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とある人物達が歩んできた道 ~ 覚悟なんて決まっている ~
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病棟に駆けつけ、急いで医療用の施術着に着替えるが、緊急病棟室に入る可能性が高い、なので、その前にしないといけないことがある、それは全身の消毒。
理由は単純、大怪我をした人たちは確実に裂傷などをしている、つまり、傷口から悪病が入り込まないようにする為に私達もしっかりと消毒するのが基本。
消毒液を布に浸してその布で全身を消毒する、この消毒液で消毒すると、どうしても皮膚がひりひりと痛くなるけれど、しょうがないわよね。
姫ちゃんは、どうしよう、中まで付いてこないのなら消毒する必要はないわね、でも、この子の性格を考えたら中に入ろうとするわよね?だったら、消毒しないといけない、けれど、この消毒液って子供に使っても問題ないのかしら?
裸で姫ちゃんを見ていると、姫ちゃんも同じように裸になり私がしていたように服を脱いで、消毒液を浸した布で全身を拭いていく、何も文句を言わず、痛そうに眉間に皺を寄せながら痛いという言葉を口から漏れ出ないようにぐっと歯を食いしばって、唇に力を入れて痛みに耐えながらも、頑張ろうとする姿勢に胸が熱くなるのと同時に、この子は本当に賢いのだと、誇りに思ってしまう部分とその賢さが仇にならないか不安にもなる、
姫ちゃんサイズの施術着は用意していないので可能な限り一番小さいサイズを渡して、袖と足首が地面につかないように捲って、軽くひもで結ぶ、少し長めの髪の毛もタオルで巻き込みその上から袋を被せる、唾が飛ばないように口の前に布をあてがって耳の上に布の先端を通して後ろで結ぶ。
姫ちゃんの支度が終わった後は、私も同じようにセットする。
姫ちゃんが頬を赤らめて両手を合わせたような姿勢で、両手の人差し指をくるくると回している?どうしたのかしら?どこか恥ずかしそうにしている?あ~そっか、そうよね、姫ちゃんも女の子ね、恥ずかしいよね、だって、この施術着ってさ、裸の上に着るからね。
初めてこの施術着を着た時は素肌の上に着るものだから凄く抵抗があったのを思い出したわね、布が分厚いから浮き上がることはないから大丈夫よ?3層になっている分厚い構造をしているからね。
馴れないと恥ずかしいわよねっと肩を叩くと恥ずかしそうに小さな声で頑張るっと返事を返してくれる。こんな状況じゃなかったら微笑ましい光景なのにね…
軽く深呼吸して歯を食いしばってこの先に待ち受ける戦場へ向かう覚悟を決める、姫ちゃんにもこの後に待ち受ける人体の骨とか血とかが苦手だったら直ぐにでも部屋から出るのよっと伝え、ドアを開けて急患のいる場所へ向かう。
急患が居る場所に入った瞬間に目の前で痛みで叫ぶ人が視界に入ってくる、叫ぶといっても、音は大きく聞こえてこない、理由は単純、今行っている治療のための行為によって生じる痛みを耐えてもらう為に口の中に布を放り込まれているからだ、口に布を咥えさせられ折れたであろう上腕の部分を先輩の手によって骨の位置を直接戻されている状況だった、そう、直接よ
辺り一面に血が流れ床を赤く染め上げている、急を要するからって先輩も無茶をするわね、針を使って軽度の麻酔くらいしてあげればいいのに、あ~、無理か、あのレベルだと焼け石に水よね…まぁ、時間が無いのですものね、上腕骨が折れて皮膚を突き破って外に飛び出たくらいなら先輩チームだけでどうにか出来るでしょう、次の患者を診ましょう。
次の患者は足がやられているみたいね、患者の傍にある先輩が即座に診察した内容が書かれている紙をに大腿部と書かれている。
患者の大腿部に触れて動かすまでもなく一目でわかる、折れている、腫れあがっている太ももに手を当てて術式を使って皮膚の下の状態を探る…
嗚呼、これは痛いわね、粉砕骨折じゃない、切ったら血が溢れるわね、血管も損傷しているわね、近くにいるスタッフに必要な物を口頭で伝えた後、用意が終わるまでの間に次の患者を診ていく…
次の患者は、軽度かしら?鎖骨としか書かれていないけれど…ちらりと顔を見ると真っ青ね、鎖骨だけじゃないわね、これ、先輩が診た段階だと鎖骨だけみたいだけど、急いで状態と状況を隈なく確認するために服を引っ張って裂傷が無いか調べていくが、目に見える範囲での異常は見当たらないが直感が告げる、これを先に処置しないとこの人は死ぬ。
お腹の上、胸骨の下あたりを触れた瞬間にごぼっと血を吐かれる、即座にそれを避けて当たらないように手をどけるのと同時に、患者に輸血が必要だと判断し緊急招集と同時に、必要な物を告げ、開腹するための部屋へと連れていく!!姫ちゃんにこの後は血にまみれるから外で待っていなさい!っと告げるが、姫ちゃんは手に何かもちながら付いて行くという、この部屋の惨状を見ても、目に光が宿っているし吐く様な感じもしないし、この子はこういうのに耐性があるかもしれないわね…
なら、外で待ってろなんて、野暮なことよね。
姫ちゃんの勇気に心を震わせ、マスクの下で小さな笑みを浮かべながら開腹術の為に血を吐いた患者と共に駆け抜ける!!
開腹術式を行う部屋で患者に輸血の準備をし、流石に麻酔が無いとこの先は辛いので麻酔を投与する、かなりの劇薬だから、ちゃんと帰ってきなさいよ?
呼吸器をセットして、呼吸器に酸素を送る準備も出来ているので、そういった処置を何度もしてきた経験豊富な人が一緒に居てくれるのだから心強いわね、王都にも、ここの医療班と同じくらいの人達が居たら、救えた人もいたのだろうか?…何の記憶これ?まぁいいわ。今はそんなことを考えている時じゃないでしょ!
麻酔の時間、輸血の時間、全てを計算し、最速で終わらせる!!!
その後の術式は無我夢中だった、予想通り攻撃を食らったときに内臓にまで衝撃が届いていて臓器の一部が裂けているので、内臓を縫合していく、傷ついた血管も血がこれ以上でないように焼いて処置する…この匂いは永遠に慣れそうにないわね…
全ての処置を終えて開けた腹を縫合糸でしっかりと縫い合わせてっと!ついでに折れた鎖骨も戻して、っと!よし!次の処置に行くわよ!
姫ちゃんに声を掛けようとすると「出来たよ!誰でも良いから魔力を通して!」いつの間にか床に何か模様が書かれているの同時にそれが何を意味するのかぴんっとくる、
回復を促す術式ね!いつの間に!やるじゃない!!
姫ちゃんの言葉に困惑しているスタッフに
「その陣に魔力を、魔道具を使う要領で通して!それは私と姫ちゃんで、共同開発した傷を癒す術式よ!」
医療班団長である私の言葉に直ぐに手を挙げて私がやりますと返事を返してくれるスタッフを見る、そうね、貴女が適任ね。
まだまだ、若手で出来ることが少なく、麻酔が覚めるまでの間、患者に何か変化があればすぐに伝えるために待機する役目の彼女に魔力を送る仕事を任せる。
外に出ると同時に、空き部屋に姫ちゃんにお願いして回復術式の陣を書いてもらってもいいか提案すると「任せて!」頼もしい返事と共に指定した部屋に駆け出して行った。
一番最初に訪れた部屋に戻ってくると先ほどまで先輩によって直接骨を正しい位置に戻されて固定され、痛みでぐったりと動かない患者が居たので手が開いてるスタッフ二人に声を掛けて、姫ちゃんが回復術式の陣を書いている部屋に患者を連れていくように伝え、手が開いているスタッフに姫ちゃんの指示通りに魔力を陣に通して回復を促進する術式を起動するように伝える。
さぁ、次は誰を診ましょうかしら!!!
私の戦場を駆け回り、全ての患者の治療を終えて、駆けまわっていた医療班全員が集まっている休憩室でぐったりとしていると姫ちゃんもお疲れの様子で戻ってきて私の膝の上に乗ってきて甘えてくる「はぁ~すっごいね、みんな凄い、目が回りそうだった~」現場で感じたことをそのまま零れ出るように声が漏れ出ている姫ちゃんの感想を聞いて、そりゃ当然よねっと、思ってしまう。
だって、現場の中は凄いスピードで全員が動き回るからね、慣れていないと目を回してしまいかねないものね
私の膝の上で溶けてしまいそうなくらい体重を預けて甘えてくる姫ちゃんに向かって先輩が声を掛けてくる、優しく微笑みながら。
「姫ちゃんがあれを用意してくれたのか?あれはすげぇな!!なんて優れた術式なんだ!助かったよ」
先輩が驚いた表情で褒めてくれる、恐らく、姫ちゃんが床に描いた回復を促す術式の事だろう、私が姫ちゃんから渡されていた小さな紙に描かれた陣よりも強力な気がするけど、あれは代償がいるのかしら?
「えへへ~、でもね、あれを使うと患者の栄養素がかなり消費されるから食べれる人はお肉とか大豆、えっと、豆とか食べてね?あ!牛乳もあるといいかも!」
姫ちゃんが褒められて嬉しそうにも照れながら注意点を伝えてると、その内容が的を得ているみたいで先輩が驚いた表情をしたあと
「賢いなぁ姫ちゃんは、わかった、普段よりも多めに飯を用意するように伝えておくよ」
先輩があんなにも顔を皺にしながら笑顔になるなんて、滅多にない光景に、部屋にいる医療班全員が驚いていた。
先輩の会話を皮切りに、あの術式がもたらした奇跡にも近い経過観察に皆が各々、驚きの経過を興奮気味に伝えてくる。
私もまさかね、切って縫合したお腹がもう抜糸できるなんて思わなかったわよ、20日は抜糸出来ない、そんな風に思っていたのに、まさか、1時間で抜糸が出来るようになるなんて想像もしなかったわよ。
その代わり、代償として魔力を注ぎ続けていたスタッフは合計5名が魔力切れを起こして寝込んでしまったけどね、今は空いている病室で寝てもらっているわよ、当然、魔力回復促進剤を処方として、ベッドの傍にある小さな机の上に置いておいてあげたわよ?
私達の戦場が落ち着いたので、ついつい今が非常事態だということを忘れそうになるくらい、まったりとする、それはしょうがないと思う、やり切った後は燃え尽きたように緊張が抜けてしまうものだよね、だから、ついつい、今が危険な状態だということを忘れそうになる
そんな、愚かな私達に次の一報が伝わる
ドアがバンっと大きな音を出しながら開くと先ほど治療を施されていた戦士の一人が声を荒げるように
「すまない!緊急事態を発令させてくれ!ファイナルプランEの準備をしてくれ!!!」
考えたくない、想像したくない、経験したくない…先輩の時代にあった古のプランを発令しないといけない程の事態なの?
全員があっけに囚われていると先輩が立ちあがり「わかった、俺が先陣をきる、お前らは出来る限り死ぬなよ」私達の恩師で在り、長年この街の命を紡いできた先輩が先陣を?
その発言に、その場にいる全員が立ち上がり同時に声を出し「貴方をいかせるわけにはいかないでしょ!私達が逝きます!!」動き始めようとした先輩を制止する
「馬鹿野郎どもが!お前たちの想いはわかるが!こればっかりは年功序列だ!!先があるお前達よりも年齢が上の俺が先陣をきる!!!こればっかりは譲れねぇ!!!」
興奮する現場の人達に声を掛けて制止するのは難しい、なら、その判断が本当に正しい物なのか情報が欲しい。
どうして、その準備をしないといけないのか戦士の人に確認すると、納得の内容だった…
そうよね、今の戦力では決定打に欠けているのね…
幸いにも敵は魔道具を持ったタイプではない、見た目からしても、攻撃を受けた本人もその一撃から納得が出来るタイプ
パワータイプ
本来パワータイプっというか二本足と闘うときは最低でも10人は欲しい…パワータイプとなればもう少し欲しい所ね、でも、今、この街にその最低でもという条件に当てはめれるほどの技量を持ち合わせた人がいない…
騎士様、乙女ちゃん、坊や、巨躯の女性…つい最近まで、戦士達は、この四名を主軸として統率された一つの肉体の様に、機能していた。
そのメンバーが戦場で、各々が目と目が合うだけでお互いが求める動きが解る程、練りに練り上げた練度で連携が取れる人物達…
目が居て、耳が居て、その情報をまとめる脳が居て、武器を持った手がいて、盾を持った手がいて、錯乱するための足があった…
そんな人物達、4名+6名であればっという、最低条件…
今は、騎士様もいない…乙女ちゃんもいない…巨躯の女性もいない…坊やだけなのよ…
その上、その中堅どころが運び込まれているじゃないのよ!そうよ…急患として運び込まれたのが先に述べた四名と連携をとっていた中堅の戦士達じゃない!!!何を見ていたの!?戦術的に欠けているじゃない!!攻め手に欠けている、守り手も欠けている!!!
今、きっと、坊やは一人でパワータイプを相手取っている!相手取っているが…防戦一方でしょうね、そして、攻め手がいない…千日手になってしまったら確実に坊やが死ぬじゃない!!!
つまり、敵は此方に向かってくる、坊やを殺した後に…
戦士に敵との距離を聞いて更に、この場に居る全員が死を覚悟した…
走って10分もかからないほどの距離、二足歩行であれば、3分もかからないでここに到着するわね…
どうして、ここまで接近を許してしまったのか、それはもう責めても仕方のないこと、今は戦士の人達も余裕がない状況なのよね…
「そういわけだ!俺が先陣をきる!俺の、飛び散った臓物でも筒に込めて相手にぶつけてくれ…」
ファイナルプランE…医療班のスタッフが秘密裏に製造、製法している、爆薬…それを筒に込めて、敵に近づいて己の肉体に爆発の衝撃を当て己を肉片として敵にぶつけて攻撃するプラン
戦闘訓練なんてしていない人達が唯一相手に攻撃を、ダメージを与えることが出来る手段
爆薬をもって近寄って自爆するのだが、爆薬の爆発力だけでは敵の毛皮を貫けない、ダメージを与える事叶わず…
そして、手持ちの爆薬では、爆発の衝撃を収束しない限り碌な威力にならない、かといって、その衝撃だけでは敵にダメージを与えれない、爆薬だけでダメージを与えるのであれば敵の地肌に直接当てて使わないといけない。
戦闘訓練をしていない人達が敵の動きをとらえて、敵からの攻撃を避けて地肌に爆薬を当てて爆薬を起動するなんて不可能、そんなことを考えながら接近を許すほど敵は甘くない、辿り着く前に殺される
だから、此方が考えるのは敵の一撃を絶対に貰うという前提で動く、敵の攻撃を死なないように喰らう覚悟を持つこと、医療班であれば、何処を攻撃されると即死してしまうのか知識がカバーしてくれる。
敵の攻撃を貰いながらも決死の覚悟で自身を肉片と思い生への執着を忘れ死を受け止め悲惨な未来を描くことを躊躇うことなく!その結果になることを構わず扱って肉体の脆い部分を自身、または敵の一撃によって、作る。
そこを爆薬で爆発して自分の骨を爆薬で吹き飛ばして攻撃する…骨が尖って当たってくれれば多少は傷がつくでしょう、私達の血が相手にこびりつくことが出来れば機動力を落とせることでしょう、私達が飛び散る姿を見て悦に入ってくれれば、再度、それを見たくて動きを止めるでしょう…そんな願いの元、行動する!
先陣をきって死んだ人の肉片を掴んで筒の中に入れて、同じように敵の攻撃を、当たれば死ぬ一撃を、即死しないように受け止めて近距離で爆薬が入った筒を爆発させ敵にぶつけて少しずつ、少しずつ、敵に手傷を負わせるプラン。
運が良ければ倒せるだろう、運が良ければ手傷を負わせたことによって撤退するかもしれないだろう、手傷を負わせることで最悪、この街にいる人達、全員が死んだとしても王都に辿り着く頃には弱っているので王都騎士団が何とかしてくれるだろう…
そういう考えの元、発案され、用意された最後のプラン、ENDのプラン…
敵にあたるかどうかわからないけれど、毒薬も用意しておいた方がいいわね…姫ちゃんだけでも、絶対に守って見せる
全員が死ぬ覚悟を決め、各々が出来ることを話し合う、筒の中に石を詰めたらどうかとか、過去にその作戦を決行した先輩に相談しているが尖った石が今すぐ用意できるのならしてくれ、そんなの、無いだろう?と、案を否定されている。
もっと、備えるべきだったわね、敵の襲撃に、姫ちゃんの事で頭がいっぱいで、戦士達の状況にまで考えが至らなかった私の落ち度ね…
何をやってんだか、もう、私達を守る大いなる盾、大いなる鎧、大いなる戦術家であり、何があろうと安心感を与えてくれる騎士様はもういないのよ…
膝の上に座っている姫ちゃんを抱きしめながら
「姫ちゃんは生きてね、何があっても生きてね、お母さんが絶対に守るから」
最後の別れを済ませると、心が冷静になっていく、頭が冴えわたってくる、自分が持ちえる全ての技術を使って、刺し違えても敵は殺してやる!女として怨敵を討つ!母親として子の未来を危ぶませる存在を滅ぼす!!命に代えても!!!!
その瞬間に、体が思い出す、あの時の感覚を、騎士様を救う為に自然と触れてしまったあの境地へと至る…
命がけの、きせきを よびおこす はつどうさせるボタンみたいのがみえ その そばに こちらを かなしそうに みつめる なにかが みえた
そう、私がそれを使わせないために見張っているってことね!いいわね!使わないわよ!!…どの道、私が生き残る未来はないから、使おうが使わないが結果は変わらないわよ。
「盛り上がっているところ悪いが、先陣は俺がいく、俺が命がけで敵の動きを封じるから、プランEの爆薬で敵を攻撃してくれ、俺だってあの人に鍛えられたんだ、どうしようもない肥溜めの中から俺を救い出してくれた、恩師の仇を…討たせてくれ、幸いにも骨が直ぐにくっついたみたいだからな、こんな奇跡が起こるなんて天は、始祖様は、俺に動けと囁き奇跡を体現してくれたのだ、であれば、動ける俺がいくのは当然」
全員が戦士の人の言うことに頷き、各々が自身の知識と経験を最大限に活かせれるように動き出そうとした、だが、ある一言で全員の動きが止まる
「まって!話の流れで何となくわかったけど、命を捨てないの!命は軽くないの!誰も死なせたくない!!」
姫ちゃんから死地へ行かないで欲しいという願いがこもった声で、この場居る全員を制止される。
誰しもが思っている事、願ってやまない事を、口に出してくれるのは凄く嬉しいことだけど、そんな風に心配して、命の重みをわかってくれている次の世代が居るのだと知れただけでも、命散らすものからしたら、幸せよね。
その幸せを噛み締めて!!この先に待ち受けているであろう惨劇に命を差し出す勇気が湧き上がってくるってものよ!!
全員が姫ちゃんに優しく微笑んだ後、再度、覚悟を決めた瞳で全員が頷き、動き出そうとするが
「だから、待って!動くな馬鹿!まだ、やれることがあるでしょ!!話を聞いてよ!!!」
姫ちゃんの全力の雄たけびに全員がまた、動きを止める、やれることなんてないわよ?私達の命を消費するという大前提は覆らないわよ?
「策を完全なものにするから私を現場に連れてって!!」
震える足で勇気を振り絞って声を出しているけれど、貴女では死の大地に立てないわよ?
皆、経験しているもの、あの大地から感じる死の気配に全身が、身の毛がよだつような想いを経験しているからこそ、あの大地が人を拒むものだと感じたことがあるからこそ、言えるわ。
その年齢であの大地で精神を正常に保つことはできない。正常な判断は出来ない、策を巡らせるほど冷静でいれるわけがないのよ。
理由は単純、大怪我をした人たちは確実に裂傷などをしている、つまり、傷口から悪病が入り込まないようにする為に私達もしっかりと消毒するのが基本。
消毒液を布に浸してその布で全身を消毒する、この消毒液で消毒すると、どうしても皮膚がひりひりと痛くなるけれど、しょうがないわよね。
姫ちゃんは、どうしよう、中まで付いてこないのなら消毒する必要はないわね、でも、この子の性格を考えたら中に入ろうとするわよね?だったら、消毒しないといけない、けれど、この消毒液って子供に使っても問題ないのかしら?
裸で姫ちゃんを見ていると、姫ちゃんも同じように裸になり私がしていたように服を脱いで、消毒液を浸した布で全身を拭いていく、何も文句を言わず、痛そうに眉間に皺を寄せながら痛いという言葉を口から漏れ出ないようにぐっと歯を食いしばって、唇に力を入れて痛みに耐えながらも、頑張ろうとする姿勢に胸が熱くなるのと同時に、この子は本当に賢いのだと、誇りに思ってしまう部分とその賢さが仇にならないか不安にもなる、
姫ちゃんサイズの施術着は用意していないので可能な限り一番小さいサイズを渡して、袖と足首が地面につかないように捲って、軽くひもで結ぶ、少し長めの髪の毛もタオルで巻き込みその上から袋を被せる、唾が飛ばないように口の前に布をあてがって耳の上に布の先端を通して後ろで結ぶ。
姫ちゃんの支度が終わった後は、私も同じようにセットする。
姫ちゃんが頬を赤らめて両手を合わせたような姿勢で、両手の人差し指をくるくると回している?どうしたのかしら?どこか恥ずかしそうにしている?あ~そっか、そうよね、姫ちゃんも女の子ね、恥ずかしいよね、だって、この施術着ってさ、裸の上に着るからね。
初めてこの施術着を着た時は素肌の上に着るものだから凄く抵抗があったのを思い出したわね、布が分厚いから浮き上がることはないから大丈夫よ?3層になっている分厚い構造をしているからね。
馴れないと恥ずかしいわよねっと肩を叩くと恥ずかしそうに小さな声で頑張るっと返事を返してくれる。こんな状況じゃなかったら微笑ましい光景なのにね…
軽く深呼吸して歯を食いしばってこの先に待ち受ける戦場へ向かう覚悟を決める、姫ちゃんにもこの後に待ち受ける人体の骨とか血とかが苦手だったら直ぐにでも部屋から出るのよっと伝え、ドアを開けて急患のいる場所へ向かう。
急患が居る場所に入った瞬間に目の前で痛みで叫ぶ人が視界に入ってくる、叫ぶといっても、音は大きく聞こえてこない、理由は単純、今行っている治療のための行為によって生じる痛みを耐えてもらう為に口の中に布を放り込まれているからだ、口に布を咥えさせられ折れたであろう上腕の部分を先輩の手によって骨の位置を直接戻されている状況だった、そう、直接よ
辺り一面に血が流れ床を赤く染め上げている、急を要するからって先輩も無茶をするわね、針を使って軽度の麻酔くらいしてあげればいいのに、あ~、無理か、あのレベルだと焼け石に水よね…まぁ、時間が無いのですものね、上腕骨が折れて皮膚を突き破って外に飛び出たくらいなら先輩チームだけでどうにか出来るでしょう、次の患者を診ましょう。
次の患者は足がやられているみたいね、患者の傍にある先輩が即座に診察した内容が書かれている紙をに大腿部と書かれている。
患者の大腿部に触れて動かすまでもなく一目でわかる、折れている、腫れあがっている太ももに手を当てて術式を使って皮膚の下の状態を探る…
嗚呼、これは痛いわね、粉砕骨折じゃない、切ったら血が溢れるわね、血管も損傷しているわね、近くにいるスタッフに必要な物を口頭で伝えた後、用意が終わるまでの間に次の患者を診ていく…
次の患者は、軽度かしら?鎖骨としか書かれていないけれど…ちらりと顔を見ると真っ青ね、鎖骨だけじゃないわね、これ、先輩が診た段階だと鎖骨だけみたいだけど、急いで状態と状況を隈なく確認するために服を引っ張って裂傷が無いか調べていくが、目に見える範囲での異常は見当たらないが直感が告げる、これを先に処置しないとこの人は死ぬ。
お腹の上、胸骨の下あたりを触れた瞬間にごぼっと血を吐かれる、即座にそれを避けて当たらないように手をどけるのと同時に、患者に輸血が必要だと判断し緊急招集と同時に、必要な物を告げ、開腹するための部屋へと連れていく!!姫ちゃんにこの後は血にまみれるから外で待っていなさい!っと告げるが、姫ちゃんは手に何かもちながら付いて行くという、この部屋の惨状を見ても、目に光が宿っているし吐く様な感じもしないし、この子はこういうのに耐性があるかもしれないわね…
なら、外で待ってろなんて、野暮なことよね。
姫ちゃんの勇気に心を震わせ、マスクの下で小さな笑みを浮かべながら開腹術の為に血を吐いた患者と共に駆け抜ける!!
開腹術式を行う部屋で患者に輸血の準備をし、流石に麻酔が無いとこの先は辛いので麻酔を投与する、かなりの劇薬だから、ちゃんと帰ってきなさいよ?
呼吸器をセットして、呼吸器に酸素を送る準備も出来ているので、そういった処置を何度もしてきた経験豊富な人が一緒に居てくれるのだから心強いわね、王都にも、ここの医療班と同じくらいの人達が居たら、救えた人もいたのだろうか?…何の記憶これ?まぁいいわ。今はそんなことを考えている時じゃないでしょ!
麻酔の時間、輸血の時間、全てを計算し、最速で終わらせる!!!
その後の術式は無我夢中だった、予想通り攻撃を食らったときに内臓にまで衝撃が届いていて臓器の一部が裂けているので、内臓を縫合していく、傷ついた血管も血がこれ以上でないように焼いて処置する…この匂いは永遠に慣れそうにないわね…
全ての処置を終えて開けた腹を縫合糸でしっかりと縫い合わせてっと!ついでに折れた鎖骨も戻して、っと!よし!次の処置に行くわよ!
姫ちゃんに声を掛けようとすると「出来たよ!誰でも良いから魔力を通して!」いつの間にか床に何か模様が書かれているの同時にそれが何を意味するのかぴんっとくる、
回復を促す術式ね!いつの間に!やるじゃない!!
姫ちゃんの言葉に困惑しているスタッフに
「その陣に魔力を、魔道具を使う要領で通して!それは私と姫ちゃんで、共同開発した傷を癒す術式よ!」
医療班団長である私の言葉に直ぐに手を挙げて私がやりますと返事を返してくれるスタッフを見る、そうね、貴女が適任ね。
まだまだ、若手で出来ることが少なく、麻酔が覚めるまでの間、患者に何か変化があればすぐに伝えるために待機する役目の彼女に魔力を送る仕事を任せる。
外に出ると同時に、空き部屋に姫ちゃんにお願いして回復術式の陣を書いてもらってもいいか提案すると「任せて!」頼もしい返事と共に指定した部屋に駆け出して行った。
一番最初に訪れた部屋に戻ってくると先ほどまで先輩によって直接骨を正しい位置に戻されて固定され、痛みでぐったりと動かない患者が居たので手が開いてるスタッフ二人に声を掛けて、姫ちゃんが回復術式の陣を書いている部屋に患者を連れていくように伝え、手が開いているスタッフに姫ちゃんの指示通りに魔力を陣に通して回復を促進する術式を起動するように伝える。
さぁ、次は誰を診ましょうかしら!!!
私の戦場を駆け回り、全ての患者の治療を終えて、駆けまわっていた医療班全員が集まっている休憩室でぐったりとしていると姫ちゃんもお疲れの様子で戻ってきて私の膝の上に乗ってきて甘えてくる「はぁ~すっごいね、みんな凄い、目が回りそうだった~」現場で感じたことをそのまま零れ出るように声が漏れ出ている姫ちゃんの感想を聞いて、そりゃ当然よねっと、思ってしまう。
だって、現場の中は凄いスピードで全員が動き回るからね、慣れていないと目を回してしまいかねないものね
私の膝の上で溶けてしまいそうなくらい体重を預けて甘えてくる姫ちゃんに向かって先輩が声を掛けてくる、優しく微笑みながら。
「姫ちゃんがあれを用意してくれたのか?あれはすげぇな!!なんて優れた術式なんだ!助かったよ」
先輩が驚いた表情で褒めてくれる、恐らく、姫ちゃんが床に描いた回復を促す術式の事だろう、私が姫ちゃんから渡されていた小さな紙に描かれた陣よりも強力な気がするけど、あれは代償がいるのかしら?
「えへへ~、でもね、あれを使うと患者の栄養素がかなり消費されるから食べれる人はお肉とか大豆、えっと、豆とか食べてね?あ!牛乳もあるといいかも!」
姫ちゃんが褒められて嬉しそうにも照れながら注意点を伝えてると、その内容が的を得ているみたいで先輩が驚いた表情をしたあと
「賢いなぁ姫ちゃんは、わかった、普段よりも多めに飯を用意するように伝えておくよ」
先輩があんなにも顔を皺にしながら笑顔になるなんて、滅多にない光景に、部屋にいる医療班全員が驚いていた。
先輩の会話を皮切りに、あの術式がもたらした奇跡にも近い経過観察に皆が各々、驚きの経過を興奮気味に伝えてくる。
私もまさかね、切って縫合したお腹がもう抜糸できるなんて思わなかったわよ、20日は抜糸出来ない、そんな風に思っていたのに、まさか、1時間で抜糸が出来るようになるなんて想像もしなかったわよ。
その代わり、代償として魔力を注ぎ続けていたスタッフは合計5名が魔力切れを起こして寝込んでしまったけどね、今は空いている病室で寝てもらっているわよ、当然、魔力回復促進剤を処方として、ベッドの傍にある小さな机の上に置いておいてあげたわよ?
私達の戦場が落ち着いたので、ついつい今が非常事態だということを忘れそうになるくらい、まったりとする、それはしょうがないと思う、やり切った後は燃え尽きたように緊張が抜けてしまうものだよね、だから、ついつい、今が危険な状態だということを忘れそうになる
そんな、愚かな私達に次の一報が伝わる
ドアがバンっと大きな音を出しながら開くと先ほど治療を施されていた戦士の一人が声を荒げるように
「すまない!緊急事態を発令させてくれ!ファイナルプランEの準備をしてくれ!!!」
考えたくない、想像したくない、経験したくない…先輩の時代にあった古のプランを発令しないといけない程の事態なの?
全員があっけに囚われていると先輩が立ちあがり「わかった、俺が先陣をきる、お前らは出来る限り死ぬなよ」私達の恩師で在り、長年この街の命を紡いできた先輩が先陣を?
その発言に、その場にいる全員が立ち上がり同時に声を出し「貴方をいかせるわけにはいかないでしょ!私達が逝きます!!」動き始めようとした先輩を制止する
「馬鹿野郎どもが!お前たちの想いはわかるが!こればっかりは年功序列だ!!先があるお前達よりも年齢が上の俺が先陣をきる!!!こればっかりは譲れねぇ!!!」
興奮する現場の人達に声を掛けて制止するのは難しい、なら、その判断が本当に正しい物なのか情報が欲しい。
どうして、その準備をしないといけないのか戦士の人に確認すると、納得の内容だった…
そうよね、今の戦力では決定打に欠けているのね…
幸いにも敵は魔道具を持ったタイプではない、見た目からしても、攻撃を受けた本人もその一撃から納得が出来るタイプ
パワータイプ
本来パワータイプっというか二本足と闘うときは最低でも10人は欲しい…パワータイプとなればもう少し欲しい所ね、でも、今、この街にその最低でもという条件に当てはめれるほどの技量を持ち合わせた人がいない…
騎士様、乙女ちゃん、坊や、巨躯の女性…つい最近まで、戦士達は、この四名を主軸として統率された一つの肉体の様に、機能していた。
そのメンバーが戦場で、各々が目と目が合うだけでお互いが求める動きが解る程、練りに練り上げた練度で連携が取れる人物達…
目が居て、耳が居て、その情報をまとめる脳が居て、武器を持った手がいて、盾を持った手がいて、錯乱するための足があった…
そんな人物達、4名+6名であればっという、最低条件…
今は、騎士様もいない…乙女ちゃんもいない…巨躯の女性もいない…坊やだけなのよ…
その上、その中堅どころが運び込まれているじゃないのよ!そうよ…急患として運び込まれたのが先に述べた四名と連携をとっていた中堅の戦士達じゃない!!!何を見ていたの!?戦術的に欠けているじゃない!!攻め手に欠けている、守り手も欠けている!!!
今、きっと、坊やは一人でパワータイプを相手取っている!相手取っているが…防戦一方でしょうね、そして、攻め手がいない…千日手になってしまったら確実に坊やが死ぬじゃない!!!
つまり、敵は此方に向かってくる、坊やを殺した後に…
戦士に敵との距離を聞いて更に、この場に居る全員が死を覚悟した…
走って10分もかからないほどの距離、二足歩行であれば、3分もかからないでここに到着するわね…
どうして、ここまで接近を許してしまったのか、それはもう責めても仕方のないこと、今は戦士の人達も余裕がない状況なのよね…
「そういわけだ!俺が先陣をきる!俺の、飛び散った臓物でも筒に込めて相手にぶつけてくれ…」
ファイナルプランE…医療班のスタッフが秘密裏に製造、製法している、爆薬…それを筒に込めて、敵に近づいて己の肉体に爆発の衝撃を当て己を肉片として敵にぶつけて攻撃するプラン
戦闘訓練なんてしていない人達が唯一相手に攻撃を、ダメージを与えることが出来る手段
爆薬をもって近寄って自爆するのだが、爆薬の爆発力だけでは敵の毛皮を貫けない、ダメージを与える事叶わず…
そして、手持ちの爆薬では、爆発の衝撃を収束しない限り碌な威力にならない、かといって、その衝撃だけでは敵にダメージを与えれない、爆薬だけでダメージを与えるのであれば敵の地肌に直接当てて使わないといけない。
戦闘訓練をしていない人達が敵の動きをとらえて、敵からの攻撃を避けて地肌に爆薬を当てて爆薬を起動するなんて不可能、そんなことを考えながら接近を許すほど敵は甘くない、辿り着く前に殺される
だから、此方が考えるのは敵の一撃を絶対に貰うという前提で動く、敵の攻撃を死なないように喰らう覚悟を持つこと、医療班であれば、何処を攻撃されると即死してしまうのか知識がカバーしてくれる。
敵の攻撃を貰いながらも決死の覚悟で自身を肉片と思い生への執着を忘れ死を受け止め悲惨な未来を描くことを躊躇うことなく!その結果になることを構わず扱って肉体の脆い部分を自身、または敵の一撃によって、作る。
そこを爆薬で爆発して自分の骨を爆薬で吹き飛ばして攻撃する…骨が尖って当たってくれれば多少は傷がつくでしょう、私達の血が相手にこびりつくことが出来れば機動力を落とせることでしょう、私達が飛び散る姿を見て悦に入ってくれれば、再度、それを見たくて動きを止めるでしょう…そんな願いの元、行動する!
先陣をきって死んだ人の肉片を掴んで筒の中に入れて、同じように敵の攻撃を、当たれば死ぬ一撃を、即死しないように受け止めて近距離で爆薬が入った筒を爆発させ敵にぶつけて少しずつ、少しずつ、敵に手傷を負わせるプラン。
運が良ければ倒せるだろう、運が良ければ手傷を負わせたことによって撤退するかもしれないだろう、手傷を負わせることで最悪、この街にいる人達、全員が死んだとしても王都に辿り着く頃には弱っているので王都騎士団が何とかしてくれるだろう…
そういう考えの元、発案され、用意された最後のプラン、ENDのプラン…
敵にあたるかどうかわからないけれど、毒薬も用意しておいた方がいいわね…姫ちゃんだけでも、絶対に守って見せる
全員が死ぬ覚悟を決め、各々が出来ることを話し合う、筒の中に石を詰めたらどうかとか、過去にその作戦を決行した先輩に相談しているが尖った石が今すぐ用意できるのならしてくれ、そんなの、無いだろう?と、案を否定されている。
もっと、備えるべきだったわね、敵の襲撃に、姫ちゃんの事で頭がいっぱいで、戦士達の状況にまで考えが至らなかった私の落ち度ね…
何をやってんだか、もう、私達を守る大いなる盾、大いなる鎧、大いなる戦術家であり、何があろうと安心感を与えてくれる騎士様はもういないのよ…
膝の上に座っている姫ちゃんを抱きしめながら
「姫ちゃんは生きてね、何があっても生きてね、お母さんが絶対に守るから」
最後の別れを済ませると、心が冷静になっていく、頭が冴えわたってくる、自分が持ちえる全ての技術を使って、刺し違えても敵は殺してやる!女として怨敵を討つ!母親として子の未来を危ぶませる存在を滅ぼす!!命に代えても!!!!
その瞬間に、体が思い出す、あの時の感覚を、騎士様を救う為に自然と触れてしまったあの境地へと至る…
命がけの、きせきを よびおこす はつどうさせるボタンみたいのがみえ その そばに こちらを かなしそうに みつめる なにかが みえた
そう、私がそれを使わせないために見張っているってことね!いいわね!使わないわよ!!…どの道、私が生き残る未来はないから、使おうが使わないが結果は変わらないわよ。
「盛り上がっているところ悪いが、先陣は俺がいく、俺が命がけで敵の動きを封じるから、プランEの爆薬で敵を攻撃してくれ、俺だってあの人に鍛えられたんだ、どうしようもない肥溜めの中から俺を救い出してくれた、恩師の仇を…討たせてくれ、幸いにも骨が直ぐにくっついたみたいだからな、こんな奇跡が起こるなんて天は、始祖様は、俺に動けと囁き奇跡を体現してくれたのだ、であれば、動ける俺がいくのは当然」
全員が戦士の人の言うことに頷き、各々が自身の知識と経験を最大限に活かせれるように動き出そうとした、だが、ある一言で全員の動きが止まる
「まって!話の流れで何となくわかったけど、命を捨てないの!命は軽くないの!誰も死なせたくない!!」
姫ちゃんから死地へ行かないで欲しいという願いがこもった声で、この場居る全員を制止される。
誰しもが思っている事、願ってやまない事を、口に出してくれるのは凄く嬉しいことだけど、そんな風に心配して、命の重みをわかってくれている次の世代が居るのだと知れただけでも、命散らすものからしたら、幸せよね。
その幸せを噛み締めて!!この先に待ち受けているであろう惨劇に命を差し出す勇気が湧き上がってくるってものよ!!
全員が姫ちゃんに優しく微笑んだ後、再度、覚悟を決めた瞳で全員が頷き、動き出そうとするが
「だから、待って!動くな馬鹿!まだ、やれることがあるでしょ!!話を聞いてよ!!!」
姫ちゃんの全力の雄たけびに全員がまた、動きを止める、やれることなんてないわよ?私達の命を消費するという大前提は覆らないわよ?
「策を完全なものにするから私を現場に連れてって!!」
震える足で勇気を振り絞って声を出しているけれど、貴女では死の大地に立てないわよ?
皆、経験しているもの、あの大地から感じる死の気配に全身が、身の毛がよだつような想いを経験しているからこそ、あの大地が人を拒むものだと感じたことがあるからこそ、言えるわ。
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