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Dead End ■■■■■儀式 Day 1 (Ⅲ)
しおりを挟む手紙に書かれている通り、私が動くのが、正解なのだろう…なのだろうけれど、私が関わったところで助太刀したところで勝算なんてあるのかしら?必要性が感じられないのよね~。なんで私なの?そこに何の意図があるのか、背景にある心理を紐解かないといけないわね。
ふぅ、色々と考えた影響もあって、普段通りの感覚に戻りつつあるわね、さて、今も何も言わずにそっと体重を預けながら寄り添って世界の中でたった一人じゃないよ?と、温もりをくれている姫様の用事を、魔力を満たしてあげないとね。
「…お待たせして申し訳ありません、今日の魔力ですよね」
そんな事ないよっと、傍に寄り添えて私は嬉しいからね?っと取り繕った笑顔でゆっくりと、上着を脱ぎ肌を晒してくれる。
全身から魔力の流れを掴み取り、何も加えていない純粋な魔力を放出する、彼女の肩甲骨に両手を当てて魔力を渡していく…
姫様がこの街に来てから毎日、魔力を渡し続けているけれど、未だに、どの部位に触れて魔力を渡せば、最もロスが無く彼女の体に負担が無い場所がわからない。
なんとかして、効率が良い場所を見つけれたらいいのだけれど、感覚的な問題で難しい。
取り合えず触れている肌の面積が大きければ大きい程、渡しやすいってだけはわかっている。わかっているが、勢いよく渡し過ぎて相手側がパンクする恐れもあるので、魔力の道筋を整えて、相手に注げれるように相手との波長を合わせる訓練が必要、でも、どうやって相手の内部に波長を合わせるのかやり方が思いつかない、何か特殊な訓練が必要なのは確かなのよね。
まだまだ、魔力譲渡法には、改良の余地ありってことなのよね、感覚の問題だからなかなか、こう、言葉にしづらいし、目に見えるわけでもないから改良が難しいのよね。
少しでも改良するために絶対的に必要なのが体内に流れる魔力を測定する魔道具。
感覚の問題から脱するためには、数値化するが必須だと姫様が仰って、確実に研究を一歩前進させるために数値化するための魔道具を開発するために試行錯誤、しているけれど、なかなか、ねぇ?魔力が目に見える魔道具があるだけでも救いだっていうのに、数値化するなんて…途方もない研究なのよね。
魔力を送り続けていると、姫様が場の空気を和ませるように、声色を高くして甘えるような甘い声で語りかけてくれる。
「ふふ、いつも、毎日毎日、ジラさんに命を助けてもらってばっかり、私は、どうやってジラさんに恩を返せばいいのかな?欲しい物があれば、いってね?私、ジラさんの為なら何でもするよ?」
恩っか、それを言ってしまったら私だって貴女から恩を一杯、たくさん、数えきれないほど貰っているわよ。
返してもらうどころじゃないから、気にしなくてもいいのにね、律儀な人ね。
13歳になったばかりの女の子が考える事じゃないわ。私が13のころなんて側室として誰の枕元に襲撃するのか相手を見定めていたくらいよ?…騎士様という憧れが強すぎて、他の芋どもには目もくれていなかったけれどね。正確には騎士様の側室にどの様にすればなれるのか妄想する日々だったわね。
「いいのよ、気にしないで、私が生きるよりも貴女が生きたほうが世界の為になるわ、魔力が命の源泉であるなら、幾らでも私から吸い取ってもいいのよ?強く、ながくいき」
くるっと体を反転させて抱き着かれてしまう、失言だったわね、自分を蔑にする発言なんて、失言もいいところよね。姫様からしたら私から死の香りがするような発言聞きたくないでしょうに、姫様にとって私は、大切なお母様、瓜二つなのだから。
「やだ!私が頑張れているのはお母さんがいるから、絶対に死なせたくないから!頑張って封印術式を完成させてお母さんの負担を減らすから、へらすからぁ、絶対に、ぜぇったいに!死なないで…しなないで、もう、あんな苦しいのやだよぉ…」
言葉を言い終わるころには美しいお顔がくしゃっと歪んで目には涙をためてしまっている、いけない、この子の前で死の香りをチラつかせてはいけない、いつだって前向きでいないとね。
それにしても、私の事をお母さんと呼ぶのは久しぶりね、そう呼ばれることで胸の奥が暖かくなる、女としてというよりも、私の中にある子を育てたかったという心残りが満たされるような気がする、正直に言うと、私もね、貴女の容姿がどことなく私の幼き頃に似ている気がするのよ、私に娘がいたらそっくりなんじゃないかなって思ってしまうくらい。
この街に来た当初は、私が姫様のお母様に似ているから、つい、重ねてしまったのでしょうね、私の事をお母さんって呼ぶことが多かったわね。
その失言を、周りの人が茶化してしまって、恥ずかしく感じたのかそれ以来、私の事は名前で呼ぶようになったのよね。
甘えるように抱き着いてくる姫様の髪の毛を優しく撫で続ける、姫様が街を来た当初の事を思い出してしまう。
親に捨てられ、右も左もわからずに、誰を頼ればいいのか不安だろうからこの子が独り立ち出来るまで出来る限り、大人として彼女を見守り育てようと皆で決めた、ついつい孫を見るような気持ちになってしまった人達が多くて甘やかしすぎな部分もあったんじゃないかなって思う部分もあるわね。
それでも、甘えすぎないで、街の為に、才覚を表し、己が不幸を呪わず懸命に生きるその姿勢に、徐々に街の皆が心を打たれ彼女を一人の少女としてではなく一人の人間として扱う様になっていったのよね。
…私もその一人よ、あの頃は、どんなことでもいいから夢中になれるものが欲しかった、騎士様を失った喪失感を忘れるように手を取り合って頑張り続けた、苦しくも楽しかった日々ね…世界に色はないけれど。
こんな風に年相応に甘えてくれると、ついつい、私も彼女に甘えてしまいたくなる。
「姫様さえよろしければ、今日は久しぶりに一緒に寝ますか?」抱き着きながらもコクリと頷き甘えてくれる。
幼き時に愛するお母様を亡くされたのですからね、甘え足りなかったんだろうな…甘える、かぁ…
私は、お母様と良好な関係を築いているとは思えない、その影響もあって、子供が親に甘えるという感覚を知らない、だから、こうやって素直に甘えてくる姫様が愛おしく感じてしまう。私が経験してこなかったものを経験させてもらえるのは新しい発見もあって純粋に嬉しい。
私の幼少時、お母様とのおも家出と言えば、側室になるためのイロハを徹底的に教え込まれたくらいしか思い出せない。
己を殺し、世界の片隅にいるように教育され続けて、親とのしての愛情を注いでもらった楽しい記憶はない…
そんな風に辛辣にお母様に文句を言いたい、けれど言えるわけがない、お母様からすれば私が大きくなった時に困らないようにと必死だったのでは?あの厳しい態度は親心だったのだと今なら思うことが出来るわね、それのおかげで、ある程度であれば貴族との取引や、やり取りに参加できるもの。無作法をした瞬間に商談の席は終わりを告げるものね。
抱き着いている姫様が眠そうにしているので、着替えて一緒に寝ましょうと声を掛けるとゆっくりと頷くのでテキパキと素早く着替えさせ、今日は、本当に、久しぶりに誰かの体温と共に眠れる、そう思えるだけで心が安らぐような気がする。
着替え終わったら、二人で寄り添うようにシングルベッドの上で眠りにつく、狭いけれど、今はこの狭さが私達にとっては心地よい。
…本当の親子だったらどんなによかっただろうか、当然、旦那は愛する騎士様ことヤシオ様
暖かい温もりを体温を感じながら、久しぶりに悪夢にうなされることも無く気持ちよく眠りにつくことができた。
翌朝、寝起きは驚くほど良かった、晴れ晴れとした気持ちで起きることが出来た、悪夢を見ることも無く、素晴らしい目覚め。
私の体に巻き付く様に寝ている寝起きの悪い姫様を優しく起こし、寝ぼけている彼女の着替えを手伝い、爆発した髪の毛を整え終わるころには目も覚ましたみたいで、一緒に朝食をとってから、共に会議室へと向かう。
会議室には既に、幹部達が集合していて、姫様の到着と共に会議が始まる。今回の会議の内容は、今後の予定やスケジュールなど、いつも通り進めていく。
医療団を取りまとめる団長としては、最近は医療班全体的に技術の向上に努めているし、姫様と共に新しい医療技術の向上や、開発も抜かりはなく進行している。
彼女しか閲覧できない特殊な能力の中には数多くの未知の治療方法や薬学の知識が眠っている、それを眠らせたままっていうのはもったいないけれど、見たことも無い成分とか、生き物とか、植物とか、手持ちの素材や知識では再現不可能な知識も豊富に眠っている、それを有効利用するのが最善手なのだろうが、問題があるその知識を膨大な中から発掘するのに物凄く時間が掛かってしまう事、彼女も全ての埋蔵された知を知り尽くしているわけではない興味のある内容をすこしずつ閲覧して把握している状況、つまり、彼女が代々受け継がれてきた特殊な知恵の保管場所に目録というものは無い。
発掘するのに時間もないし、彼女がそれに集中している間の資金もない、彼女が稼ぎ頭となっている現状、彼女が動けなくなるとこの街は停滞する。
姫様が自由になれるくらい財力に余裕があるのであれば、発掘する時間も作れるけれど、予算が常にカツカツでこの街は長い事、自給自足レベルなのよね。
王都からの支援っていっても現状では人材しか送ってもらっていない、送られてくる人材も昔ながらの生贄方式…才のある者、学のある者、武の心がある物はいない。
王都からの金銭的な支援がほぼ無い、生贄を送ってきた時に申し訳ない程度の資金はいただけるけれど、彼らの装備を整ええるだけで赤字となる。
翁という王族と交渉を行う人が居ないのが、決定打となってしまったのだと痛感する、誰も今の現状を打破するための交渉が出来ない。
王都の財源に唯一、干渉できそうな、財務の人もとっくの昔に王都に呼び戻されてしまっている、王族との交渉するための道筋が何も残されていない、為す術が無いのよ…
いいえ、違うわ、救いの手のように打開するための希望は昨日降ってわいてきたじゃない、今の私達の現状を理解しているからこそ、逃げ道を塞がれている様な気がするが、あることはあるのよ、絶望か、またまた、希望か、全ては末席の王子次第ってわけね。
この現状をより良い物へと改善するためには、やっぱり、姫様以外も動かないといけないわね。腹を括りなさいってことね。私如きが何を成せるのか知らないがやれることはあるでしょうね、私を名指しで呼ぶのだから、何か勝算があるのでしょう。
皮肉な物ね、私達に絶望を運んできた死神を背負いし疫病者が、時を経て福音を齎す存在へと転じるなんてね、人生何が起こるのかわからないわね。
現状を打開し未来へと繋がるのであれば…気に喰わないけれど、行くしかないっか。
問題があるとすれば、何度考えても私が行ったところで何が変わるのか理解できないのよね、私のような矮小で何も成せない守れない人が参加したところでね?もっともっと、知略に優れ、どんな状況でもひっくり返せるほどの特殊な才覚を持っている人を呼べば…よべば
どうして、私を名指しで呼んだのか少し意図を掴めたような気がする。
すべての条件に当てはまる人物に心当たりがある、そうよ、最初っから相手はこれを見越していたんじゃないの?私が来ることによって、最終的に姫様を召喚するのが一番、末席の真の狙いじゃないの?
…そうか、なるほど、そういう意図があったのかもしれない、私が目的ではなく、この街で一番といっても過言ではない、姫様と親しい間柄である私を懐柔することによって、協力要請しても、絶対に断られるとわかりきっている、この街の代表者を動かすって言う目論見かしら?
…うん、意図が理解できたのであれば、その意図に乗っかってあげましょう。まずは、私が赴いて話をするのが一番よね?ぁ、でも、その前に姫様に関わる気があるのか確認するのは大事よね?
相談して、現時点では、姫様が動いてくれそうになかったら、その事も伝えに王都に顔だけでも出して、やっぱり、私だけじゃ役不足ってことが判明するのであれば、そそくさと、帰ってくればいいものね。
一発逆転の大博打なんて、今の状況を他者がみたら、人生を舐めているとしか言えないわよね?現状、私達の街はそこまで切羽詰まって…ないわよね?ないと思いたい。逆転の目は、無い気がするのは気のせいよね?
…いや、気のせいじゃないわ、アレをどうにかしないことには、いや、でも、皆を宥めて暗殺するくらいにとどめれないかしら?…宥めても暗殺する方向でしか抑えきれない気がするわね。
もしかしなくても、今って、一発逆転を狙わないといけないの?それを末席は理解していて、一蓮托生となる組織がここしかないと見抜いている?少しでも戦力となる駒が欲しいから、打診してきたってこと?ありえるわね。
何処かのタイミングで姫様と相談するために会いに行きましょう、姫様の手が空いていそうで、尚且つ、話を聞けそうな雰囲気であれば~軽~く話を振ってみて、王都の選挙戦に対して好感触であれば!相談してみよう、拒絶されそうだったらさらっと流してこの話は終わりにしましょう、忙しい姫様に要らぬ心労を重ねるわけにはいかないものね。
取り合えず、姫様と話をする前に流れを考えておきましょう。
いざ話をしたとして、姫様的に参戦は憚れるのだと断られたのであれば私が一人、報告するために指定された王都の教会に訪問して、末席の人、ないしは、繋がりがあって話が通じる人と相談して、やっぱり姫様が目的でしたーだったら帰ってくれば良し!
なら、姫様には要らぬ心労を与えないために探る程度でいいかな?いいよね?…いいと思う。
会議室で今後の事を考えている間に、いつの間にか午前の会議は終わりをつげ、姫様は全員の報告を受け取っているので忙しそう、うん、今はダメよね。
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