捧げているの?

愛するヤシオ様…幼名で呼んでいいのは心を許した相手だけだと教えてくれた、なので、二人っきりの時はそう呼ばせてもらっていた。
騎士様もヤシオという名前をいたく気に入っていて大人になった後もヤシオと名乗りたかった程なのだが、ある日、お義父様に次の筆頭騎士となる程の技量に到達したのだと認められ、筆頭騎士に選ばれても遜色ない程に成長した証しとして幼名を捨て、新しい名を名乗ることを命じられた際に、ヤシオという言葉に関連する名前としてシヨウと自ら名前を名乗り上げたとお聞きしています。

だけれど、本人は親しい間の人達には幼き頃から呼ばれていた名前の方がしっくりくるからヤシオと呼んで欲しいとおっしゃっていた。
だから、この墓地にはシヨウと刻まれている。

ヤシオという名前を知っているのは家族だけってことになるのよね…つまりは、私の事を家族として認めてくれたってことで間違いないですよね?
ヤシオ様の事を想うと涙が溢れそうになる、胸が締め付けられて苦しい、息も出来ない程に…

呼吸が浅く成った瞬間に視界が真っ暗に染まる、音だけが聞こえてくる…

【さいかい、したくないのか?】

みみなりがする

再会できるのならしたいわよ、出来るわけないでしょ、死人なのだから

【死者は蘇らない】

みみなりがする

そうよ、その前提が覆るわけがないじゃない!
死者が生き返るのだったら、人が子を生す必要はなくなる、つまり、愛が消えるのよ。

そうなってしまったら、人は人でなくなる、違う生物になるでしょうね、死があるからこそ、未来を憂う、死があるからこそ未来へと繋げようと藻掻き苦しむ。

私のようにね…

死があるからこそ、死を許してしまったからこそ、私は愛するヤシオ様の意志をついで、あの街で頑張っている、がんばっているつもりだけど、何時だって心は擦り切れそうで愛で狂いそうになる。

頭では理解していても、心は理解しようしない、世知辛いわね、生きづらいわね、愛って。

【…■■■■は、】

みみなりがする

【出来る】

みみなりがする

意識が飛びそうになる、耳鳴りが酷い、頭が裂けそうな程の痛みを感じるはずなのに、耳鳴りの奥から聞こえてきた言葉には、縋りつきたくなるほどの魅力を感じてしまう、離さないようにしがみ付きたくなってしまう。
なんて酷い妄想…これは考えたくもない酷い妄想よ、酷い幻惑だ、酷い幻聴だ…甘くて切なすぎる内容に心が惑わされ狂人への道を歩みたくなってしまう。

真っ暗だった視界がいつも通りになるけれど、耳鳴りと頭痛が酷い…
立ち上がって、頭痛を抑えるための薬を取りに部屋に戻りましょう…ここに居ても、痛みが治まることは無いでしょうし。

祈りの姿勢から立ち上がって、頭痛がする頭を押さえながらゆっくりと、だけど、聴覚がおかしいのか平衡感覚も普段とは違うせいで、足取りが重い、ふらふらと左右に揺れながらなんとか、歩いていく。


何処からか、わからないけれど、視線を感じる墓地からゆっくりとゆ、っくり、と、離れていく。


一歩進むだけで頭痛が響き、眩暈がする程の耳鳴り、痛みが酷過ぎて意識を保つのも厳しい中、なんとか、祈りの間に到着すると、シスター達が慌てて駆け寄り肩を貸してくれる。
耳鳴りがひどすぎてシスター達の声が聞こえないけれど、安静にできる場所に連れて行ってくれるのだと伝わってくるので、身を任せる。
酷い頭痛の中なんとか、横になれる場所まで連れて行ってもらった。

申し訳ない気持ちに包まれながら、シスター達に優しく運ばれたことに嬉しいと感じる部分もあり感謝の気持ちを伝えようと思っていたのだけれど、横になった瞬間に意識が途絶えてしまった。
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