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朝日の輝きが瞼を通して起きなさいと視神経を刺激し意識を覚醒させていく。

寝ぼけながらもゆっくりと上半身を起こす、隣を見ると姫様が蹲る様に寝ている、姿勢としては胎児のポーズだ

よっぽど、疲れているのか、私が起き上がっても起きる気配がない。
ベッドから姫様を起こさないようにそっと抜け出して、ポッドに水を入れて火にかけお湯を沸かす
時刻は朝にしては遅く、お昼にしては早い時刻だった、普段通りであればこんな時間に起きてしまうのはお叱りを受けてしまう時間。

窓の外に意識を向けると声がするので、窓の外を見ると、外では、緊急招集が発動する前と同じように各々が担当している作業を進めてくれているのが観てとれる。

きっと、世の王族とか、上流階級の人達はこんな感じで朝はゆったりと過ごして、簡単で誰でも出来る作業などは、出来る限り下々に任せているのだろうなと、思ってしまったのと同時に、自分には向いていないなっと感じている、それはどうしてかって?

外では一生懸命作業をしている人が居るのに、自分だけ何もしていないっていうのは、落ち着かない、手伝いたくなる。

自分の仕事が忙しくて忙しくて、ヘトヘトになるまで働き続けて、もう無理限界ってところで、やっと休めむことが出来る!休日だ!って感じだったら全力で休む!
周りが働いていても忙しそうにしてても休む!!でも、緊急事態になったら仕事はするよ?それはそれだからね。

本来、周期的な休みとかだったら、次の任務や仕事に向けて体調を万全に備える為に心も体も休めるのだけれど、

今の状況って現場とかどうなっているのか把握しきれていない。

外の現場はネクストに任せっきりだし、内の仕事は、緊急事態になったら寝てようが、お風呂に入ってようが、ご飯食べてようが、問答無用で呼ばれて連れていかれるので、それが無いってことは何もないってことだから、休んでいても特に問題は無い、No2も仕事が無い時は一人で何か色々としてたけど、あの人は研究塔にも出入りしているので医療班と研究塔兼任してるから、仕事してるんだよね。

私も医療関係とか、個人的な目標の為に研究はしているけれど、この街の為にする研究じゃないから、仕事じゃないんだよね。わたくしと書いて私事になるんだよね。

それにね、休みを返上して急に、ほんっと唐突に突然、仕事が湧いて出てくるなんて、医療班に所属していれば普通の出来事だから、休めるときに休め!っていうのも医療班にとって普通。

そう、普通なんだけど、思い返してみるとね、ここ数日、私って医療のお仕事してる記憶がないんだけど?…引退組に所属するなんて年齢的にまだ早いよね?下剋上じゃないよね?…私まだ、医療班に所属していていいよね?…まだ、医療班のトップ名乗ってもいいんだよね?…

こうも、医療班のTOPとして仕事が無いのは不安だ。急に振って湧いてくるのは緊急事態過ぎて、良くない、怪我人や病人などが、いないのが一番なんだけどね。

小さな不安に襲われながらも、ピーっとポッドが湧く音が聞こえたので、意識を切り替えて紅茶をいれようと動き始める。
その辺にメイドちゃんが定期的に整理整頓していて綺麗に置かれている高級茶葉を、紅茶ポッドに入れてお湯を注いでいく。

ついでに余ったお湯をカップに注いでカップを温めて置く、当然、二人分。メイドちゃんが居れば三人分なんだけど、今はいない、いないよね?くるりと見回してみるがいない、偶に気配を感じないので油断できない。

お茶請けはあるのかな?っと冷蔵庫の中とか、戸棚の中とかを漁ってみるとやっぱりお茶請けがある。
適当に見繕ってぱぱっとお皿の上盛って、テーブルの上に運ぶ、全てを終えて椅子に座るころには、適度に時間も過ぎているので紅茶もいい感じに出来上がっている。

カップのお湯を捨て、紅茶を注いで、まずは、香りを楽しむ、やっぱり、高級茶葉の紅茶はとても香りが良い。
味も最高に良い、なぜなら苦みも程よくて、味もまろやかでとても良い、この茶葉の凄い所が牛乳や砂糖が無くてもそのまま、ストレートで飲んでもえぐみを感じる事が無く、すっと口の中に馴染む。素晴らしい。生産者の方に感謝の気持ちを伝えたくなる!

勝手に出したお茶請けの硬めに焼かれたクッキーをひと齧りし、ティースプーン一杯分くらいの紅茶を啜り、口内で齧ったクッキーを複合させながらクッキーを噛むと、口の中を通り鼻から抜けてくる紅茶の薫りとクッキーの薫りをブレンドして堪能する。

んふぅ、なんて優雅なひと時なのでしょうか…心が洗われるような気分です。


…っは!いけないいけない、優雅な薫りに包まれていた影響で少しトリップしていましてよ。

んー、っと伸びをして、姫様の方を見てみると、紅茶の薫りで姫様が自然と起きてくるかと思えば、起きてくる気配がしない…生きてるよね?

心配になって姫様の近くに行って鼻から息が抜けていくのを指先でチェックする、うん、問題なく呼吸している。
「ぅぅん」
近くで姫様の状態をチェックしていたら、気配を感じたのか、ゆっくりと目を開け上半身を起こす。

だけど、寝ぼけているのか、直ぐに動かず、その場で呆けている。
寝起きの影響で、髪の毛がぐしゃぐしゃなので、櫛を取り出して寝癖を整えてあげる。よく櫛の場所がわかるねって?そりゃねぇ?何処に何が置かれているのか殆ど把握してるくらい姫様の部屋には入り浸っているのですぐに見つけれるのよ。

姫様は、目を完全に開けているわけでもなく閉じているわけでもなく薄目でぼんやりとしている、ふと、こちらに視線を向けると
「おかあさま?」
どうやらまだ寝ぼけているようだ、両手を前に出してこっちに向けてくる、その姿はまさに、抱っこして欲しい子供の様な仕草をしている。
そっと、抱きしめてあげると嬉しそうに声を出した後、動かないでじっとしている。

珍しい、こんなにもストレートに甘えてくることなんて、そうそうない人なのに、素直に子供の様に甘えてくるなんて…
先の事件でよっぽど心労が祟ったのだろうか?まぁ、確かに、私達は姫様ほど危機感を感じていなかったけれど、説明を聞く限り、一手でもミスが生じれば王都が陥落するほどの危険性がある敵だったし、人命救助も出来なかったと思う。

それにね、王都の存在はとても大きい、なぜなら、王都が滅びた場合、物資も人材も補充されないし、他の街との連絡も取りづらくなるし、王都が敵の拠点として活用されてしまったら、王都がある位置と前線の街がある位置などを考慮すると、大穴+占拠された王都からの挟撃によって、いくら最前線の街と言えども防衛する術がなく陥落するのは至極当然ってことになるのかな?多少は粘れるけれど陥落は確定事項って感じだろうなぁ…誰も助けてくれないし。

よくよく考えなくても判る、王都が落ちたら人類敗北は免れない。

今までだと、ここが落ちない限り王都に敵が進行するなんて考えられなかったけれど、

今回みたいなイレギュラーがいつどこで発生するかわからないのかぁ…いや、流石にね?気流を操るなんて大それた魔道具がいっぱいあるなんて思えないし、想像できない。
だからね、きっと、希望的観測だと思うけれど!…こんな事件なんてもう起きないよね?

そんなことを考えながら、櫛での髪の毛を整えるのは綺麗に終えたので、続いて姫様の髪の毛を手で梳かすようにゆっくりと優しく撫で続けていると、ふと沸き上がってくる感情に気が付く。

腕の中でじっとしている、小さな小さな弱い生き物を守ってあげたいと思う、胸が切なくなるような感覚、そうか、これが母性ってやつなんだと認識する。
これがきっと母性なんだ、一生経験することの無い感情だと思っていた。

私の体が女性だったら、こうやっていつかは子をもうけ、こうやって胸の中であやしていたりしたのだろう…叶わぬ夢だ、いつかは叶えたいと思っていた夢の一つではあるけれど、今の技術力では到達できないとわかってはいるけれど私の悲願の一つ


女性の体を手に入れる


この悲願が成就することは、決して、この先、一生、ないだろうと半ば諦めかけている、今の様な半端な女性化ではなく、愛した人の子供を宿せれる体へと至るのが私がこの街に来た秘めたる理由の一つでもある。

あ~あ、はやく大穴の敵を完全に滅ぼして人類に脅威がなくなったら研究を再開したいなぁ、また姫様と一緒に研究がしたいね。
姫様の頭を撫でながらゆったりと過ごす。


長い時間、本当に長い時間、我が子をあやす様に、やや子を慈しむ様に、地母神のように傍に寄り添い続けた。

目が覚めたのか、姫様の頭が動いていると感じたら、姫様の方から声をかけてくる
「ねぇ、団長、すこし、すこしだけね、お願いがあるの」
御寝坊さんは、胸に顔をうずめながら声を出している、出来る事なら何でもするよ、姫様がいなかったら私の悲願は達成できないからね、私達は持ちつもたれつでしょ?

「魔力…少しでいいからわけて欲しいの」
上目づかいで、切なそうな顔で、辛そうな顔で頼まれてしまった。
やっぱり、まだ体が本調子じゃないみたい、姫様の体は他の人とは違って変わっていて一言で言うと特殊、魔力の総量が人並み以下で、魔力の回復も遅く人並み以下。

姫様ほどの熟練者だからこそ出来る、術式の巧みなコントロールがあるからこそ、低燃費で術式を発動させることが出来る。

魔力は、命の源、使い過ぎてしまえば、心も弱々しくなるし、免疫力も低下する、自然と回復するまで薬でも飲んでゆっくりと過ごせばよいのだが、先の戦いで魔力を自然回復以上に使い込んでしまったのだろう。

ゆっくりと手を、指を、絡ませてゆっくりと慎重に、怪我をさせない様に、魔力を姫様の体の奥に向けて流し続ける。
やっぱり、底なし沼の底を探す様に、大きな大きな浴槽に一滴ずつ水を垂らしているような途方もない感覚が伝わってくる、ん?いや、なんだろう、違う?

…注いでも注いでも貯まらないのではなく、抜けていく?


栓が無い?



いや、そんなわけないか、栓が無くて魔力垂れ流しになっていたら術式なんて使えないよね、きっと、限界以上に使い過ぎてしまったので、生命維持に必要な貯蓄していた分も使ったのだろう。
だからこそ、体全身に魔力を細胞の一粒一粒まで浸透させないといけないことになる、そうなると、途方もない感覚に至るのも頷ける。

そこまで魔力を絞り出して演算していたなんて、この先、こんな事態にならないようにもっともっと、私達も力を知恵を知識をつけていかないといかないとダメだね。

それにしても、流しても流しても、行き渡る感覚が伝わってこない、成程、だから触れる肌の面積を増やして魔力が霧散するロスをなくした方がいいわけなのね。

すっと上着を脱ぎ、姫様の上着を脱がして前回と同じように肌と肌を密着させ、魔力を放出し、流れをコントロールし、全身を使って注いでいくが、前回と違うのは放出量を調整し、送り過ぎないように、自分の意識が落ちない程度に譲渡していく。

「…ふぅ」
これ以上は、きつい、私の魔力が持たない、この先にある、日常に支障がでる恐れがあるっていうかまた、意識が落ちてしまう、低下した魔力を急速回復する為に強制的に意識をシャットダウンし魔力回復に努めようと体が勝手に防衛本能を発動させてしまう。

そう、本来、生き物であれば、自身が持つ魔力量の限界を超えて使おうとすると自然と意識を落として魔力枯渇による死を未然に防いでくれるものであるのだが、やりようによってはその防衛本能、生存本能を抑えて無茶をすることが出来る。

その方法とは?術や武等の何かしらを極めたものだけが到達できる奥義。

戦士職で武を極めたと思えるほどの武の頂へと到達した者だけが発動できる、ある奥義の一つで、命を賭して、一度だけ放てる奥義、その名も


【死の一撃】


名前の通り、使えば自分も死ぬし相手も死ぬからそのように名付けられた奥義。
お父さんが、これを使って相手と共に死んだのだとお母さんが、私が大きくなった時に教えてくれた。

全ての魔力を、生命力を、細胞一つ一つに残留している力、命を構成する力を生命力を魔力を、全てから純粋たるエネルギーに変換し、一転に集約し解き放つ奥義

放てば生命力も、魔力も、生きるのに必要なすべてを残すことなく、余すことなく捻り出す為、使用すれば絶対に使用者は死ぬ。どんな処置を施そうが不可能、その場で放つと同時に心臓が止まり、自信が放つ熱量によって脳が溶けて死ぬ。

そんな奥義をどうやって習得するのかって?
武の頂に到達しうる人であれば自然とこの技に到達する
まだまだ、未熟な時に誰かが放ったこの技を見れば自然と発動理論を体が覚えいつかは到達する
口伝書にも記載されている

この奥義は武を目指すものなら、いつかはその極致にまで至れることが出来たのであれば、自然と修め、どんな時でも任意で確実に放つことが出来る。

それに、この極致は、武芸者だけではなく、過去に、ある術者が始祖様が扱うような大規模魔法を自分の全てと引き換えに放った記録がある。
きっと、その人は姫様と同様に魔力の流れを完全にコントロールできる術者であると考えられる。


なので、この世には決して使ってはいけない奥義、魔法が数多く口伝として伝わっていたり、書物としても残されていたりする。


因みにこの、魔力譲渡術も非常に危険な術として口伝されている奥義の一つである。失敗したらどえらいことになるからね、練度めっっっちゃめちゃいる。
医療班のスタッフがトップ集団に入るには、これが完璧に扱えれるようにならないといけない、なぜなら!この術が出来ないと出来ない危険な術がある。
故に、この技術が必須で必定、履修必須、合格試験必須、そうしないともっともっと危険な術に挑めない。

うーむ、思い返すと、医療班のトップ集団に入る為に必要な技術はそうとう難易度が高いのだと実感する。


渡した魔力が姫様の体に馴染んだのか、姫様はゆっくりと私の体から離れる、やや頬が赤く高揚しているように見えるが、土色寄りじゃないので、良しとしましょう。
血の通った顔色で良かったよかった。

脱いだ服を着ながら
「紅茶、冷めちゃったけど飲む?」と姫に聞くと照れくさそうにうんっと小声で頷いた。

紅茶を注いでカップソーサーの上にクッキーを添えて渡してあげる、ついでに、私のカップにも紅茶を注いで飲む、うん、高級茶葉の凄い所は冷えても薫りが飛ばないエレガントでスペシャルな薫りが口から鼻に抜けていく。んふーいいねぇ。

二人でゆったりと紅茶を飲みながら過ごしていく。

何も考えず何もしないで体も心も休めるひと時というのは大事だよ。
最近は、辛い出来事が多すぎる、姫様は確かに凄い人ではあるけれど、人類すべてを背負えるほどの強さは持ち合わせていないよ、だから、皆で支えあわないといけないんだよ。

姫様の本質は、自由奔放で自分の好きな様に生きるのが本質。他人の人生全てを背負うような重責なんて姫様にとっては重い重い足枷なんだ。

その重りを、私達全員で分散できるようにしたい、一人で背負わせてはいけないと思っているのが街にいる全員の総意だと私は思っている。
この街に居る人達全員が、家族であり、友であり、共に歩むんで行く戦友なんだ。

姫様だけに負担を強いるわけにはいかないよね。

そう、だからね、私の夢なんて二の次でいいさ、まずは、世界を、人類の未来を勝ち取らないと、脅威を滅ぼさないとね。
それから、私が生きていたら、夢を見てもいいじゃないのかなって最近は思えるようになった、だってさーせっかく乙女の体を手に入れたのに恋する相手がいなかったら意味ないじゃんね?なら、世界を救って平和になってからでいい。そう思ってる。


あーもう、ほんっと、こればかりは、始祖様が居てくれたらいいのになぁって思ってしまう、伝承通りの人だったら、始祖様さえいれば全て片付けれるのになぁ…

っま、伝承なんて盛に盛られていると思いますけどね~

紅茶でのんびりとしていたらお互い、食欲も出てきたので、何か食べようって話の流れになりました、部屋を出て食堂に行こうというと、姫様が、昨日と同じ服だと嫌だという事で何を着ていくか二人で話し合う。

食堂に行くだけだったら、昨日のままでもいいんじゃないかって?

寝てるときもずっと着たままだったから、そりゃもう、ぐしゃぐしゃになってるのよね。
街の責任者に近いっていうか、もう責任者って言っても過言ではない人が、そんな恰好で外に出るのはダメだよね。

下の人にだらしない人だなって思われちゃうもの…ん?今更かも…最近ってもう、最近じゃないか?入ってきた学生達も姫様の特徴捉えてるよね…もう手遅れか…

着替えも終えて、二人仲良く腕を組んで食堂に向かって歩いていく。

どうして、腕を組むのかって?実は、姫様はまだ、若干のふらつきがあるので横に立って腕を組み歩く助けしてあげているの、そんな風に歩いていたら、ふと、先日の遠距離からの会話内容を思い出してしまう。

王都での騎士団長から見た姫様の評価って、想像以上に凄く高いのはびっくりした。

普通に考えれば、それはそうだよねってなる。
だってさ、この大陸における人類発展の貢献度が凄い、王都にいる全ての人達、どころか大陸全土の人達と比べても、誰も超えることが出来ないと思う。
歴史を振り返ってみても、超えることは出来ないと思う。

あ、始祖様はレジェンド枠っていうか、伝承の人だから比べるのは烏滸がましい行為なのでダメですよ?見る人によっては不敬罪でしょっぴかれて解体されて臓器売買に持ってかれちゃうよ?


まだ、本調子じゃない姫様の為に食堂のおばちゃんに粥を特別に作ってもらう。あ、私は普通の定食で大丈夫です。
え?私も顔色が悪い?…大丈夫、予測はしていましたので、あとで余裕がなさそうだと判断したらお薬の方を飲む予定ですので、お気遣いありがとうございます。私は大丈夫です、ほんっといつもいつも、お気遣いありがとうございます。

まだまだ本調子じゃない様子の姫様、スプーンを持つ手が若干だけど、震えている。
見かねて、食事介助をすることに、最初は恥ずかしそうにしていたけれど、いいからと押し切ってあーんを強要し食べさせていく。

金属製のスプーンって歯に当たると痛いので、ん?馴れてるから当てない自信の方しかないよ?当たり前じゃん!

って言いたいけれど、私もなんやかんやと言われると絶不調。
連続での魔力譲渡は堪える、ちょっとだけのつもりが、ガッツリ持っていかれるとは思っていなかったので、もしもが有り得るのです。
プライドにかけて、もしもなんて起こさせるわけにはいかないけれど!医療を志すものとしては、もしもに備えるのが普通の姿勢!なので、念の為に木製のスプーンに変えてもらってるのでご安心を!

周りの人も、心配そうに見てるけど、大丈夫、医療班のトップとして病人や怪我人の介護が出来ないなんて体たらくなんて!見せるわけにはいかない!踏ん張れ私!!

…こういう時にNo2が居たら、きっとさり気なく変わってくれたり助けてくれるのになぁって思っちゃった時点でね。
まだまだ、あの人に甘えていたんだなぁって思ってしまう、もっともっと頑張って少しでもNo2みたいに成れるように頑張ろう、偉大な先人がいると比べられちゃうからね、プレッシャーが大変だよぉ…


ただでさえ、街に来た当初なんて、あの戦士長の息子!って事で期待されていたからねー、その期待を裏切る様に、所属希望を戦士の方じゃなくて医療班へと何度も何度も申請して、その度に、ぇ?医療部隊に行きたかったの?目を丸くして言われるのは堪えたなぁ…

粥も、お腹いっぱいまでしっかりと食べれて偉い!食欲が無くても体が悪いわけじゃなくて、魔力が無い為のアンニョイな気分ってだけで食欲が落ちているだけだからね、食べないのは衰弱するだけだからね!

ふと、腑に落ちた。
ぁ、そう、か、なんでこんなに昔の事を思い出すのだろうと思っていたら、私も魔力切れ寸前だからか、魔力が循環してないと、どうしてかメカニズムは知らないけれど、殆どの人が過去に引っ張られることが多いってデータがあるんだよね。

私も、しっかりと食べて栄養を全身に送って回復を促さないと。

そんなことを考えていたら三つ編みちゃんが魔力回復促進薬を二つ持ってきてくれた、きっと誰かが気をきかせて運ばせたのだろう、お気遣い痛み入ります。

姫様に渡すと凄く嫌そうな顔をしている。

わかるよ!せめて、丸薬で寄こせよって思うよね!持ってきてくれたのは水薬の方なの!

丸薬だったら苦いの一瞬、舌に乗せたときだけ!いや、ちょっと尾を引くけど、水薬ほどひどくない!

しかもだよ?よりによって一番高価な、ほぼ原液で味の調整をしていない古来から伝わりし糞ほど不味い、苦みとえぐみのハーモニー、飲んだ後に鼻から抜ける香りは地面を煮詰めた様な土の香り、材料の一つにハチの巣が使われていてしょうがないとはいえ、きっつい…なんでよりによって原液なんて持たせるんだよぉ…

二人で、ほぼ原液の瓶を手にもって長い時間、眉間に皺を寄せながら、無言で瓶を見つめ続ける。
ちらっとお互いの状況を見ている、なぜかって?お前が飲んだら私も飲むからと言わんばかりに、嫌煙してしまう。

二人ともこの水薬にはお世話になりっぱなしだけど!永遠に馴れないこの味。

何度も、何度も、味の改良をしようと試行錯誤をしてはいるけれど、改善できず、薄めてもあまり改善できない難敵、いや敵じゃないね、癒してくれる大切な品物だから敵って表現は不適切だわ、例えるなら難所だわ。

飲んだら確実に良くなるのは知ってる、身に染みて知ってる、何度も何度もお世話になっているので知ってる。

ぅぅぅせめて、せめて、甘くて香りがとても素晴らしいドリンクを目の前に置いといて欲しい。

うぐぅうぅぅ。
これを飲まないと死ぬって言われたら即座に飲み干す自信があるけれど、今すぐ死なないって体もわかってるし、魔力切れのせいで明日への勇気がわきにくいの!進みづらいのよぉ…こんな時にNo2がいたら笑顔で「さっさと飲め小娘共が」って笑顔で口を開かされて口の奥に問答無用、情け容赦なしで流し込まれるのにぃ!!

あ!姫様が目を閉じて鼻を塞いで、蓋をあけて一気飲みしてる!…いくしかねぇ!このビッグウェーブに!!ええい!!ぁ、鼻塞ぐのわす、うをぇぇ、きっつ…

余りにもな不味さに体をビクンビクンと跳ねさせながら身悶えていると

この光景を見かねた食堂のおばちゃんが甘い甘いハチミツ入りの柑橘類の香りがするドリンクを二つ置いてくれた。

ありがとう!さすがは長年、この街で食堂で働き続けた猛者。
先人達も飲むのを躊躇う魔力回復促進剤の水薬がどんなものか歴代の反応を、食堂のカウンターの奥から見守ってきた人なだけあって、これに対してこれが一番、最高に緩和される飲み物だって熟知しているぅ!流石ですぅ!!提供痛み入りますぅ!!!

嗚呼、あぁ、癒されるぅ~このドリンク最高だよぉ、鼻から抜ける香りも中和されてるし、味も甘さがえぐみとにがみを抑え込んでくれるぅ、ぇ?それじゃそれに原液を突っ込んで作れば飲みやすいのが作れるのじゃないかって?

そんなの!当たり前じゃん!試したさ!作ったさ!でもね!原液と一対一で割ると死ねるほど不味い、後から飲んだら中和されるのに!混ぜるな危険!混ぜたら甘さとえぐさと苦みが相乗波状攻撃として襲い掛かってきて尚且つ!後に甘い奴を飲んでも相殺してくれなくなって助かる道がなくなるの!!
だからね、割るとしたら、9対1で割ってようやく違和感なく飲めるラインなの!それじゃ、効果も10分の一以下になるから出来ないの。

ぇ?臭いから周りに迷惑だからその臭い瓶に早く蓋をしろ?あ、ごめんなさい。
二人とも慌てて瓶にコルクの蓋をきゅっと押し込む。

飲んだ後も、辛いの、原液だとね、急激にお腹の芯が熱くなったり肝臓の辺りがキュウウウっと締め付けらえる感覚に襲われるのがいつになっても私は馴れない。

姫様はどうなのかなっと見ると眉間に皺を寄せてお腹と肝臓の辺りをさすっている。

だよねーこの感覚は馴れないよね~、お腹が痛いのとはなんか違うんだよね。
お腹って言っても、みぞおち付近だから、正確には胃だね、胃に血液がぐっと集まるからかな?
熱を持つのも胃液が分泌されまくって食道を焼いているのかもしれないけど、辛い物を食べた後にくる胃が、かーっと熱くなるあの感じが近いと思う、その熱さと感覚が近いから胃液で食道を焼いているのとは違うと思いたい。

三つ編みちゃんが心配そうにこちらを見ている、ぁ、ごめんね、本当はちゃんと対応してあげたいんだけど、今は無理、こっちは大丈夫だから現場に戻りなさいって言ってあげたいけれど今は無理、声を出すのも憚れるし、今の私の吐息は臭い。喋りたくない!

自然と私も眉間に皺を寄せながら姫様と同じように胃と肝臓の辺りをさすってしまう。

二人とも、うぅんうぅんっと眉間に皺を寄せながらその場から動けずにいる、長い間そうしていたみたいで、体も落ち着いて気力が満ちている感じがするころには、食堂には誰もおらず、カウンターの奥からはタンタンっと食材をリズムよく刻む音が聞こえるので、おばちゃんは次の準備に取り掛かっているようだった。

そういえば、今日は一度もメイドちゃんに会っていない、珍しい、いつもなら姫様の近くに人知れず待機しているのに、見当たらない?

まぁ、昔から二人っきりでいるときは気をきかせてくれているのか、姫様の代わりに何か事務仕事でもしているのか知らないけれど、見かけないことは多々あるけど、二人っきりではなくその他大勢が居れる場所でいないのは珍しい。

そんなことを考えているとキィっと食堂のドアが開く、皆の為に夜の仕込みで忙しい時間帯にやってくる人なんていない。
そうなると考えられるのは、私か姫様どちらかに用事がある人だけだ。

ドアの方に視線を向けると、やっぱり、メイドちゃんだ、考えられることは姫様に用事ってところだね。
トコトコと落ち着いた足取りでゆっくりと優雅に近づいてくる辺り、急ぎとか緊急とか、生死が関わっている内容ではなさそうだ、姫もそれを察したのか、のんびりとしている。

「姫様、王都の方から文が届きました、王都にて祝勝会を開くようなので来賓として来て欲しいとのことです」
のんびりとリラックスしてた姫の顔がまた、眉間にグっと力が入り皺が大きな山頂を描く様に出来てしまった。口角も下がって顎に皺が出来ている人に見せれない顔をしている。

行きたくないのだろう。

わかる、王都主催の祝勝会なんて受勲とかいろいろとあるから、凄くめんどくさい。

私達は、誉が欲しくて戦っているわけではないので、騎士受勲とか表彰されても欲しいとは思っていない、要らない肩書が増えるだけだし、褒美で渡される領地とかいらない。
王族は見栄の為にも褒美をださないといけないのだけれど、姫様からすると王様から貰える褒美なんて殆ど要らない、それ以上の資産を持っているから。

今回の工事費用も殆どが姫様持ちで、資産的にもまだまだ余る、つまり、国家予算何てへでもない程の資産を持っている。
そんな人に多少の褒美を渡したところで、大海原に一滴の水を垂らすようなもの、それが褒美なんていわれても、ねぇ?っとなるわけだ。

かといって領地もいらない、どうせ、渡してくる領地なんて訳ありのどうしよもない土地ばかりで資産を増やすというよりも、その有り余る資産を使って開発しろっていう意味合いが含まれているので、姫様の仕事が無駄に増えるだけ、領地経営なんて興味の無い姫からすると本気でいらない。

っていうか、この付近、周囲、全ての土地は既に褒美として王様から既に頂いているので、ある意味、この周辺の土地を取り纏める領主様といっても過言ではない、姫様はそんなの個人でもらっても困るから、最前線管理の土地っという形で受け取っているし、書類もそうなってる。

王族からすると自分ら王族よりも求心力があって、全ての街から尊敬と信頼を寄せられていて結果も出しているし一人だけが儲けているわけでもなく、ちゃんとお互いに利益が出るように取り計らっているので商人からも信頼が分厚い、そんな人物が、さらに、王族よりも資産を多く保持している。

貴族から抜け出た平民なんて貴族に恨みを持ってるんじゃないかって勘ぐってしまうし、他の貴族たちもそんな風に姫様の事を見てしまう。

なので、いつどこで姫様が一揆を興してもしょうがない、本人がその気が無くても、他の貴族から祭り上げられて担がれて、姫を看板にして国を乗っ取られてもしょうがないっという状況。

そりゃ、あの手この手で潰したいと思っている大臣や姫の事を邪魔したい下げたい殺したい派閥が生まれるのも仕方がないよね、己の保身のために他者を蹴落とし利用し殺してきた連中ばっかり、まったく!人類同志で足を引っ張るな!って言いたいよね。

姫にとって国なんて要らない、自分のしたいことがしたいだけなのにね。

ただね、王都全部が危険ってわけじゃないよ?だって、商談で王都に行くのならそこまで警戒はしなくてもいいもの。

でもね、祝勝会とか王城に行くとなると話は別になる、ぶっちゃけ暗殺してくるやつもいる、えっとね、過去にはいた。

暗殺されかけた時は、ベテランさんと女将を護衛につけてさらには、ベテランさんの奥様や、ご家族にご協力を頂いたおかげでことなく無事に終えた。

私に相談してくれたら、お爺ちゃんに相談したんだけど、そこまでしてしまうと、冗談抜きで国家転覆レベルの問題に発展するので、出来ないって姫様に忠告された。

なら、私を、家族を、孫のそばに居たいからって理由でお爺ちゃんが一緒に行動するのはいいんじゃないの?って提案したんだけど、それはそれで私が国家転覆の鍵にされかねないって言われたけど、そうなるのかな?ならないと思うけどなぁ、姫様だからこそ見える視点があるのだと思う。

ん?今回も王城に出向かないといけないんだよね?護衛必須じゃん。
…ってことは、メンバーを集めないといけないってことになるのか、ぁ!だから更に面倒くさいから行きたくないのか!

ずっと無言で行きたくないオーラを出し続ける姫様の考えが少し読めたのでちょっと嬉しかった、メイドちゃんもその様子を感じ取れているので、どの様にすればいいのか姫様のアクションをひたすら待つ姿勢だ。


現在、ベテランさんは外でザコ狩りや、指揮を執り続けているので呼び戻すしてもいいけれど、誰が指揮をやるの?出来る人が居ない
ティーチャーはティーチャーで持ち場があるので無理。体が二つでもない限りできない。

女将はもう、非戦闘員であるので、護衛を頼めない、頼んだら心から了承してくれるのは解る、でも、女将に戦闘面で頼るのもうよろしくない!非戦闘員なのだから!

だったらもう、私が一緒に行くのが一番じゃないの?

別に、お爺ちゃんに同行を頼まなければいいだけで、私単体であれば問題はないと思うけれど、医療班的にNo2がいないこの状況で私がいな…くても一週間くらいなら大丈夫か。

なら、私が行っても問題ないよね!だけど、護衛任務かぁ…うん、まぁ余裕かな、対人戦闘はお爺ちゃんがみっちりと仕込んでくれてるので問題ないし、暗殺系統からの護衛もお爺ちゃんが仕込んでくれているのでまぁ、なんとかなるとおもう。伊達に筆頭騎士してないよ!うちのおじいちゃんは!

姫様はどうするのだろうと、私も考えを巡らせていたら
「行きますかぁ、取り合えず文を返しといて三日は最低限、支度する時間をくださいってそんな感じで!文の中身は任せてもいいかな?」
メイドちゃんはこくんと頷き、その場で文を作成し、さっと姫様に提出し、中身を確認した後、文を届けてくれるようにお願いしていた。

ぁ、そうだよ、王都に文を送るのなら、ついでに
「メイドちゃんちょっとまって」
文を持って食堂のドアを通ろうとしているメイドちゃんを引き留める

「如何いたしましたか?」トコトコと不思議そうな顔でこちらに近寄ってきてくれるので

「王都方面に文を出すついでに、私の文もついでに届けてもらってもいいかな?あて先はお爺ちゃんに、お母さんにはお爺ちゃん経由で伝わるからいいかな」
紙とペンを借りてさらさらっと文を書いてメイドちゃんに渡す

「承りました」
にっこりと文を受け取ってくれて優雅に食堂を去っていく。気品がある佇まいが同に入っていて凄いなと毎回思ってしまう。
時々、変に羽目を外すけど、それはね、人なんだからそれくらいあって当然だと思っているので、個人的にだけど、そっちの方が人情味があって好感がもてる。


姫がこちらをジト目で見てる、恐らく先ほど書いた文の内容を察したのだろう
「もう出したから後だからね、引けないよ?」ふふんっとしてやったりとした顔で言うと

頬を少し膨らませて
「そりゃ、団長が来てくれるのは嬉しいけど、勝手しないでよー医療班のトップが不在なんて良くないんじゃないのー?今は医療班もごたついてるでしょー?」
姫の言い分も判る、No2が抜けた穴は凄く大きくてめちゃくちゃ影響が出てるけれど!こっちには切り札がある!
それは!とあるロートルを引っ張ってこれば!内は何とかなると思っている。

もう、70近いんだっけ?60近いんだっけ?忘れたけれど、この街には!ある偉大な人がお住まいになっている!そう!No2の師匠的、立ち位置にいらっしゃる医療班の元団長がね!

その人にお願いすれば、私が数日、外に出てても問題はありません!

そのことを伝えると
「っげ、あの人を呼ぶの?また、周りからクレームくるよ?」
うっ、ぐぅ、わかってます!あの人は怖いから、戦慄の時代を生き抜いた人だから容赦のない人なのは知ってます!

でも、判断力はまだまだ随一だと信じてるから大丈夫!っていうか、偶に奥様と一緒に現場に顔を出したりしてるから、顔を知らない人はいないから大丈夫!…いけるはず。

「っふぅ、まぁいいよ、その件は医療班の問題なので私が口出す権利はないからね、たまには実家に顔を出しといでよ」
やれやれっしょうがない人だなぁってポーズを取りながら許可をくれた、けど立て続けに

「でもね!護衛はいらないからね?友達と一緒に帰る道が一緒だからって理由だったら、傍にいていいからね?護衛なんて頼んでないからね!ただ純粋に帰省するってことでしたら了承しましょう!」
びしっと指をさされながら、私の目論見に釘を刺されてしまった


…ごめん、お爺ちゃんにおもいっきりお願いしちゃった~…このことは黙っておこう…
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