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私とママ。

これはデートというのか。

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「お待たせ~、ママが選んだピンクのワンピースに、ワインレッドのレザーパンプスが似合ってると思うんだけど~。あれ、ユーリちゃん、ウチの後ろに隠れてどうしたん~??恥ずかしいん??可愛すぎでしょ~」


ワンピースなんて着るの久しぶりだから、ママに見せるのが少し恥ずかしくて、クイーンさんの後ろに隠れる。がっつり化粧もしたし、なんだか、、ママの事意識してしまう。

一方ママはというと、魔法の扉に寄り掛かって、ブックカバーの掛かった本を読んでいた。ママって本読むんだ、、、その様もかっこよくて、ますます会いずらい。眼鏡をかけてたら、鼻血物ですよ。あぁ、目に入れても痛くないイケメンって存在したんだなぁ。しかも、それが、私の面倒を見てくれてるママなんて、、。


「ん、終わったのね。ユーリちゃん、可愛くなった姿を見せて欲しいわ?」

本をぱたりと閉じ、こっちに向かってイケメンスマイルを仕掛けてきた。攻撃力は半端ない。動じないクイーンさんは肝が据わってると思うし、イケメン耐性があるのかな。まぁ、ジャックさんもイケメンだし、クイーンさんがそもそも美人だから、、。

私は、そんな耐性無いんで、手加減してください。


「ほら、ユーリちゃん。可愛い姿を見せてあげな~」

クイーンさんに手を引かれ、ママの前に出る。


「お、お待たせ、、、ママ。」


たかが、ワンピース姿の披露に、こんなに恥ずかしいと思うことがあるのだろうか。それがママだからなのか、何十年振りのワンピースだからなのかはわからないけど、顔に熱が集まる。


ママの前まで行って、見上げると目が合う。ママは、ポカーンとしていた。身長150㎝の私に対して、ママはきっと180を超えてるから、どうしても見上げる形になってしまうし、上目遣いになる。美人で可愛ければ、圧倒的殺傷能力なんだろうが、私だからキモさ倍増といったところだろう。


「似合うかな??」

ママの返事はない。


「なーんや、ママ。固まってしまったやん。」


私のワンピース姿は、人を硬直させてしまう能力があったか。


「ユ、ユーリちゃん似合ってるわよ、、、」


「ママ、そんな気を遣わなくて大丈夫だよ。」


「気なんて遣って無いのよ、、。ち、違うの、、、その、、えっと、、」


ママが挙動不審になってしまった。私のワンピース姿には、人を混乱させる力もあったらしい。


「なーんや。めっちゃ情け無いじゃん~。こういう時は、、、こうすればいいんやで~」


そう言うと、クイーンさんは私とママの手を持ち、ギュッと握らせた。


「「ぁ、、、、」」


もう一度ママの方を見ると、真っ赤になっていた。初めてノースさんに跨る時に、抱き締める事を悶えていた時よりも赤くて、私もドキドキしてしまう。


「買った物は、とりあえずうちに置いといて、、、さ、楽しいデートに行ってらっしゃい~」


クイーンさんはそう言うと、私達をお店から出した。買った物を置いて帰るわけにも行かないし、とりあえず、、デ、デートというか、、散歩にでも、、。そう思っていたら、手は繋いだまま、ママは蹲ってしまった。


「ママ??大丈夫??」


私のワンピース姿はそんなに酷いか。それは申し訳ない。さっきまでの緊張も、萎んでいく。


「ユーリちゃん、ごめん。ママ、情けないわよね。その、、ユーリちゃんがあまりに可愛くて、緊張したの。」



「え」


可愛くて、、??その言葉が、何度も頭の中でリピートされて、私も混乱してくる。
ママがずっと固まってたのも、挙動不審だったのも、私の事を可愛いって思ってて緊張してたって事?、、、私、こんな経験無いんだから、勘違いしちゃうし、都合の良いように解釈しちゃうよ。


「でも、もう大丈夫よ!!今、戻っても追い返されるだけだと思うから、、、折角だし、デ、、散歩しましょ!!」


ママは勢いよく立ち上がり、私の手をしっかり握る。恋人繋ぎでは無いけれど、その手はあったかくて、熱くて、私の体温まで上昇させる。


----------------------------
-民の声-

街行くたみ達は、すれ違い様に驚く。
女に一切興味がないと言われている大天使、“ジフリール様“が、女と手を繋いで歩いているからだ。彼に女を勧めても、興味がないと申し訳なさそうに断られた者は少なくない。
そんな彼が愛おしそうに、女と歩いている。
隣を歩く女は、可愛らしく美しい。天使なのか、妖精なのか、はたまた民なのかは、誰にもわからない。

民はの一部は、不思議に思う。
美男美女が、手を繋いで歩いているのに、彼らには会話が一切ないからだ。

何故なのかは、本人達にしかわからない。


----------------------------


街を歩いているけど、会話が一切ない。お互いが、変に意識して緊張しているのか、終始無言タイムだ。だけど、こんな時間も嫌いじゃない。
すれ違う人々が、奇妙な目でこちらを見ている気がするが、ママに夢中でそれすらも忘れてしまう。

ママが、私に歩調を合わせて、ゆっくり歩いてくれてるところとか、人にぶつかりそうになった時に、ママの方に手を引いてくれるとか、そんなちょっとした気遣いに、優しさを感じる。

もし、ママが恋人だったら、、、。
昨日出会った人に、恋をしてしまうなんて、おかしな話だろうか。
生前の25年間、三次元の男性に、これほどドキドキした事が無かっただけに、これが恋なのではないかと思ってしまう。ママだからだと自分に言い聞かせていたけれど、ママが私のことを女として思っているのなら、もしかしたら、、、。

少なくとも、私の中でママの存在は、もう、、、。


「ユーリちゃん」

考え事していたら、ママが立ち止まった。


「ん??」


「夕陽を、、見に行こうと思うんだけど、どうかしら??」



「見たい、ママ連れてって」



ふと周りを見渡すと、日も傾いている時間だった。1日が長くて、今が何時かもわからなくなってしまっていた。
パステルカラーの街を夕陽が赤く染める。街灯は、ちらちらと明かりを照らし始めた。しっとりとした空気が辺りに立ち込め、夕方の香りが風と共に吹き抜けていく。少し肌寒く感じて、ママの手をギュッと強く握った。


バイバイ、また明日ねと、子供の声が遠くから聞こえる。あの世界で生きてた頃の私は、そんな声も、もう何年と聞いていない。朝から晩まで会社に縛られて、帰る時間は次の日なんて普通だった。
なんで、あんな日常を生きてたんだろうか。今、こんな恵まれた環境で、ママと生活していると、もうあの世界には戻りたくない。家族も、友達も待っているかもしれない。
だけど、ママの温もりが恋しくて、ママが愛おしくて、もう戻りたくないと思ってしまうんだ。




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