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とある人物達が歩んできた道 ~ 封印術式1 ~
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書物を読み漁りながら、姫ちゃんに魔力を注ぎ続ける日々、って、いってもね、衝撃の事実から一日しか経っていないですけどね!!
知識量だけなら、この大陸で右に出る人が居ない先輩に魔力枯渇症ってありますか?って質問を投げかけると、
「日常的に魔力を酷使するような人は王都に所属する王族直轄の研究所くらいしかいねぇんじゃねぇか?聞いたことがない症例だし、そもそも、魔力が何処から産まれてどの様に体内を廻っているのか、俺も、人体を解体して研究したけれど、魔力という物質を目で見る術が当時無かったし、俺が解剖していたのは全部死体だったから、わからねぇんだ、恐らくここじゃねぇかって推測されている臓器はあるんだ、あるんだが、確証がねぇなぁ…何か訳ありみてぇだな、お前の目に命が灯っているのがわかる、俺も方々を尽くしてみる」
先輩の状況を察する能力の高さには毎回驚かされるし、心強い、傍にいた奥様も呑気な声で私も調べてみるね!っと、言いながら渡される大量の瓶…
姫ちゃんって苦いの大丈夫かしら?…
子供って薬嫌いってのが、普通よね?…
素直に飲んでくれるのかしら?
そんなことを考えんながらも、手は自動的に蓋を開け一本丸々一気に飲みしていた…糞まずい…
日中もっていうか、常に姫ちゃんは私の目の届く範囲で行動してもらっている、姫ちゃんは姫ちゃんで自分の興味のあることに全力で、常に目を輝かせているし、周りの大人たちがこれできる?これはどうなの?ってどんどん、色んなものを渡すものだから、姫ちゃんのテンションは常に高く、笑顔が溢れ出ているし、声も気分上々で、全力で楽しそうだった。
今姫ちゃんの中で夢中になっているのが、馬車を改良する方法って感じだけど、馬車って改良するようなものなの?何が変わるの?研究するようなものなの?
私には姫ちゃんの考えは読み切れない、年相応の受け答えをするときもあれば、唐突に大人びた言葉使いをするときもあるし、もっと、幼い瞬間もある…
天才っていうのはそういうものなのだろうか?と、感じる時がある、一緒に過ごした日数は大した日数ではないが、毎日が発見だらけって感じ。
今なら、姫ちゃんが行動していた不可思議な行動もきっと、何か意味があるのだと思えれる、月を眺めて動かない時が合ったけれど、あれもきっと、何か意味があるような気がする。もしかしたら、今ならそれが何を意味しているのか教えてくれるような気がするので今夜あたり、聞いてみよう。
姫ちゃんが辛そうな表情をしているので、今日はお終い!っと、強引に作業を中断させ、部屋に連れていき、ベッドの上で昨日と同じように魔力を注いでいく。
魔力を可視化できる魔道具で見ると、やっぱり、姫ちゃんの周りには大量の魔力が放出されている、少し条件もわかってきた、姫ちゃんが術式を発動したり、考えを巡らせているときに魔力がより多く放出されている気がする…恐らく、無意識に魔力を放出してしまっているのだろう…
魔力を注ぎ終えるころには寝息も落ち着いて気持ちよさそうに寝ている、その間に、姫ちゃんから渡された始祖様の秘術に何か、応用できるものが無いか隈なく隅々まで読んでいこうとするのだけれど、めちゃくちゃ理論が難しく、何を言っているのか何を説明しているのか理解できないのが多い…
依り代だの、代償だの、物騒な言葉がある術式もある、想定される魔力量を考えると、私独りでは到底発動が出来ないものが数多くある…
始祖様が如何に凄い人物で伝説たる人物なのだと、読めば読むほど痛感してしまう。これ程までの秘術を単独で扱えるのなら…死の大地にいる獣全てを殺しつくしてから旅立って欲しかったわね!!
長い間集中して読んでいると喉が渇いてくるし、ちょっと疲れてきたので一息入れるために、ベッドに姫ちゃんを寝かしつけて、紅茶を用意して、椅子に座りながら空に浮かぶ月を見る。
自然と、紅茶を片手に、騎士様のネックレスを握りしめていた…月の裏側から私達を見守ってくれていることを感謝しながら、騎士様との会話を楽しむ…
「今宵は満月なのね、良い月じゃない」
声のする方向を見ると、いつもと雰囲気が違う姫ちゃんがこちらに向かって歩いてくる、そう、時折見せる、不思議な雰囲気…
「私も一杯、頂いてもよろしいかしら?」
その言葉を跳ね除ける気が湧き上がることは無く、自然と、彼女の為に紅茶を用意してしまう。
紅茶を用意して渡すと
「ふぅ、落ち着くわね、ありがとう、私の命を繋ぎ止めてくれて」
紅茶を飲みながら、窓際に腰を掛けるように体重を預け、落ち着いた雰囲気で空を見上げている、月明りで一瞬だけ見せた瞳に違和感を感じた
姫ちゃんって瞳の色って黒じゃないわよね?どうして、貴女の瞳は黒色をしているの?
あなたは…だれ?
私の視線に気が付いたのか、目の前にいる女性が口角を上げると
「流石、お母さん、直ぐに、最愛の娘の変化に気が付いてしまうっか…ええ、そうよ、私は貴女の知る人物で在って、人物ではないわ」
此方の、考えを見透かされた?心を読まれている?
「端的に言うわね、私達は寵愛の加護を通して産まれた意識よ」
…?
「正確には、私であって私ではないもの、表現が難しいわね、ループしているわけでもないし、パラレルワールドって、わけでもない、思念、ええそうね、それが一番しっくり来るわね」
遠い目をしながら月を見つめながら零れるように出てくる、彼女の口から出てくる言葉の意味がわからない、初めて聞く単語ばかり…
姫ちゃんが渡してくれた本にはそのような記述は何一つ書かれていなかった、この子にはまだまだ、何かありそうね…
「…時間が無いわね、紙とペンを借りるわよ」
彼女は机の上にある紙に膨大な量の術式を描いていく、更には、人体の形に合わせた、陣?の様なものを書き始める…
大量に術式が描かれた紙を渡すと同時に信じられない言葉が彼女の口から聞こえてくる
「触媒は、申し訳ないけれど、貴女の大好きな人が残した遺物…血液よ、お願いしてもいいかしら?」
この一言で何を指しているのか直ぐに理解する
どうして、私が騎士様の血液を保管しているのを知っているの?
「この封印術式は、完全ではないわ、今の私が保有する思念だと、ここまでが限界、でも、これさえあれば、私は…長く生きれる」
得体のしれない何かが姫ちゃんの体の中に眠っているの?巣くっているの?私の中にいるアレとおなじ?
身構えていると
「それも、そうよね、急に表れておかしなことを言えば誰だって、警戒するものね…お母様にそんな目で見られるのは、悲しいな・・・」
最後の俯いた表情を見て、私の直感が告げる、これは悪しき存在ではない、姫ちゃんだ、私が知る姫ちゃんであるのは間違いようがない、母親して何が出来る?決まっているじゃない…心が感じたままに体が動き出す
「!?」驚いた表情をしている、先の会話の流れから、抱きしめられるなんて思ってもいなかったのね。
気が付くと私は姫ちゃんを抱きしめていた
「貴女の存在が何かは今は問わないわ、だって、私の事をお母様なんて呼ぶのは姫ちゃんしか居ないもの、いつかきっと、ワケを話してね?そして、ありがとう、貴女を救う道を示してくれて、ありがとう、愛しているわ」
私の言葉に大人びた表情をしていた存在は優しく微笑み、此方こそ、貴女には救われてばっかりよっと呟いた後、腕の中で眠りについてしまった。
ベッドに寝かしつけて、書かれている術式に目を通す。
封印術式、名前からして危険極まりない響きじゃないの、それを実験もせずにしてもいいものなの?しかも触媒を…
そもそも、どうして私が
騎士様の血液を保存しているのを知っているの?一瞬、この街の人達なら私が遺骨を持っているんじゃないかって疑っているから、遺骨を考えたけれど、内容を見ると血液を触媒にするって書かれているから完全に騎士様の血液だと思われるし、本人からも血液って言っていたし…
流石に、いきなり、騎士様の血液を使うわけにはいかない、失敗するリスクも考えないと、それだったら、私の血液でもいいんじゃないの?
だってね、この書類には、条件として、血液に常人以上の魔力を保有しているってのが条件でしょ?っであれば、私のでも出来る筈じゃない。
完全ではなくても、多少効果があるのであれば、してみるべきじゃない?失敗した時は原因を究明して、魔力保持量が足らないのであれば、騎士様の血液を使えばいいはずだしね、まず、この陣が本当に魔力を封じ込めることが出来るのか、同じような性質である魔石を砕いて、服に刻んでみましょう、それを姫ちゃんに着てもらって効果があるのか確かめましょう。
そうと決まれば!時刻を見ると、かなり夜遅い…奥様を叩き起こして相談したいけれど、流石に、遅すぎる、遅すぎるけど…
姫ちゃんの命と奥様と先輩の機嫌、どちらを取るって、そんなの、考えるまでもなく決まっているじゃないの、さぁ、怒られに行きましょう
そして、先輩には、包み隠さず相談しましょう、姫ちゃんの神童としての活躍を期待しているのは先輩も奥様も一緒のはず、姫ちゃんのためなら怒りはしないだろう
先輩と奥様の愛の巣に訪れてノックするとドタドタと慌てながらも走ってくる音がドアの外まで聞こえてくる、きっと先輩が飛び起きてきたのだろう。
ドアを開けると同時に「急患か!?」焦った様な声が聞こえてくる…ぁ、そうだよね、この時間に起こすとそうなるよね
私の姿を見て直ぐに白衣を取りに行き戻ってきた開口一番「患者は誰だ!?」患者の名前とか情報を聞き、少しでも早く判断できるように脳を興奮させ頭の回転を速めようとしている先輩に、一応、急患である姫ちゃんのことをその場で先輩を宥めるように説明すると
「なるほどなぁ、急患だけど、対処済み、その後の緊急を要する相談ってわけか…急患だな、中に入れ、姫ちゃんを救うぞ」
少ない情報だけで、私を信じて、怒りもせずに受け止めてくれる、本当にこの人は純粋な医者だ、王都にいればかなりの地位に成れるというのに、ここに居てくれて頼もしいといつも、痛感しています。
姫ちゃんの症状を伝えると、先輩もそんな症例を聞いたことも無いみたいで頭を抱えている、魔力を放出する臓器っていうのがそもそも、何処なのかわからない、わからない以上薬を処方しようがないし、外的術式で放出する器官を今後、魔術が一切合切使えなくなる可能性が出てくるが、死ぬ方がよくないので、切除する方針も考えてくれたけれど、どの臓器を切ればいいのかわからないので、この方針は間違っている。
奥様も目を覚ます為に白湯を飲んだ後は、自称姫ちゃんが用意してくれた封印術式を見せてみると、必死に食い入るように読み込んでいく。
私が秘密裏に研究している内容には触れていないので、奥様に見せても問題ないと思っている、奥様には、試験的に魔石を用いて服にその陣を編み込んで発動するのか確認したいのですが、ご協力お願いできますかと伝えると「う、うん?まず、読んでからでいい?」鼻息を荒くしている、かなり集中している様子だったので、医学的意見を先輩と交換していく。
姫ちゃんの一族がそういった病で悩まされていることも伝えているので、遺伝性のもの、つまりは特殊体質であることも考慮して、医学的な話を進めていく。
私と先輩の研究の末にわかったのが、血液が全身に魔力の大元を運んでいる説があると仮定していたので、血液を全部入れ替えてみるかとか、造血作用があるのが骨だと思われるから骨を全部入れ替えてみるかとか、現時点では実現不可能な空想レベルの段階も話し合う。
最終的に行き着いたのが、脳みそ以外全部交換するか!!っという、夢物語で話が決着した…
私達の話を変な方向に留めてくれそうな人はいないし、奥様は、私達の議論?討論?医療談義?が終わるころにようやく読み終わったみたいで奥様に確認すると、今から材料集めて肌着を作ってくれることに、この夫婦は本当に頼りになる。
先輩もありとあらゆる文献を買いそろえたり、古い伝手を使って、王都にある医学関連の本を取り寄せてみるから、姫ちゃんの心のケアを怠るなよ!っと、激もいれてもらい、自室に戻ると姫ちゃんは気持ちよさそうに寝ていた。
机の上に、見知らぬメモが置いてあったので手に取り見てみると【読むのならまず、一番新しい本にしなさい】と、掟破りの内容だった、こういう歴史書っていうのは、古い順から追うものじゃないの?試しに一番、新しめの本を開いてみると、内容は姫ちゃんが何年にも渡って書かれている日記の様で日誌の様な…研究ノートだった。
最初のころは可愛い研究内容だったけれど、一貫して、ある内容を求めて研究し研鑽されているのがわかる…
時空干渉術式
随所に似たような名前がちりばめられている、これが姫ちゃんが生涯にわたって研究すると決められたテーマ?時空って何だろう?
時空についても記述されていて、内容が空想レベルのものだとわかるが、私達にとって空想こそ起源であると提唱した人がいるから馬鹿に出来ない。
時空に干渉することによって、過去も未来も観測できて、それに干渉することにより、過去も未来も現在も全てに影響を与え、己が望んだ未来へと至る学問ってところかしら?
恐ろしいことに姫ちゃんはこの術式の理論、成功している…
書かれている内容が本当であれば、彼女は…時空に干渉する術を得ていることになる。
過去に対してある実験をしている、空っぽの箱を用意して、蓋をする、術式を発動した後に、蓋を開けると、中にペンが入っていた…
術式の内容が過去の私に空っぽの箱の中にペンを入れて蓋をするように思念を飛ばすという内容だった、蓋を開けてから姫ちゃんは自分で蓋を閉める前にペンを入れたという記憶が鮮明に残っている、だが、術式を発動する前の状況を細かく記載してある内容にはペンをいれないっと書かれている…
過去の実績と未来の実績が入り混じり、干渉されたと結果が書かれている…
蓋を開けることによって、思念を飛ばして過去を改変した内容を蓋を開けるというきっかけを元にありもしない記憶が干渉されて改善される…内容が難しく混乱しそうになるが、姫ちゃんが行った実験はこういうことだよね?
1・絶対に書かれた内容を守るための作業工程を書いた紙、その通りに空っぽの箱を用意して、蓋を閉じるだけっという内容を実行する。
2・その後に、過去に干渉する術式を描いた陣に魔力を注いで発動して、過去の自分自身に絶対に守らないといけない内容を破らせる、箱の中にペンをいれるという内容を過去の自分に実行させる
3・結果、蓋を開けると、空っぽの箱であるはずなのに、ペンが入っていて、蓋を開けた瞬間に、自分が箱にペンをいれたのだという有りもしない記憶が湧いて出てくる
発動した術式もしっかりと発動した痕跡があり、魔力が何かに消費されたという確たる証拠がある。
絶対的な確証は無いが、過去に干渉することは可能である
…この研究内容を読んで、気が付かない程、私は、愚かで愚者ではない。
自称姫ちゃんは、未来の存在である可能性が非常に高い、問題はどこの時代の姫ちゃんなのか、どの未来にいる姫ちゃんが思念を飛ばしているのか、それだけしか情報が無くても、これを読んだ今なら、私は確信できる、アレは、姫ちゃんだ、どこか遠い未来の姫ちゃん
今も生きるのが困難な状況である姫ちゃんの未来の声、つまり、封印術式が成功しているということになる…
ここまで、御膳立てされてしまったら使うしかないじゃないの、騎士様の血液を…
干渉して来たってことは、封印術式を用いたからこそ、未来の姫ちゃんが干渉できているってことになる。
つまり、封印術式を構築せず、発動させなければ、姫ちゃんは死んでしまう。
それを避けるために、きっと、死ぬ前の持てる全てを使って過去の自分に干渉しているのだと考えてもいいのでしょうね。
未来の姫ちゃんだったらより一層、術式への理解度が高くなっているだろうし、可能だと、感じさせてくれる。
だからこそ、現時点で知りえぬ情報である騎士様の血を私が保有していることを知っているというのも納得できるわね。
辻褄が会い過ぎて、御膳立てされすぎて、怖い部分もあるけれど、未来の娘の言葉を信じるのも母親として当然よね。
まさか、月に一度の健康診断で提出してもらって、余った血液をちょくちょく冷凍保存しておいた大量の血液がここで生きてくるなんて想像もしていなかった…
どうして保有しているのかって?決まってるでしょ?だって、騎士様の一部だもの、欲しいと思っちゃうの、だから、健康診断の時にちょ~っと他の人よりも多めに抜き取っていたなんて秘密よ?
それにね、信用にたる一文がね、ずっとずっとず、、、、っと!!書かれているのですから
最初は、大好きからだった…
日記のような部分の最後に【お母様大好き】っていう文字がある、書くのが苦手なのか初めてなのか、拙い字で日記の最後に書かれているのよ?それも毎回、締めに書かれているの。
幼い時から想い続けている。この、一言に嘘があると思う?たったの1行だけど、それが毎回書いてあるの。
最初の方は大好き…次に変化したのが、助けたい…、次は、一緒に居たい…傍にいて欲しい…会いたい…歌を歌って欲しい…抱きしめて欲しい…絵本を読んで欲しい…
その次からはしばらくの間は何も書かれていなかった、けど、ある日を境に
もう一度、お母様に会いたいと力強く書かれている。そこからも毎日、毎日、願いは綴らている・・・
そして最後に書かれている言葉がとても力強く描かれていた
絶対にお母様を救ってみせる
この子の願いはただ一つ、お母様に会いたいのね、失ってしまった過去を失わずに済む方法をずっと探しているのね・・・
その為に、時空に干渉する方法を探し続けている、未来でお母様を救うための術を得た時に、過去の自分にその術を渡す為に・・・
こんな純粋な想いを否定するなんて、私には、出来ないわ。出来るわけがない。子が母を想うように、母が子を想うのよ。
そんな純然たる願い、否定する奴なんていないわ…この子もまた愛に飢え、狂ったのね。
私と一緒じゃない…尚更、より一層深い所から、親近感が湧きあがってくる、お互いが一目見たときに感じたのはお互い愛に狂った人生を歩んできたからね。
知識量だけなら、この大陸で右に出る人が居ない先輩に魔力枯渇症ってありますか?って質問を投げかけると、
「日常的に魔力を酷使するような人は王都に所属する王族直轄の研究所くらいしかいねぇんじゃねぇか?聞いたことがない症例だし、そもそも、魔力が何処から産まれてどの様に体内を廻っているのか、俺も、人体を解体して研究したけれど、魔力という物質を目で見る術が当時無かったし、俺が解剖していたのは全部死体だったから、わからねぇんだ、恐らくここじゃねぇかって推測されている臓器はあるんだ、あるんだが、確証がねぇなぁ…何か訳ありみてぇだな、お前の目に命が灯っているのがわかる、俺も方々を尽くしてみる」
先輩の状況を察する能力の高さには毎回驚かされるし、心強い、傍にいた奥様も呑気な声で私も調べてみるね!っと、言いながら渡される大量の瓶…
姫ちゃんって苦いの大丈夫かしら?…
子供って薬嫌いってのが、普通よね?…
素直に飲んでくれるのかしら?
そんなことを考えんながらも、手は自動的に蓋を開け一本丸々一気に飲みしていた…糞まずい…
日中もっていうか、常に姫ちゃんは私の目の届く範囲で行動してもらっている、姫ちゃんは姫ちゃんで自分の興味のあることに全力で、常に目を輝かせているし、周りの大人たちがこれできる?これはどうなの?ってどんどん、色んなものを渡すものだから、姫ちゃんのテンションは常に高く、笑顔が溢れ出ているし、声も気分上々で、全力で楽しそうだった。
今姫ちゃんの中で夢中になっているのが、馬車を改良する方法って感じだけど、馬車って改良するようなものなの?何が変わるの?研究するようなものなの?
私には姫ちゃんの考えは読み切れない、年相応の受け答えをするときもあれば、唐突に大人びた言葉使いをするときもあるし、もっと、幼い瞬間もある…
天才っていうのはそういうものなのだろうか?と、感じる時がある、一緒に過ごした日数は大した日数ではないが、毎日が発見だらけって感じ。
今なら、姫ちゃんが行動していた不可思議な行動もきっと、何か意味があるのだと思えれる、月を眺めて動かない時が合ったけれど、あれもきっと、何か意味があるような気がする。もしかしたら、今ならそれが何を意味しているのか教えてくれるような気がするので今夜あたり、聞いてみよう。
姫ちゃんが辛そうな表情をしているので、今日はお終い!っと、強引に作業を中断させ、部屋に連れていき、ベッドの上で昨日と同じように魔力を注いでいく。
魔力を可視化できる魔道具で見ると、やっぱり、姫ちゃんの周りには大量の魔力が放出されている、少し条件もわかってきた、姫ちゃんが術式を発動したり、考えを巡らせているときに魔力がより多く放出されている気がする…恐らく、無意識に魔力を放出してしまっているのだろう…
魔力を注ぎ終えるころには寝息も落ち着いて気持ちよさそうに寝ている、その間に、姫ちゃんから渡された始祖様の秘術に何か、応用できるものが無いか隈なく隅々まで読んでいこうとするのだけれど、めちゃくちゃ理論が難しく、何を言っているのか何を説明しているのか理解できないのが多い…
依り代だの、代償だの、物騒な言葉がある術式もある、想定される魔力量を考えると、私独りでは到底発動が出来ないものが数多くある…
始祖様が如何に凄い人物で伝説たる人物なのだと、読めば読むほど痛感してしまう。これ程までの秘術を単独で扱えるのなら…死の大地にいる獣全てを殺しつくしてから旅立って欲しかったわね!!
長い間集中して読んでいると喉が渇いてくるし、ちょっと疲れてきたので一息入れるために、ベッドに姫ちゃんを寝かしつけて、紅茶を用意して、椅子に座りながら空に浮かぶ月を見る。
自然と、紅茶を片手に、騎士様のネックレスを握りしめていた…月の裏側から私達を見守ってくれていることを感謝しながら、騎士様との会話を楽しむ…
「今宵は満月なのね、良い月じゃない」
声のする方向を見ると、いつもと雰囲気が違う姫ちゃんがこちらに向かって歩いてくる、そう、時折見せる、不思議な雰囲気…
「私も一杯、頂いてもよろしいかしら?」
その言葉を跳ね除ける気が湧き上がることは無く、自然と、彼女の為に紅茶を用意してしまう。
紅茶を用意して渡すと
「ふぅ、落ち着くわね、ありがとう、私の命を繋ぎ止めてくれて」
紅茶を飲みながら、窓際に腰を掛けるように体重を預け、落ち着いた雰囲気で空を見上げている、月明りで一瞬だけ見せた瞳に違和感を感じた
姫ちゃんって瞳の色って黒じゃないわよね?どうして、貴女の瞳は黒色をしているの?
あなたは…だれ?
私の視線に気が付いたのか、目の前にいる女性が口角を上げると
「流石、お母さん、直ぐに、最愛の娘の変化に気が付いてしまうっか…ええ、そうよ、私は貴女の知る人物で在って、人物ではないわ」
此方の、考えを見透かされた?心を読まれている?
「端的に言うわね、私達は寵愛の加護を通して産まれた意識よ」
…?
「正確には、私であって私ではないもの、表現が難しいわね、ループしているわけでもないし、パラレルワールドって、わけでもない、思念、ええそうね、それが一番しっくり来るわね」
遠い目をしながら月を見つめながら零れるように出てくる、彼女の口から出てくる言葉の意味がわからない、初めて聞く単語ばかり…
姫ちゃんが渡してくれた本にはそのような記述は何一つ書かれていなかった、この子にはまだまだ、何かありそうね…
「…時間が無いわね、紙とペンを借りるわよ」
彼女は机の上にある紙に膨大な量の術式を描いていく、更には、人体の形に合わせた、陣?の様なものを書き始める…
大量に術式が描かれた紙を渡すと同時に信じられない言葉が彼女の口から聞こえてくる
「触媒は、申し訳ないけれど、貴女の大好きな人が残した遺物…血液よ、お願いしてもいいかしら?」
この一言で何を指しているのか直ぐに理解する
どうして、私が騎士様の血液を保管しているのを知っているの?
「この封印術式は、完全ではないわ、今の私が保有する思念だと、ここまでが限界、でも、これさえあれば、私は…長く生きれる」
得体のしれない何かが姫ちゃんの体の中に眠っているの?巣くっているの?私の中にいるアレとおなじ?
身構えていると
「それも、そうよね、急に表れておかしなことを言えば誰だって、警戒するものね…お母様にそんな目で見られるのは、悲しいな・・・」
最後の俯いた表情を見て、私の直感が告げる、これは悪しき存在ではない、姫ちゃんだ、私が知る姫ちゃんであるのは間違いようがない、母親して何が出来る?決まっているじゃない…心が感じたままに体が動き出す
「!?」驚いた表情をしている、先の会話の流れから、抱きしめられるなんて思ってもいなかったのね。
気が付くと私は姫ちゃんを抱きしめていた
「貴女の存在が何かは今は問わないわ、だって、私の事をお母様なんて呼ぶのは姫ちゃんしか居ないもの、いつかきっと、ワケを話してね?そして、ありがとう、貴女を救う道を示してくれて、ありがとう、愛しているわ」
私の言葉に大人びた表情をしていた存在は優しく微笑み、此方こそ、貴女には救われてばっかりよっと呟いた後、腕の中で眠りについてしまった。
ベッドに寝かしつけて、書かれている術式に目を通す。
封印術式、名前からして危険極まりない響きじゃないの、それを実験もせずにしてもいいものなの?しかも触媒を…
そもそも、どうして私が
騎士様の血液を保存しているのを知っているの?一瞬、この街の人達なら私が遺骨を持っているんじゃないかって疑っているから、遺骨を考えたけれど、内容を見ると血液を触媒にするって書かれているから完全に騎士様の血液だと思われるし、本人からも血液って言っていたし…
流石に、いきなり、騎士様の血液を使うわけにはいかない、失敗するリスクも考えないと、それだったら、私の血液でもいいんじゃないの?
だってね、この書類には、条件として、血液に常人以上の魔力を保有しているってのが条件でしょ?っであれば、私のでも出来る筈じゃない。
完全ではなくても、多少効果があるのであれば、してみるべきじゃない?失敗した時は原因を究明して、魔力保持量が足らないのであれば、騎士様の血液を使えばいいはずだしね、まず、この陣が本当に魔力を封じ込めることが出来るのか、同じような性質である魔石を砕いて、服に刻んでみましょう、それを姫ちゃんに着てもらって効果があるのか確かめましょう。
そうと決まれば!時刻を見ると、かなり夜遅い…奥様を叩き起こして相談したいけれど、流石に、遅すぎる、遅すぎるけど…
姫ちゃんの命と奥様と先輩の機嫌、どちらを取るって、そんなの、考えるまでもなく決まっているじゃないの、さぁ、怒られに行きましょう
そして、先輩には、包み隠さず相談しましょう、姫ちゃんの神童としての活躍を期待しているのは先輩も奥様も一緒のはず、姫ちゃんのためなら怒りはしないだろう
先輩と奥様の愛の巣に訪れてノックするとドタドタと慌てながらも走ってくる音がドアの外まで聞こえてくる、きっと先輩が飛び起きてきたのだろう。
ドアを開けると同時に「急患か!?」焦った様な声が聞こえてくる…ぁ、そうだよね、この時間に起こすとそうなるよね
私の姿を見て直ぐに白衣を取りに行き戻ってきた開口一番「患者は誰だ!?」患者の名前とか情報を聞き、少しでも早く判断できるように脳を興奮させ頭の回転を速めようとしている先輩に、一応、急患である姫ちゃんのことをその場で先輩を宥めるように説明すると
「なるほどなぁ、急患だけど、対処済み、その後の緊急を要する相談ってわけか…急患だな、中に入れ、姫ちゃんを救うぞ」
少ない情報だけで、私を信じて、怒りもせずに受け止めてくれる、本当にこの人は純粋な医者だ、王都にいればかなりの地位に成れるというのに、ここに居てくれて頼もしいといつも、痛感しています。
姫ちゃんの症状を伝えると、先輩もそんな症例を聞いたことも無いみたいで頭を抱えている、魔力を放出する臓器っていうのがそもそも、何処なのかわからない、わからない以上薬を処方しようがないし、外的術式で放出する器官を今後、魔術が一切合切使えなくなる可能性が出てくるが、死ぬ方がよくないので、切除する方針も考えてくれたけれど、どの臓器を切ればいいのかわからないので、この方針は間違っている。
奥様も目を覚ます為に白湯を飲んだ後は、自称姫ちゃんが用意してくれた封印術式を見せてみると、必死に食い入るように読み込んでいく。
私が秘密裏に研究している内容には触れていないので、奥様に見せても問題ないと思っている、奥様には、試験的に魔石を用いて服にその陣を編み込んで発動するのか確認したいのですが、ご協力お願いできますかと伝えると「う、うん?まず、読んでからでいい?」鼻息を荒くしている、かなり集中している様子だったので、医学的意見を先輩と交換していく。
姫ちゃんの一族がそういった病で悩まされていることも伝えているので、遺伝性のもの、つまりは特殊体質であることも考慮して、医学的な話を進めていく。
私と先輩の研究の末にわかったのが、血液が全身に魔力の大元を運んでいる説があると仮定していたので、血液を全部入れ替えてみるかとか、造血作用があるのが骨だと思われるから骨を全部入れ替えてみるかとか、現時点では実現不可能な空想レベルの段階も話し合う。
最終的に行き着いたのが、脳みそ以外全部交換するか!!っという、夢物語で話が決着した…
私達の話を変な方向に留めてくれそうな人はいないし、奥様は、私達の議論?討論?医療談義?が終わるころにようやく読み終わったみたいで奥様に確認すると、今から材料集めて肌着を作ってくれることに、この夫婦は本当に頼りになる。
先輩もありとあらゆる文献を買いそろえたり、古い伝手を使って、王都にある医学関連の本を取り寄せてみるから、姫ちゃんの心のケアを怠るなよ!っと、激もいれてもらい、自室に戻ると姫ちゃんは気持ちよさそうに寝ていた。
机の上に、見知らぬメモが置いてあったので手に取り見てみると【読むのならまず、一番新しい本にしなさい】と、掟破りの内容だった、こういう歴史書っていうのは、古い順から追うものじゃないの?試しに一番、新しめの本を開いてみると、内容は姫ちゃんが何年にも渡って書かれている日記の様で日誌の様な…研究ノートだった。
最初のころは可愛い研究内容だったけれど、一貫して、ある内容を求めて研究し研鑽されているのがわかる…
時空干渉術式
随所に似たような名前がちりばめられている、これが姫ちゃんが生涯にわたって研究すると決められたテーマ?時空って何だろう?
時空についても記述されていて、内容が空想レベルのものだとわかるが、私達にとって空想こそ起源であると提唱した人がいるから馬鹿に出来ない。
時空に干渉することによって、過去も未来も観測できて、それに干渉することにより、過去も未来も現在も全てに影響を与え、己が望んだ未来へと至る学問ってところかしら?
恐ろしいことに姫ちゃんはこの術式の理論、成功している…
書かれている内容が本当であれば、彼女は…時空に干渉する術を得ていることになる。
過去に対してある実験をしている、空っぽの箱を用意して、蓋をする、術式を発動した後に、蓋を開けると、中にペンが入っていた…
術式の内容が過去の私に空っぽの箱の中にペンを入れて蓋をするように思念を飛ばすという内容だった、蓋を開けてから姫ちゃんは自分で蓋を閉める前にペンを入れたという記憶が鮮明に残っている、だが、術式を発動する前の状況を細かく記載してある内容にはペンをいれないっと書かれている…
過去の実績と未来の実績が入り混じり、干渉されたと結果が書かれている…
蓋を開けることによって、思念を飛ばして過去を改変した内容を蓋を開けるというきっかけを元にありもしない記憶が干渉されて改善される…内容が難しく混乱しそうになるが、姫ちゃんが行った実験はこういうことだよね?
1・絶対に書かれた内容を守るための作業工程を書いた紙、その通りに空っぽの箱を用意して、蓋を閉じるだけっという内容を実行する。
2・その後に、過去に干渉する術式を描いた陣に魔力を注いで発動して、過去の自分自身に絶対に守らないといけない内容を破らせる、箱の中にペンをいれるという内容を過去の自分に実行させる
3・結果、蓋を開けると、空っぽの箱であるはずなのに、ペンが入っていて、蓋を開けた瞬間に、自分が箱にペンをいれたのだという有りもしない記憶が湧いて出てくる
発動した術式もしっかりと発動した痕跡があり、魔力が何かに消費されたという確たる証拠がある。
絶対的な確証は無いが、過去に干渉することは可能である
…この研究内容を読んで、気が付かない程、私は、愚かで愚者ではない。
自称姫ちゃんは、未来の存在である可能性が非常に高い、問題はどこの時代の姫ちゃんなのか、どの未来にいる姫ちゃんが思念を飛ばしているのか、それだけしか情報が無くても、これを読んだ今なら、私は確信できる、アレは、姫ちゃんだ、どこか遠い未来の姫ちゃん
今も生きるのが困難な状況である姫ちゃんの未来の声、つまり、封印術式が成功しているということになる…
ここまで、御膳立てされてしまったら使うしかないじゃないの、騎士様の血液を…
干渉して来たってことは、封印術式を用いたからこそ、未来の姫ちゃんが干渉できているってことになる。
つまり、封印術式を構築せず、発動させなければ、姫ちゃんは死んでしまう。
それを避けるために、きっと、死ぬ前の持てる全てを使って過去の自分に干渉しているのだと考えてもいいのでしょうね。
未来の姫ちゃんだったらより一層、術式への理解度が高くなっているだろうし、可能だと、感じさせてくれる。
だからこそ、現時点で知りえぬ情報である騎士様の血を私が保有していることを知っているというのも納得できるわね。
辻褄が会い過ぎて、御膳立てされすぎて、怖い部分もあるけれど、未来の娘の言葉を信じるのも母親として当然よね。
まさか、月に一度の健康診断で提出してもらって、余った血液をちょくちょく冷凍保存しておいた大量の血液がここで生きてくるなんて想像もしていなかった…
どうして保有しているのかって?決まってるでしょ?だって、騎士様の一部だもの、欲しいと思っちゃうの、だから、健康診断の時にちょ~っと他の人よりも多めに抜き取っていたなんて秘密よ?
それにね、信用にたる一文がね、ずっとずっとず、、、、っと!!書かれているのですから
最初は、大好きからだった…
日記のような部分の最後に【お母様大好き】っていう文字がある、書くのが苦手なのか初めてなのか、拙い字で日記の最後に書かれているのよ?それも毎回、締めに書かれているの。
幼い時から想い続けている。この、一言に嘘があると思う?たったの1行だけど、それが毎回書いてあるの。
最初の方は大好き…次に変化したのが、助けたい…、次は、一緒に居たい…傍にいて欲しい…会いたい…歌を歌って欲しい…抱きしめて欲しい…絵本を読んで欲しい…
その次からはしばらくの間は何も書かれていなかった、けど、ある日を境に
もう一度、お母様に会いたいと力強く書かれている。そこからも毎日、毎日、願いは綴らている・・・
そして最後に書かれている言葉がとても力強く描かれていた
絶対にお母様を救ってみせる
この子の願いはただ一つ、お母様に会いたいのね、失ってしまった過去を失わずに済む方法をずっと探しているのね・・・
その為に、時空に干渉する方法を探し続けている、未来でお母様を救うための術を得た時に、過去の自分にその術を渡す為に・・・
こんな純粋な想いを否定するなんて、私には、出来ないわ。出来るわけがない。子が母を想うように、母が子を想うのよ。
そんな純然たる願い、否定する奴なんていないわ…この子もまた愛に飢え、狂ったのね。
私と一緒じゃない…尚更、より一層深い所から、親近感が湧きあがってくる、お互いが一目見たときに感じたのはお互い愛に狂った人生を歩んできたからね。
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