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私と恋人。
心臓に悪い。-ママ視点-
しおりを挟むラファエルが帰った後、それはもう気まずかったわ。私が嫉妬して、機嫌が悪かったのもあるけれど、ユーリちゃんが魅了される魔法をかけられてるんじゃないかって気が気でなかったの。そういう類の魔法を解くのは掛けた者だけ。私には、見守る事しか出来ないのよ。
だから、とりあえず適当にお茶でも飲む事にしたんだけど、、、ぼんやりとこちらを眺めるユーリちゃんがそれはそれは可愛くて、触れたくて仕方がなかった。
「ママ、、?」
小さく聞こえる彼女の声に、ドキっとする。そりゃそうだ。いつだって、私の頭の中は彼女の事でいっぱいなんだもの。
「ん?」
なるべく冷静に返すけど、一度味わった熱りはなかなか冷めない。くそ、、可愛いわね。
そんな事を考えていると、背中に温もりを感じた。その温もりの正体は、紛れもなく愛おしい彼女以外の何者でもない訳で、、。
え、だ、抱きつかれてる、、!?
「え、ど、ど、どうしたの!?」
「ジフリールさん」
胸がまた大きく脈打つ。彼女が私の名前を呼ぶ時は、本能で縋ってる時ばかり。それを素面でやられると、私の中の男が抑えられなくなっていく。
好きな女の匂いがして、小さな温もりを背中で感じる。
「っ、、ぁ、、、」
「おかえりなさい。」
吐き出した息に音が乗った。その後に、囁かれた言葉に理性がぷつりと切れる。
「はぁ、、それはずるいだろ。」
あー、ダメだこりゃ。ママでいられねぇよ。つか、ここまでされて、優しいママで居られる方がやべぇっての。
あぁ、心の声が溢れそうだ。こんなにがっついてたら、ドン引きされそう。
「ちょっと、ユーリちゃん、離して、、」
俺にも抱き締めさせて。独り占めさせて。
「え、や、やだ!!」
は?何で。ラファエルに抱き締められたり、頭を撫でられたり、顎クイされたり、何なら良い感じの雰囲気になってた癖に、何で俺が駄目なんだよ。
違う、そんな事を言いたいわけじゃない。
俺は、自分が思っている以上に、嫉妬していたらしい。言いそうになった言葉を、息を飲んで堪える。
「っ、、」
「ジフリールさん、、離れたくないの、、」
普段、理性のある状態で思っている事を言わない彼女。その口から出た言葉は、俺の心臓を止めてしまうほどの攻撃力だった。空耳じゃないよな。今、俺から離れたくないって、、、可愛すぎる。
どんな攻撃よりも、怯んでしまうユーリちゃんの発言。他の女に言われても、ちっとも何とも思わないのに、どうして彼女だけは、こうも俺を弱くするのだろうか。これが、惚れた弱みってやつか?
でも、、
「なぁ、俺にも抱き締めさせてくれない?」
これだけは譲れない。こんな可愛い恋人を抱き締めなくてどうするっていうんだ。今はとりあえず、今日不足した分を補給して、とろとろに溶けるまで甘やかしたい。
「それは、、、恥ずかしい」
そんな可愛い言い訳、効くわけないだろ。寧ろ逆効果だっての。
「お願い」
服を掴んでいたチカラが緩んだ隙に、腕の中に閉じ込める。
「捕まえた。、、ん?ユーリちゃん顔真っ赤じゃん。かわいーなァ。恥ずかしかった???」
触れると、更に赤く熟していく頬。その姿は、幾ら理性があったって足りない。
「ただいま、ユーリちゃん。」
「んぅ、、」
耳元で囁くと、ユーリちゃんは色っぽい声を出して、照れ隠しなのか俺の胸に顔を埋めた。
「俺、キュン死するんじゃね」
彼女の一つ一つの行動に、胸が躍る。それが企みではなく、無意識なのが意地が悪い。
頭を撫でようとすると、胸の内から小さな声が聞こえた。
「ねぇ、昨日の電話、、女の子の声がしたけど、仕事の用事だったの?」
「そうだよ?」
アメリアの煩い電話の出て良かったな。ユーリちゃん、それは嫉妬って事で良いんだよな?
「じゃ、じゃあ、、何で服から女の人の匂いがするの」
「え」
あのクソ女の匂いが服に写っていたらしい早く風呂に入りたい気持ちでいっぱいになるが、こんな可愛いユーリちゃんが見られるのなら悪くない。
「服がジフリールさんの匂いじゃないの。、、本当に仕事だったの?」
「っ、、はは、、ユーリちゃん、これ以上俺をときめかせないで。」
堪らなくて、今度こそ頭を撫でる。嫉妬している彼女に胸がキュンとする。ユーリちゃんも俺を独り占めしたいと思うぐらいに、好きになってくれているって事だろ?あぁ、愛おしい。
「そんな事言ったって誤魔化されないんだから!」
「ふふ、分かってるって。でも、ユーリちゃんも俺以外の男の匂い、ラファエルの匂いがする。」
「っ、それは、、不可抗力だもん、、」
不可抗力ねぇ、、。女と思ってたとか言ってたし、あのルックスじゃ、、。だからって、俺のショックが消える訳じゃないし、ラファエルを許す訳無いんだが。ユーリちゃんは、俺で上書きするしかねぇよな。
「なるほどねぇ。まぁ、俺は仕事で、捕まえなきゃいけない対象が女だったんだ。ちょっと色仕掛けして捕まえたってわけ。」
「い、色仕掛け、、?」
何を想像してんだが、むすっと膨れる頬。悶えても良いだろうか。
「俺が、命をかけて守りたいのはユーリちゃんだけだよ。」
「っ、、うぅ、、」
「つか、こんなに可愛い彼女が居るのに、よそ見なんかするわけねぇだろ?」
「うぅーー」
「なぁ、ユーリちゃん。好きだよ」
全て、嘘偽りのない本音。俺がどれほどユーリちゃんが好きかって教えて欲しいなら、本気で口説いて、身体で教えてやるんだけど、、。
だけど、俺は貴女にいくら愛を伝えたって満たされないんだ。
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