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私と恋人。

民であるという事。-ママ視点-

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「よぉ、ジフリール。気になる事があって、伝えに来たんだが、、今いいか??」


見慣れた灰色頭の男。相棒であるクシエルは、一週間後に来る宣言をしていたけれど、4人で飲んだ次の日に、エデンに現れたわ。
もう閉店間際で、客も居ないし、ユーリちゃんにも先に休んで貰ってるから、まぁ話を聞くぐらいだったらいいかしら。


「タダ飲みしたお金でも払いに来たのかしら?」


グラスを拭きながら、冗談交じりに相棒に言う。
すると、クシエルは珍しく財布を取り出して、カウンターにお金を置いた。あのクシエルがお金を払った、、??

予想外の出来事に、手が止まる。


「俺様だって、払えるだけの金は持ってるっての。、、、そのボトル一本キープで。」


私の後ろを指差して、ワインの指定をする。棚から選ばれたワインを取り出して、クシエルに差し出すと、ボトルにKusielと刻まれた。相変わらずの、無駄のない魔法。

コルクを開け、グラスを渡すと、慣れた手つきでワインを注ぐ。透明なグラスに満たされた、赤ワインは、ライトの光を受けて怪しく揺れる。つまみに、ミノタウロスの燻製チーズを出すと、Thank you と何もない頭上に描かれる。

クシエルの魔法は、天使の中でも2、3を争う。1番の魔法使いは、ラファエルなのよね。その次は、クシエルか、ハニエルかしら、、??
そんな事を考えながら、自分用にウイスキーをグラスに注ぐと、相棒が口を開く。


「女の事、本気なのかよ?」


カチンとくる。何よ、その言葉。


「私が、初めて手に入れたいと思ったのよ?本気に決まってるじゃない。」


ふんっと鼻で笑ってやると、返すかの様に、クシエルに鼻で笑われた。


「ふーん、せいぜい飽きられない様に頑張るんだな。」


ワインを片手に、相棒は失礼な事を言う。ニヤニヤと笑う顔を握り潰してやりたいと、少しだけ思った。


「、、、そうね。頑張るわ。で、伝えに来たことって何よ。」


「得体のしれない女の事で、悩んでる事があるんじゃねーのかなってよ。俺様優しくね?」


グラスを磨いていた手が止まる。幸いにも、今日はユーリちゃんは寝ている。一人で悩んでいても解決しない問題だとは、わかっているけれど、、相棒に相談するなんて、、、。コイツに相談するとロクなことが無いのは、わかっているけれど、、私の脳筋じゃ、知識が足りない。


「筋肉だけじゃ、解決出来ない問題もあるってこった。」


「ちゃんと勉強しとけば良かったって後悔したわ。」


「ジフリールは、武術系は成績良くても、それ以外は壊滅的だもんな。懐かしいぜ。」


クシエルの言う通り、自分でも思っているけれど、私は世間一般で言う筋肉バカだった。職についてから、必要な知識が多くて少しは勉強したけれど、、学生時代にもっと勉強しとけばよかったって、後悔しているのよねぇ。

天使にだって、人間と同じように学ぶ期間はあるのよ。私達、大天使は特に上に立つ者として、そりゃ勉強なんて山積み。生まれた時から決められた使命だから、それなりには頑張ったと思っているのだけど、、ママが馬鹿だなんて、ユーリちゃんに知られたくないわ。


「悩みってのは、、女が本当にたみかどうかって所か??」


「え!?どうしてそんな事言うのよ。」


流石にそんな事疑った事がないから、びっくりする。ユーリちゃんが民じゃ無いなんて、考えられない。他の種族にはある特徴もないのだから、民以外考えられないわ。


「ジフリール、民ってのは、辿の事を言うんだぞ。」


「そ、それぐらい知ってるわよ。ハニエル、ラファエル、ラグエルの部署で手続きしてるじゃないの。」


「ほーん、じゃあ、どんな処理をしてるか知ってるのか??」


たみ。天国で生活している人間達を、私達はそう呼ぶ。

彼等はまず、ハニエルの部署で、を受ける。中には、民になるには相応しくない人間が流れ着く事もあり、その時は地獄に送る事もある。

その後、ラファエルの部署で、。新たなる人生への計らいで、そういう処理を受けなければならない。

最後に、ラグエルの部署で、。生前の人間が、胎内から生まれる様に、天国でも胎内から生まれ育つ為、親待ちの民が発生する。


「そんな訳で、親が居る以上帰る場所が必ずあるってこった。」


「だから、ユーリちゃんは記憶喪失だって言ったじゃない。」


「それ、本当なのか??嘘だとは思わなかったのか??」


「あの子が、そんな嘘をつく訳ないわよ、、」



沈黙の時間が流れる。
ユーリちゃんが、記憶喪失なのが嘘、、??
それが本当であれば、何らかの理由で私に近付いたって事?だったら、何であんな怪物だらけの森で倒れてたのよ。そんなの死んじゃうに決まってるじゃない。あの子には、自殺願望も見えないし、帰る場所が分からないっていうのも嘘には見えなかった。

何をしていたのか、此処が何処なのかわからない。あの時の彼女の言葉に、嘘はないと思う。


もし、ユーリちゃんが皆の敵だとしても、俺はあの子の味方でありたい。
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