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とある人物達が歩んできた道 ~ 予定は…③ ~

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何も言えない、何も癒えない…思ってはいけない。懺悔の言葉を言えば救われるかもしれない、楽になるのかもしれない、だが、この人達に救いを求めてはいけない。

私とあなた達は、誰がどう見ても…赤の他人という関係を超えることは出来ない。それ以上の関係を望んではいけない。守れなかった咎人が望んでいい世界じゃないのよ。

心が張り裂けそうになるのを、ただ、ただ、歯を食いしばる。
それを、悟られないようにしないといけない、それもまた難しい、彼らは此方を見ているだろうから。

この場に留まっているだけで、咎人としてご家族を守れなかったという罪の意識が熱せられた刃となって、感情を、心を、じわりじわりと切りながら焼いていく。
その苦痛が懺悔でもあるというのであれば、受け入れるしかしない。

幸せな光景であればある程、あの人が傍にいないこと、それが、大罪となる…
私が至らなかったから、姫ちゃんの様に才ある者ではなかったから、愚かな凡人が、才能ある輝く未来を、人類の明日を切り開く宝を隠れさせてしまったから…
私ではなく、騎士様が生きていたら、きっと、姫ちゃんと騎士様によって、世界は輝ける未来へと…

心が闇の世界へと引きずり込まれていくような感じがする、もう一人の記憶が、混ざってしまったからなのだろう、母として考えてはいけないことばかりを、考えすぎてしまう。貴女が姫ちゃんに対して抱く感情を、理解は、していた。けれど、何処かで、他人事だと感じていた、でも、今は、追体験し、貴女の感情や心を継承してしまったがゆえに…

私の心は闇へと引きずられていく・・・へんな みみなりも する 王都にきてから たまに みみなりが する・・・

唐突に誰かが手に触れてくるので、意識が現実へと誘われ、目の前に姫ちゃんがいることに気が付く。
呆気に取られていると、姫ちゃんから「そろそろ、帰ろうよ。夜が近づいてきてるよ?」声を掛けられる。

そう、もう夜が近いのね、それなら帰らないといけないわね。ここから私の実家まで歩いて帰るのに、距離がある、だから、だか、ら、そう、はや、早めに、帰路につかないと

よる の まち は あぶない から

唐突に騒めく感情に突き動かされる様に行動を開始する。
お義父様に、遅くまで失礼しましたと、頭を下げて挨拶をする。玄関に向かおうとすると引き留められ、何か用事でもあるのだろうかと、振り返ると。
どうやら、好意で、家まで送ってくれるための馬車を用意してくれていた。

その申し出には感謝しかなかった、だって、姫ちゃんも疲れているみたいなのでお気遣い感謝します。 よるはあぶない から おそわれるから そうびが ない

ご厚意に甘えさせていただき、家の近くまで送ってくれることになった。…赤の他人にそこまで気を使っていただき、ありがとうございます。

騎士様の実家にある王家の紋章が輝く、馬車に揺られながら実家へと運んでもらう。紋章の影響は凄まじい、だから、何も問題なく、事件が発生することも決してないだろう。
 よる の おうと で あろうと 

何も考えずに、いいえ、考えないようにして、じっとしていると、見慣れた景色が見えてくる、実家の近くまで来たのだろう、この辺りであれば、幾ら夜が近くても、襲われることは無いわね。
なので、この辺りで降ろしてもらってもいいのか声を掛ける、家の横に王家の紋章を背負った馬車が止まるのは、ご近所さんからの視線が怖いので、家から少し離れた場所で降ろしてもらった。

少し歩いて、実家に到着すると、朝と様子が一切変わらず、良くないわね。
門番の調子というか、様子が、あまり良く無さそうね。彼の調子が良くないのは、ちょっと気掛かりになるのよね。

家を守る人の調子が芳しくないっていうのは、偏に家を守る力が弱ることに繋がるもの。…守る価値なんて無い家でもね、家に価値はなくとも、育ててくれた恩は感じてはいるもの…そう考えると、自ずと答えは出るわよね…お母様を危険に晒していいわけじゃない。
家の事を考えると気にかけてあげるべきよね。姫ちゃんだけ、家に向かわせて話を聞いてみるのも、いいよね?お節介じゃないよね?

答えてくれるかわからなかったけれど、それとなく話を聞いてみると思いの外、悩みを打ち明けてくれる。
誰かに頼りにされる、信頼されるっていうのは悪い気はしないわね…今の私にはちょうどいいわね。

悩みの内容は、単純に言うと進路ね、自分の未来について、っかぁ…
悩みが産まれてしまったきっかけは、どうやら、私が街で医者として活躍していた、あの日々を間近で見て感じるものがあったってことなのね。
私のせいで悩みが発生したのであれば、親身になって話を聞くべきよね…迷惑をかけてしまったのだから。

私が帰省してくることをしって、自分に影響を与えた人物が帰省してくる、あの日から湧き上がっては消え、ふとした弾みで悩みが再燃する、門番という仕事は考える時間だけは山ほどある、だから、どうしても答えの出ない悩みに囚われると抜けれなくなる。

使用人という立場なのに、そんな話を、雇用主のご家族にしてもいいのかどうかって部分でも、悩んでいたのね。

そんなことで悩んでいるなんてね、繊細な人なのね。あんな騒動を巻き起こした人物が、こんな場所にまで影響を与えているなんて…考えたことも無かったわね。
「これもね、何かの導きよ。自分の心と向き合うためにも、感じたことを語ってもいいのよ?私は、貴方の雇用主じゃないもの…何も気にすることはないわよ?」
相手の事を気遣い、優しい声で相手を包み込むように、まるで教会のシスターの様に、シスターの真似事みたいに、自身の雰囲気をシスターに寄せて、彼専用の悩み相談室を開催する。

こういう時って男の人って、みんな同じよね、女性に弱いところを見せるのが怖いのよね。恥ずかしいと感じてしまうのでしょうね、モジモジと視線を彷徨わせながら、直ぐには話してはくれない。
そんなことを気にする必要ないのですよっと、シスターの雰囲気を纏ながら、言葉を待つ…
待ち続けていると、私の雰囲気にあてられたのか、ポツポツと語りだしてくれる、寡黙な門番が溜め込んでいた感情を吐露していく…色々と考えて溜め込んでいたのね。

自分の中にある正義とは何か、自分が憧れた英雄とは何かと、ずっと悩んでいたみたい…

そんなの永遠に答え何て出ないわよ、考えるだけ疲れるだけなのに…男の人ってね、吹っ切ることが出来ないのよね、憧れに夢、掴めそうで掴めない、諦めたと思っても、ふとした弾みで見えてしまう、感じてしまう夢の断片。
夢や憧れって、見えてるけれど、見えていない。自分を縛りつけてしまう枷になる時もあれば、自分を羽ばたかせてくる翼にもなる…今は枷になろうとしているって、ところかしら、枷を外してあげたいわね。でも…踏み込んでいい内容なのかしら?

理想に憧れ、乙女の様に恋い焦がれ、幼き時に止められなかった感情が再燃する…けれども、大人として、唐突に突き付けられてしまうのでしょうね、現実ってやつを。

そりゃ、誰しもが大人になったら一度は、悩む内容よね。自分が進むと決めた道を歩んでいると、ふと、振り返ってみると、このままでもいいのかな?って悩むものよね。私も同じよ…

悩みを加速させるように、追い打ちをかける様に、仕事をしている時に、気になる話を聞いてしまったのね。

門番の彼が、兵士という闘うことを仕事とし、誰かの日常を守ることを生業にすると決めた時期。
共に平穏を守ると誓いあった同期がいた、同期達と共に修行に明け暮れ、己を鍛えるためにお互いを意識しながらも、日々、切磋琢磨し、戦士としての頂きを共に目指した友人たち。
その友人たちが、今の職場を退職することを決心し、人類を守るために闘い続けるとある場所に向かうことを決心した、という話を聞いた。

何も報われない、誰も褒めてくれない、報酬も低い…死に場所を求める戦士が行きつく戦士の終着点【死の街】に、そんな場所に、今の立場を捨て、ただの兵士として志願するために、旅立っていく、当然、共に高めあった仲…旅立つ日はしっかりと見送った。

始まりの意志を、未だに、忘れることなく胸に宿し、夢に向かって歩いて行った隣人たちを見て、自分はどうしたらいいのか、答えを探し求めても誰も答えてくれない、抜けることが出来ない…

そういう時の答えってね、簡単なのよ、誰かにね、背中を押してほしいのよ、こういう時ってね。
殆どの人が、勇気がないだけ、それはね、仕方がない事よ?誰しもが、悩んで踏みとどまってしまうわよ、当然だもの。

安定した仕事から、死の恐怖と隣り合わせになるような世界に飛び込む勇気…
人々の生活を陰ながら守るために、命がけの世界に進む、そんな英雄譚を歩む為の勇気、無謀にも近い幼い頃の無鉄砲な勇気、それはねしょうがない物よ、だって、それは、大人になったからなのよ。
今の落ち着いた生活を捨てきれない、安定を求めるのは人として当然だもの、今の生活を捨てて英雄譚の一部になるために、一歩を踏み出す…今の生活を捨てる踏ん切りがつかないだけよ。

悩める若人に、人生の先輩として出来るアドバイス、なんて、自分が凄い人のような気分になるけれど、そうじゃない、人生の失敗者として何が出来るかしら?決まっているわよね。

笑顔で優しく語り掛ける
「大丈夫よ、貴方の思うままに心のままに生きなさい、あの街で生きてきたから、私は肌で感じ、知っている。あの街は、どんな人でも受け入れてくれるわよ」
流刑の民であろうと、人身御供として村や領地から送り出された無気力者でも、犯罪を犯してしまい人生を立て直したい人でも…生きる為に必死になっているわよ。
「この先の発言は、よくないと分かっていても、貴方の為に、言わせてもらうわね。この屋敷の門番なんて、軽はずみで、不躾で、失礼だとわかっているけれど、言わせてもらうわよ」
この仕事に対して誉れや誇りを感じているのだったら、本当に失礼な言い方になるわ。でも、事実なのよ。

「誰でもいいのよ?誰かに狙われるようなお家柄では、ないもの…門番なんて形だけなのよ、この家に命を賭けてまで、守るべき価値がある人はいないのよ」
私を育ててくれた、寂しそうにくたびれつつある実家を見つめながら、事実を口に出してしまうと…この時ばかりは笑顔を維持できなかった…

「そ、そんなことはないです!私は、俺は…貴女が活躍する姿を見て、自分の仕事にも、誇りを感じたんです。人々の命を必死に、血でお洋服が汚れようとも、助けようとする貴女の懸命な姿を見て、俺は、貴女のような素晴らしい人を育てた場所を守れているのだと、やりがいを、誇りを…感じているのです」
嬉しいことを言ってくれるわね、そんな風に言われてしまったら、未来のない、先のない、今後、朽ちていくだけの実家…そんな場所で育った私としては、もう、何も言えないわね…最後に言えることは、現金な部分になるのよね、たぶん、知らないでしょうし、今のあの街ってね、頑張り次第でお給金、凄いことになるわよ?

誇りとか誉れとか、夢とかを語ってくれた後だと、尚更、言いにくい部分をどうやって伝えようかと言い淀んでいると

「貴方は、家を守りたいの?それとも、尊敬する人を守りたいの?どっち?」

突如、新しい風が私達の間に吹き込んでくる…
いつの間にか、家の中に向かったと思っていた、新しい風…姫ちゃんから声が生まれ私達を包み込む。

何処かで、私の見えない死角に隠れて聞き耳を立てていたのね、まったく、神出鬼没ね。
私が見えない死角となると、門番の後ろかしら?そんな死角から…あったかしら?
それにしても、唐突に、声を掛けてくるんじゃないの、確信をついていて物怖じせずに、ストレートに言うわね。
家を(過去を)尊敬する人を(未来を)、何方を守りたいのか…あなたはどちらを見ているのか、ってことね。

改めて、念のために死角があったのか、さらっと辺りを見回すが、死角ないわね…いや、違うな、これ、貴女、認識阻害の術式つかったでしょ?
…そうなると、あの時も使っていそうね。ご丁寧に私をだます為に、家の玄関に向かって歩いていく幻術も添えたでしょ?油断できない娘ね~ほんっと。姫ちゃんらしいわね。

姫ちゃんの動きから、学べることは多い、今後、認識阻害の術式が一般的に普及したら暗殺稼業を生業にしている人がその技術を悪用しないわけないものね。
それら を しれば やれるわね まだ、王都には、伝わっていないはず、認識阻害の術式を、更にそれを見破る術も…ないはず。
姫ちゃんが認識阻害の術式、その仕組みを公開しないのは、悪意しかない人類が得ていい技術じゃないから?

そんなことを考えているとふと、視線に入ってくる門番の表情が、曇っていた表情が変わっていく様を

門番も姫ちゃんから唐突に投げかけられた、悩みの深い場所…真理を突いた二択の言葉に、感銘を受けたのか、自分の中に燻ぶっている真実を見ることが出来たのか、気付かされたように、はっとした表情をしている。

その表情を見て、自然と私も、不穏な考えを止めて、門番の表情の変化を見て、笑みが零れる。だって、この人の悩みはもう…解決しそうだからよ。

「俺は、俺が憧れる英雄になりたい!尊敬する人達を守りたい!…だけど、現実を知っている、俺は、英雄譚を歩めるほどの力量も技量もない、だけど、幼き日に憧れた英雄譚を歩む人たちの傍にいれるのなら、俺は…傍にいたい、共に歩みたい!!」

くすんだ瞳が輝く瞳に生まれ変わるじゃない。もう、大丈夫ね。

最後のきっかけを与えてくれた、真理の傍を歩む人…姫ちゃんの目線に合わせる様に、膝をつくようにしゃがみ、そっと手を出して姫ちゃんの手を取り
「感謝する!流石は、時の人と噂され街中で囁かれるだけある、その若さで、人の心に寄り添えるなんて、出来る事ではない。ありがとう、貴女のおかげで、心に刺さっていた棘が抜けたような気がする」その言葉を聞いて確信を得る。
目の輝きを取り戻した門番と手を振って別れ、家に入ると、一部始終を見ていたのか、普段ならそんな場所で待ってるはずがない、玄関の先に、侍女が待っていた。

「食事の支度が出来ています」と、この家で働く侍女にしては、珍しく畏まった声を掛けられる…この違和感で察する。

予想通り、食卓には、珍しくお父様が居て、にこやかに席について待っていた…にこやかね、これもまた、違和感よね、お父様は理由もなく笑顔になんてならない、こんな作った様な、取引先と会話するような貴族独特の笑顔なんて、特にね…

考えらえることは一つね、姫ちゃんに近づきたくて、滅多に顔を出さない側室の家にまで、足を運んだのでしょうね…まぁ、それくらいなら!いいでしょう。
だけど!姫ちゃんを利用して何かしらの利益を得たいという姫ちゃんを使い捨てにするような自分だけが儲けを得るという、どうしようもない貴族思想であれば!お父様と言えども…許す気はないわよ?
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