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Dead End ■■■■■儀式 Day 1 (Ⅳ)

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会議も終わってささっと食事を済ませ、午後は病棟での内勤務なので、外とは違って平穏!怒涛のような忙しさも無い!怪我をした人のリハビリとか、投薬管理とか、診察とかが主な業務。ですので、そこまで~忙しくない、だからこそ、悩んだ時の大先輩!先輩の手が空いた時にちょっと相談してみる。相談内容は、私が三日とか、四日とか、お休みを頂いても医療班として機能するのか、問題はないのかって感じだね。

私の方に詰まっている診察や業務が一通り終わりひと段落つく、耳を澄ませて隣の部屋で診察をしているであろう先輩の様子を伺う。話し声は聞こえない、お湯を沸かしている音が聞こえてくる、っとなると、向こう側もひと段落ついたのだろう!今が好機!戸棚を開いてこういう時の為に常に備えてある品物を取り出す!
ドアをコンコンとノックするとはいっていいぞーっと返事が返ってくるのでお茶請けと一緒に中に入ると
「…何をやらかした?それとも、何の相談だ?」ポットの準備や茶葉の状態を眺めながらこちらには、ノールックで声を掛けてくる。
っぐ、流石に長い付き合いなだけあって、部屋に入ってくるだけで察するなんて流石ですね先輩。

お茶菓子を渡しながら昨日の手紙の件で相談すると、珍しくしかめっ面になって紅茶を飲んでいる。
色よい返事は貰え無さそうな気がする…
「…わかった、三日までは休んでいい、だけど、四日目には絶対に帰ってこい、無理そうなら手紙でもいいから、連絡をくれ、派閥争いに加担するなんて絶対にしてはいけない行為だが…事情が、事情だしなお前の考えていることは察するよ、要らぬ心労をかけてばっかりで先達者としては、申し訳ない気持ちしかわいてこねぇなぁ…」
深いため息の後に許可を頂いたけれど、やっぱり、この件は関わらないのが一番なのだと、先輩が苦い薬を舐めているときと同じ表情で察する。

加担しても得が無い、得が無い上にリスクしかない様な状況、つまり、加担したところで第三者から見ても勝利は難しいってことね。

先輩の奥様、そのご実家というか親戚一同、王都では特別な名家なので事情は知っているのだろう、先輩も騎士様と親友ともいっても差しさわりのないくらい仲が良かった、騎士様も先輩には年頃の男性として普通に相談したりと頼りにしていた、きっと騎士様からしても先輩は良き兄貴分って感じだったのでしょうね。
先輩からしても心許せる大事な仲間を失った、あの事件、その裏事情を調べないわけがない、あの一件での裏事情は当然、把握していると考えてもいいと思うのよね。

さて、先輩から許可をもらったので、直ぐに席を離れるのはちょっとマナー違反よね?なので、ちょっとした小話をした後、相談に乗っていただいてありがとうございますと席を離れようと立ち上がると
「…頼むから、死なないでくれよ、お前迄、俺よりも先に月の裏側に向かうのは…勘弁してくれ、次は俺の番でいい、若く清い奴は生きてくれ、頼むから…」
初めて見た、色んな人をころ…見送って送り出してきた先輩が死を厭うなんて、この人にもちゃんと感情があるのだと知れたのはちょっと嬉しかった。
私も先輩にとって心を揺り動かせれる程の人物になっていたんですね。でもね、先輩だって清いですよ?過去にどんなことをしてきたのか知りませんが、命を、痛みを、尊重しているのは世界中探し当ても先輩が一番ですからね?長生きしてください。

…心が少し温められたような気がする、騎士様と同じように憂いてくれるのは嬉しいと感じる、騎士様と同じ存在だと感じてくれているのが嬉しい。ぶっきらぼうに見えて大切にされているのだと実感が湧いてくる、まだ、私のような愚者を必要としてくれているのだと感じる。

先輩に善処しますと一声かけてから部屋を出て、帰り支度を…することもないか、このまま、二、三日開けても問題ないわね、いつも通りに病棟を出る、外は夕暮れ時に差し掛かるくらいね、だったら、姫様がいるであろう場所は決まっている、研究塔に向かいましょう。

研究所で姫様の研究机がある場所に向かうと、煮詰まっているのか項垂れている姫様がいる、あの姫様と言えど、直ぐに答えが導き出せているわけではない。
煮詰まっている時に話しかけるのは無粋よね、そうと決まれば、近くに備え付けられてある、お湯を沸かして紅茶を淹れる準備をする。

お湯が沸くまでの間に、向こうに到着してからどの様に行動するのかちょっとばかし予定を考えておこう。
まずは、手紙に書かれている通りに、教会に向かって教会で末席の王子であるピーカ王子と繋がりがありそうな人を見つけて、末席の王子へと取次ぎをお願いする、後は…実家に顔を出すのは良くないわね、出来る事ならお父様やお母様を巻き込みたくないし、お母様もお父様も私の顔なんて見たくも無いでしょうし、会わない方がいいわね。

んー…そうね、長い事、墓参りに行けていないものね、お墓参りに行くのもいいかもしれないわね、騎士様に、翁…のお墓は集合墓地にあるのかしら?まぁ、探してみましょう。長い事、掃除に行っていないのは良くないわよね。愛する人のお墓を綺麗にしましょう。そこに騎士様の遺骨があるのだから、挨拶は必須よ、考えるまでも無いわ。
お墓参りが終わってから、ゆっくりと教会で待たせてもらえばいいわね、日を跨ぎそうなら何処か宿をとらないといけないわね。

だって、王都に知り合いなんて殆どいないもの、泊めてくれるような友人なんていないわよ…

…友人ではないけれど、知り合いに関しては、いることはいるけれど、会いに行くような間柄でもないものね。遺骨を届けた時にお会いした騎士様のご家族、正妻、息子さん、会いたいけれど気軽に会えない人達。
騎士様がこの街で築いてきた武勇伝を語ってあげたいけれど、騎士様を救えなかった、守れなかった女が何を自慢げに語っているんだという感じよね、ご家族様からすれば、どの面下げて会いに来てんだって空気になるのは、わかりきっているわよ…

魔道具の上に置いてある、お湯も沸いたので紅茶ポットにお湯を注ぎ、茶葉が開いていく時間もしっかりと計算する、少しでも美味しく飲んで欲しいよね。
大事な人にはついつい気を使ってしまうわよねステキな時間を過ごしてほしいから、用意したカップ一つはお湯を注いで温めて、もう一つにはお湯を注がない猫舌の姫様に合わせて飲みやすいようにしないとね、紅茶を注いで作業用の机の上に置くと私が来ていることに気が付いたのか少し驚いた表情で此方を見て
「ぁ、ありがとう、来てたんだ」少し疲れた表情を見せたと思ったけれど、直ぐに笑顔になって歓迎してくれる。

先ほど近くまで近寄ったのに気が付かないなんて、よっぽどなのね、どんな内容を考えていたのかしら?周りが見えない程の暗礁に乗り上げてしまったのかしら?

いただきまーすっと声を出しながらふーふーっと紅茶を冷ます様に息を吹きかけてから一口飲み「だはぁ~生き返る~」よっぽど疲れていたのか、水分を補給し忘れていたのか嬉しそうな顔でゆっくりとちびちびと飲んでいるけれど、喉が渇いているのか何時もよりも飲むペースが速い。
紅茶をただ、飲んでいるだけでも可愛いらしいと感じる、姫様は容姿端麗だから何をしても絵になるわね。これ程の美貌だったら、王都、いいえ、この大陸全ての男性から求婚されるでしょうね、将来は引く手あまただろうなぁ、私のような側室でしか生きられない様な生き物とは一線を画しているわね。

「…っふぅ、ありがとう!喉も潤ったことだし、どうしたの?何か、相談?」

賢い姫様だからこそ、直ぐに気が付くのよね、普段の私とは違うルーティンに違和感を感じたのでしょう、つまり、普段とは違う何か特別な用事があるのだと判断されたのですね。
「その、噂でお聞きしたのですが、王都で行われる次の王を決める為の選挙についてですけれど、姫様はどう、お考えですか?」
もし、末席の事を支持しており、支えたいという、姫様個人的な思いが僅かな可能性があるのでしたら、そのような考えをお持ちであったら

「…お母さん、おっと、ジラさんだから言うけれどね、私、個人としては、王様の政策に興味は無いよ?どの王が新しい王に成ろうとも、きっとこの街に大きな影響はないよ?何も変化は起き選れない、だったら、変に干渉して恨みをかう方が愚策だよね、こういう言葉あるの、触らぬ神に祟りなし、私個人としては、関わる気はないよ?」
この一年、傍で共に過ごしたからこそ知っている特有の癖で、この発言が絶対であり頑な物であるとわかる。
下を向いて、自身の発言が絶対であり、覆ることが無い、そんな決意を固めるように僅かに語尾が強くなる。

そうよね、代表者である姫様がこれに参加するなんてね、してはいけない気がする、なら、これ以上は関わらせないようにした方がいいわね。
「そうですよね、いえ、実家の母からちょっとした話題で知りまして、代表者である姫様のご意思を確認したくて」
世間話ですよーっと体裁を整えるように苦しい言い訳を言おうとすると直ぐに遮られる

「…ぁ、なるほどねー、お父様から探りを入れてこいって知らせでもきたの?そっか、大変だよね~貴族の家に生まれた人たちは、ジラさんで、これで…えっと、何人目だったかな?ん~、今度、朝礼か何かで宣言するべきかな?そんな大層なことじゃないからいいかなって思っていたんだけどなぁ…回覧板でいいかな、わざわざ朝礼を開くのもめんどくさいし」
どうやら、私以外にも貴族出身の方がいる、その方達から代表者である姫様の意志を確認しにきていたみたいね、それに関しては助かったわね、誤魔化しやすくて…助かった?どうして私はホッとしているの?やましい事があるのかしら?誤魔化せたことに安堵しているの?それとも、姫様が参戦しないことにほっとしたの?

自分の気持ちがよくわからない、どうして動揺したの?どうして、安堵したの?
姫様の時間を割かなくてよかったからホッとしたの?姫様が王政に参加するという波乱が無いことに安堵したの?…勝ち目のない闘いに誘ってしまい迷惑をかけてしまうことに対してかな?

つまり、裏を返せば、私の本音は、私も行きたくないってこと、だよね?安堵したってことはそうだよね?
騎士様が月の裏側に旅立ってからずっと、私の心は迷い続けている、自分の感情すら理解できない、何も自信が持てない、自分の成すことすべてが間違っている気がする。

自分の気持ちというか感情を確かめるように、他者の気持ちを探るような感覚を送る日々、歪に歪んでしまった私の心は、もうどうにもならないのだろうか?



自分の感情を探りながらも、笑顔のままで姫様との会話に耳を傾けるが、正直何を話していたのか、どの様に受け答えをしたのか覚えていない…



夜になって、旅支度をする、予定としては、長くても四日程、四日分の着替えさえあれば大丈夫だろう。
察しの良い先輩であれば、私が明日には動くってことは気が付いているだろうから、明日の朝にでも伝えればいいかな?お小言は言われそうだけど、どの道、お小言は免れないからいっか…


王都まで、歩いていくと…半日は掛かってしまうし、女性が一人、徒歩で向かうなんて盗賊達に襲ってくれって言うようなものよね。
徒歩はだめよ、危なすぎる、馬車で移動しないといけないのよね、なので、馬車の日程を考えるとそもそも、そうなのよね、明日しかないのよ、誰かに定められたかの如く、出発の日が決まっちゃってるのよね。

王都と私達の街を繋ぐ馬車、その定期便が来るのが明日なのよね、それを逃しちゃうと三日後になるのよね、それだと遅過ぎちゃう気がするから、明日しか王都に向かう足がないのよね。

うーん、そう考えると全て末席の王子の策略に嵌められている様な気がしないことも無いわね、此方の事情を把握していて、馬車の日程も把握していて、考える時間を与えない取り合えず、現場に引きずり込むって知略に嵌められてない?私?…別にいいか、姫様は関われませんって伝えに行くだけだもの。

なら、どうして私は四日分の荷物を用意したの?…嗚呼、そっかそうよね、相手も忙しいから三日くらい待たされることも想定してよね?向こうで着替えが無いのは辛いわよね、同じ肌着を三日なんて拷問よね?…外勤務の時ですら変えの肌着は持っていくもの。

自分の意識とは隔離したように流れる様に動き出す体が不可思議だけれど、そういう物なのだと納得してしまう。

末席から送られてきた手紙を机の上に置いて、ネグリジェに着替えて眠りにつく、魔力を渡すのは、嗚呼、そうそう、夕暮れ時に渡したわね、なら問題は無いか…

思考がグルグルと回りながら、自分が何をしたいのか、どうしたいのか、よくわからないまま、眠りにつく。



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