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とある人物が歩んできた道 ~ デッドライン 2 ~
しおりを挟むその後も、行軍の仕方が非常に悪く、敵との遭遇率が極めて高い、当然戦闘があれば、兵士の練度が低すぎるために負傷率も極めて高い。
日が暮れても行軍するのじゃないかと不安に思っていたが、夕暮れ時になっていきなり糞王子が座り込んで何事かと思ったら、どうやら疲れ果ててしまってもう一歩も歩けないっと我儘を言い始めた様子。
騎士様って実はすごく耳がいいのかな?兜を被りながらよくあの距離の会話を聞き取れるね…
やっぱり私の失言全部聞き取れてたんじゃないのー?いつか、ベッドの上でとっちめてあげないとね!
なので、突如野営の準備を始めるのだけれど、正気だろうか?
焚火をするっていう愚かな行為をする、ここが普通の大地であれば、一向に構わない正しい行為だと思える。
見渡してほしいここが普通ではなく死の大地であることを失念しないでいただきたい。
騎士様曰く、こんな平原のど真ん中で焚火は危険すぎる行為だね、敵を引き寄せるだけだからご法度らしい。
森の中とかであれば、火の光が無いと逆に危ない。だけど、ここは森の中ではなく平原。
今日のように、月夜で周りが見えるくらい明るい夜であれば、出来れば、火をつけずに戦士同士背中を合わせて休息をとるのが基本。
野生の獣であれば火を恐れるが、死の大地の獣たちは焚火如きの弱い火であれば、恐れない。
逆にこのだだっ広い見渡せる平原で高原を大地に灯すっということは遠い場所からでも、そこに人がいると教えているようなもの
糞王子一団はここが死の大地であると忘れているのか悠々とテントを組み立てはじめ、更には、鎧を脱いで貴重な水をタオルに湿らせ体をふき始める
こいつらはピクニックにでも来たのか?全滅するぞっと、戦士の一人が呟くのが聞こえる、その呟きに全員が納得している。
王都の学生たちでもここまで愚かな行動はしない。
戦士たちがこの後、確実に、乱戦になると判断し、今のうちに栄養補給のための丸薬を口にする。
騎士様率いる戦士一団が黒くて丸い意味の分からない貧しい食事を食べているのを、糞王子が率いる一団が、あんなのを食べてやがる!あいつらは人じゃねぇなぁってこちらを指さして笑いながら焚火で肉を焼いたりしている。
当然、警戒するための兵士はいない、全員が鎧を脱いで楽しそうに食事をし始める、一部のやつはお酒まで飲み始めている。よくよく見るとお酒を飲み始めたのは、私の体を舐め回すように見てた殺す予定のやつだ。
余りにも愚かな行為すぎて、誰も何も突っ込もうともしない、後方に待機している補給部隊も唖然としていた。
補給部隊も野営するのだと判断し、敵に見つからないようにする為に、天然の草で覆った黒いマントを被って息を潜めていた。
補給部隊の全員が望遠鏡を装備しているので、王子一同の愚かな行為を見て、この一帯、広範囲で戦場になると判断し、騎士様に一瞬だけ光を出す魔道具で合図を送り、戦闘に巻き込まれない為に後方へと移動し、戦闘が終わるまで息を潜める。
大きな大きな咆哮が聞こえた
この声を聴いた騎士様が一気に警戒態勢を強くする。小声で「最悪だ」っと呟いたのが聞こえた、
騎士様が私に「今すぐ、後続のほきゅぶ・・・いえ、絶対に前に出ないでください」補給部隊が後方に下がっている距離を見て、安全にたどり着けない距離になっていると判断する。
私も、その指示に従い、出来る限り動かない、でも、もしも、負傷者が出ればすぐに助けれるように身構える。
多少の兵装は持ってきているけれど、私のような非戦闘員が戦える相手ではない。
だって、こちらに向かって大きく跳躍してくる巨体、その巨体がちょうど背に月を背負っている。
月明りに照らされる、あのシルエットは二足歩行タイプ・・・・
もっともっと、奥地であれば出会っていてもおかしくない出来る限り遭遇したくない相手に初日で戦うことになるとは運が悪いというべきか、なるべくして起こったイベントなのか…
死闘が始まる。騎士様ほどの戦略眼を持っていない私でもわかる、騎士様が居なければ糞王子の一団はここで壊滅するだろう。
飛来してきた二足歩行タイプはその勢いのまま糞王子の一団に突っ込む、その衝撃で数多くの人が180度、見当たせる範囲全てに吹き飛ぶ。
上空に吹き飛ばされた人は大地に叩きつけられて絶命する、二足歩行タイプの直撃を受けた人は肉片となって辺り一面に弾け飛ぶ、衝撃で横に飛ばされた人は遥か彼方まで平原を転がりながら吹っ飛んでいく、吹っ飛ばされた先に他の獣がいなければ、生きてるだろうが、腕や足、ろっ骨などが確実に負傷しているだろう。
それ程までの衝撃だった。
土煙が無くなるころには一段の8割が全滅しているのが見て取れる。
糞王子は?っち、生きてるか、あの一撃で死んでくれていればよかったのに。悪運が強い。
いや、糞王子の近くで人が倒れているのを見る限り衝撃から糞王子を守るために前に立って肉壁になる勇敢な判断が出来る人がいたのだろう。
その人が糞王子を守護するための肉壁となったおかげで無事だったってわけね。
糞王子も何が起きたのかわかっていないみたいで、その場で動かないでじっとしている
騎士様はこの状態でどう動くのだろうか?迷わず敵に向かって走っていく、そうだよね、アレを助ける云々じゃなく、二足歩行を放置していたら確実にこちらもやられる。
攻撃される前に仕留めるつもりだ。
騎士様が真正面から敵に向かっていく、巨躯の女性は左翼、坊や右翼を担当しているみたいで、三方向から少しの時間差で攻めるフォーメーション
騎士様が二足歩行の前に出るや否や盾を使って勢いそのままにぶつかる
騎士様の重み+駆け出した力+腕力による攻撃が当たることによって、ある目的が達成される。
それは、敵が次の動きをさせないための動きを抑え込むことを目的とした一撃だからだ、当然、この一撃によって猿も一瞬だけ動きがとまる
動きがとまった瞬間に、敵から見えにくい騎士様の右後ろから、坊やが槍によって猿のわき腹を狙う様に真っすぐに槍を突き出す
猿が槍に差されないように素早く坊やの槍先を手で掴む。
普通であれば抜き身刃をあの速度で突けば指何て綺麗に切れてしまってとれてしまうが、相手はあの二足歩行、簡単に槍を掴むことが出来るようだ。
だが、これによって敵の腕は騎士様の盾、坊やの槍によって塞がれている、その隙を逃すことなく巨躯の女性が手に持っている大きな大きな斧と槌が一体化した彼女しか手軽に扱えない重量級の武器を持った状態で軽く飛び上がり、
自身の重み+斧の重みを乗せ、槌の部分で猿の頭を上空から大地に向かって振り下ろす、鈍い音が辺り一面に広がったことから、確実に猿の頭に当たったのがわかる。
音が聞こえたと思ったら即座に、新しく大地に巨人でも降り立ったのかのようなすさまじい音が響き渡るので物凄い勢いで敵の頭が地面に打ち付けられたのだとわかる。
あの衝撃で、頭を槌によって地面に打ち付けられればどんな生き物であれ、頭部は弾け飛ぶように粉砕される、高い処から床に落とした卵のようにぐちゃっと割れているだろう
そう、相手が普通であればだ。視界に映る敵の頭は圧殺されていない、あの衝撃を受けてなお、形が綺麗なまま留めている。
倒れた敵に向かって坊やが素早く槍を敵が起き上がらないように、わき腹から地面に向かって突きやす、体を地面から離させないためだ。
騎士様も手早く片手剣を抜き、敵の首に向けて全体重を乗せた一撃を振り下ろすと敵の急所は頑丈に作らているのか、首と胴体を切り離すことはできなかったが、皮膚が裂け切れ目が出来る。
敵の皮膚に切れ目を入れると同時に片手剣を首から瞬時に動かす。
その動きを見て、続けざまに、巨躯の女性が得物を天に掲げると同時に斧の部分で敵の首めがけて振り下ろす、狙う場所は騎士様が片手剣によって一撃を入れ切れ目が少しできた場所に的確に振り下ろす。
これでようやく、敵の首が天空へと飛ぶ
飛んだ敵の首は綺麗に放物線を描き糞王子の足元にぼでっと大きな音を出しながら落ちる
その飛んできた首を見て糞王子が小さな悲鳴をあげていた。
戦士一団が、瞬時に動き、騎士様達の周りを一部分だけ開けた状態で囲み、先ほどの音で近寄ってきた獣達から騎士様達を守るために陣形を組んでいる。
幸いにも近くに敵がいなかったみたいで、敵の気配がしない、手早く二足歩行を仕留めることが出来たため、乱戦になる気配は無かった。
騎士様と坊やと巨躯の女性が手早く二足歩行の分断された方の体を掴み戦士達が敢えて開けていた方角に向けて、遥か遠くへと投げる。どうして投げたのだろう?
「耐衝撃備え!」
騎士様が叫んだ瞬間、敵の体が膨張し大爆発を起こす
その衝撃破は、遠く離れた場所で地面に伏せている私にも届く、その衝撃によって飛ばされた石などが、頬を掠め小さな傷をつけていく。
ぇ?猿って死ぬと爆発するの?
唖然としていると、騎士様が糞王子に近づき手を差し出す、差し出された手を払いのけ立ち上がろうとするが腰が抜けているようで立つことが出来ないようだ。
払われた手をもう一度、差し伸べるほど騎士様は糞王子に対して好印象を持っているわけでもないので、ため息をつきながら、糞王子を起こすことなく放置して戦士一同でこちらに戻ってくる。
「ふぅ、危機一髪、かなり危険なタイプでしたね」
まだ、しっかりと辺りを警戒しながら私に手を差し出してくれるので手を取って立ち上がらせてもらう
「爆風で頬を傷つけてしまいましたね、綺麗な肌なのに」
そっと私の頬を撫でてくれるのは嬉しいけれど、遠くで糞王子がこっちを見てますよ?
「騎士様、一つ質問してもよろしいかしら?」
優しく頬を撫でてくれる手を取って先ほどの敵について質問をしてみる
どうして、殺したはずなのに、いきなり爆発したのか?
騎士様からの説明はいたってシンプルだった
突撃自爆タイプ
ある条件を満たすと自分の体内にある全ての魔力を爆発エネルギーへと変換して自爆する非常に危険なタイプ
見分け方は、比較的、簡単みたいで、先ほどみたいに何も考えずに敵に向かって突進してきたり、跳躍してくるタイプにも関わらず
近距離戦闘タイプではなかった場合の殆どが、この手のタイプで、周囲を巻き込む自爆タイプのケースが多い。
今回も、その可能性が高そうだったので急いで対処に走ったわけです、一手でも出遅れてしまったら、王子か、僕たちの何方かが、爆発に巻き込まれて死んでいたと思います。
爆発するタイプだと見極めれたのも、アレが出てくるときは他の獣が周りにいないことが多い、周りに他の獣の気配がなかったし、敵からすれば咆哮する必要なんてないんですよ、こちらに気づかれる前に奇襲して爆発すればいいのに、でも、咆哮するということは、アレの爆発に巻き込まれない為に、アレの近くで待機しないように警告として咆哮しているわけではないかと推測されています。
整理すると、
あんな敵に見つけてくださいって野営の仕方をしていたにも関わらず、出現した敵がアレ単独
咆哮で自分が自爆することを周囲に連絡して、その直後に跳躍し、自分の体を全力で武器としてつかい、結果、何処かの部位が破損する恐れなどの、後先を考えないで攻撃する。
更に、着弾してすぐにアクションを起こさず、周りを見ている様子から【どこで爆発すれば一番ダメージを与えれるか】を考えている感じからして
爆発するタイプだと判断したわけなんですけど、直感が当たってよかったです。
自爆タイプはどうしても捕縛が出来ない、その為、研究塔に持ち帰れない、現物がないので解析のしようがない、解析が出来ないから、敵が爆発する条件を突き止めれることが出来ないし、何故、自爆するという野生の生き物に無い行動原理や、生態がよくわからないんですよねっと困った顔で説明をしてくれた。
騎士様の説明が終わるころには、戦士達も警戒を少し緩めて、近くで休憩を取っている。
先の爆発などの衝撃によってテントは吹き飛んでいるし、焚火も消えているので夜空に浮かぶ月と星が綺麗に見える。
糞王子の一団も体制を立て直して動ける人たちがふらつきながら糞王子に集まって指示を仰いでいる。
糞王子は放心状態で現状が理解できていないのか動こうともしない。
ほんの一瞬で自分が用意したであろう騎士たちが無残になすすべなくやられ、
2割は怪我もなく出発時と変わらない
7割は負傷
1割は死亡
どう考えても、翌朝には、前に進むのを諦めて引き返すのが正解だと言わんばかりの現状となっている
糞王子の騎士達も各々、独自の判断で怪我人を介抱し、手当などを行っていく、死んだ人の肉片を出来る限り集めて、穴を掘り埋めていく。
吹き飛んで打ち所が悪くて死んだ人もその人を象徴する何かだけ剥ぎ取ってから地面に埋めて埋葬する、弔うという行為だけを見れば、幸いにも鎧を脱いでいたので埋めるのは手間がかからず簡単そうだった。
鎧を着ていれば死ななかった可能性の方が高いというのに、脱いでいたほうがよかったなんて、矛盾してるのよね…
それ程までに、たった一つの行動次第で、死んでしまう、それが死の大地。
大量の負傷者や死者をだして、愚かな騎士達も現実が見えてきたみたいで糞王子の言い成りになって動くと死んでしまうと理解し、しっかりと自分で考えて生きること、糞王子を守ることを考えて動こうとしている。
向こうから助けを請わない限り助けるわけにはいかないのが歯がゆい
医療班のTOPとしてNo1として、あの師匠の弟子として、怪我人を目の前にして何もしないのは心が辛い。
やっぱり私は昔と比べて変わったのだと思う、学生のころだったら有象無象が目の前で怪我をしようが死のうがどうでもよかったのに、今は、何もしてあげれないのが辛いと感じてしまう。
糞王子の一団も、現状、食べれるやつを食べて怪我をした人たちを横に寝かせて、その周囲を囲むように背中合わせで休憩を取り始める
こちらの戦士たちがしている行動を見て学んだのだろう、愚行な騎士たちと思っていたけれど、中にはちゃんと考えれる人がいるみたいで良かった。
全員が全員、愚かな人たちってわけでは無さそう、中には純粋にあの糞王子を心配して参加している生粋の騎士も居そう、だって、無様な姿をさらして尚且つ、指示も間違ったことばかりしている。
付いて行けばどうしようもない未来しか待っていない人物なのに、今も甲斐甲斐しく世話をしている人がいる。
自分自身が怪我をしているのに、あんなにも痛々しい姿をしているのに世話を焼こうとしている。
ゆっくりと体を休めたいだろうに、それでも、あんな風に守ろうなんて思えるのは忠義が無いとできない。
初日の夜は静かに過ぎていく、私は騎士様の隣で騎士様に甘えながら寝かせてもらえた、どっちが王族なのかわからないわね…
翌朝、日の出とともに目が覚める、この大地は気温が穏やかなのが救い、夜になっても冷え込むことなんてない、地面が熱いのか熱を持っているのか、知らないけれど、地面の上に直接、横になっても体温が奪われることがない。
糞王子の一団も動き始めた人がいる、寝れた人と寝れない人がしっかりと分かれているって感じ、あの状態でどうやってこの先を戦い抜くのだろうか?
それに比べて、こちらの戦士たちは日常を過ごすかのようにゆったりとしているし、疲労感を一切感じさせていない、かといって油断しているわけでもない。
彼ら戦士達にとってこの死の大地で動くことは、日常と変わらないのだろう、逞しい、歴戦の戦士と言われても遜色のない戦士達。
はっきりいって、糞王子の一団なんて要らない、騎士様が育て導いてきた戦士達がいれば、デッドラインまで無傷でいられるのではないかと誰しもが感じているのだろう。
朝になって戦士達も丸薬を食し、喉を潤せ、排泄を順番に行っていく、排泄をするときは専用の小さなテントを作ってその中で地面に穴をあけて排泄する。
排泄が終わったら穴を埋めて埋めた穴の上には板を置いてその上から、さらに土や砂利を置く。
私達の動きを見て、真似するように携帯食を食したり吹き飛ばされたテントを仮組して同じように排泄室を作ったりとしていた。
糞王子も漸く動き出して携帯食を食べたり水を飲んだりしている。
経ったの一晩でここまで悲愴的な状態になるとは思っていなかったのか呆然としながら辺りを見回している。
今なら大きな犠牲も無く引き返せれるけど、こちらから進言したら意固地になって進むと言い張るとわかっているから声の掛けようがない。
騎士様にどうしたらいいのか相談してみると
「僕ではどうしようもないですよ、父ですら説得できなかった相手ですよ?」完全に諦めている様子だった。
念のために確認しておこう
「糞王子、こほん、アレも失礼ね、なんて呼べば」相手の呼び方が不敬にならないように気を付けないといけないなぁって言い淀んでいると
「王子でいいですよ、糞でもゴミでもいいですよ」さらっと毒を吐き出す辺り相当、ご立腹なのだと伝わってくる。
どんな人でも真摯な対応をする騎士様をこれ程までに、怒らせたり呆れさせたりするなんて、弁明の余地がないのね。
「そうね、誰に聞かれるかわからないもの、ここでは王子と呼ぶわね、その王子を守るために命を投げ出したりなんて」心配になって手をそっと握ると
「それはありませんよ、見捨てます、きっと王都にいる王族も彼を見捨てたのでしょう周りの兵士たちを見て確信を得ました」
きゅっと手を握り返して悲しそうな顔と声で応えてくれる。
「軽蔑しましたか?僕が全てを救えない未熟な騎士で」嗚呼、悲しそうな顔は私に嫌われたくないからなのね
「そんなことありません、天秤にかけろと言われたら、人類の為にも私の為にも家族の為にも、貴方が生きるほうが全てにおいて正しいと判断できます」
貴方が成すことはすべてにおいて正しいと肯定すると
「ありがとうございます、貴女が傍にいてくれてよかった、僕の心が正常であると信じ、保てれて、います」
そうよね、貴方は善なる人、目の前で人が死ぬのを良しとしない人
昨日だってあんな哀れな人たちでも助けたくてしょうがないと思っていたのでしょう、見捨ててしまったという行為を神が許さないとしても何があろうと私が許します、貴方の尊厳たる優しさを否定させるような行為を取らせてしまった糞王子が悪いのです。
悲しまないでください、泣かないで私の騎士様
きっと、今までの人生で初めて人を見捨てるという行為をしてしまったのだろう、全てを救ってみせると騎士になる為にきっと誓いを立てたのだろう。
その騎士の誓いを今日、破った、その悲しみは深い深いものだろう、騎士道に反する行為、その行為をさせたアイツを尚更、許す気はないし、助ける気もない。
高貴たる魂の持ち主である騎士様の誓いを破ってしまったという悲しみが戦士達にも伝わっているみたいで、完全に、戦士一同は、糞王子が敵だと認識されてしまったようだ。
糞王子が金色の鎧、っていっても土で汚れてくすんでしまった惨めな色をした鎧、それをきて全軍に前に向かう様に指示を出し、動き出す。
それを見た戦士達もやっと動くのかやれやれっとか、ちんたらしやがってとか、これだと何日かかるのかわかんねぇなぁっとか、各々が愚痴を言いながら動き出す。
7割の兵士が負傷しているのだから、当然、歩くスピードを緩めるのが普通なのに、糞王子は自分のペースで歩き出す。
まぁ、元々歩くスピードが遅いので、負傷した兵士が付いて行けているので今のところは問題ないのだろう。
問題があるとすれば、この速度で目的地に着くのに後、何日必要となるのか?
こちらは補給部隊が機能しているので物資的な部分では非常に潤沢しており、問題は無い。
だって、予定では向こうの部隊にも物資を渡す予定で豊潤に潤沢に1000人を10日は持たせれるほどの物資を準備していた。
っといっても殆どのううん、99%の食事が丸薬だけどね!!1%は何かって?…薬、です、けど?それは食べ物じゃないって?…
なので、1000×10と単純計算で一万個用意できるように準備してもらったのよね!!
日持ちするのかって?大丈夫!今も全力で街で生産してもらっているみたい。
一日、フル稼働で作ってもらえれば100個は余裕で作れるし、事前に200個は作ってある、三日は余裕で腐ることもない、塩とか砂糖とか防腐剤もはいっているから問題なしよ!その代わり、味と食感が全てにおいて犠牲になってしまったので、あれは食べ物じゃない!薬だ!ってことで丸薬って呼ばれるようになったのよね~。
じゃりじゃりするけど馴れたら意外と食べれるのよね。
幸いなのか、今後のことを考えればもっと、速く歩いたほうがいいのか、私には戦況を読めきれないけれど
歩くスピードが落ちた影響もあって敵に接敵する回数が少なく済んでいるそうで、糞王子の一団も怪我をする頻度が減っている。
騎士様の見立てではもう少し戦闘回数や倒す敵は多くなる可能性が高かったので運がいいとおっしゃっていた。
騎士様はそういうけれど、どうしてもこの死の大地に来てから不安が押し寄せてくる、不安がぬぐい切れない。
退き返せと本能が告げてくる、あと、どうしてか知らないけど、心のどこか?誰か?がずっと警告してくる気がする、引き返せ、糞王子を暗殺してでも引き返せと…
その事を騎士様に相談してみると「誰もがこの大地を歩けばそう感じるものですよ、慣れるまではしょうがないですよ」と安心させてくれる。
ううん、この不安は以前に、巨躯の女性と一緒に進んだときは感じなかった、どうして?どうして、そんな風に感じるの?誰?誰が私に語りけてくるの?始祖様?誰なの?
思い返せば、私は誰か知らない人と会話している気がする?誰?どうして今になってその事実に気が付くの?貴方は、貴女は、誰?どうして私を見ているの?どこから見ているの?あなたはだれ?なにをしっているの?
…一瞬だけ見えた、ここではない、似たような景色をみたことがある、でも、知らない大地、どこ?大きな空に大きな海、その真ん中に、あれは竜?知らない、記憶にない情報…
「大丈夫ですか!?ふぃあー、これが?どうして?きゅうに?」
頬を叩かれる感触と音で正気を取り戻す、ふぃあー?私が?そこまで心が弱かったかしら?
「あ、大丈夫です、ごめんなさい心配をおかけしました。」
冷静に受け答えをすると騎士様の安心したみたいで胸をなでおろしている
「あの、つかぬ事をお聞きしますけれど、何分、意識が飛んでいました?」
どうやら、会話の途中でいきなり立ち止まって、ふと、空を見上げ始めて5分ほど動かなくなってしまい声を掛けても何も反応を返してくれなかったそうだ。
こうして、二日目は大きな出来事も無く。夜も特に大きな出来事もなく終わりを告げる。
三日目の朝
どうやら糞王子の一団も手持ちの食糧が完全に尽きてしまったみたいで誰も朝から何も食べないで動こうとする。
物資を分けてあげるのが正解だけど、出来ない。糞王子のせいで
そんな状態でも前へ進んでいく。
奥地に進めば進むほど敵との遭遇率も上がってきていて、上空からも地中からも敵が湧いて出てくる。
糞王子の一団からは次々と死者が出てくる。出発した当初に比べてもう、半分も死んでしまった。
それに対してこちらのメンバーは誰も怪我一つ負っていない、戦士達からすると一週間は最大で遠征したことがある強者ばかりなので、まだ半分!余裕ですよ!っと頼もしい限りだったけれど、本来であればここが引き返すポイントなのだと話の流れでわかる。
だって、ここまで来るのに三日かかったのだから、当然、帰るのも三日かかる。
一日増えたら帰るのに必要な時間も一日増える、進めば進むほど、帰りが絶望の色に染まっていくことになる、補給部隊も安全に荷を運べる距離の限界に近づいてきている。
不安は消えない、ぬぐい切れない。
三日目の夜
とうとう限界がきてしまったみたいで、糞王子側から申し出があった言い値でそちらの物資を購入するので物資を売ってほしいと
引き返すのであればタダでお渡ししますと伝えてもらうと返ってきた返事は
「なら要らぬわ臆病者」っと、叫び声が聞こえてきた、どうしようもない、現実が見えていない。
死者の鎧などは出来るだけ綺麗に剝ぎ取って街に戻る補給部隊に持たせてあげている、あんな人たちでもきっと、帰りを待つであろう人が居るのであれば遺品は持ち帰ってあげたい。
死体は埋めてあげる時間がないので、出来る限りルートから離れた場所に持っていき、獣たちを誘導するための餌として死んでからも働いてもらう。
ここで、軽くお浚いしておきましょう。
補給部隊は数多くいます、全員がしっかりと戦うことが出来るメンバーで、10人で1チームとして活動しており、途中まで歩いてきた場所に待機し点在している。
点在することで、街から送られてくる補給物資である荷物をリレー方式で運ぶ役目をしている。
なので、奥に行けば行くほど強いチームで構成されている、今近くにいる補給部隊は、ある程度の敵であれば圧勝するほどの実力を備えている。
だが、当然、二足歩行に襲われると勝てないので極力見つからないように隠れている。
補給部隊は、普段はちゃんと前線で戦い抜けるメンバーだけれど、今回の任務で戦士チームに選抜されなかったメンバーで構成していると考えてもらえるとわかりやすいかな?
また点在することによって、伝令としての役割も担っているので、後続の街に近い補給部隊に何かあれば、伝わるので、今のところ補給部隊も機能している、が
これ以上前に進むのは、困難になる、結論、付いてこれない補給部隊とはここいらでお別れになる。
つまり、次の日からは街から送られてくる物資を補給出来ないので、ありったけの物資をここで受け取って後続の部隊は一度、撤退してもらい、補給部隊の中でも精鋭メンバーに荷物を持ってもらってこの先に進むことになる。
その精鋭でも戦士の一団に選ばれなかったのを考えると戦士に選ばれた人達は本当に優秀なのだろう
今後のフォーメーションは私の周りに食事などの荷物を持った補給部隊、その周りを戦士達が左右を守りながら進む、ここから先は騎士様は私の隣から離れ前にでる。
図にするとこんな感じかな?
巨 騎 坊
索 索
戦 私 戦
戦 補 戦
戦 補 戦
戦 補 戦
戦 戦 戦
索 弓 索
術 弓 術
フォーメーションの確認も終わり、補給部隊との連絡も終わり、全てにおいてこちらサイドは順調で順風で問題なし!逆風なんて何もなし!負傷者ゼロ!
騎士様の鍛錬、みんなが力を合わせて準備した結果よね!誇りよ!貴方達こそ、人類最強の部隊!!
なんだけど、どうしてこんなに歯が、足が、心が震えるの?これがフィアーなの?違う、フィアーはもっと症状が違う…
抑えきれない不安がずっと鎖で縛るように私の心から離れない。
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