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とある人物達が歩んできた道 ~ 一歩 ~

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姫ちゃんの封印術式に向けて様々な研鑽や研究、実験を行い続けてきた。

肉塊君は、本当に一か月も、いいえ、それ以上も腐ることが無く状態が保存されているなんて想像もしなかった。
姫ちゃんが言うには、あの術式の中に時間の概念すら干渉させない、細胞を変化させない術式が組み込まれていると教えてくれた。

つまり、それを使えば永遠の命が手に入るのでは?という疑問が湧き上がる、細胞っていうのが、えっと、人体って言うか生物を構成する小さな単位なのよね?それが積み重なって人として構成されているってことよね?それが変化しないってことは、永遠と生きれることに繋がるわよね?

それを確認すると、魔力を生み出す臓器だけは年を取るからいつか魔力切れで死ぬ、でも、見た目は変わらないから死ぬまで若い見た目でいれる可能性がある…
ぇ、普通に凄くないそれ?私自身に施したいほどよ?それを伝えると

「見た目が永遠と変わらない人っているの?居たら確実に人じゃないって判定されるから…魔女とかそういう類に認定されて、大陸中から命を狙われた末に、殺されるよ?」

…あら、意外ね、貴女ならもう少し夢をみさせてくれるような返答をしてくれると思っていたのに、この一か月で人の悪意というものを学んだのね?

結果的に言えば、封印術式の改良はほぼ完成に近い、肉塊君に施した術式に改良を少しずつ加えて、姫ちゃんが最も望む形に持っていけそうなのよね。
以外にも一度施した術式は変更が出来ないものだと思っていたけれど、介入する方法が残されていたみたいで、改良するべき箇所があれば、その都度、肉塊君で実験し観測も出来た、肉塊君を燃やさないでよかったねーってことあるごとに私に挑発をかましてくるお調子者には、擽りの刑に処するのも忘れてないわ。

この一か月は、本当に忙しかったわ、
朝は肉塊君の調整というなの封印術式の研究

昼間は、研究塔で姫ちゃんが開発している、異常な数の魔道具の調整に生産管理、そこから得た資金を元に姫ちゃんが欲しいという資材を財務の人に搔き集めてもらって、次の実験へと繋がっていく、この間なんてとうとう馬車を改良しきって、何かよくわからないものを造り上げて、道路を舗装しちゃったのよね、おかげ様で馬車の移動が凄くスムーズになったと畜産の旦那さんからも大変ご好評をいただきましたし、王都からも感謝状が届いたのよね、それも現王のサインが入っているものが届いたのよ!?それプラス、施工費として大量のお金も寄付として渡されたのよね…

夜は、幹部会とか、医療班の仕事とかが山ほど圧し掛かってくるのよね…

たったの一か月で、恐らく今のこの街は、この街が生まれてから一番、潤っているのでは!?って思うくらい考えられない量の予算が舞い込んできたのよね。

これにはもう、幹部達も色めきついちゃってアレが欲しい、これが欲しいっていう話題ばっかり。
姫ちゃんが生み出したお金なので、予算で最も優先すべきは姫ちゃんの意見で、姫ちゃんを優先する!という方針で幹部会も会議を終えたのよね。
幹部会議で予算はここまでなら姫ちゃんが自由にしていいって金額が決まったのだけれど、これ、私のお給金の何か月分なのよ?ってくらい、凄まじい金額よね…
12歳に与えていい金額の規模じゃないわね。

しっかりと姫ちゃんと話し合って予算の使い道を考えないとね、あの子が私利私欲に走るとはおも…お…走るわね、魔道具が欲しいとか、魔石が欲しいとかは絶対に言うだろうけれど、それは、最終的にこの街の利益に繋がるからいいのか?…そうね、いいわね、無駄遣いってわけでもないですし、あれ?それなら、際限なんて考えずに、持てるだけの財力をもって、あの子が求めるものは与えるべきじゃないかしら?

ぅぅん、これは甘いのだろうか?母親として甘やかしたいという考えなのか、その先に待っている膨大な利益を生み出すのではないかという淡い期待を抱いてしまった守銭奴の考えなのか?…正直、どちらもあるからわからないわね。

部屋に戻ってくると、肉塊君を供養している姫ちゃんの姿に胸が少し締め付けられてしまった、もしかしたら、この子は形あるもの全てを大事にしようする精神を持っているのかもしれない。
「私も供養したほうがいいわよね?」
肉塊君に祈りを捧げている姫ちゃんに声を掛けると
「?何の話?祈りなんて捧げてないよ?匂いを嗅いだら腐ってる匂いがして頭が痛くなっちゃっただけだよ?」
こちらに振り返って涙目で訴えてくるけれど、何?照れてるの?そういう感情や行為は尊き行動だから大切にした方がいいわよ?
私の表情が気に喰わないのか
「あ!にまにまして!信じてないでしょ!ほら!」突っかかってくるわね・・・
渡された肉塊君の匂いを嗅ぐと、あ、うん、腐ってる…
「ね!!」匂いを嗅いで悶絶している私を見て姫ちゃんは嬉しそうにしている辺り、この子は、良心が欠けてるんじゃないの?

はぁっとため息をつきながら窓を開けて部屋の空気を入れ替える、言われてみれば部屋に入ったときにほのかに変な臭いがしたわね、あれ、腐ってる匂いだったのね…

「これ、どうやって処理するのが正解かな?」
姫ちゃんのその疑問は、私も思っていた疑問よ。
お互いハンカチを鼻と口元に当てながら窓際でどうするか話し合う、魔石は再利用できるけれど、あれを切って開いて取り出すの?
想像する、人の形を模した肉と血で出来たものをナイフで切り開いて魔石を取り出す光景を…

何処からどう見ても魔女じゃないそれ…

童話に出てくる絵本に描かれていそうな悪役ね、魔石はもったいないけれど、魔石諸共焼いてしまおう
そうと決まれば焼却施設に持って行って焼こう

それだけを焼くと何かこう、ね?あれな気分になってしまうので、他にも捨てる物を用意して、焼却施設に運び、全部、放り込んだ後、火をつけて供養する。
心なしか肉が焼ける美味しそうな匂いが辺り一面に漂ったような気がするが、気のせいにしておきましょう。

ありがとう、肉塊君、貴方は立派に職務を全うしたわ、貴方の尊き犠牲により封印術式は一つ上の次元へと、姫ちゃんが望むモノへと成りあがったわ。

脳裏に過る、肉塊君の謎のポーズ…そういえば、あれは何のポーズなのか姫ちゃんに聞いてみると
サタデーナイトフィーバーだよっと教えてくれるが、言葉の意味がよくわからなかった…

帰り道に予算が大量にあるけれど、何か欲しい物がある?っと聞いてみると、かなりの量の欲しい物を口頭で言われてしまったので覚えきれないから、紙に書いて提出してもらうことに。

この子って素材に関しても知識量が私では比べ物にならないくらいの知識が詰め込まれているけれど、どこで得たのよ、そんな知識…
寵愛の一族って、あれかしら?代々、術式とか、魔道具とか、それらに関係するものが大好きな一族なの?

最近は忙しすぎて読めていないから、久しぶりに読んでみようかしら。最初のうちは古い順から読んでいたけれど、今回は中間ぐらいのを見てみましょうかね。

帰り道に二人でお風呂にささっと入って、部屋に帰る、全員がソワソワと姫ちゃんを見ている様子から見て、各々が欲しい物を姫ちゃんにおねだりする機会を伺っているわね、姫ちゃんもそれを察しているみたいで私から絶対に離れようとしなかったもの。
部屋に帰ってくると、テトテトと小走りに歩いてベッドに飛び込む、珍しいわね、姫ちゃんが真っすぐにベッドに直行するなんて。
「ぅぅーみんなの視線がこわいー」
枕に顔を埋めながら両足をパタパタと泳ぐようにベッドの上で悶えている、やっぱり視線に気が付いていたのね。
不安になっている娘をほおっておくわけにもいかなわね

ベッドに腰かけて頭を撫でてあげていると
「…ねぇ?」
声のトーンが落ち込んでいるわね?
「お母さんは、私がお金を持っても態度が変わらないのはどうして?欲しい物が無いの?」
嗚呼、そういうことね、私が内心、姫ちゃんのお金を狙っているとかそういうのを考えてしまったのね?周りの視線の変化に怖くなるのと同時に、不安になってしまったのね。
「欲しい物はあるわよ」
頭を撫でながら正直に答えると
「…そう、なんだ」
寂しそうな、消え入りそうな声が聞こえてくる
「そうよ、私がね欲しいのはただ一つよ、貴女の幸せな未来よ、出来れば孫を抱きたいわね、だから、貴女に良い人が見つかるまで長生きしてもらうわよ」
あやすように頭を撫でながら優しく声を掛けると
「…ほんとう?」不安そうに消え入りそうな声が枕を通して聞こえてくる。

疑り深いわね、つい、一か月前はあんなにちやほやされていたのも、もしかしたら、自分のすることが利益になる、お金になるからって理由でもてはやされたのでは?って、思っているのでしょうね、大人は汚い、金が大好きって感じてしまったのね、それはしょうがないわよ、この街にいる多くの人がお金とは無縁の生活をしてきた人達ばかりだもの。

「本当よ、ほんとうに、ほんと、私はね、お金で手に入るものに興味は無いの、おかねで、てにはいるのなら、どれだけ、よかったか…」
私が心から欲したものは、幾らお金を積んだところで手に入らない、てにはいらないものばかりに、心が惹かれるのよ…
「おかあさん?」枕から顔を離したのね、声がこもっていないもの
「ごめんなさい、なにか、傷つけちゃった?ごめん、ごめんね、泣かないで」
姫ちゃんが心配そうに私の腰に手を回して背中におでこをつけてくる、姫ちゃんにとっておでこをくっつけるのが甘える仕草なのね。
「ううん、大丈夫よ、姫ちゃんが悪いわけじゃないの、私がね、わたしが、歩んできた道を、ちょっと、思い出してしまっただけなの」
いつか、ときが来たら、姫ちゃんに私の大切な輝ける日々を、色あせない思い出を語れる日が来るといいなぁ・・・

お互いが何も言わないでずっと動かずにそのままだった、姫ちゃんも何も言わないでずっと私に抱き着いてくれたのが凄く嬉しかった、私は一人じゃないって伝わってくるのが凄く嬉しかった、嗚呼、私は気が付かないうちにどんどんと、この子に惹かれて依存しようとしているのがわかる、騎士様…私は、女から完全に母へと心が変わってしまったのかもしれない、それを喜ぶべきなのでしょうか?貴方を、過去にしてもいいのでしょうか?

答えの出ない、永遠に答えを出してはいけな問題に私の心は挑戦する勇気すらない、今の私ではまだ、その傷を見つめることすら出来ない

何度も何度も深呼吸をするたびに、思い出が蘇り涙が溢れ出てくる、とめないといけないのはわかっている、姫ちゃんを心配させるだけだから、泣き止まないといけないのに、どうしてかわからないが今日は涙を抑えることが出来なかった。

「ごめんね、私ね、こういうときってどうしたらいいのか、知らないの、わからないの・・・ごめんなさい」
姫ちゃんが背中越しに申し訳なさそうに声を掛けてくれる、彼女なりに私をどうやって励まそうか、悩んでくれているということに胸が暖かくなり、その優しさに涙が溢れ出てしまう、つい、その優しさに甘えたくなり、背中越しに私を抱きしめてくれている人に体の向きを変えて抱き返してしまった。
「いいのよ、姫ちゃん、私がね、わたしがよわいから、弱いからこうなってしまうだけなの、姫ちゃんが気にすることないのよ?」
あれから、日にちだけで見れば結構な月日が流れているのに、私は、私なりに前に向かって歩いてきたと思っていたのに、蓋を開けてみれば、一歩もその場から動けていなかった。
「お母さんも辛いことがあったんだよね、ごめんなさい、思い出させてしまって」
胸の中から悲しそうな声が聞こえる、この子は優しくないようで優しいのよね、人の痛みに敏感なのかもしれない、だからこそ、私の感情が揺り動かされたのかもしれないわね。
「ううん、いいのよ、ありがとう、貴女のおかげで心が、張り裂けそうな心が裂けずに保てているのよ?ありがとう、私の支えになってくれて」
ぎゅぅっとついつい、力強く抱きしめてしまう。感情の昂りに合わせてついつい、力が入ってしまう。
「うん、また、いつかでいいから話を聞かせてね」
うん、いつかその日が来たら話を聞いてね。



「それが、お母さんが求めてやまない研究のテーマだったんだね」



嗚呼、賢い貴女なら私の研究テーマと、今の状況から気が付いてしまうわよね、私が目指す真なる研究のテーマを…

そう

私が、昔から密かに研究しているテーマの一つ…

子を生す事

愛する人の子供を授かること

即ち

【騎士様との子供を授かることよ】

私が思い描く【幸せの家族】それが、私が掲げる、私が叶えたい研究のテーマよ…
騎士様と結ばれることが無くても、彼の子供を宿し育て、騎士様と想って、愛すればいい、それが、歪んだ愛だとわかっていても、研究せずにいられなかったのよ…

だからこそ、畜産の旦那さんが研究している人工授精の仕組みや概念、経験が欲しかった、だから、手を貸した。
騎士様から子供が出来ないという悩みに飛びついたのも、あわよくば、騎士様の精子を手に入れるチャンスだと感じ、逃すまいと手を貸した。

後は最後に協力者が欲しかった、私の卵子に騎士様の精子を確実に着床させることが出来る技能を持った人が欲しかった、その為には、倫理観とかそういうのよりも、己の研究心を満たす事だけを考える人が欲しかった、奥様ではダメだった、あの人はああ見えて人として正しい、踏み外していない、私の考えを理解できるとは思えなかった。
先輩もダメだ、人を殺すことに躊躇いが無いくせに、人として正しくあろうとしている、まぁ、人を殺すのに躊躇いがないのも理由があるから、その理由が痛みを長引かせない、救う手立てがないのであれば、やむなしという相手を思いやったある種の優しさからくるものだから、そんな優しい人に倫理に反する考えは共有できない。



だから、姫ちゃんに手を貸した



母親として満たされたいから、そういう欲求があるのも確かよ?でもね、一番の理由はこの子が持つ技術力の高さ、向上心の高さ、何よりも、倫理観とか人としての正しさとか、そういう部分が緩い、もしかしたら私以上に欠落している、そう感じたから、だから、私は、とことん彼女に寄り添い、この子を利用することだけを考えたのかもしれない。

でもね、今ならわかるわ、私、女としての部分はもう満たされてしまったのだと、騎士様と想いが通じ合った、あの瞬間に私の女としての未練はもうないのかもしれない。

そりゃ、騎士様がいないのは辛いわよ?苦しいわよ?私の全てだった、生きる道しるべだった、騎士様と出会たからこそ、私の人生が色づいたのは比喩じゃないわ…
今だって多くの色が失われている、多少は色が戻ってきたような気がするけれど、色が薄くてこれが何色なのか、わからないときがあるもの…

満たされて、今後も満たされることのない愛の欲求、その先にある母親としての欲求を、子を見守る慈愛の様な感情、それを満たしてくれるのが姫ちゃんなのよ。
たったの一か月ちょっと、ほんの一か月、濃厚な日々を過ごした、その結果、私はこの子の技術とかそういうのはもう、二の次になっているのだと、感じている、心の底からこの子の幸せを願っている、守りたいと思っている、それが寵愛の巫女がもつ加護からくる影響なのかもしれない

それでもいいの、こんなにも心が満たされる日々があるのだと知ってしまったら、私はもう、その先を必要としていないのだと知ってしまったから、感じてしまったから、私は、姫ちゃんの傍にいたい、出来れば、母親として傍に居たいのね、うん、そう、そうよ、私が思い描く【幸せの家族】そこに姫ちゃんが居て欲しい、私の家族として一緒にいて欲しいのね。

騎士様、これは、間違っていますか?私は、間違っているのでしょうか?

自然とネックレスを握りしめていた…それをみた姫ちゃんが
「貴女の願いは間違っていないよ?私だって同じだもの…」
ええ、そうね、貴女が母親に、お母様に、愛が体を焦がされているように、私もまた、騎士様に恋い焦がれている。

すこしだけ違うのは、貴女は死んだ人を救いたいと願っている。
私は、死んだ人を救えるとは思っていない、死んだ人の面影を幻影を求めているだけ

人の心って複雑でめんどうよね…本当に

だからこそ、寄り添えるのよね…

不思議ね、どこでどうなって、自分の心と向き合うような瞬間が来るなんて誰もわからないものなのね、急にがつんと殴られたような感覚よ本当。
でも、これで私は一歩だけ前に向かって足を出せたような気がするわね、そのきっかけをくれた姫ちゃんに、また、依存してしまいそうね。

嗚呼、そうか、世にいう子離れが出来ない親っていうのは、きっと、私みたいな人のことを言うのかもしれないわね。
私はそうならないように、姫ちゃんが育って、大きくなって独り立ちしても問題ない時期が来たら、少しは距離を置かないといけないわね。
この子の歩む人生に私が重荷に、ならないようにしないと、ね…

「ありがとう姫ちゃん」
ぎゅっと抱きしめなおすと
「こちらこそ、ありがとうお母さん」
ぎゅっと力強く抱き返される

お互いの利害が一致している、そんな関係じゃなくお互いを必要としている、そんな関係に私達は本当の家族の様に親子の様に成れた様な気がする。

その為にも、封印術式を完全なるものとして姫ちゃんの体に刻み込まないといけないわね。
掴んで見せるわ、導いて見せるわ、貴女に未来を与えたい、生きたって満足できるような日々を送らせてあげたい、私の邪な考え抜きで、純粋なる愛をもって、支えて見せる。


気が付くと姫ちゃんが眠りについたので、来る日に備えて魔力を練ってねってねって、徹底的に魔力濃度を高めないとね、騎士様…私を導いてください。

月に祈りを捧げてから、月明りのした、魔力を練る為の訓練を開始する。

心なしか、今日は調子がいい、誰かに見守られ傍にいるような感覚がする…

心境の変化がそう感じさせるのか、それとも、本当に、貴方が傍にいるのですか?

私にはどちらなのか、わからないけれど、貴方が傍に居てくれることを信じています、愛しています騎士様。



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